CADデータ管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

CADデータ管理システムの発注は、正本と要件を整理し、委託先を比べ、PoCで確かめたうえで、移行と定着へ進む流れで行うと手戻りを抑えられます。

発注する側は、要件を具体的にそろえてから委託先を比べると、各社の提案を同じ条件で見られます。

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・CADデータ管理システム開発の完全ガイド

CADデータ管理システムの全体像

PDMを中心にPLM、ERP、生産管理、MESを連携先として配置した図解
製品情報を扱うPDMから、必要な業務システムへつながります。

CADデータ管理システムは、2D図面や3Dモデル、BOMを製品単位で関連付けて管理します。そのほか、仕様書や解析結果、承認記録も対象です。

一般的には、PDM(Product Data Management)が中心になります。必要に応じて、PLMやERPと連携します。生産管理やMESと連携する場合もあります。

発注する側は、ファイル共有が目的なのか、製品情報の正本を管理するのかを、発注前に分けておきます。後者の場合は、設計変更を後工程まで伝える仕組みも検討します。

PDMとクラウドストレージの違い

両者は管理する範囲が異なるため、発注時には違いを比べて確かめておく必要があります。ファイルを保存して共有するだけで足りるのか、製品情報の関係まで管理するのかで、選ぶ方式が変わります。

  • 保存と共有:クラウドストレージは、ファイルを格納し、関係者へ渡す仕組みです。
  • 製品情報の管理:PDMは、CADの参照関係、チェックイン・アウト、世代、リリース状態、属性、承認者を扱います。
  • 設計変更の追跡:アセンブリ部品を変更したとき、関連図面やBOMへの影響を追えなければ、変更漏れが生じます。
  • 発注範囲:文書管理までか、CAD構造・製品構造まで含めるかで、製品も費用も変わります。

ITreviewは2026年7月15日にPDMカテゴリを公開しました。同カテゴリには11製品が掲載されています。

PDMは、設計図や仕様書、BOM、変更履歴などをまとめて管理する仕組みです(出典: ITreview「PDM(製品情報管理)システムのおすすめ10製品」、2026年)。

発注前に決める「正本データ」

正本データを決めるときは、登録や状態の扱い、命名、管理対象を、はっきりさせておく必要があります。

  • 正式版のルール:登録者、承認済みと作業中の区別、旧版の参照可否。
  • 識別と変更:部品番号・ファイル名の規則と、設計変更の起点の定義。
  • 管理対象:CAD、アセンブリ参照、2D図面、BOM、仕様書、CAE結果、検査記録。

図面がPC、共有フォルダ、メール添付に分かれたままでは、どれが正しいデータかを決められません。その状態で画面だけを発注しても、業務の混乱は残ります。

部品とCAD文書の関係、改訂、ライフサイクルを扱うデータモデルをRFPに含めておくと、将来のBOM連携での手戻りを抑えられます。

CADデータ管理システムの発注形態の選び方

発注形態は、クラウド型PDM・SaaS、既製パッケージ、カスタム開発の3つに分けられます。

標準で済ませる範囲と独自開発する範囲は、CADへの対応、利用者と拠点の数、移行量から決めます。そのうえで、連携や社外共有、セキュリティの条件も確認します。

クラウド型PDM・SaaSを発注するケース

クラウド型を選ぶときは、導入のしやすさと運用条件を、あわせて確かめます。

  • 導入しやすさ:サーバーの調達や初期構築を抑えられ、複数拠点や在宅から使えます。
  • 向くケース:中小企業や、1製品・1拠点で効果を試したい企業に適しています。
  • 始める機能:版管理、検索、承認、ブラウザビューア、限定的な外部共有が使えます。
  • 運用条件:CAD連携、大容量転送、工場接続、保存場所、バックアップ、終了時のデータ返却。
  • 契約前のデモ:自社CADで参照を保った登録、同時編集防止、旧版検索、期限付き共有を試す。

パッケージ導入とSI支援を組み合わせるケース

パッケージ導入では、標準機能で足りる部分と委託する範囲を分けて考えます。

  • 標準機能:版管理、ワークフロー、BOM、権限、監査ログを活用できます。
  • 導入支援:設定、データ移行、教育、連携を、導入会社に委託できます。
  • 拡張範囲:Fit to Standardで開発量と更新負担を抑えつつ、重要な設計変更やBOMを広げる部分です。

Siemensは、Teamcenterをクラウド、オンプレミス、SaaSで提供しています。同社は複数CADとの連携も案内しており、AutoCAD、Inventor、CATIA、Creo、NX、Solid Edge、SolidWorksなどが対象です(出典:Siemens「Teamcenter design management」、2026年確認)。

実機では、保管にとどまるか、構造や属性まで連携するかを確かめます。

カスタム開発を発注するケース

カスタム開発を選ぶ条件と、段階導入で決める範囲を分けて見ておきます。

  • 選定条件:既製品の不足が明確で、独自BOM、設計変更、拠点ルール、ERP・MES連携が強みなら、検討の対象です。
  • 設計範囲:正本、ライフサイクル、承認、変更影響、履歴、権限、バックアップ、障害時の継続手順。
  • 導入段階:全社PLMは一度に作らず、検索・版管理から始めて、承認・変更、BOM・ERP・MES連携へ広げます。

段階ごとに受入条件を決めます。小規模なPoCで、参照切れや重複部品、権限漏れ、移行速度を確かめてから本開発へ進むと、要件の思い込みを減らせます。

ポイント

発注形態は、クラウド、パッケージ、カスタムのどれを選ぶかを、CADへの対応や移行量から決めます。標準で足りるかどうかは、PoCで確かめてから判断します。

RFPと要件整理の準備範囲

RFPに向けた現状の棚卸し、機能要件、非機能要件、提案範囲と実機デモの4項目を示す図解
提案各社へ渡す情報を4つのまとまりに整理できます。

各社を比べるRFPには、要件を具体的に書いておく必要があります。「高機能なシステム」のような書き方では、提案の中身をそろえられないからです。

そこで、まず現状業務と管理対象、利用者、データ量を具体化します。連携先やセキュリティ、範囲、納期、予算、成果物も、各社が同じ前提で答えられる形に書き出します。

仕様書を社内で完成させておく必要はありません。ただし、発注先が同じ条件で見積もれる粒度まで、前提をそろえることが大切です。

RFPの前提となる現状の棚卸しとKPI

棚卸しでは、データの規模と課題、移行範囲を分けて押さえます。

  • データ規模:CADの種類・版、2D・3D比率、利用者・拠点数、フォルダ数。
  • 関連データ:容量と年間増加量、BOM、関連文書、外部共有先まで含めて調べます。
  • 課題:最新版不明、検索時間、重複部品、変更伝達の問題を、数値で押さえます。
  • 移行範囲:全件か、現行製品・有効部品か。旧版の参照可否も定めます。

棚卸しの範囲は、共有フォルダだけでなく、個人PC、メール添付、協力会社との受け渡し場所、Excelの部品台帳にも広げます。

KPIには、図面検索時間や旧版使用件数、承認からリリースまでの時間、部品流用率を使います。導入の前後で比べると、改善の度合いを確かめられます。

機能要件と非機能要件の書き分け

機能と運用条件は分けて、操作の単位で要件を書きます。

  • 基本機能:チェックイン・アウト、同時編集防止、版・改訂、属性検索。
  • 構造と承認:CAD構造とBOMの関連付け、承認・リリース、ECR・ECO、3Dビューア。
  • 検索操作:部品番号、材質、製品系列、担当部署、状態、改訂日で検索し、承認済みの図面とBOMを開く。
  • 非機能要件:可用性、応答時間、同時接続数、バックアップ・復旧、監査ログ、保存期間、認証、MFA、暗号化の条件を定めます。
  • 連携と共有:通知、API、外部共有、障害連絡、脆弱性対応、データ返却、サポート時間を、要件に明記する。

CADは知的財産にあたるため、社外共有では、ダウンロード制限や透かし、期限、退職者や契約終了先のアカウント停止も要件に含めます。

RFPで提案会社に依頼する内容

提案書と比較条件、実機デモで確かめる内容を、各社で揃えておきます。

  • 提案範囲:発注形態と理由、対象範囲、標準機能と追加開発の境界、移行方法、連携方式を、各社に示してもらいます。
  • 実施条件:体制、日程、成果物、前提、リスク、概算費用、保守費用を、提案に含める。
  • 優先順位:要件を必須、できれば必要、将来検討の三つに分け、同じ順で各社に回答してもらう。
  • デモ:作業中CADの登録、正式版の承認、設計変更、BOM影響、限定共有、参照切れの実演。

デモの成功条件と受入テストは、先に決めておきます。そうすると、現場で使えるかどうかを提案会社ごとに評価できます。

ポイント

要件は、現状の数値と必須・将来の区分をそろえ、各社が同じ前提で見積もれる粒度で書きます。仕様が細部まで決まっていなくても、前提がそろえば各社の提案を比べられます。

CADデータ管理システムを外注・委託する進め方

企画と要件整理から委託先選定、PoC、設計・移行、テスト・教育、運用引き継ぎまでの流れを示す図解
PoCで確かめた内容を、設計や移行の条件につなげます。

外注では、工程を一連の流れとして組み立てます。なかでも、PoCで確かめた内容を設計や移行の条件に結びつけることが大切で、工程は次のとおり進めます。

  1. 企画と要件を整理する
  2. 委託先を選定する
  3. PoCを実施する
  4. 設計・設定を行い、データを移行する
  5. テストと教育を行う
  6. 運用を引き継ぐ

CAD移行では、ファイルのコピーだけでなく、参照関係、重複、属性欠落、旧版、権限、BOMの整合性も検証する必要があります。

委託先の選定と、提案・デモの比較

候補は、PDM・PLM導入会社、CADに強いSI会社、業務システムの受託開発会社を組み合わせて考えます。

製品会社だけに頼ると、自社製品に業務を合わせる提案に偏ることがあります。また、受託会社だけで選ぶと、標準機能やCAD連携の知見が足りない場合もあります。そこで、各社の得意と不得意を聞き、同じRFPを渡します。

対応CADの数よりも、自社CADの構造連携と変更管理を確かめることが大切です。そのうえで、移行やERP・MES連携を見ます。現場教育や国内サポート、障害時の責任分界も、あわせて確かめます。

  • 管理範囲:PTC資料では、CAD文書を版・ライフサイクル管理の対象として扱っています。
  • 対象CAD:Creo、CATIA V5、NX、Autodesk Inventorなどを扱います。
  • 移行方式:ETLV(抽出・変換・ロード・検証)

PTC資料にはこの移行の考え方が示されています(出典: PTC「CAD Data Management in Windchill」、2026年確認)。

移行と検証の方法を説明できる会社は、ファイルのコピーだけを提案する会社より、比較の対象として有力です。

本契約の前に行うPoCとデータ移行の確認

PoCでは、サンプルの選び方、操作の検証、移行条件、契約前に確かめる事項を、あらかじめ決めておきます。

  • サンプル:代表アセンブリ、参照の深いCAD、古い図面、重複部品。
  • 操作検証:登録、検索、改訂、承認、ビューア、部品構造、権限変更、バックアップ復元を実際に試す。
  • 移行条件:属性対応、重複・参照切れ、件数照合、目視確認、旧システムの読取期間の合意。
  • 契約前の確認:現場が許容する操作時間と精度、問題時の責任範囲、再移行条件。

サンプルには、BOM連携の図面と外部共有データも少量含めます。そのうえで、操作時間と精度を、現場の許容範囲と照らし合わせます。

責任範囲と再移行の条件は、契約や作業仕様書に記載します。特に、本稼働の直前に移行する場合は、品質確認と修正の時間が足りなくなりがちです。

開発範囲に含める受入テストと現場定着

受入条件と現場の運用責任、導入後の効果測定を、一緒に設計します。

  • 受入条件:作業版の登録、差分確認、正式版が生産技術・購買・品質へ伝わること。
  • 共有と記録:協力会社へは許可した版だけを渡し、設計変更履歴を追えるかどうか。
  • 運用体制:管理者、設計部門のデータオーナー、各部門の承認者、旧フォルダの停止時期、未登録データの扱い。
  • テスト記録:検索時間、通知の遅れ、参照切れ、権限、BOM差分を残す。
  • KPI:旧版使用、承認リードタイム、部品流用率、変更伝達時間で効果を測る。

特に、部品番号の重複を誰が判断するかは、運用手順に定めておく必要があります。

ポイント

外注では工程を一連で組み立て、PoCで確かめた内容を移行条件や受入条件に結びつけて判断します。本契約の前に、参照切れや権限漏れの有無をサンプルで確かめることが目安です。

CADデータ管理システムの契約形態の選び方

契約形態は、成果物や要件がどこまで固まっているか、発注者がどこまで管理するか、変更がどれくらい多いかで選びます。たとえば、要件定義やPoCは準委任、仕様が固まった開発や移行は請負、運用改善は準委任とする方法があります。

要件が固まっている部分の請負契約

請負契約では、成果物と契約条件を明確にしてから発注します。

  • 適用範囲:合意した成果物を完成させ、検査・受入後に納品する業務が対象です。
  • 成果物:画面、機能、設定、移行ツール、連携仕様、テスト仕様書、操作マニュアル。
  • 契約条件:受入基準、納期、瑕疵対応、知的財産、再委託、納品データの扱いを決めます。

データ品質や業務ルールがまだ分からない段階で全工程を固定額にすると、前提の違いが追加費用や納期の延長につながります。そのため、移行や現場検証の「完成」の範囲は、はっきりさせてから契約します。

要件定義・運用改善の準委任契約

準委任契約では、依頼する業務の内容と、作業の管理方法、契約上の確認範囲を決めておきます。

  • 適用業務:専門知識や作業時間の提供を受ける業務が対象です。
  • 依頼例:現状調査、業務整理、RFP作成支援、製品選定、PoC、移行方針、部門調整、導入後の改善に使えます。
  • 作業管理:作業範囲、担当者、稼働時間、会議体、報告書、判断期限、課題管理、終了条件。
  • 記録と確認:毎月の成果物と意思決定を書き留め、契約条件は社内法務や専門家にも確かめる。

段階ごとに契約を分ける方法

段階ごとに契約を分けるときは、各契約の範囲と、次工程へ進む判断材料を具体的に決めておきます。

  • 段階分け:企画・要件定義、PoC、本開発、移行、本稼働支援を、別々に発注できます。
  • 初回成果物:現状分析、サンプル移行、標準機能のデモ、概算見積、次工程の判断材料。
  • PoC後の判断:パッケージ導入を続けるか、カスタム開発へ進むかの選択。
  • 中止時の条件:次工程の判断基準、データ返却、文書の引き渡しを定める。
  • 見積更新:一社に固定しても、工程別の前提と成果物を更新し、予算や要件のずれを早く把握する。

ポイント

要件が固まっている部分は請負、定まっていない部分は準委任と、段階ごとに組み合わせて判断します。移行や現場検証の完成の範囲があいまいなままでは、契約しないことが大切です。

CADデータ管理システムの費用相場と見積の内訳

費用は、ユーザー数やデータ量、拠点数によって変わります。CADの種類や移行範囲、BOM・ERP・MES連携も、費用を左右します。さらに、クラウドかオンプレミスか、標準機能と追加開発の割合も影響します。

価格を公開していない製品も多いため、方式別のレンジと作業範囲を分けて予算を組みます。そのため、一つの数字だけで断定しないことが大切です。

導入方式別の費用レンジ

2025〜2026年時点の公開価格と類似案件を基にした方式別の目安です。

クラウドの金額は、小規模に版管理・検索・共有から始める場合の目安です。ユーザー数や容量、CAD連携、サポート契約によって変わります。

  • クラウド型PDM・SaaS:月額5万円〜30万円程度、初期設定・教育20万円〜100万円程度です。
  • パッケージ導入:300万円〜1,500万円程度、期間は3〜9か月程度が目安です。
  • カスタム費:類似案件では、小規模300万円〜1,000万円、中規模1,000万円〜5,000万円、大規模5,000万円〜1億円以上となる可能性があります。
  • 開発期間:類似案件の目安は、小規模3〜6か月、中規模6〜12か月、大規模12か月〜2年以上です。
  • 正式予算:自社のRFPとPoC結果をもとに、複数社から取得する。

パッケージ費用には、ライセンス、サーバーまたはクラウド環境、設定、連携、移行、教育が含まれます。

これは製品価格の一例で、要件定義や移行、教育、追加連携、保守を含む総額ではありません。

大塚商会のFullWEB-PDMは税別750万円です(出典:大塚商会「FullWEB-PDM 価格」、2026年確認)。また、AutoCAD連携は50万円、SOLIDWORKS連携は150万円です。

カスタム開発の費用と期間は、CAD管理や業務システム、連携、移行を含む類似案件からの推定です。

工程別に分けた見積の比較

総額を工程別に分けて、比率と見積条件をそろえたうえで比べます。

  • 見積項目:要件、環境、開発、移行・連携・テスト、教育、本稼働支援、保守・運用の区分。
  • 要件定義・環境:類似業務システムでは、要件定義が10〜15%、環境構築・基本設計が20〜25%を目安にします。
  • 開発・移行:設定・追加開発が35〜50%、移行・連携・テストが15〜25%程度が目安です。
  • 見積条件:移行件数、1ファイルごとの確認範囲、連携先のテストデータ、発注者の準備作業をそろえる。

比率は、案件の複雑さによって変わります。ただし、安い見積では、棚卸しや属性の整備、参照切れの修正、権限の設計、連携テストが抜けていることがあります。

利用部門の教育や旧システムとの並行運用も、見積に含まれるかを確かめます。

ランニングコストと保守費用を含めた判断

初期費用だけでなく、継続費と運用の責任範囲も確かめます。

  • 継続費:ライセンス、ストレージ、追加ユーザー、API、バックアップ、監視、サポート、更新、障害対応、管理者の人件費が、継続してかかります。
  • 保守費:類似システムでは、初期開発費の年15〜25%程度を見込むことがあります。
  • 5年間の総額:初期費用、月額・年額、保守、追加開発、移行、再教育、環境更新、終了時のデータ取出しを含めた額。
  • 運用分担:サーバー費用、バックアップ、監視、パッチ適用、障害復旧の担当。

年間の保守額は、製品契約やサポート範囲によって異なるため、個別見積で確かめます。

クラウドとオンプレミスを比べるときは、担当を同じ条件にそろえます。

ポイント

費用は一つの総額で判断せず、導入方式別の目安と工程別の比率、ランニングコストをそろえて比べます。見積の差が前提の違いから生じていないかを確かめると、判断を誤りにくくなります。

委託先選定と見積比較で確認すべきポイント

委託先は、価格だけでなく、CADと製造業務の理解、移行、連携、現場定着、契約後の責任体制で評価します。そのうえで、同じRFP、サンプルデータ、デモシナリオを渡して、見積を比べます。

見積の金額差が機能の差によるものか、作業範囲の差によるものかを分けて見ると、提案内容を正しく比べられます。

業務シナリオで確認する実績

導入実績、デモ、障害時の復旧シナリオを使うと、実務への対応力を確かめられます。

  • 経験の適合:自社と同じCAD、データ量、拠点構成、ERP・MES連携、協力会社共有の経験があるかを聞きます。
  • 事例の内容:匿名事例で見る導入前の課題、対象範囲、移行件数、期間、体制、導入後のKPI、残課題。
  • 障害対応:参照ファイルの欠落、旧版の誤共有、承認者の不在、協力会社との契約終了、連携停止時の復旧手順。

運用時の対応と責任を具体的に説明できるかどうかが、委託先を選ぶ判断材料になります。

金額以外の評価軸を持つ見積比較表

比較表では、適合度や作業範囲、費用差の理由が一目で分かるようにします。

  • 比較項目:要件適合度、対応CAD、標準・追加開発、移行と検証、連携、セキュリティ、納期、体制、保守、拡張、契約を並べます。
  • 評価と根拠:「必須」「条件付きで可」「不足」の三つに分けて、回答と根拠を残します。
  • 前提の差:全件移行か現行製品だけか、ERP連携かCSV出力までか。
  • 予算の整理:差分を必須範囲、追加オプション、将来工程に分け、説明できる予算にする。

価格だけを重視すると、移行や教育が後から加わり、総額が上がることがあります。

見積の差が大きいときは、値引き交渉より先に前提をそろえます。そうすれば、経営会議でも説明しやすくなります。

見積条件に入れるセキュリティと事業継続

CADには機密情報や顧客仕様、加工ノウハウが含まれます。そのため、見積条件に安全対策と事業継続の要件を入れておきます。

  • アクセス権:設計単位、拠点単位、プロジェクト単位で設定します。
  • 安全管理:MFA、操作・ダウンロード・承認ログ、脆弱性対応、外部アカウントの停止。
  • 継続と契約:バックアップ世代、復旧目標、秘密保持契約、輸出管理上の制限。

経済産業省は2025年4月、中小規模の製造事業者向け資料を公表しました。その資料は、工場のサイバー・フィジカル・セキュリティ対策の手順や事例を示しています。

また、サプライチェーン全体での対策も説明しています(出典: 経済産業省「中小規模の製造事業者向けに工場のセキュリティを確保するための具体的な手順や事例を紹介する解説書」、2025年)。

CAD管理をIT部門だけのクラウド導入として扱わず、工場ネットワーク、リモート保守、取引先からのアクセス、復旧手順もRFPに含めます。

よくある質問(FAQ)

発注を進めると、費用のほかに、既存データや契約、運用責任についても疑問が出てきます。外注を検討する担当者から多く寄せられる質問を、順に取り上げます。

CADデータ管理システムの開発はどの会社に依頼すればよいですか?

要件に応じて、CAD・PDM製品の導入会社、CAD連携に強いSI会社、受託開発会社を比べます。候補になるのは、自社と同じCAD、移行、設計変更、BOM連携、現場運用を経験していて、デモと見積条件を説明できる会社です。

CADデータ管理システムはクラウドとオンプレミスのどちらがよいですか?

複数拠点に短期間で導入し、サーバー運用を減らしたいなら、クラウドが候補になります。

工場の接続制約や巨大データ、既存の認証・ネットワーク、社外接続の制限、独自のバックアップ要件が強い場合は、オンプレミスやハイブリッドが選択肢に入ります。

方式を先に決めず、保存場所、復旧、外部共有、運用担当の責任分界をRFPで比べます。

見積を安くするために機能を削っても問題ありませんか?

正本の版管理や承認、権限は、後から補うとデータの整合性に影響するため、安易に削らないほうがよいです。検索やバックアップ、監査ログも同じ扱いです。設計変更履歴も、後から補うと整合性に影響します。

全社展開、AI検索、高度なビューア、複雑なERP・MES連携は、PoC後の第2段階にできる場合があります。そこで、必須機能と将来機能を分け、初期効果を確かめてから拡張します。

CADデータの移行は外注したほうがよいですか?

件数が少なく、参照関係や属性が単純なら、手順を整えて社内で移行できる場合もあります。

アセンブリ参照や重複部品、旧版、複数CAD、BOM、欠落した属性、外部共有の権限が絡む場合は、移行設計と検証の経験がある委託先に頼るほうが安全です。

全件移行を一度に決めず、サンプルをETLVで検証します。そのうえで、移行対象と除外対象をはっきりさせます。

まとめ

CADデータ管理システムの発注では、製品名や最安値で決める前に、方式を選ぶ判断材料をそろえることが大切です。まず、正本と版、承認の扱いを確かめます。設計変更やBOMの扱いも、方式の選択に関わります。共有範囲やセキュリティ、運用責任も、あわせて見ておきます。

まず、現状とKPIを棚卸しし、必須要件と将来要件を分けます。そのうえで、同じRFPとデモを使って複数社を比べ、移行、連携、教育、保守、5年間の運用費も確かめます。

全社展開の前には、1製品・1拠点・1CADでPoCを行います。

検索や版管理、承認を現場に定着させ、その後に設計変更、BOM、ERP・MES、海外拠点、協力会社との共有へ広げます。

段階的に広げることで、投資と現場負担の釣り合いを取りやすくなります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。