入退室管理システムを探すと、既存のドアに後付けできるスマートロック型のクラウドサービス、複数拠点を一元管理できるエンタープライズ向けの基盤、生体認証やゲート連携まで対応する大規模施設向けシステムなど、性格の異なる製品が見つかります。名称や機能一覧だけでは違いが分かりにくく、初期費用の安さだけで選ぶと、必要な認証手段やエリア権限に対応できず、既存の運用が残ってしまうこともあります。比較サイトのランキングやおすすめ記事だけを参考にすると、実際には自社の建物構成に合わない製品を候補に含めてしまうことも少なくありません。
本記事では、パッケージ型とクラウド型の違いを整理したうえで、2026年7月時点で現行の公式情報を確認できた主要5製品を紹介します。各製品の得意領域、課題別の絞り方、料金・契約条件、デモやPoCで確認すべきポイントまで解説しますので、候補製品を比較する際の基準としてご活用ください。
本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。
▼全体ガイドの記事
・入退室管理システム開発の完全ガイド
パッケージ型とクラウド型入退室管理システムの違い

パッケージ型は自社環境への設置や個別構築を含む広い意味で使われる一方、クラウド型はベンダーが運用するサービスをインターネット経由で利用する方式です。現在、具体的な入退室管理製品として比較しやすいのはクラウド型が中心であり、大規模な設置型システムも管理基盤自体はクラウド連携を前提に進化しています。
パッケージ型は大規模施設の個別要件への対応が論点です
従来型のパッケージは、ソフトウェアと専用のコントローラを自社の建物設備に組み込んで導入する形態を指すことが一般的です。数千ゲート規模の管理や、指静脈などの生体認証、独自のエリア権限設計に対応しやすい反面、サーバーやコントローラの保守、バージョンアップを自社または保守契約先が担う範囲が大きくなります。データセンターや大規模オフィスビルのように、既存の防災設備や入退室記録の保管年数など個別要件が多い現場では、導入時の自由度だけでなく、改修を継続できる保守体制まで確認しなければなりません。設置工事を伴うため、導入までのリードタイムもクラウド型に比べて長くなりやすい点も踏まえて計画する必要があります。
クラウド型は短期導入と多拠点管理に向いています
クラウド型は、サーバー調達をせずに利用を始めやすく、ベンダーによる機能更新や法改正への追随を受けられる点が特徴です。複数の拠点や店舗を一つの管理画面で確認したい企業や、まず数扉から試して段階的に拡張したい企業に向いています。ただし、クラウド型を導入するだけでISMSやプライバシーマークの監査対応が保証されるわけではありません。自社が求めるログの保存期間や出力形式を整理し、システム側の設定に反映する必要があります。ベンダー側のシステム障害が発生した際に、現地でどこまで解錠や履歴確認を継続できるかも、契約前に確認しておきたい点です。
製品を比較するときの共通軸

製品紹介ページの機能一覧だけでは、自社の建物構成や運用ルールに適合するか判断できません。候補を同じ条件で比べるため、対応認証方式、エリア権限とログ監査、他システム連携、料金体系という共通の質問に置き換えることが重要です。
対応認証方式とエリア権限のカバー範囲をそろえて比べます
最初に、ICカード、スマホ、暗証番号、生体認証のうち、自社が使いたい手段に対応しているかを確認します。「エリア権限に対応」という説明でも、部署単位のグループ管理までが標準機能か、時間帯制御やゲスト向けの一時権限が追加設定になるかで、担当者の運用負荷は変わります。実際に使う扉の構成と組織体制を提示し、デモで再現してもらうと判断しやすくなります。既存の社員証や交通系ICカードをそのまま使えるかどうかも、専用カードの発行コストや切り替え時の従業員対応に直結するため、早い段階で確認しておくべき項目です。
ログ監査・他システム連携・料金体系まで確認します
入退室ログの保存期間や検索性、ISMSやプライバシーマークの監査で求められる出力形式への対応を確認します。同時に、勤怠管理システムや監視カメラ、エレベータとのAPIまたはCSV連携について、対象データや同期方向、連携にかかる追加費用まで比較します。料金は扉数・登録者数・拠点数のいずれに課金されるかで総額が大きく変わるため、現在の規模だけでなく将来の拡張計画も伝えたうえで見積もりをそろえます。詳しい評価手順は、入退室管理システムの選定ポイント・選び方・種類で整理しています。
入退室管理システムの主要製品5選

ここでは、2026年7月時点で現行の公式ページと対象業務を確認できた5製品を紹介します。掲載順は優劣を示すランキングではありません。製品ごとに得意とする規模や認証方式、料金体系が異なるため、自社の課題と利用条件をそろえて比較することが重要です。
Akerun入退室管理システム(株式会社Photosynth)
Akerunは、既存のドアに後付けできるクラウド型のスマートロックで、ICカードやスマートフォンアプリでの解錠に対応しています。2026年7月時点の公式サイトでは、入退室ログの管理、遠隔施錠・解錠、複数拠点の一元管理に加え、勤怠管理サービスとのAPI連携や受付・予約サービスとの連携が案内されています。料金は具体的な金額の記載がなく見積もり依頼制のため、扉数や拠点数を提示して個別に確認することが必要です。
bitlock PRO(株式会社ビットキー)
bitlock PROは、サムターンに後付けするタイプの法人向けスマートロックで、クラウド管理基盤「workhub」でエリア別・時間帯別・グループ別の権限制御と入退室ログを一元管理します。2026年7月時点の公式サイトには、初期費用0円、月額5,000円(税込)からの料金が掲載されており、オプションで顔認証や自動ドア連動を追加できます。12種類の解錠方法に対応しているため、社員証や交通系ICカードなど既存の認証手段をそのまま活用したい企業でも検討しやすい製品です。料金は改定される可能性があるため、契約前に公式サイトで最新の金額を確認してください。
ALLIGATE(株式会社アート)
ALLIGATEは、ICカード・スマホ認証に対応する「Lock Pro」、顔認証に対応する「Face」、QRコード認証に対応する「QR」の3モデルを提供するクラウド型システムです。2026年7月時点の公式サイトでは、月額・初期費用とも「お問い合わせください」と明記されており、設置予定の扉の写真や要望を伝えたうえで個別に見積もる方式が案内されています。ネットワーク通信費を含む機器レンタルや専用クラウド環境、24時間365日サポートが料金に含まれる点も特徴で、複数の認証方式を扉ごとに使い分けたい企業に向いています。
KEYVOX(ブロックチェーンロック株式会社)
KEYVOXは、QRコードや暗証番号、Apple・Googleウォレット、スマートフォンアプリでの解錠に対応するクラウド型システムです。アクセス管理に加えて来客管理、リアルタイムの履歴確認、予約管理、API・開発者向け機能を備え、コワーキングスペースや宿泊施設など人の出入りが流動的な施設でも利用されています。2026年7月時点の公式サイトでは30日間の無料トライアルが案内されていますが、オフィス向けプランの具体的な月額料金は当該ページには明記されていないため、対象人数や施設規模を伝えたうえで料金詳細を確認する必要があります。
eX-SGⅡ(パナソニック)
eX-SGⅡは、電気工事を伴う設置型の大規模施設向け入退室管理システムです。非接触ICカード(FeliCa・MIFARE・eLWISE・交通系カード)に加え、指静脈認証などのバイオメトリクス認証に対応し、2026年7月時点の公式サイトでは最大6000ゲート、30万枚のカード運用、500万件の履歴管理に対応する仕様が案内されています。データセンターや大規模オフィスビルのように、扉数が多く高い信頼性が求められる現場で検討される候補です。料金は公式サイトに記載がなく、個別の問い合わせが必要です。
自社の課題別に候補を絞る方法

5製品を一斉に細部まで比較するより、最も大きな課題を一つ決め、必須要件で候補を減らす方が効率的です。単一拠点の効率化、複数拠点の一元管理、大規模施設の高信頼性では、適した製品タイプが異なります。
単一拠点でコストを抑えたい場合
数扉から十数扉程度の単一拠点で、工事を抑えて短期間に導入したい場合は、後付け型のスマートロックであるAkerunやbitlock PROが候補になります。認証手段を柔軟に使い分けたい、あるいは顔認証やQRコード認証も検討したい場合はALLIGATEやKEYVOXも比較対象に加えると、必要な認証方式を満たす候補を絞り込みやすくなります。コワーキングスペースや短期利用の拠点が多い場合は、契約期間の縛りが少なく、拠点ごとの解約・追加がしやすいかどうかも比較軸に加えておくと運用しやすくなります。
複数拠点や大規模施設で高い信頼性を求める場合
複数拠点を一つの管理画面で確認したい場合は、拠点をまたいだ権限管理やログ集約に対応できるかを各社に確認します。データセンターや大規模オフィスビルのように、数千ゲート規模の運用や生体認証、高い稼働率保証が必要な場合は、eX-SGⅡのような大規模施設向けシステムが候補になります。自社の扉数と将来の拡張計画を提示し、対応できる上限や保守体制を具体的に確認してください。監視カメラやエレベータとの密な連携、独自の非常時解錠ロジックまで求める場合は、既製のクラウド製品だけでは対応しきれないこともあり、フルスクラッチ開発との組み合わせも視野に入れて検討します。
料金・契約前に確認すべきこと

公開価格だけで安価な製品を選ぶと、扉数の増加や生体認証などのオプション追加で想定外の費用が生じることがあります。料金表に載る月額費用だけでなく、導入準備、工事、保守、将来の解約・データ移行まで含む総保有コストで判断します。
何に対して課金されるかを確認します
クラウド製品の料金は、扉数、登録者数、拠点数、オプション機能など、課金単位が異なる場合があります。現在の扉数だけでなく、1年後・3年後の想定拡張を伝え、初期費用、最低利用期間、オプション追加時の従量課金、保守・サポートの費用を同じ条件で見積もります。料金が非公開または要問い合わせの製品は珍しくないため、確認できない具体額を比較表へ推測で入れてはいけません。
工事範囲・データ保持・解約条件を契約書で確認します
設置工事を伴う製品では、機器納入・設置工事の請負契約と、ソフトウェア利用契約が別になっている場合があります。どこまでが月額費用に含まれ、追加のリーダーや配線工事が別料金になるかを事前に確認します。また、入退室ログや生体情報の保存期間、権限管理、解約時にどの形式でデータを受け取れるかも契約前に確認しておく必要があります。
デモとPoCで製品一覧を最終候補へ絞る

資料比較で2〜3製品まで絞ったら、実際の扉構成を使ってデモまたは実機PoCを行います。情報システム部門だけでなく、総務、施設管理、必要であれば現場の従業員にも参加してもらうと、導入後の行き違いを減らせます。
認証から解錠までを実機で通します
認証から電気錠の解錠までのレスポンス速度を、実際に想定される人数で連続して確認します。あわせて、ネットワークが一時的に切断された場合にコントローラ側のキャッシュで解錠を継続できるかどうかも、意図的に通信を遮断して試します。共連れ検知やアンチパスバックを備える製品では、実際の人の流れに近い条件で誤検知や見逃しがないかも確認します。
導入効果を実測して稟議に使います
PoC前に、鍵の受け渡しにかかる時間、権限変更の依頼から反映までの時間、監査対応にかかる工数を記録し、PoC後と比較します。公開事例の効果をそのまま自社へ当てはめるのではなく、自社の扉数と運用工数で削減見込みを算出します。クラウド型でもアカウント管理や問い合わせ対応の工数は残るため、その運用負荷も差し引いて投資効果を判断することが重要です。
入退室管理システムの製品比較で押さえておきたいポイント

製品一覧から候補を選ぶ際は、料金の安さやおすすめ順位だけでなく、自社の建物構成と利用規模を同じ条件で比較する必要があります。ここでは、選定時に判断が分かれやすいポイントを整理します。
大規模な個別要件がある場合はパッケージ型・フルスクラッチも比較します
現在、具体的な機能や料金を確認しやすい入退室管理システムはクラウド型が中心です。数千ゲート規模の運用や独自の非常時解錠ロジックが必須なら、eX-SGⅡのような設置型システムに加え、個別開発やクラウドサービスと基幹システムを組み合わせるハイブリッド構成も比較してください。
おすすめ製品は最優先課題によって変わります
全企業に共通する1位の製品はなく、単一拠点のコスト重視、複数拠点の一元管理、大規模施設の高信頼性など、最優先課題に合う製品がおすすめです。まず必須要件で2〜3製品へ絞り、同じシナリオのデモまたはPoCで比較してください。
料金は数年単位の総保有コストで比較します
同じ扉数、拠点数、オプション条件を各社へ提示し、数年単位の総保有コストで比較します。初期費用と月額費用だけでなく、工事費、保守費用、ICカードの発行費用、解約時のデータ出力にかかる費用も含めてください。
まとめ

入退室管理システム市場では、単一拠点向けの後付け型スマートロックから、複数拠点を一元管理するクラウド基盤、数千ゲート規模に対応する大規模施設向けシステムまで、性格の異なる製品がそろっています。今回紹介した5製品にも、認証方式や対応規模、料金体系に明確な違いがあります。
課題診断から2〜3製品へ絞り込みます
単一拠点のコスト重視、複数拠点の一元管理、大規模施設の高信頼性のうち、最優先課題を決めます。そのうえで認証方式、エリア権限、ログ監査、他システム連携、料金を同じ質問で比較すれば、広告的な順位に左右されず候補を絞れます。
最後は実機PoCで確認します
資料上の機能数ではなく、自社の扉・ネットワーク環境で認証から解錠までを一気通貫で処理できるかが重要です。関係者で例外処理まで試し、削減効果と残る運用工数を測ったうえで決定してください。既製のクラウド製品では独自のエリア権限設計や基幹システム連携を吸収できない場合、個別開発やハイブリッド構成も検討対象になります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、製品比較で明らかになった不足機能の整理や、自社の建物設備に合わせたシステム構築を支援しています。
▼全体ガイドの記事
・入退室管理システム開発の完全ガイド
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
