農業のシステムの選定ポイント/選び方/種類

農業システムは、知名度や機能数ではなく、自社で最も負担の大きい工程に合うかで選びます。課題を先に特定し、比較条件をそろえて、自社に合う候補を2〜3製品まで絞り込みます。

種類、評価軸、SaaSなどとの違い、RFPからPoCまでの進め方を整理します。次のガイドで全体像も確認できます。

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・農業のシステム開発の完全ガイド

農業のシステム選定前に整理すべき自社の課題

カタログを比べる前に、どの業務で時間や記録漏れが起きているかを整理しておきます。課題を一文で表せるようになると、候補に入れる製品と、優先度の低い機能を判断しやすくなります。

環境制御の手間と労働力不足

施設園芸や水田の水管理で見回りや調整に手間がかかっているなら、環境制御・ほ場管理型が候補になります。

  • 効果の目安:ほ場水管理システムで作業時間が7割以上削減された事例があります。
  • 通信条件:圃場が分散して通信が不安定だと、遠隔監視や自動制御の効果は限られます。
  • 現場の負担:移動時間、操作頻度、異常の発見時間を現場に聞き取り、比較やPoCの前後で使う数値として残しておきます。

生産履歴の記録と補助金申請の負担の切り分け

記録の追跡と補助金申請のどちらに時間がかかっているかによって、優先すべき機能は変わります。

  • 生産履歴:GAP認証や照会に備えた、作業日・圃場・担当者・資材使用量の記録。
  • 経営・補助金:種苗費、農薬費、自家消費分の扱いと、交付金処理の負担。
  • 検索性:紙の日誌から過去の記録を探す手間を把握し、履歴検索の優先度を決めます。

ポイント

自社の課題が環境制御、生産履歴、補助金のどこにあるかで、優先する機能は変わります。手間や記録漏れの発生場所を先に特定すると、候補の絞り込みが進めやすくなります。

農業のシステムの3つの種類

農業システムを環境制御・ほ場管理、生産履歴・トレーサビリティ、経営管理・補助金対応の3タイプに分けた図。
優先業務に合わせて、検討するタイプを絞り込めます。

農業システムは、環境制御・ほ場管理、生産履歴・トレーサビリティ、経営管理・補助金対応の3タイプに大別できます。

製品によっては複数の機能を備えているため、分類名だけでなく、最優先業務を標準機能で処理できるかを見ます。

環境制御・ほ場管理型

このタイプは、IoTセンサーで温湿度や日射量を取得します。取得したデータをもとに、環境制御装置と連携したり、水門を遠隔・自動制御したりします。

施設園芸や水稲で見回りや手動調整を減らしたい場合に向いています。製品によっては、ドローンや自動走行農機との連携も備えています。

生産履歴・トレーサビリティ型

播種から収穫までの作業をロットごとに記録し、JGAPやGLOBALG.A.P.などに関する帳票を出力するタイプです。

農薬の希釈倍率を計算したり、基準値超えを通知したりする製品もあります。特に、輸出や大手小売との取引を見据える生産者に適しています。

経営管理・補助金対応型

このタイプは、農業簿記に沿った会計、規模別の費用対効果の把握、補助事業の実績データの出力を支援します。

複数の補助事業を申請する経営体で検討されます。たとえば、みどりの食料システム戦略推進総合対策や農地利用効率化等支援交付金などがあります。

製品選定で比較すべき7つの評価軸

製品を比べるときは、7つの軸を共通の比較表に並べ、各社に同じ質問をします。回答とデモの確認結果をそろえておくと、印象に左右されず、自社との適合度を比べられます。

業務範囲・ハードウェア耐久性・機器連携の確認

最初の3軸では、必要な業務が標準機能にあるか、屋外機器が圃場の環境に耐えられるか、既存機器と必要なデータを連携できるかを確かめます。

「連携可能」と説明されたら、取り込める項目や通信方式まで質問しておきます。

  • 業務範囲:環境制御、ほ場管理、生産履歴、収穫予測、経営管理の対応範囲
  • 耐久性・通信:落雷、砂埃、湿度、農薬への耐性と圏外時の動作
  • 機器連携:既存の農機・センサーと連携できるデータ項目

山間部や広い水田では、圏外でも計測値を一時保存できるかどうかが、運用を左右します。そこで、デモでは通信を切り、復旧後にデータが欠けずに同期されるかも確かめます。

GAP対応・操作性・TCO・セキュリティの確認

残る4軸では、まずGAP対応と操作性を確かめ、そのうえで料金とデータの扱いを見ます。料金は、初期費用と月額料金だけでなく、課金単位や通信費、機器の保守費まで含めて比べます。

  • GAP対応:必要な記録項目と帳票を出力できるか
  • 操作性:炎天下や手袋をした状態でも現場で扱いやすいか
  • 料金・情報保護:課金単位や保守費を含む総額、権限管理、バックアップ、契約終了後のデータ返却

採点方法と確認手段もそろえておきます。「連携可能」が手動CSVなのか、API自動同期なのかで作業量は異なるため、デモで実演を見た項目と、仕様書だけで確かめた項目は分けて記録してください。

ポイント

迷ったときは、7つの軸を共通の比較表に並べ、各社の回答とデモの確認結果をそろえて比べます。通信や操作性は、実際の圃場での確認も欠かせません。

SaaS・個別開発・ハイブリッドの選び分け

ハイブリッド構成で、SaaSが環境監視・生産履歴を担い、個別開発が収穫見込みと出荷・物流計画の連携を担う図。
標準業務と独自業務を層ごとに分けて考えられます。

標準的な環境制御や履歴管理を早く導入し、制度変更への対応を任せたい場合は、SaaSが候補になります。

独自の栽培ロジックや複雑な産地・物流連携が必要なら個別開発を、標準業務と独自業務を分けられるならハイブリッドを検討します。

SaaSと個別開発の判断基準

SaaSは導入を始めやすく、環境モニタリングやGAP帳票のような共通機能の更新をベンダーに任せやすい方式です。一方で、通信環境やセンサーの互換性など、圃場ごとの条件を事前に確かめる必要があります。

個別開発なら、独自の輪作ロジックや産地間連携に合わせられます。ただし、要件定義や機器保守を担う体制も求められます。そのうえで、独自機能への投資が事業上必要かを基準に選びます。

ハイブリッドの責任分界と役割分担

ハイブリッドでは、環境監視や生産履歴など標準化しやすい業務をSaaSに任せます。さらに、収穫見込みと出荷・物流計画の連携だけを個別開発する構成が考えられます。

SaaSと基幹システムのどちらを正とするか、障害時にどう補完するかを決めておきます。API連携費は対象や項目数によって変わります。そこで、入出力と例外処理を示したうえで、開発会社に見積もりを依頼します。

ポイント

独自機能への投資が事業上必要かを基準に選びます。ハイブリッドでは、SaaSと基幹システムのどちらを正とするかも決めておきます。

比較表・RFPとデモ・PoCの進め方

RFPの圃場条件と機能・運用、PoCの現場条件と合格基準を整理し、現場条件に1〜3カ月の目安を添えた図。
提案依頼の条件と現地検証の基準を対応させています。

比較表とRFPには、自社の圃場条件と満たすべき合格条件を書いておきます。PoCでは、説明を聞くだけでなく、実際の圃場で通信、機器の耐久性、現場の操作性を確かめます。

RFPに記載する圃場条件と非機能要件

各社の提案を同じ土台で比べられるよう、圃場条件と必要な機能・非機能要件をRFPにそろえて書きます。

  • 基本条件:対象品目、圃場数、面積、既存機器、通信環境、解決したい課題
  • 機能と運用:GAP要求、収穫予測、帳票、機器耐久性、オフライン保存、権限・保管・出力形式
  • 優先順位と拡張:「必須・望ましい・将来」に分けて、優先圃場と将来の面積、拡張費用を示します。

実際の圃場でのPoCの検証内容

PoCでは、実際の圃場で通常時と問題発生時の動作を試し、導入後の運用に耐えられるかを見ます。

  • 現場条件:1〜3カ月を目安に、通信、悪天候時の動作、農機連携、操作性を試します。
  • 記録確認:GAP帳票を出力し、必要な項目がそろうかを確かめます。
  • 合格基準:作業時間や記録漏れの改善を測ったうえで、天候変化・誤作動・通信断からの復旧も記録します。

ポイント

比較表とRFPには圃場条件と合格条件を書きます。PoCでは実際の圃場で通信、耐久性、操作性を試し、導入後の運用に耐えるかを判断します。

農業のシステム選定の失敗を避ける方法

よくある失敗は、機能一覧とデモ画面だけで比べ、実際の圃場での通信状況やハードウェアの耐久性、高齢の生産者による操作性を確かめないことです。

発注側では、導入の目的と責任者を先に決めておき、現場や経営管理の担当者の意見、必要に応じてJAや取引先の視点も選定に反映します。

多機能さと知名度への偏り

機能数の多さよりも、自社の最重要工程に標準機能で対応できるかを確かめます。また、機能を絞った製品でも、課題に合えば教育や定着の負担を抑えられます。

まず、必須要件を満たさない候補を外し、残った製品をTCOと現場での使いやすさで比べます。候補製品は農業のシステムのパッケージ・クラウド製品一覧でも確認できます。

システム外の運用ルールと責任者

導入後に記録とサポートが途切れないよう、担当者と障害時の手順を決めておきます。

  • 記録と障害対応:入力担当・時期、通信障害時の代替記録、機器故障時の連絡先
  • 教育と支援:高齢の生産者への説明担当と、繁忙期のサポート窓口
  • 効果と展開:作業時間と記録漏れを測ったうえで、協力を得やすい圃場から一作期試し、関係者の意見を次の展開に反映します。

ポイント

機能一覧とデモだけで決めず、導入の目的と責任者を先に定めます。導入後の記録担当や障害時の手順も、システムの外で決めておく必要があります。

農業のシステム導入前に確認しておきたいポイント

候補を絞ったあとは、対象圃場の数だけでなく、通信環境、ハードウェアの耐久性、現場での操作性まで確かめます。

比較表の機能欄では見えにくい条件も、事前に検証しておくと、導入後に使われなくなるリスクを抑えられます。

小規模農家の導入効果

圃場数が少なくても、収穫量予測やGAP対応の記録に多くの時間を取られている場合は、検討する価値があります。

一方で、既存の紙の日誌や表計算ソフトで無理なく管理できているなら、業務を複雑にしてまで導入する必要はありません。導入の判断は、圃場数そのものより、記録や確認にかかる手間の大きさで決めます。

通信環境が不安定な圃場への導入

製品によっては、オフライン時にセンサーデータを一時保存し、通信が回復したときにまとめて送信する機能を備えています。

導入前に、自社の圃場の通信状況を実際に測り、対応できる製品かどうかを確かめます。特に、山間部や離島に圃場を多く抱える経営体では、この確認を後回しにしないことが大切です。

PoCの実施範囲

1〜2圃場、可能であれば異なる条件の圃場を選んで実施すると、通信環境やハードウェアの適合性を幅広く検証できます。

管理者だけでなく、実際に作業する担当者にも操作してもらい、記録の手間や見落としが減るかを確かめます。特に、高齢の担当者が操作する場面も含めて検証しておくと、本格導入後の定着度を見極めやすくなります。

まとめ

農業のシステムの選定では、まず自社の課題が環境制御・ほ場管理、生産履歴・トレーサビリティ、経営管理・補助金対応のどこにあるかを特定します。そのうえで、対応する種類から方向性を選びます。

候補は7つの軸で比べます。業務範囲から連携までの3軸と、GAP対応からセキュリティまでの4軸を見ます。PoCでは、圃場の通信と現場の操作性を試します。

SaaS・個別開発・ハイブリッドの判断と独自業務の比重

SaaS、個別開発、ハイブリッドのどれを選ぶかは、機能数ではなく、標準化する業務と自社独自の栽培ロジックや物流連携をどこで分けるかで決まります。

既製品では複雑な輪作管理や複数産地の連携に対応できない場合、無理に業務を合わせると、現場の二重入力が残ります。

riplaの支援範囲:要件整理から連携・個別開発まで

riplaはフルスクラッチ開発の立場から、製品選定の前の要件整理、既製SaaSと基幹システムをつなぐ連携、独自業務に合わせた個別開発まで支援しています。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。