Amazon EKSのシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

Amazon EKSのシステム開発は、要件整理から定着までの6フェーズで進みます。なかでも要件整理は、後工程の前提になります。運用の責任を最初に決めておくと、業務課題の解決につながる開発になります。

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Amazon EKSのシステム開発の全体像

Amazon EKSのコントロールプレーン管理と、利用企業が担うネットワーク・IAM、アプリ可用性、データ保護を4層で示した図。
Auto Modeでもアプリとデータ保護の担当範囲は残ります。

Amazon EKSのシステムは、VPC、サブネット、IAM、EKSクラスター、ワーカーノードを組み合わせて構成します。そのほか、ロードバランサー、コンテナレジストリ、データベース、監視も必要になります。

AWSがKubernetesのコントロールプレーンを管理しても、アプリの可用性やデータ保護は利用企業と開発会社が設計します。権限や監視、障害対応の設計も、この範囲に含まれます。

EKSで担当する範囲とAWSが担当する範囲

AWSと利用企業の分担は次のとおりです。押さえておくと、運用設計で決める範囲が見えてきます。

  • AWSの担当:EKSのコントロールプレーンの管理
  • 利用企業の担当:ネットワーク、IAM、実行方式、アプリ設定の決定
  • データ保護:バックアップ、保存場所、復旧手順を利用企業が担います。
  • Auto Mode:一部のインフラ管理をAWSへ委譲できます。

AWS側の例として、KubernetesのAPIサーバーやetcdがあります。一方、利用企業側では、VPCと通信経路、クラスターへのアクセス、ノードとPodのどちらで動かすかが対象になります。

コンテナイメージやアプリのリソース設定も、利用企業側で決めます。加えて、データベースやファイルのバックアップ、個人情報の保存場所、復旧手順も利用企業側の責任になります。

2026年時点のEKS Auto Modeでは、ノード、ロードバランサー、Podネットワーク、ブロックストレージなどが対象になります。ただし、Auto Modeでも、コンテナ内のアプリ、アプリの可用性、ログやメトリクスの設計は利用者が担います。VPCとクラスターの設定も対象です。

自動化の範囲を契約書と運用設計書に書いておかないと、「AWSがすべて面倒を見る」という誤解が障害対応の場面で表面化します。出典はAWS「Automate cluster infrastructure with EKS Auto Mode」で、2026年8月に確認した情報です。

ECSやLambdaではなくEKSを選ぶ判断基準

ECSやFargate、Lambdaと比べるときは、サービスの特性に応じて違いを見ます。そのうえで、EKSを採用する業務上の理由を整理し、業務課題に合っているかを確かめます。

  • ECSやFargate:単純なWeb APIや少数のコンテナが候補になります。
  • Lambda:イベント時の処理や短時間のバッチが候補です。
  • EKS:Kubernetes標準機能や既存資産を活用する場合に検討します。
  • 採用判断:業務課題とPoCの測定結果をもとに決めます。

ECSやFargateは、構築と運用を簡素にできる場合があります。一方、EKSは複数のマイクロサービスを同じ制御方式で運用したい場合に候補になり、DeploymentやServiceなどのKubernetes標準機能を使う場合も選択肢になります。

既存のKubernetes資産をAWSへ移す場合や、高度なスケジューリング、GPUを含むワークロードを扱う場合にも、EKSを検討対象に入れます。

採用会議では、EKSを使うこと自体より、EKSで解決したい業務課題を先に決めます。課題の例には、サービスごとの独立デプロイ、ピーク時のPodとノードの自動拡張、複数環境の宣言的な再現があります。

代表サービスを一つ選んでPoCを行い、デプロイ時間や障害復旧時間を測ります。担当者の作業時間と1リクエストあたりのコストも測ります。こうして測った数値は、採用の妥当性を経営層へ説明しやすくなります。

ポイント

AWSへ委譲された範囲以外のアプリやデータ保護、権限、監視は、利用企業と開発会社が担います。担当範囲を契約と運用設計書に書いておくと、障害時の食い違いを防げます。

Amazon EKSのシステム開発の進め方

Amazon EKS開発の要件整理、サービス選定、設計・開発、テスト、本番稼働・運用定着を順に並べた工程図。
次工程へ進む前に、各担当者が終了条件を確認します。

Amazon EKSの開発は、要件整理、サービス選定、設計開発、テスト、稼働、定着の6フェーズで進めます。各フェーズの終了条件を決めておくと、抜け漏れを管理できます。

次の工程へ進む前には、業務とアプリ、インフラとセキュリティの各担当者が確認します。作業は要件整理から運用定着まで、六つの段階に分けて進みます。

  1. 要件整理で業務と非機能要件を決める
  2. EKSの利用方式と周辺サービスを選定する
  3. ネットワークからアプリまで設計・開発する
  4. 機能・性能・障害・セキュリティをテストする
  5. 移行計画を実行して本番稼働する
  6. 運用を定着させて継続改善する

フェーズ1:要件整理と業務・非機能要件の決定

要件整理では、開発対象と完了条件を揃えておくことが後工程の前提になります。

  • 対象の洗い出し:アプリと依存関係、データと外部連携の一覧
  • 非機能要件:可用性、性能、セキュリティを数値や条件で定める
  • 完了条件:運用、受け入れ試験、移行対象を文書に残す

このほか、使用言語とデータベースの種類を確かめます。ファイル保存方式、バッチ実行時間、ピークアクセスも把握し、個人情報の有無も確認します。移行する場合は、OS依存の処理や固定IP、ローカルディスクを調べ、手作業のリリース手順も洗い出します。

可用性や性能は数値で合意します。たとえば、月間稼働率、障害発生から検知までの時間、通常時とピーク時の同時接続数などです。RTOを何時間、RPOを何分にするかも、ここで決めておきます。

セキュリティでは、保存地域、暗号化、監査ログの保存期間を定めます。管理者の多要素認証や、開発環境から本番環境へのアクセス経路も決めます。業務側の判断を先送りすると、後工程で作り直しが生じます。

完了条件の文書には、サービス一覧、データ分類、SLOを含めます。RTOとRPO、運用時間帯、オンコール担当も書き残します。構成図があっても、運用の判断に必要な情報は補えません。

受け入れテストの合格条件、移行する対象と移行しない対象も記載します。そのうえで、発注者が承認できる状態に整えます。

フェーズ2:EKSの利用方式と周辺サービスの選定

要件に合う方式と運用できる周辺サービスを選ぶため、実行方式、周辺サービス、追加機能の3項目を比べます。

  • 実行方式:要件に応じて、EC2、Auto Mode、Fargateなどから選びます。
  • 周辺サービス:AWSサービスとCI/CD、IaCの運用性を比べます。
  • 追加機能:Capabilitiesや制御プレーン階層を、必要性と負荷で判断

DaemonSetやGPUを使う場合、特殊なネットワーク設定を組む場合、ノードへのカスタムソフトウェアを入れる場合には、EC2方式やマネージドノードグループごとの制約があります。

ノード管理を減らしたい標準的なコンテナワークロードなら、Auto Modeが合います。短時間の処理や常時稼働しないPodには、Fargateを使えます。

周辺サービスの候補は、ECRとALBまたはNLB、EBSまたはEFSです。データベースはRDSやDynamoDBを候補にします。運用面では、CloudWatch、CloudTrail、Secrets Managerも確かめます。

CI/CDは、GitHub Actions、AWS CodePipeline、Argo CDなどから選びます。Infrastructure as Codeは、Terraform、AWS CDK、CloudFormationなどが候補になります。eksctlも候補です。

既存の社内標準と運用可能性を基準に選びます。誰が更新するか、障害時にどのログを見るか、ロールバックの手順はどうするかも確かめます。

2026年時点では、EKS Capabilitiesも選択肢になります。対象はArgo CDなどのマネージド機能で、AWS Controllers for KubernetesやKubernetes Resource Orchestratorも含まれます。

Capabilitiesを導入する際は、従来のアドオンを自社で管理する場合と見比べます。比べる観点は、料金と権限、障害の切り分け、将来の移行性です。

大規模AIやHPCで、コントロールプレーン性能がボトルネックになる場合は、Provisioned Control Planeの階層を比べます。2026年3月、AWSはProvisioned Control Planeの99.99%のSLAと8XL階層を発表しました。ただし、一般的な業務システムには必要とは限らないため、採否は負荷試験で決めます。

出典はAWSの「Amazon EKS announces 99.99% Service Level Agreement and new 8XL scaling tier」で、2026年3月に確認した情報です。

フェーズ3:ネットワークからアプリまでの設計・開発

基盤とアプリを一貫して引き継げるよう、設計・開発では、両方の観点を押さえます。

  • ネットワーク:VPCやサブネットの構成、経路と公開範囲の設計
  • アクセス管理:担当別の権限と、PodのIAM権限の分離
  • 開発とリリース:コンテナイメージとIaC、配布方式と納品物の整備

基本設計では、複数のアベイラビリティゾーンにまたがる構成を検討し、パブリックとプライベートのサブネットを分けます。NAT Gatewayやセキュリティグループを設計し、ルートテーブルとクラスターエンドポイントの公開範囲も決めます。本番データベースはプライベートサブネットに置き、ALBだけを外部に公開する構成が一般的です。

社内向けシステムや閉域接続がある場合は、利用者の経路も含めて設計します。管理者と開発者、運用担当、CI/CDのサービスアカウントは分けます。新規クラスターでは、aws-auth ConfigMapに依存せず、EKS access entriesとIAMロールを検討します。

PodからS3やSQSなどを呼び出すときは、ノードの権限を流用しない設計にします。KubernetesのサービスアカウントにEKS Pod Identityで最小限のIAMロールを関連付けます。さらに、EKS Pod Identityはサービスアカウント単位で権限を分け、CloudTrailによる監査にもつなげられます。

出典はAWSの「Learn how EKS Pod Identity grants pods access to AWS services」で、2026年8月に確認した情報です。

開発では、Dockerfileを軽量化してECRへイメージを登録し、マニフェストやHelmチャートはGitで管理します。IaCで開発、ステージング、本番の差分を明示します。AWSコンソールを手動で変更しないルールも設けます。

リリース方式は、一括切り替えのほか、ブルー/グリーンやカナリアも比べます。ロールバックの条件は、先に定めておきます。

設計書、IaCコード、マニフェストに加えて、監視定義とRunbookも納品物に含めます。こうすると、開発会社から運用チームへ引き継げる状態が整います。

フェーズ4:機能・性能・障害・セキュリティのテスト

本番での不具合や復旧の遅れを防ぐため、テストでは幅広い領域を確かめます。

  • 機能・性能:異常系、負荷、スケーリングの確認
  • 障害対応:検知から復旧までをRunbookに沿って訓練します。
  • セキュリティ:権限とネットワーク、イメージ、監査ログの確認

想定ケースには、Pod再起動、ノード入れ替え、依存サービスのタイムアウトがあります。さらに、メッセージ重複やDB接続数の上限も含めます。

負荷条件は、通常時とピーク時、急なアクセス増です。スケールイン時や複数AZの一部停止時も想定します。HPAとCluster Autoscaler、Karpenter、Auto Modeのノード追加が、設定したSLOの時間内に完了するかを測ります。

障害訓練ではALBの異常、誤ったコンテナイメージ、IAM権限不足を題材にします。ノード・AZ障害やデータベース復元も確認します。

訓練は、一次判断から始めて、エスカレーション、ロールバックを経て、利用者への告知まで順に進めます。誰が何を見て判断したかも記録しておき、その記録は定着フェーズの教育教材として使えます。

セキュリティの対象は、IAMの過剰権限とクラスターAPIへの経路、Security Group、ネットワークポリシーです。Secret、ECRイメージの脆弱性、Pod Security Admissionに加えて、CloudTrailやコントロールプレーン監査ログも対象です。

AWSのEKSセキュリティガイドは、IAMやPod、ランタイムなどを分けて評価しています。ネットワークとイメージ、暗号化とインシデント対応も、領域ごとに分けられています。出典はAWS「Best Practices for Security – Amazon EKS」で、2026年8月に確認した情報です。

フェーズ5:移行計画の実行と本番稼働

安全に本番へ切り替えるには、移行方式と切り戻し条件を先に決めておく必要があります。

  • 移行方式:一括移行か並行稼働かを、条件に応じて決める
  • 切り替え計画:同期、整合性確認、旧環境への復帰手順を定めます。
  • 本番判定:監視指標と切り戻し基準の設定

移行方式は、データ量と更新頻度、停止可能時間を踏まえて決めます。外部連携の切り替え順も、考慮に入れます。

手順は時系列で書きます。初回移行、差分同期、切り替えを順に並べ、整合性確認と旧環境への戻し方も含めます。マスタや設定値は、業務部門の確認項目と承認者を明確にします。

本番前には、変更凍結の期間、リリース担当、監視開始時刻を定めます。問い合わせ窓口と、障害時の意思決定者も決めておきます。

ブルー/グリーン方式では、切り替え後のメトリクスを定義します。たとえば、エラー率やレイテンシー、キュー滞留、データ更新件数などです。基準を超えた場合には、旧環境へ戻す手順も確かめます。

公開事例では、AdaがEKS上のブルー/グリーン戦略で、クラスター更新を最大5か月から5日へ短縮し、コンピュートコストを15%削減したと報告しています。同社は最大700ノードのクラスターを運用しており、この数値を小規模案件の成果として約束することはできません。

この事例は2024年に公開されたもので、出典はAWSの「Achieving Near-Zero Downtime and Powering Generative AI」です。続きは「Using Amazon EKS with Ada」です。

フェーズ6:運用の定着と継続改善

稼働後も安定して改善を続けるため、定例確認と更新、担当者教育を回していきます。

  • 定例確認:SLOや復旧時間、デプロイ頻度、利用料の推移
  • 更新管理:脆弱性やバージョン、アドオン、ノードの見直し
  • 運用教育:障害対応や復元の訓練、Runbookの更新

定例では、エラーバジェットも確かめて、クラスターの稼働状況を把握します。脆弱性対応と各コンポーネントの更新計画は、月次または四半期で見直します。

標準サポートの終了後は、拡張サポートの料金が発生します。そのため、アップグレードを先送りしない年間計画が必要です。

運用担当者には、kubectl、ログやメトリクスの見方、Pod再起動とロールバックの判断を教育します。権限申請、バックアップの復元、AWSサポートへの問い合わせ方法も教育の対象に入ります。理解が不十分だと、障害時にExcelや手作業へ戻ることがあります。

引き継ぎを一度の説明会で終わらせず、障害訓練と定期的なRunbook更新まで契約に含めると、現場に運用が定着しやすくなります。

ポイント

業務側の判断を先送りすると後工程で作り直しが生じるため、各フェーズで決めるべきことは前倒しで決めるのが目安です。終了条件を満たしたかを基準に、次の工程へ進むかを判断します。

Amazon EKSのシステム開発の費用相場とコストの内訳

費用は、開発会社に支払う初期開発費と、AWSの月額利用料、稼働後の保守運用費に分けて考えます。

EKSのクラスター料金は、全体の一部にすぎません。実行基盤のEC2またはFargateとEBSを確認し、ALBやNLB、NAT Gateway、パブリックIPv4の料金も見ます。データ転送、CloudWatch、データベースの費用も発生します。

金額は、要件やリージョン、為替によって変わる目安です。発注前には、AWS Pricing Calculatorと開発会社の詳細見積もりを併用します。

AWS利用料の計算方法とクラスター以外の費用

AWS利用料は、クラスター料金に加えて、追加機能や管理方式も含めて見積もります。

  • クラスター料金:標準サポートと拡張サポートで単価が異なります。
  • Auto Mode:EC2費用に管理料金が加わります。
  • 追加機能:Capabilitiesや制御プレーン階層も課金対象です。

AWS公式料金では、標準サポート中のEKSクラスターは0.10 USD/クラスター時間です。拡張サポート中であれば、0.60 USD/クラスター時間になります。

730時間を1か月とし、1 USD=150円と仮定すると、標準サポートは約1.1万円、拡張サポートは約6.6万円です。

これはコントロールプレーンだけの料金です。ノードやストレージ、ロードバランサーのほか、ネットワークとログも別途必要です(出典:AWS「Amazon EKS pricing」、2026年8月確認)。

AWS公式のAuto Mode例は、米国西部オレゴンで複数種類のEC2を使う構成です。その場合、EC2料金は月1,046.82 USD、Auto Mode管理料金は月125.62 USDです。

合計は約1,172 USDです。ただし、標準のEKSクラスター料金やその他のAWSサービス料金は別です。

Auto Modeはノードのパッチや入れ替えの負担を減らせる一方、管理料金が発生します。そのため、手動管理の人件費とAWS請求額を合算して比べます。

EKS Capabilitiesでは、Argo CD、ACK、KROなどの基本料金と、管理対象リソースの時間料金が発生します。

大規模クラスターでProvisioned Control Planeを使う場合、階層料金が標準料金に加算されます。追加サービスごとに、料金と責任範囲を更新します。運用工数や停止時の影響も見直します。

初期開発費の目安と規模・移行難易度による違い

開発費は規模によって幅が大きいため、リサーチノートの目安を区分ごとに示します。

  • 学習用・小規模PoC:100万〜300万円、1〜2か月が目安です。
  • 標準的な本番基盤:500万〜1,500万円、3〜6か月が目安です。
  • 既存システム移行:1,500万〜5,000万円、6〜12か月程度が目安です。
  • 大規模案件:条件により5,000万円〜1.5億円以上の可能性があります。

学習用または小規模PoCは、単一サービス、開発用クラスター、最低限のCI/CDを想定します。本番SLA、高度な監視、データ移行は含みません。

標準的な本番基盤は、2〜3AZの構成と、IAMとRBAC、ECRを想定します。ALBやマネージドノードも含みます。この想定には、ログとメトリクス、バックアップ、デプロイ手順も入ります。

既存システムのコンテナ化と移行では、複数サービス、データ移行、段階リリースが加わります。性能試験、障害訓練、運用引き継ぎも費用に影響します。金融や医療に近い統制がある案件や、マルチアカウント、マルチリージョン、数十サービス以上の案件では、規模が大きくなります。

金額は、クラウド基盤やアプリ改修、移行を含む推定レンジです。テストや教育も含みますが、EKSそのものの定価ではありません。

保守運用費とTCOの考え方

継続費用は保守の内容と運用方法で変わるため、初期費用とは分けて確認します。

  • 保守費:開発費の10〜20%程度を仮置きする方法がある
  • 運用内容:監視やオンコール、更新、性能改善などの範囲で変わる
  • コスト管理:冗長性を保ったうえで、運用工数や機会損失も含めたTCO

24時間365日の監視、夜間オンコール、脆弱性対応を含むかどうかで、費用は変わります。Kubernetesのアップグレードや性能改善、AWS請求の最適化も費用に影響します。AWS利用料と保守費は、別の請求項目として分けます。

開発会社の作業時間と対応時間帯、月次レポート、緊急対応の単価を確かめます。

不要なクラスターを避け、開発環境を夜間停止し、適切なリソース要求を設定します。ログ保存期間を定め、SpotやSavings Plansも要件に合わせて検討します。

ただし、コスト削減のために冗長化やバックアップを削ると、障害時の損失が増えます。復旧時間、開発者の運用時間、障害による機会損失も含めてTCOで比べます。

ポイント

金額を比べるときは、初期開発費、AWS利用料、保守運用費を分けて並べ、規模と運用範囲の前提がそろっているかを見るのが目安です。前提が違う見積もりは、単純に比べられません。

Amazon EKSのシステム開発で見積もりを取る際のポイント

Amazon EKSの見積もり前に揃えるシステム情報、非機能要件、見積もり条件を3枚のカードで示した図。
前提を揃えると、各社の金額差を範囲の違いから読み解けます。

EKSの見積もりは、クラスター構築費を一項目として捉えます。要件定義とアプリのコンテナ化、AWS基盤とCI/CD、監視とデータ移行を、工程ごとに分けて見るのが基本です。

テスト、教育、保守も含め、前提条件と対象外を明示してもらいます。金額差が技術力によるものか、作業範囲によるものかを説明できる状態にします。

見積もり前に渡すサービス数と非機能要件

各社が同じ前提で見積もれるよう、システム情報と非機能要件を揃えて渡します。

  • システム情報:構成やサービス、データ、連携、負荷、環境数
  • 非機能要件:個人情報・機密データ、希望リージョン、RTO・RPO、稼働時間
  • 見積もり条件:移行範囲、対応時間、成果物、完了条件の明記

既存システムの構成図とリポジトリ一覧を渡します。利用言語やデータベース、ピーク負荷も示し、想定ユーザー数やデータ量、環境数も提示します。

許容停止時間、監査ログの保存期間、社内の承認フローも、見積もり時に伝えます。既存アプリをそのままコンテナ化するか、マイクロサービスへ分割するかで、アプリ改修費は変わります。監視では、平日日中の通知確認と、24時間365日の一次対応・復旧支援のどちらかで作業量が異なります。

複数社の比較と運用実績の確認

提案の範囲や支援体制を同じ条件で照らし合わせ、運用まで任せられるかを見ます。

  • 見積もり範囲:同じ要件と分類で各社に回答を求める
  • 実績と体制:技術領域、類似事例、責任分界の確認
  • PoC条件:成功条件、期間、成果物、追加費用

技術領域では、EKS・Kubernetes構築、AWSネットワークとIAM、アップグレードを確かめます。可観測性やセキュリティ、FinOpsも見ます。

相見積もりでは、同じ要件テンプレートを渡し、EKS構築とアプリ移行の費用を同じ分類で回答してもらいます。テスト、運用、教育も、同じ分類に入れます。

PoCの成果物が商用化後に再利用できるか、PoC後の追加費用も確認します。

障害時の体制と内製化支援も確かめます。AWS認定や会社規模だけでなく、サービス数や業務特性に近い事例を見ます。

クラスター構築とアプリ改修を別会社が担当するときは、責任分界を明確にします。

AWSのMiro事例では、EKS移行にInfrastructure as Codeを組み合わせています。Karpenter、KEDA、Secrets Managerも導入し、運用のセルフサービス化を進めました。

構築後に誰が使い続けるかまで提案できるかを判断する材料になります(出典:AWS「Miro Accelerates Hypergrowth with Amazon EKS」、2026年8月確認)。

見積もりに書くリスクと対象外

契約後の追加費用や引き継ぎ漏れを避けるため、リスクと納品範囲を見積もりに書いておきます。

  • 追加費用の条件:前提と、変更時の費用・納期
  • 納品範囲:設計書、IaC、CI/CD、監視、復旧資料を定めます。
  • 契約終了時:所有者、権限の返却、引き継ぎ方法

追加費用につながりやすいのは、サービス数の増加、既存アプリの改修、データ品質のばらつきです。外部API変更、性能不足による再設計、監査指摘への対応も含みます。

「状況により別途」といった書き方は避けてもらいます。要件変更の承認者も、契約前に決めます。

納品範囲には、設計書、IaC(TerraformやCDKなど)、Dockerfileを含めます。Kubernetesマニフェストや、CI/CD設定も対象です。

監視ダッシュボードとアラート定義、バックアップと復元手順、障害対応Runbookも対象です。教育資料も対象に入ります。

ソースコードがあっても、運用担当者が復旧できない場合があります。運用担当者が復旧できなければ、システムが定着したとはいえません。

AWSアカウントとリポジトリの所有者、アクセス権の返却、契約終了時の引き継ぎ方法も確かめます。

ポイント

見積もりを比べる前に、各社が同じ前提で回答できる状態をつくり、対象外と追加費用の条件を明示してもらうのが目安です。金額差は、前提がそろっているかで読み解けます。

Amazon EKSのシステム開発でよくある質問

Amazon EKSの開発でよくある質問に答えます。採用判断、期間、AWS利用料と保守の関係を押さえておくと、社内稟議や開発会社への相談を進めやすくなります。

ECSやLambdaではなくAmazon EKSを選ぶべきですか?

複数のマイクロサービスを扱う場合や、Kubernetes標準の運用が必要な場合、既存資産や高度なスケジューリングを生かしたい場合には、EKSが候補になります。

単純なコンテナ実行やイベント処理であれば、ECSやLambdaの方が運用負荷と費用を抑えられる場合があります。

代表サービスのPoCでは、デプロイやスケール、障害復旧を測ります。権限と月額費用も確かめます。EKSで解決したい課題を明確にしてから決めます。

Amazon EKSのシステム開発にはどのくらいの期間がかかりますか?

小規模な学習用またはPoCは1〜2か月、標準的な本番基盤は3〜6か月が目安です。

既存システムのコンテナ化と移行を含む場合は6〜12か月が目安です。金融や医療に近い統制、マルチリージョン、数十サービス以上では12〜24か月以上になる可能性があります。

アプリ改修やデータ移行、性能試験の有無で、期間は変わります。利用部門の受け入れやセキュリティ審査の有無も、期間を左右します。工程ごとの完了条件で計画を立てます。

EKS Auto Modeなら運用担当者は不要になりますか?

運用担当者は必要です。Auto Modeでは、ノードの作成やパッチ、スケールに加え、ロードバランサーやストレージの管理もAWSへ委譲できます。

アプリの可用性やコンテナイメージ、権限は、利用企業に残ります。監視やネットワーク、データ保護、障害時の業務判断は、利用企業が引き続き担います。自社と開発会社、AWSの責任範囲は、責任分界表に記載します。

Amazon EKSならセキュリティ監査にも自動で対応できますか?

EKSを採用しても、自社システムの監査対応は残ります。IAMの最小権限やアクセスエントリ、Pod Identityやネットワーク分離を、自社の規程に結び付けます。

イメージスキャンやSecretの暗号化、監査ログを定めます。バックアップと脆弱性対応、インシデント手順も決めます。

監査証跡、保存期間、レビュー担当は、要件整理の段階から決めます。テストでは、実際にログを取得できるかも確かめます。

既存のオンプレミスや仮想マシンからEKSへ移行できますか?

移行は可能です。ただし、アプリがOSや固定IP、ローカルファイルに依存していないかを調べます。特定ミドルウェアや長時間のセッションへの依存も確かめます。

コンテナ化とデータ同期、外部連携の切り替えを段階的に計画します。性能試験やロールバックも含め、すべてを一度に変更しない方法が安全です。

移行前に代表的なサービスを一つ選んでPoCを行い、移行できない依存関係を洗い出します。

まとめ:Amazon EKSのシステム開発は運用定着までの設計

Amazon EKSの開発は、業務課題を解決しながら、安全に運用できる仕組みを作るプロジェクトです。

要件整理では、サービスとデータ、SLO、RTOとRPOを決めます。責任分界も、この段階で明確にします。ECSやLambdaと比較し、EKSを選ぶ理由をはっきりさせます。

その後は、方式選定に続けて、ネットワークと権限の設計、アプリ開発へ進みます。各種テストと段階移行を経て、最後は教育へつなげます。

採用判断の基準となる成果指標

費用の目安は、PoCが100万〜300万円、本番基盤が500万〜1,500万円、既存システム移行が1,500万〜5,000万円です。改修範囲とサービス数、移行の有無で変わり、統制や運用時間も影響します。

AWS利用料は、EKSクラスターに加えて、ノードやストレージ、ロードバランサーまで見積もります。NAT Gatewayやログ、データ転送も含めます。データベースも対象です。

初期費用だけでなく、デプロイ頻度や復旧時間で採用効果を見ます。担当者の作業時間や月額TCOも、評価の材料になります。

発注前の6フェーズと成果物のチェック

発注前には、開発工程と運用に必要な成果物や作業の範囲をそろえて確かめます。

  • 工程条件:6フェーズごとの担当者、成果物、完了条件の整理
  • 運用項目:権限、復元、監視、更新、移行、訓練の見積もり
  • 定着:運用チームへの教育を含めた、現場で使える状態の確保

相談の前に、見積もりの対象外と、追加費用が発生する条件を整理しておきます。

IAMとアクセス管理、監視とオンコール体制、Kubernetesのアップグレードを、見積もりに含めます。

EKSの柔軟性を活かし、現場が使い続けられるシステムを目指します。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。