入退室管理システム開発の保守・運用費用・ランニングコストについて

入退室管理システムの費用は、保守の範囲、扉の数、監視の水準によって変わります。初期開発費が1,000万円なら、ソフト保守は年間150万〜200万円程度になり、SaaS型は1扉あたり月額1万〜数万円まで幅があります。導入後も長く続くため、保守費と運用費まで含めて考える必要があります。

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入退室管理システムの保守・運用費用の全体像

年間保守費用をソフト保守、監視対応、機器保守の3項目に分けた図。
物理機器の点検や交換も費用の内訳に加わります。

入退室管理システムは、ICカードや生体認証を使って従業員や関係者の出入りを制御し、入退室ログを記録する仕組みです。導入後も長く使うため、保守や運用にかかる費用を継続して見ておく必要があります。

費用は、ソフトウェアとハードウェアの二層構造で捉えます。ソフトウェアには権限管理やログ蓄積の機能があり、ハードウェアには電気錠、カードリーダー、フラッパーゲートがあります。

ハードウェアは物理機器のため経年劣化し、定期的な保守が欠かせません。発注側の担当者は、導入後の月額・年額と、保守契約の範囲を確認しておく必要があります。

一般的なWebシステムでは、保守の中心はサーバー代とソフト改修費です。入退室管理では、これに物理機器の保守・交換費が加わります。

保守の主な対象は、ドア解錠、エリア別の権限、ログ記録を止めずに維持することです。顔認証を使う場合も、認証エンジンの精度維持ではなく、この3つが中心になります。受付システムのように来訪者対応を主眼とする仕組みとは、保守の対象が異なります。

保守が「ソフトとハードの二層」になる理由

二層の役割を分けて考えると、必要な保守範囲を判断しやすくなります。

  • ソフトウェア:権限管理とログ記録の安定稼働
  • ハードウェア:電気錠、リーダー、ゲートの継続的な稼働

ソフトウェアでは、権限管理やログの記録・検索を維持するほか、勤怠システムとの連携、不具合修正、セキュリティ更新も対象になります。組織変更に伴う権限の見直しも、継続的に発生します。

ハードウェアでは、電気錠、カードリーダー、ゲートの動作を保ちます。電気錠やゲートは機械部品を含み、開閉回数で摩耗します。そのため、定期点検と部品交換を行う必要があります。

ソフトを保守していても電気錠が壊れれば入退室管理は止まり、ハードを点検していても脆弱性を放置すれば情報セキュリティのリスクは残ります。だからこそ、二層のバランスを保つことが、安全な長期運用の前提になります。

年間保守費用の相場観

年間費用は、ソフト保守、監視対応、機器保守に分けて見積もります。

  • ソフト保守:初期開発費の約15〜20%が目安
  • 監視対応:監視と駆けつけの水準で費用が変わる
  • 機器保守:台数や種類に応じた別途加算

初期開発費が1,000万円なら、ソフト保守は年間150万〜200万円程度になります。入退室管理はセキュリティに直結するため、停止を避ける必要があります。

24時間監視や障害時の駆けつけを含めると、年間費用に占める割合は高くなる場合があります。さらに、電気錠、カードリーダー、ゲートの点検・交換費は別途発生します。機器の台数や種類が多いほど、ハードウェア費は積み上がります。

SaaS型では、これらの保守がサービス料金に含まれるのが一般的です。そのため、初期費用だけでなく、数年分の保守・運用費で比べることが大切です。

ポイント

保守費を比べるときは、ソフトとハードのどちらの保守が見積もりに入っているかを先に確かめます。含まれる範囲が分かれば、年額の数字を同じ条件で比べられます。

保守契約に含まれる費用の内訳

保守契約は、ソフトウェア、機器、監視体制の費用で構成されます。

ソフトウェア保守(障害対応・権限変更・ログ監査対応)

ソフトウェア保守は、入退室管理システムの中核を安定させるための費用です。

  • 障害対応:不具合の調査と復旧
  • セキュリティ対応:OSやミドルウェアの更新
  • 権限・監査:権限変更とログ出力の維持

認証ロジックや管理画面の軽微な改修も、保守に含まれることがあります。また、人事異動や入退社に伴う権限変更は、運用の負荷が高い作業です。

権限マスタの変更を保守にどこまで含めるかは、契約時に決めておく必要があります。入退室ログは内部統制や情報セキュリティ認証の重要な証跡になるため、この点を曖昧にしないことが大切です。

ISMS(ISO27001)やプライバシーマークの監査に対応するため、ログを検索・出力できる状態を保つ必要があります。あわせて、アクセス権限の制限とログの完全性を保つ仕組みも求められます。

電気錠・カードリーダー・ゲートのハードウェア保守

ハードウェア保守は、入退室管理システム特有の継続的な費用です。

  • 対象機器:電気錠、カードリーダー、フラッパーゲート
  • 予防保守:点検と消耗部品の計画的な交換
  • 拠点対応:拠点ごとの現地作業

機器は開閉や読み取りで駆動部が摩耗し、経年劣化していきます。放置すると、解錠しない、カードを読まないといった不具合につながります。

ハードウェア費は、対象機器の台数と種類に比例して増えます。不具合を防ぐには、定期点検と消耗部品の計画的な交換を前提に費用を見込んでおく必要があります。

大規模なシステムほど、多数の扉に対応するため負担が大きくなります。メーカーの保守期間を過ぎると、部品の供給が終わることがあります。そのため、後継機種への計画的なリプレースも、中長期の費用として見込んでおく必要があります。

全国に拠点が分散している場合は、各地への出張費と作業員の稼働費も加算されます。

24時間監視と駆けつけ保守・SLA

監視と駆けつけ対応は、停止を避けたい環境ほど重要になります。

  • 死活監視:システムの異常の常時確認
  • 駆けつけ保守:障害時に技術者が現地で行う対応
  • SLA:稼働率99.9%以上などの品質保証

管理サーバが落ちると、データセンターの扉が開かない事態も起こります。そのため、24時間365日の監視と、すぐに動ける体制が求められます。

手厚い監視は信頼性を高めますが、その分保守費用も押し上げます。たとえば、データセンターや研究施設では、高い保守レベルが必要になります。

一般的なオフィスの一部の扉なら、平日日中の対応で足りる場合があります。扉やエリアの重要度に応じて、監視と対応の水準を選ぶことが大切です。

ポイント

障害対応や権限変更を保守に含むか、追加費用になるかで迷ったら、契約書の対応範囲を見てください。曖昧なままでは、障害時に費用の追加が起きやすくなります。

SaaS型と自社開発のランニングコスト比較

SaaS型の扉ごとの月額課金と、自社開発・オンプレミスの複数費目を左右で比較した図。
費用を見積もる単位が、方式によって異なります。

ランニングコストは、SaaS型と自社保有で構造が大きく異なります。

1扉あたり月額課金というSaaSの料金体系

SaaS型は、1扉あたり月額いくらという料金体系が一般的です。

  • 料金:1扉あたり月額1万円から数万円程度
  • 導入:初期投資を抑えた短期間の導入
  • 保守:更新と機器保守は事業者の担当

専用のスマートロックやリーダーをレンタルで提供するモデルもあります。アップデート、セキュリティ対応、ハードウェア保守も、料金に含まれます。

自社で保守体制を持たずに済み、情報システム部門の負担を減らせます。一方で、扉数や利用人数が増えるほど、月額費用は積み上がります。

数十扉や数百扉になると、累計額が自社開発の保守費を上回ることがあります。そのため、将来の扉数とエリア数を踏まえて拡大後の月額を試算し、判断材料にします。

自社開発・オンプレミスのランニングコスト構造

自社開発やオンプレミスでは、月額ではなく複数の費目を積み上げて考えます。

  • 基盤費:サーバーやネットワーク機器の維持
  • 保守費:ソフト、機器、監視にかかる費用
  • 運用体制:ベンダー契約と社内対応の体制

クラウド上に構築する場合は、クラウド利用料も発生します。ソフト保守は、初期開発費の15〜20%程度が目安です。

さらに、ハードウェアの点検・交換費と、監視やSLAの対応費も加わります。扉や利用人数が増えても、費用がそれに比例して増えるとは限りません。

自社のセキュリティポリシーに合わせて、自由に設計・運用できます。一方で、ベンダー契約と社内の運用体制を保つ必要があります。

小規模で標準機能ならSaaS型、大規模で独自要件が多ければ自社開発が有利になります。どちらが合うかは、扉数、セキュリティ水準、社内リソースを踏まえ、数年単位で比べて決めます。

ポイント

扉数が少なく標準機能で足りるならSaaS型、扉数が多く独自要件が多いなら自社開発が候補になります。迷うときは、将来の扉数で累計額を試算してください。

見落としがちな運用コスト

カードの発行・回収、権限変更、ログ保管、監査対応の4つを示した運用費用の図。
見えにくい担当者の工数も運用費として積み上がります。

保守契約以外にも、日々の運用で見えにくい費用が発生します。

ICカードの発行・回収と権限運用の人的コスト

ICカード(FeliCaやMifareなどの規格)を使う場合は、カードの発行・運用費が継続的にかかります。

  • カード費:1枚あたり数百円から数千円程度
  • 入退社対応:発行、回収、権限変更
  • 紛失対応:再発行と旧カードの失効処理

従業員数が多い企業では、発行枚数がまとまった費用になります。入社時にはカードを発行し、適切な権限を付与します。

特に退社時は、カードを回収して権限を無効化しなければなりません。異動や役職変更のたびに権限変更が必要になり、管理者の工数が増えます。

紛失時は、悪用を防ぐためにすぐ手を打つ必要があります。一方、スマートフォン認証を使えばカードの発行・回収は不要になり、代わりにアプリ管理やデバイス登録の運用が必要になります。そのため、管理者の工数も見積もっておく必要があります。

入退室ログの保管・監査対応コスト

ログの保管と監査対応は、導入時に見えにくい運用費です。

  • ログ保管:保存期間の長さで費用が変わる
  • 監査対応:担当者による抽出と提示
  • 生体情報:暗号化とアクセス制限の維持

ログには、いつ、誰が、どのエリアに入退室したかが記録されます。このため、情報漏えい時の追跡や内部統制の証跡として活用されます。

扉やエリア、従業員が多いほどログ量は膨大になります。さらに、保管期間を長く設定するほど、必要なストレージも増加します。

ISMS(ISO27001)やプライバシーマークの監査では、ログの提示が必要です。監査人が求める形への抽出・提示には、担当者の工数がかかります。

生体認証を併用する場合は、顔特徴量などの生体情報も扱います。生体情報には、個人情報保護法上の慎重な取り扱いが求められます。

ポイント

カードの発行・回収や、ログの保管・監査対応にかかる人手は、年間の運用費に含めて見積もります。見落としやすい費用ほど、早い段階で数字にしておきます。

保守運用コストを抑えるポイント

コストを適正に保つには、契約内容と将来の規模を見極めることが欠かせません。

保守範囲とSLAの契約内容

保守範囲を最初に明確にしておくと、契約後の費用トラブルを防げます。

  • ソフト対応:障害や権限変更の対応範囲
  • 機器対応:部品交換の費用負担
  • SLA:稼働率、復旧時間、時間帯の明記

ソフトウェアの障害対応をどこまで含むのかを確認し、権限マスタの変更が保守内か都度の費用かも確かめておきます。さらに、電気錠やゲートの部品交換が保守費に含まれるのか、実費になるのかも明確にしておきます。

機能追加や大きな仕様変更は、通常の保守外になることが一般的です。追加費用が発生する境界を、契約時に把握しておきます。曖昧な契約では、障害時の追加費用や過剰な保守費が発生します。

拠点・扉数の増加を見込んだTCO比較

現在の料金だけでなく、将来の規模を含むTCO(総保有コスト)で比べます。

  • 拡大計画:3年後・5年後の扉数の見込み
  • 方式比較:SaaS型と自社開発の累計額の比較
  • 隠れた費用:カード、ログ、リプレースの費用

事業の成長や拠点増加に伴い、扉、エリア、利用者は増えていきます。特にSaaS型は、少ない扉数では割安でも、数十・数百扉で累計費用が膨らみます。

自社開発は初期費と固定の保守費がかかりますが、大規模になると1扉あたりの費用は下がります。両方式を比べるには、3年後・5年後の月額と年額を試算し、現在の扉数だけで判断しないことが重要です。

導入時の価格だけでなく、カード運用、ログ保管、監査対応、機器リプレースの費用も含めた数年単位のトータルコストで判断します。

ポイント

契約の範囲を決めるときは、障害対応や部品交換が保守費に含まれるかを先に確認します。将来の扉数を織り込んだTCOで比べると、導入時の安さに引っ張られにくくなります。

まとめ

入退室管理システムの費用は、ソフトとハードの二層構造で考えます。ソフト保守は初期開発費の15〜20%程度が目安で、電気錠やカードリーダーの点検・交換費も継続して発生します。

保守費用は、24時間監視やSLAの水準によって変わります。また、ICカードの発行・運用や、ログ保管・監査対応の工数も必要です。

SaaS型は導入しやすい一方、扉数が増えると費用が膨らみやすくなります。自社開発は初期費がかかりますが、大規模では有利になりやすい方式です。

保守範囲とSLAを契約で明確にし、将来の扉数を含むTCOで比較します。導入や見直しでは、扉数と求めるセキュリティレベルを整理します。そのうえで、複数の開発会社やサービスに相談することをお勧めします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。