BCP支援システムの開発は、重要業務の洗い出しとRTO・RPOの設定から始めます。方式を選んだうえで要件定義とシステム開発を進め、小規模訓練から全社展開へ広げます。この順で進めると、有事に機能する仕組みにつながります。
▼全体ガイドの記事
・BCP支援システム開発の完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
BCP支援システムの全体像

BCP支援システムは、災害や感染症、サイバー攻撃、設備障害の際に使う業務システムです。電話やExcel、個人メールに分かれている情報を一か所に集め、少ない人員でも初動対応から業務復旧まで進められます。
安否確認だけでなく、復旧の優先順位、代替拠点、取引先への連絡、復旧手順までつなげる必要があります。また、BCP策定の文書作成と、有事に動く安否確認・DR基盤は混同されやすい点に注意してください。
安否確認・危機管理ポータル・DR基盤の3層
対象範囲は次の3層に分けると、必要な機能と発注範囲を整理しやすくなります。
- 安否確認・一斉通知:従業員の状況の把握と連絡。
- 危機管理ポータル:災害対策本部の情報の集約先。
- DR(災害復旧)基盤:重要業務の復旧を支える役割。
安否確認から始める企業と、基幹システムの可用性まで検討する企業とでは、開発の進め方も費用も変わります。そのため、自社がどの層まで対象にするかを最初に決めておきます。
主な機能と対象範囲
機能を通知、状況把握、対策本部、復旧・訓練の4つに分けて見ると、必要な対象範囲を洗い出せます。
- 通知:気象庁等の災害情報に連動した自動送信と、複数チャネルでの配信。
- 状況把握:従業員・拠点・設備の安否や被害の自動集計。
- 対策本部:掲示板やチャットでの連絡、タスク管理、被害報告と地図表示。
- 復旧・訓練:RTO・RPOや復旧手順、バックアップ、訓練記録の管理。
通知チャネルには、メールやSMSのほか、音声やアプリ、LINEなどがあります。未回答者への再送やエスカレーションも対象です。さらに、復旧機能では遠隔地レプリケーション、訓練機能ではDRドリルの記録まで含まれます。
介護分野では、厚生労働省の介護報酬基準に業務継続計画未策定減算が定められています。対象事業者には、計画の策定に加えて研修・訓練、周知、記録の整備も求められます(出典:厚生労働省「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」)。そのため、システムを導入しただけでは法令対応が完結しません。
BCP支援システム開発の進め方

画面一覧から着手すると、有事に必要な機能が抜けるおそれがあります。このため、重要業務の洗い出しから訓練・全社展開まで、3つの段階で進めます。
- 重要業務を洗い出し、BIA(事業影響度分析)とRTO・RPOを設定します。
- 方式を選んだうえで、要件定義とシステム開発を行います。
- 小規模訓練を行ったのち、全社訓練へ広げます。
要件定義・企画フェーズでのBIAとRTO・RPOの設定
経営層と現場で、重要業務、許容停止時間、許容データ損失を定義します。そのうえで、RTO(目標復旧時間)・RPO(目標復旧時点)と、対象拠点・人数、連絡不能時の代替手段を決めます。
RTO・RPOを先に決めておくと、冗長化やバックアップの費用を比べられます。その際、現行業務も整理しておきます。そのうえで、災害シナリオごとに、初動と判断を誰が担うか、復旧手順と証跡をどう残すかを業務フローに落とし込みます。
想定するシナリオには、地震や水害、感染症、停電、ランサムウェア、通信断を含めます。業務一覧やRTO・RPO一覧、シナリオ別対応表などを作っておくと、後工程の要件定義がぶれにくくなります。
設計・開発フェーズでの標準機能と独自機能の切り分け
機能の性質に応じて、次のように標準機能と独自機能を分ける方法があります。
- SaaS:安否確認や通知、掲示板などの標準機能向け。
- API・ローコード:拠点や人員、基幹データとの連携。
- スクラッチ開発:特殊な業務継続ロジックや、高い制御が求められる機能に限定。
すべてを自社開発すると開発期間とコストが大きく膨らむため、こうしたハイブリッド方式が現実的な選択肢になります。要件定義では、気象情報との連携や通知チャネル、通信障害時の再送、同時アクセス、管理者の代替権限を確認します。
SSOや多要素認証、個人情報の保管場所は、標準機能を使う場合も要件として固めておきます。運用面では、データと障害に関わる条件も要件に含めます。
- ログの保存期間:ログをどのくらい残すか。
- バックアップの復元:バックアップから復元できるかの確認。
- SLA:稼働や障害対応の保証水準。
- 障害時の連絡方法:障害が起きたときの連絡手段。
クラウドSaaSは短期導入と運用の負担軽減に強みがあります。一方で、IaaS・PaaS上の個別開発は連携やデータ管理の自由度が高く、オンプレミスは閉域の要件に適しています。ただし、オンプレミスは遠隔地への冗長化や更新費が課題になります。
テスト・リリースフェーズでの段階的な訓練
訓練は対象を少しずつ広げ、操作と復旧の流れを確かめます。
- 部署単位で、通知、回答、集計、指示、復旧の流れを一度通します。
- 全社訓練と災害対策本部の訓練へ広げます。
- DRドリルを行い、運用への定着を図ります。
訓練をせずにリリースすると、平時に使わない機能ほど有事に操作を誤りやすくなります。そのため、訓練後は回答率や初回通知から集計完了までの時間、未回答者の追跡状況、復旧時間をKPIとして記録し、改修につなげます。
大規模な構成では、単一リージョンへの依存を避けます。加えて、バックアップは本番環境と別のアカウントや別のリージョンに分け、定期的に復元テストを行います。
経済産業省と内閣官房国家サイバー統括室が2026年に公表したガイドラインは、委託先の役割やサプライチェーンを確認する材料になります(出典:経済産業省・内閣官房国家サイバー統括室「サイバーインフラ事業者に求められる役割等に関するガイドライン」、2026年)。
費用相場とコストの内訳

安否確認SaaSの公開料金と、独自開発・連携開発の見積もりとでは、費用の水準が異なります。公開情報の多くはSaaS単体の料金で、危機管理ポータルやDR基盤を含むフル機能の開発費の統計ではありません。
人件費と工数の目安
独自開発・連携開発の費用と期間は、構成の規模によって次のように変わります。
- 小規模MVP:300万〜600万円程度、2〜4か月程度。
- 中規模構成:600万〜1,500万円程度、4〜8か月程度。
- 大規模・高可用性:1,500万〜3,000万円以上、8か月〜1年超となる場合があります。
小規模MVP(Minimum Viable Product)では、安否通知と回答、集計、管理画面、基本的な権限までを含みます。中規模構成では、多チャネル通知と組織・人事連携を中心に想定します。拠点が増えると、画面や記録の作り込みも必要になります。
- 再送・エスカレーション:未回答者への連絡を続ける仕組み。
- 拠点別ダッシュボード:拠点ごとに状況を一覧で見る画面。
- 監査ログ:操作の記録。
大規模構成では、複数拠点や基幹連携に対応します。あわせて、BIAやRTO・RPO管理、遠隔地バックアップ、DR切替訓練、強固な権限・監査も扱います。
これらは、公開情報と一般的なSI開発工数から編集部が整理した推定の幅で、公的な市場平均ではありません。そのため、個別見積もりの代わりにはならず、予算策定の初期の目安として利用してください。
初期費用以外のランニングコスト
安否確認SaaSの公開価格には、初期費用が0〜30万円程度、月額が5,000円〜数十万円程度の幅があります。たとえば、セコム安否確認サービスの公開プランは、初期費用が13万2,000円〜26万4,000円程度です。
同サービスの月額基本料金は1万3,200円〜3万9,600円程度で、従量料金は1IDあたり22円です。一方で、300人以下向けの小規模プランには、初期費用0円、1IDあたり月額220円の設定もあります(出典:セコムトラストシステムズ株式会社公式サイト、2026年3月末時点の利用実績確認)。
初期費用以外には、次のような運用費用がかかります。
- 導入準備:要件定義とBIAの支援、データ移行、API・SSO連携。
- 利用料:SMSなどの従量費、クラウドの利用料、監視。
- 継続支援:保守や訓練の伴走。
保守費は、初期開発費の年15%前後を仮に置くと、見積もりを比べやすくなります。ただし、これは一般的な目安で、契約条件によって変わります。
価格だけでなく、平時・訓練時・有事の負荷や、RTO・RPOの達成状況、バックアップの隔離、復旧テストを含めた5年TCOで比べます。
見積もりを取る際のポイント
見積もりは金額だけでなく、各社が同じ条件で提案しているかを確かめて比べます。そのためには、RFPに条件を具体的に書き、比較の前提をそろえておきます。
要件の明確化と仕様書の準備
RFPには、比較に必要な条件を次のとおり記載します。
- 対象と災害:人数と拠点、想定するシナリオ、同時アクセス数。
- 復旧要件:重要業務ごとのRTO・RPO。
- 機能・連携:通知チャネル、人事・グループウェア・ERP。
- 運用・統制:SLA、セキュリティ、訓練、保守、納品物。
介護分野では、業務継続計画未策定減算への対応など、法令上の要件も整理しておきます。条件が曖昧なまま相見積もりを取ると、提案の前提がそろわず、比較が難しくなります。
一般的な発注スケジュールは、要件整理とRFP作成に1〜2か月、候補選定とヒアリングに1か月、提案・見積もりの比較と契約に1か月程度です(出典:安否確認・BCP支援システムのRFP作成に関する公開情報、2026年確認)。この期間は参考値で、自社の規模や既存システムの複雑さによっては、長くなることも想定しておきます。
複数社比較と発注先の選び方
同じRFPを使って、運用実績と費用を横並びで見比べます。
- 稼働実績:回答率と、実災害や訓練での実績。
- 継続性:SLA、障害時の連絡体制、データセンターの分散、復元実績。
- 連携・支援:人事やSSO、既存BCP文書とのつながり、導入や訓練、保守の体制。
- 総額と発注範囲:5年間の支払い額と委託範囲。
BCP計画の策定コンサルティングとシステム開発を別々に発注するか、一括で任せるかも、早い段階で決めておきます。デモでは画面の動作だけでなく、有事を想定したシナリオで確認します。
具体的には、通信断時の再送、管理者不在時の代替権限、大量同時アクセスの処理を試します。加えて、データ復元にかかる時間も確認します。
注意すべきリスクと対策
安否確認SaaSの公開料金を見ただけで、BCP義務への対応まで済むと誤解されることがあります。そのため、要件や運用上の懸念も把握して、対策に含めます。
- 法令対応の誤解:導入だけで義務への対応が済むという考え。
- 要件の不明確さ:必要な仕様が決まらないまま進むこと。
- 役割の分担:情シス、総務、リスク管理、現場の担当範囲が曖昧なこと。
- 運用の形骸化:連絡網が古くなり、操作にも慣れない状態。
要件定義の段階で、総務・情シス・現場の役割分担表を作り、連絡先や組織マスターの更新を業務フローに組み込みます。アンケートや掲示板、勤怠連携など、平時にも使える機能を選定基準に加える方法もあります。
契約時には、災害時のサポート体制と障害報告のルールを確認します。さらに、契約を終えるときのデータ返却や移行支援も確かめておきます。
よくある質問(FAQ)
開発の進め方について、よくある質問に答えます。
BCP支援システムは安否確認システムだけで十分ですか?
安否確認を入れても、復旧対象の優先順位や代替拠点、取引先連絡、復旧手順までは扱えません。そのため、BCP全体を支えるには足りない場合が多くあります。安否確認・危機管理ポータル・DR基盤のうち、自社に必要な範囲を先に決めておきます。
BCP支援システムの開発期間はどのくらいですか?
小規模MVPは要件定義から本番稼働まで2〜4か月程度、中規模構成は4〜8か月程度、大規模・高可用性構成は8か月〜1年超が目安です。既存システムとの連携やデータ移行によって変わるため、早めにベンダーと前提をすり合わせます。
自社開発とSaaS利用のどちらを選ぶべきですか?
安否確認、通知、掲示板などの標準機能はSaaSを使い、拠点や人員、基幹データとの連携や特殊な業務継続ロジックは独自に開発する、ハイブリッド方式が現実的です。すべてをスクラッチ開発すると期間とコストが膨らむため、標準機能と独自機能は早い段階で分けておきます。
介護・医療分野で業務継続計画未策定減算の対象になる場合、システム導入だけで対応は完了しますか?
対応の完了には、システムの導入のほかに、計画の策定や研修・訓練などが必要です。厚生労働省の介護報酬基準では、計画の策定に加えて研修・訓練、関係者への周知、記録の整備が求められます(出典:厚生労働省「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」)。システムは運用を効率化する手段として使い、計画の内容や周知・訓練の状況は別に確認します。
まとめ
重要業務の洗い出しとBIA、RTO・RPOの設定を起点に、方式選定、要件定義を経て、小規模訓練から全社訓練へと進めます。そのうえで、安否確認だけで終わらせず、復旧手順や権限、ログ、演習を受入条件に含めます。
初期費用より5年TCOと運用体制で決める発注先
安否確認SaaSの公開料金と独自開発・連携開発の見積もりでは、水準が大きく異なります。発注先は、次の2点をそろえて比べます。
- 比較条件:RFPに対象人数・拠点、災害シナリオ、RTO・RPO、連携先を記載します。SLA、セキュリティ、訓練、保守も含めます。
- 費用:初期費用だけでなく、5年間の総額での比較。
システムの完成をゴールにせず、平時の運用と定期訓練を通じて改善を続ける体制まで計画します。担当者が異動しても連絡網や手順を保てるよう、更新のルールと責任者を明確にしておきます。
▼全体ガイドの記事
・BCP支援システム開発の完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
