入退室管理システム開発のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

入退室管理システムのフルスクラッチ開発は、要件に合わせてゼロから設計・開発する方式です。どの方式にするかは、標準機能で足りるか、設備連携や独自の制御が要るかで決まります。

顔認証は認証の手段として扱い、認証エンジンの開発や来訪者受付は主題にしません。

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入退室管理システムのフルスクラッチとパッケージ・SaaSの違い

パッケージ・SaaSとフルスクラッチを、導入のしやすさと要件への対応方法で対比した図。
標準機能で足りるかどうかが、方式を分ける視点になります。

パッケージ・SaaSは標準機能を使うため、初期投資を抑えて短期間で導入できます。また、更新やセキュリティ対応は提供事業者が担います。

フルスクラッチは、要件に合わせてゼロから設計・開発する方式です。自由度は高いものの、費用と期間が大きくなりがちです。

方式の良し悪しは、方式そのものではなく、自社の要件にどれだけ合うかで決まります。標準機能に収まるか、独自性が必要かを見極めることが出発点です。

たとえば、オフィスのドアをICカードやスマートフォンで開け、ログを取る用途であれば、機能がそろったSaaSが候補になります。法改正への対応も要りません。

標準機能では実現できない高度なセキュリティや、他システムとの独自統合が必要な場合は、フルスクラッチが選択肢になります。

パッケージ・SaaSでできること・できないこと

既製品には、ICカードやスマートフォンでの解錠、エリア別の基本的な権限設定、ログの記録と閲覧といった機能が備わっています。また、勤怠管理との連携も、標準で備わっていることが多いです。

  • 標準用途:標準機能で足りる用途なら、既製品から選べます。
  • 独自要件:独自のセキュリティロジックや権限モデルには、標準機能が対応しきれないことがあります。
  • 設備連携:特定のカメラやエレベータ、基幹システムとの細かな連携は、設定やオプションの範囲を超える場合があります。

SaaSは扉ごとの月額課金で利用でき、初期費用を抑えて短期間で始められます。中小企業やスモールスタートにも有力な選択肢です。

導入前に、必須要件が標準機能やカスタマイズで満たせるかを確かめます。その結果が、フルスクラッチの必要性を判断する材料になります。

フルスクラッチという選択肢の位置づけ

フルスクラッチでは、要件に合わせてシステムをゼロから設計・構築します。そのため、独自のセキュリティポリシーや運用フローに沿った設備連携を実現できます。

  • 向く要件:標準機能で満たせないセキュリティや統合の要件がある場合に検討します。
  • 負担:開発に数千万円から数億円、半年から2年以上かかることが一般的です。
  • 運用:リリース後も自社で保守・運用体制を維持する必要があります。

長く自社の資産として作り込む価値があるかも、フルスクラッチを選ぶ際の判断材料になります。

自社専用という理由だけで選ぶと、既製品で足りる機能にまで費用をかけかねません。選ぶことが認められるのは、費用に見合う明確な理由がある場合です。

ポイント

標準機能で足りるならパッケージ・SaaSが候補になり、標準機能では実現できない独自のセキュリティや設備連携が必要なら、フルスクラッチを検討します。判断の分かれ目は、要件が標準機能の範囲を超えるかどうかです。

フルスクラッチ・オーダーメイド開発が必要になるケース

既製品では満たしにくい要件を、設備連携、セキュリティポリシー、基幹・勤怠システム統合の3つに分けた図。
設備・施設運用・社内システムの各領域に個別要件が現れます。

既製品では対応しきれない場面で、オーダーメイド開発が選ばれます。どのようなケースで必要性が認められるかが、判断の要点になります。

監視カメラ・エレベータとの密連携

設備との高度な連携が必要な場合は、フルスクラッチが選択肢になります。たとえば、認証の結果に応じて、利用者が行けるエレベータの階を制御する仕組みがあります。

  • エレベータ:フロアのアクセス権に応じて、行先階を制御します。
  • 監視カメラ:共連れを検知すると、入退室イベントと映像を紐づけて切り出し、記録します。

映像を後から検証できるような統合制御には、設備の通信仕様やAPIに合わせたロジックが必要です。そのため、既製品の設定変更だけでは対応が難しい場合があります。

高度なセキュリティを求める施設や、複数の設備を一つの運用フローに統合したい企業では、こうした連携が開発方式を選ぶ理由になります。

データセンター等の厳格なセキュリティポリシーと非常時ロジック

データセンターや研究施設、金融機関の重要区画では、極めて高いセキュリティが求められます。こうした場所は、フルスクラッチが選ばれる典型例です。

  • 多段階の権限:作業許可、時間帯、上長承認などの条件を組み合わせます。
  • 非常時の扉制御:避難経路と重要資産の区画で、扉ごとに解錠・施錠を制御します。

既製品では独自の権限制御を表現しきれないことがあり、個別のロジックが必要になります。非常時の一斉解錠も、施設の特性に応じた設計が必要です。

制御の例として、避難経路はフェイルセーフ(無通電解錠)で開放し、重要区画はフェイルセキュア(無通電施錠)で施錠を保つ方法があります。

扉ごとの制御は、消防法や建築基準法を踏まえて設計します。人命と資産を守る安全設計は、独自のロジックを採る理由になります。

基幹・勤怠システムとの深い統合

既存の基幹・勤怠システムと深く統合する場合も、フルスクラッチが候補になります。一方で、ログを渡して労働時間の客観的な記録に使うだけの連携であれば、既製品でも可能です。

独自の勤怠ルールや給与計算、人事マスタに合わせてデータを加工・連携する場合は、標準機能では足りないことがあります。

  • 勤怠ルール:独自の休憩控除を適用し、入退室時刻から労働時間を算出します。
  • 複数拠点:拠点間の移動を考慮して勤務実態を集計します。
  • 人事情報:人事異動や組織変更に応じて、既存の人事システムと連動し権限を更新します。

基幹システムと一体で運用する場合は、自社の業務に合わせて作り込むことで、長期的な運用効率と正確性を高められることがあります。

ポイント

設備との密連携、厳格なセキュリティ、基幹・勤怠システムとの深い統合のいずれかで既製品が対応しきれないとき、フルスクラッチの必要性が認められます。

フルスクラッチ開発の規模別費用と期間

フルスクラッチを検討するうえで、費用と期間の見通しは欠かせません。規模別の目安と、この方式特有のコスト構造を押さえておきます。

規模別の費用・期間の目安

費用は、対象となる扉の数、設備やシステムとの連携の複雑さ、求めるセキュリティのレベルによって変わります。

  • 本格開発:ハードウェア代や全国の拠点の配線工事費を含め、数千万円から数億円規模になることがあります。
  • 期間:要件定義から現地設置まで、半年から2年以上が一般的です。
  • 小規模開発:既存スマートロックのAPIを使い一部を独自開発する場合は、費用と期間を抑えられます。
  • 大規模開発:数百扉の管理や設備連携、独自の非常時ロジックを含むと、費用・期間が上限側に振れます。

自由度が高い分、費用は要件次第で大きく変わります。そのため、早い段階で概算を把握し、予算と要件のバランスを取ることが大切です。

見積もりは、ソフトウェア開発費だけでなく、ハードウェア調達費と設置工事費を含めた総額で捉えます。

ハードウェア・設置工事費を含めたコスト構造

特に注意したいのは、ソフトウェア開発費以外のハードウェアと工事費です。Webシステムでは費用の大部分を開発人件費が占めるため、この違いを見落としがちです。一方、入退室管理では機器と工事費も大きな割合を占めます。

  • 機器調達:扉ごとの電気錠、カードリーダー、フラッパーゲートなどが必要です。
  • 設置工事:機器の設置と配線に費用がかかり、扉数や拠点数に応じて積み上がります。
  • 納期:機器の発注から納品までの期間が、スケジュールとコストに影響します。

既存建物への配線は、建物の構造によって大掛かりになり、想定以上の費用がかかることもあります。

見積もりでは、開発費、機器調達費、設置工事費を分けて示してもらい、各費目の対象範囲を確かめます。

開発費だけで予算を組むと、機器代と工事費が後から加わって総額が膨らみやすくなります。そのため、最初から総額で計画することが大切です。

ポイント

費用は数千万円から数億円、期間は半年から2年以上が目安です。ソフト開発費に機器と工事費を加えた総額で見積もることが基本で、扉数や拠点数が増えるほど積み上がります。

フルスクラッチ開発の体制と契約形態

開発を成功させるには、適切な体制と契約形態が欠かせません。特に、システムと設備工事をまたぐポイントは、体制と契約の両面から押さえておく必要があります。

ソフトとハードと工事をまたぐ開発体制

開発には、一般的なアプリケーション開発より幅広い専門性が必要です。そのため、ソフト、機器制御、設置工事の担当者が連携して進めます。

  • ソフトウェア:権限管理、ログ、他システム連携を担います。
  • ハードウェア:電気錠やコントローラの制御知識が必要です。
  • 工事:扉への機器設置や配線を担当します。

ソフトに強い会社でも、電気錠やゲートとの連携でつまずくことがあります。一方で、工事に詳しい業者でも、ソフトの作り込みが不十分になりがちです。

多領域にまたがる体制が、品質とスケジュールを左右します。そのため、委託先にはソフト開発力とハード連携の実績を求め、PMが異なる関係者をまとめます。

請負・準委任とスコープの切り分け

機器の納入・設置工事とソフト開発が混在するため、契約形態を慎重に設計する必要があります。対象やフェーズに応じて、契約を使い分けます。

  • 機器・工事:成果物に責任を持つ請負契約とするのが一般的です。
  • 要件定義前半:要件が固まりきらない段階は、準委任契約とする方法があります。
  • 本開発:仕様確定後は、請負契約とする方法があります。

要件定義の段階で、開発会社と電気通信工事会社の責任範囲を明確にしておきます。曖昧なままだと、責任の押し付け合いや追加の費用・工事につながります。

機器間の配線や、ソフトと機器の接続部分は、担当が曖昧になりやすい境界です。そのため、各社の責任範囲と担当作業は、契約時に文書にしておきます。

ポイント

ソフト、機器、工事をまたぐ体制を組み、どこまでを誰が受け持つかを契約で明確にしておくことが、品質とスケジュールを守るうえで欠かせません。

フルスクラッチで失敗しないためのポイント

既製品とフルスクラッチの役割分担、および開発範囲の確定と変更管理を示す4項目のチェックリスト。
作る範囲を絞り、変更の影響を見てから進めます。

自由度が高いフルスクラッチでも、進め方を誤ると費用や期間が膨らみます。失敗を防ぐための要点は、既製品とフルスクラッチの役割分担と、要件の範囲の固め方にあります。

SaaSで足りる部分の自社開発を避けること

最初の一歩は、フルスクラッチが必要な部分と既製品で足りる部分を冷静に切り分けることです。標準機能まで自社で開発すると、費用と期間の無駄になりかねません。

  • 既製品に任せる:ICカード解錠や基本的なログ記録は、既製品で対応できる機能です。
  • 独自開発に集中:高度な連携や独自ロジックなど、差別化が必要な部分に投資します。
  • 組み合わせる:近年は標準部分に既製サービスや部品を使い、独自部分だけを開発する方法もあります。

既製品とフルスクラッチを組み合わせれば、コストを抑えながら独自機能を実現できます。「作るもの」と「借りるもの」を見極めることが、成功の出発点になります。

要件定義でのスコープ確定とスコープクリープの防止

スコープクリープとは、開発範囲が当初の想定を超えて広がることです。要件定義が甘いと、追加の開発や工事で予算が大幅に超過する原因になります。

  • 範囲の確定:管理する扉、制御レベル、連携設備を定義し、初回開発の優先順位を決めます。
  • 変更の管理:追加要望は、影響範囲と追加の工数・費用・工事を確認してから着手します。

ハードウェアと工事を伴う開発では、後からの変更が一般的なシステムより高くつきます。そのため、変更管理のルールは開始前に合意しておきます。

要件を早い段階で固め、変更を管理することが、予算内・期間内での開発につながります。

ポイント

既製品で足りる部分と独自に作る部分を切り分け、要件定義の段階で開発範囲と変更のルールを固めておくと、費用と期間の膨らみを抑えられます。

まとめ

標準的な解錠とログ記録で足りる場合は、既製のSaaSが候補になります。一方、設備との密連携や独自の権限制御が必要であれば、フルスクラッチが選択肢になります。

フルスクラッチの費用は数千万円から数億円、期間は半年から2年以上が目安です。ソフト開発費に加えて、ハードウェア調達費と設置工事費を含む総額で見積もります。

ソフト・ハード・工事を担う体制を整え、各社の責任範囲を明確にすることが大切です。SaaSで足りる部分は活用し、要件定義で開発範囲と変更ルールを固めておきましょう。

導入方式を検討する際は、既製品で要件を満たせるか見極め、ソフトとハード双方に実績を持つ開発会社へ相談する方法があります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。