介護記録システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

介護記録システムの開発は、業務整理、同条件での選定、小さな検証、段階的な稼働を組み合わせて進めます。これにより、記録から請求までをつなぎ、現場に定着させます。

進め方は六つのフェーズに分かれ、各フェーズで決めることが変わります。全体像は、介護記録システム開発の完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・介護記録システム開発の完全ガイド

介護記録システム開発の全体像

介護記録システムは、利用者台帳、日々のサービス記録、バイタル、申し送りなどを電子化する業務システムです。また、事故・ヒヤリハット、ケアプラン、家族への連絡も扱います。関係する職員が必要な情報を確認でき、記録した情報を後工程で再利用することで、転記や確認の負担を減らします。

開発の最初に決める業務の目的

まず、解決したい現場の課題を一つずつ言葉にしておきます。

  • 記録・申し送り:入力時間を短くし、情報の伝達漏れを減らします。
  • 実績・請求:記録からの転記をなくします。
  • 家族説明:説明に使う情報を整理します。
  • 通所介護:高機能AIより、サービス記録と実績データの項目一致を優先します。
  • 夜勤:重要事項の絞り込み、既読確認、時系列表示を優先します。

たとえば、通所介護で月末に紙の日誌から請求ソフトへ転記する場合は、サービス提供記録と実績データの項目を一致させます。

導入の前後では、記録1件の入力時間、1日あたりの転記回数、未入力件数を測ります。申し送り時間と請求前の確認時間も含め、これらの指標から業務が改善したかを判断できます。

現場職員、サービス提供責任者、ケアマネジャーを最初から巻き込むと、後戻りを減らせます。また、請求担当と管理者も、早い段階から関わってもらいます。

既製クラウド・パッケージ・個別開発の同条件での比較

標準業務を早く始めたい場合は、次の方式のうち、自社の業務範囲に合うものを候補にします。

  • 記録専用クラウド:既存の請求システムがあり、記録部分だけを使う事業所向けです。
  • 介護業務パッケージ:計画・実績・請求・LIFEを一体で扱う法人の候補になります。
  • 連携開発・スクラッチ開発:基幹システム、独自帳票、センサー、法人共通マスタとの接続時に検討します。

判断では、初期費用の安さだけでなく、業務を変えられる範囲と連携の自由度を見ます。制度改定への追随、データの持ち出しやすさ、サポート体制も確かめます。

既製品に業務を合わせることで早く安定するケースもあれば、独自業務を無理に合わせることで二重入力が残るケースもあります。

候補を選ぶ前に、要件を譲れないもの、できれば欲しいもの、運用で吸収できるものの三段階に分けておくと、過剰なカスタマイズを抑えられます。

訪問・通所・入所ごとの優先機能

サービス種別によって必要な画面が違うため、優先する機能を次のように挙げます。

  • 訪問介護:訪問予定、スマートフォン入力、提供証明、申し送り、通信が不安定な場所での一時保存。
  • 通所介護:バイタル、送迎、食事、入浴、連絡帳、日誌、実績・請求連動。
  • 入所施設:24時間記録、夜勤申し送り、食事・排泄・睡眠、事故報告、看護・リハ共有。

同じ名前のシステムでも、業務の流れによって必要な画面と操作回数が変わります。そのため、候補製品のデモでは、自社の一日の業務を使って一連の操作を実演してもらいます。

  1. 利用者を検索し、記録して修正する。
  2. 記録を確認し、請求へ渡す。

実演のあとは、現場職員が3分以内に主要な記録を入力できるかを確かめます。あわせて、入力後に誰が確認したかが分かるかも見ておきます。

ポイント

判断に迷ったら、まず解決したい現場の課題を言葉にし、既製品と個別開発を同じ条件で比べます。機能の多さより、業務の目的に合うかで選びます。

介護記録システム開発の進め方と六つのフェーズ

介護記録システムの定着に向けた研修、業務ルール、月次確認、改善の循環図
月次確認の結果を次の改善につなげます。

介護記録システムは、いきなり開発会社へ画面の制作を頼むと、要件漏れや追加費用が起きやすい領域です。そのため、まず現場を観察して業務を洗い出し、対象範囲を決めます。選定をしたあとに、設計・開発へ進みます。

開発では本番に近いデータでテストしたうえで、段階的に稼働させます。導入後のルールと改善の流れも、あらかじめ設計しておきます。

フェーズ1:要件整理と現場の一日の業務フロー

まず、紙帳票をそのまま画面にせず、担当者ごとの情報の流れを業務フローに書き起こします。要件整理では、次の観点を順に確かめます。

  1. 誰が、いつ、どこで何を見て入力するかを整理する。
  2. 入力内容を誰が確認し、どの帳票や請求へ渡すかを決める。
  3. 時間帯や担当者によって変わる業務を観察する。
  4. 同行できない場合は、記録を匿名化したうえで作業を聞き取る。

観察の対象には、訪問、夜勤、入浴介助があります。食事介助、ケアマネジャーのモニタリング、月末の請求準備も含まれます。

確認項目は、サービス・拠点・利用者・職員の規模と、端末・通信環境です。記録項目、定型文、写真・音声を確かめます。そのうえで、権限、修正履歴、帳票のほか、請求・LIFE・ケアプラン連携も押さえます。

記録だけにするか、実績や請求まで一気通貫にするかを決めたうえで、必須要件を10個前後に絞ります。後回しにできる機能を分けておくと、開発範囲が膨らみにくくなります。

フェーズ2:選定とデモ・PoCの同条件での比較

選定では、方式と現場への適合性を同じ条件で比べます。そのため、比較する方式と評価項目を先にそろえておきます。

  1. 記録専用クラウド、介護業務パッケージ、パッケージ+連携開発、スクラッチ開発を候補にする。
  2. サービス種別、入力しやすさ、請求・LIFE・ケアプラン連携を比べる。
  3. 端末対応、オフライン動作、権限・監査ログ、データ移行を確認する。
  4. サポートと制度改定への対応を、同じ軸で評価する。
  5. 1拠点・1サービス・1業務でPoCし、記録1件あたりの時間、未入力率、申し送り時間、転記件数、職員の利用率を測る。

PoCには管理者だけでなく、夜勤職員や訪問担当、入力が苦手な職員にも参加してもらいます。現場が普段の手順で使えるかを確かめておかないと、本稼働後に使われないおそれがあります。

フェーズ3:設計・開発と入力・連携の境界

設計では、データ項目、画面の遷移、権限を決めます。現場の入力画面と管理者画面も分けて考えます。

  • データ:利用者・職員・拠点・サービス・記録・実績の項目を定義します。
  • 現場入力:利用者検索、項目選択、文章や写真の追加、保存を少ない操作にします。
  • 管理画面:記録検索、未確認の抽出、修正履歴、帳票、権限の申請と承認を扱います。

連携では、正とするデータ、連携の時期、失敗時の確認担当を決めます。利用者ID、職員ID、サービスコードの対応表を作ります。さらに、予定・実績、請求項目、LIFE提出項目も、同じ対応表に含めます。

CSVやAPIの仕様、どこまでを誰が受け持つかは、契約書に残します。訪問先で通信が切れる場合は、暗号化した一時保存と再送を設計に含めます。重複登録の防止と同期失敗の通知も、あわせて設計します。

フェーズ4:テストと本番に近い記録・例外処理の確認

テストでは、通常操作と例外処理を確かめ、変更履歴を追跡できる状態にします。

  • 通常操作:記録、修正、承認、帳票出力、請求連携。
  • 例外処理:誤入力、同時編集、権限外閲覧、退職者アカウント。
  • 障害対応:通信断、端末紛失、連携エラー、バックアップ復元。

介護記録を変更したときは、変更前後の内容と変更者を追跡できるかを確かめます。テストデータには、匿名化した情報かテスト用の情報を使います。

利用者の状態や要介護度を含むデータは、長さや欠損の異なるものを準備します。服薬や家族連絡先のデータも、こうした条件で用意すると、現場に近い検証ができます。

受入テストでは、管理者だけで判断せず、実際の職員にも定型記録を入力してもらいます。そのうえで、操作時間と誤操作を確かめます。合格条件と不具合の優先度は、事前に決めておきます。

フェーズ5:稼働と切り替え日・戻し方の決定

稼働前には環境を整え、切り替えの方法と復旧の担当者を決めておきます。

  • 稼働準備:利用者マスタ、アカウント、権限、定型文、帳票、端末、Wi-Fi、バックアップ、窓口。
  • 切り替え:請求締めや行事を避け、紙との併用期間と紙へ戻す基準を決めます。
  • 展開:1拠点で確認してから次へ広げ、問題の原因を特定しやすくします。

当日は担当者を配置し、最初の記録と申し送りを確かめます。帳票出力と請求連携も、同じ日に確認します。また、アカウントは職員ごとに発行し、共有しないようにします。

端末紛失時の遠隔ロック、退職者の利用停止、緊急連絡先も確かめます。クラウド型でも端末と通信環境は別途必要になるため、システム費だけで運用できるとは限りません。

フェーズ6:定着と運用ルール、効果測定

操作研修を一度行って終わりにせず、業務ルールと合わせて、導入後も利用状況を見直します。

  • 研修:管理者、現場、新人、夜勤・訪問職員向けの教材と問い合わせ窓口を用意します。
  • 業務ルール:記録、修正、重要事項の報告、AI記録の最終確認者を定めます。
  • 月次確認:利用率、未入力率、入力・転記時間、申し送り時間、請求時の差戻し、問い合わせ件数を測ります。
  • 改善:現場代表を含む運用委員会で原因を確認し、小さな改善を重ねます。

数値が改善しないときは、まず入力項目と端末数、Wi-Fiを点検します。権限と業務ルールも、あわせて点検します。原因を職員の努力不足と見なすより、運用委員会で改善を重ねることが、長期利用につながります。

ポイント

判断に迷ったときは、今のフェーズで決めることを決め切ってから次へ進みます。現場職員を要件整理の段階から加えると、後戻りを減らせます。

介護記録システムの費用相場とコストの内訳

介護記録システムの5年間のTCOを初期費用、継続費用、追加条件に分けた図
月額料金以外の支出項目も整理できます。

介護記録システムの費用は、記録だけか請求まで含むかで大きく変わります。クラウドか購入型か、職員数・利用者数・拠点数がいくつかも影響します。また、端末・移行・研修・連携を含むかどうかも、金額を左右します。

ここで示す金額は、公開価格、補助事業の支出例、一般業務システムの推定に分けています。種類の異なる費用なので、単純な価格ランキングには使えません。

公開料金のあるクラウド型の月額(数千円から数万円)

公開料金は、契約人数と初期費用の条件をそろえて見ると、サービスごとの負担を比べやすくなります。

  • 利用人数:職員数と施設規模をそろえて、料金を比べます。
  • 初期条件:初期費用と、職員を追加したときの課金を確認します。
  • 付帯費用:研修、出張、機能拡張、買取、保守の範囲を確かめます。
  • 利用期間:月額だけでなく、年額と5年間の総額を比べます。

クラウド介護記録システムは、1施設・職員6名の場合で月額3,000円からです(出典: クリエイトシステム合同会社「クラウド介護記録システムのご利用料金」、2026年確認)。初期費用0円で、職員1名を追加すると月額500円が加わります(出典: クリエイトシステム合同会社「クラウド介護記録システムのご利用料金」、2026年確認)。

訪問介護向けの1施設・職員10名では、月額5,000円からの例があります(出典: クリエイトシステム合同会社「クラウド介護記録システムのご利用料金」、2026年確認)。同プランは初期費用0円です。ただし、操作研修や出張費は別途の場合があり、機能拡張、買取、保守も含まれないことがあります。

ケアコラボは10名まで月額9,680円(税込)です(出典: ケアコラボ「利用料金」、2026年確認)。50名では月額48,400円(税込)で、初期費用は無料です(出典: ケアコラボ「利用料金」、2026年確認)。

年額に換算すると、10名で116,160円、50名で580,800円です。端末と通信の費用に加えて、データ移行、現場研修、既存システム連携も確かめます。さらに、5年間の利用料と周辺費用を合計して比べます。

パッケージ導入の費用(端末・設定・移行を含む数百万円規模)

広島県の支出予定額は、導入に含まれる内訳と合わせて読みます。内訳は次の三つです。

  • 端末・通信:タブレット、パソコン、通信環境。
  • 初期設定:利用者データ移行、帳票設定。
  • 運用準備:操作研修、保守。

広島県の令和7年度事業リストには、事業所の支出予定額が記載されています。ほのぼのNEXTは1,312,500円です(出典: 広島県「令和7年度 介護テクノロジー定着支援事業 補助実施事業所リスト」、2026年公表)。

ワイズマンの介護ソフトは1,711,453円です(出典: 広島県「令和7年度 介護テクノロジー定着支援事業 補助実施事業所リスト」、2026年公表)。ほのぼのケアパレットは2,200,713円です(出典: 広島県「令和7年度 介護テクノロジー定着支援事業 補助実施事業所リスト」、2026年公表)。

ワイズマンのケア記録製品は2,578,000円です(出典: 広島県「令和7年度 介護テクノロジー定着支援事業 補助実施事業所リスト」、2026年公表)。ケアカルテは4,715,500円です(出典: 広島県「令和7年度 介護テクノロジー定着支援事業 補助実施事業所リスト」、2026年公表)。

これは補助事業の支出予定額で、ソフト単体の定価や共通相場ではありません。端末や付帯経費、複数機能を含み、施設規模の違いもあるため、個別見積もりと同じ条件ではありません。

クラウドの月額だけを見て「導入費は数万円」と考えず、現場で使える状態までの初期支出を確かめる材料にします。

個別開発の推定レンジ(MVPは300万〜800万円、複数連携は800万〜2,000万円)

スクラッチ開発には、行政やベンダーが定めた共通の定価相場がありません。そのため、推定の参考には、一般業務システムの初期費用と介護ソフトの導入支出例を使います。

  • 参考レンジ:一般業務システムの初期費用は300万〜2,000万円です。
  • MVPの範囲:台帳、定型記録、申し送り、権限、帳票、1拠点を含みます。
  • MVPの目安:300万〜800万円、要件整理から稼働まで3〜6か月です。
  • 複数連携:複数サービス・拠点と計画・実績・請求、LIFE、会計、共通マスタを含みます。
  • 複雑な要件:2,000万円超もあり、見積保証ではなく計画上の推定です。

この推定には、NotebookLMのリサーチで確認した一般業務システムの費用目安を使っています。また、公開されている介護ソフトの導入支出例も参考にした、類似案件の見立てです。複数連携は800万〜2,000万円、期間は6〜12か月程度と推定されます。

センサーや音声AI、オフライン同期を含むと、2,000万円を超える可能性があります。複雑な連携、24時間運用、厳格な監査ログも、費用を押し上げる要素になり得ます。

5年間のTCOと運用コスト

見積書では、初期費用、継続費用、別料金になり得る項目を分けて見ます。

  • 初期費用:要件整理、ライセンス・開発、端末、ネットワーク、設定、移行、連携。
  • 継続費用:テスト、研修、保守、制度改定対応、バックアップ、問い合わせ。
  • 追加条件:端末更新、通信費、MDM、訪問、追加帳票、退職者の停止、拠点追加。

月額にアップデートが含まれていても、それ以外の費用まで含むとは限りません。料金の条件は、月額に含まれる範囲と合わせて、見積書の段階で一つずつ確かめます。

費用対効果は、転記時間だけで測らず、入力ミスや請求の差戻し、残業も含めます。記録漏れ、申し送り確認、事故報告の漏れも、効果の一部として見ます。

職員数に加えて、1日あたりの記録件数と入力時間を計算の前提に置き、導入前後の差を月単位で見ます。

安さだけで選ばず、不要な機能や二重入力を残さないようにします。そのうえで、支出に対して改善される業務を明確にします。

ポイント

費用は、月額だけでなく5年間の総額で比べます。補助事業の支出例や推定を並べるときは、前提がそろっているかを先に確かめます。

介護記録システムの見積もりを取る際のポイント

介護記録システムの要件整理資料に記載する規模、環境、機能、記録の確認項目
同じ項目をそろえると各社の見積もりを比べやすくなります。

見積もりの精度は、発注者が渡す情報の細かさで変わります。「介護記録システムを作りたい」とだけ伝えると、画面数や権限、連携の範囲が読み手ごとに変わります。移行や保守の範囲も、読み手によって異なります。

複数社へ相談する前に、対象業務や利用人数、データを1枚の要件整理資料にまとめます。運用ルールと期待する効果も、併せて書いておきます。

要件整理資料に書く対象範囲と判断基準

資料には、対象範囲と利用環境を書きます。記録項目は、必須、任意、将来対応に分けます。

  • 規模:サービス種別、拠点、職員数、利用者数、同時利用数。
  • 環境:利用端末、通信環境、既存システム、稼働希望時期。
  • 機能:画面、帳票、連携先、データ移行期間、研修対象。
  • 記録:写真、音声、定型文、バイタル、服薬、食事、排泄、事故・ヒヤリハット。

判断基準は、操作や記録の確認を検証できる文章で書きます。たとえば、職員が少ない操作で入力でき、記録者と修正履歴を確かめられる、といった形です。

請求担当が転記せずに実績を使えるか、管理者が拠点の追加や退職者の権限変更を行えるかも確かめます。

AI音声入力では、認識精度だけでなく、下書きの確認者と確定の方法も要件に含めます。重要な記録は、AIの出力だけで確定しない運用にします。

複数社への同条件での依頼と項目単位の比較

同じ要件整理資料を複数社に渡し、費用を作業項目ごとに示してもらいます。

  • 開発範囲:標準機能、設定、カスタマイズ、連携。
  • 導入作業:データ移行、テスト、研修。
  • 継続支援:保守とサポート。
  • 作業量:画面・帳票・連携先の数、移行件数、研修回数。

「開発一式」「連携一式」「保守一式」とだけ書かれていると、追加費用の範囲が分かりにくくなります。

価格に加えて、方式の適合理由と、標準機能と個別開発の範囲を比べます。拠点追加と制度変更への対応を比べ、データ出力とサポート時間も確かめます。

開発会社には、介護・福祉業務の理解と個人情報の管理を確かめます。現場研修や障害時の連絡と復旧目標、発注者側の作業も確認します。

移行や現場支援を発注者任せにした安価な提案では、総額や発注者の負担が増える可能性があります。

見積もりの段階で確認する個人情報・移行・障害対応

介護記録には、慎重に扱う情報が含まれます。ガイダンスの対象は、介護保険施設や居宅サービスなどの介護関係事業者です。

個人情報保護委員会と厚生労働省のガイダンスは、適正な取り扱いに必要な事項を示しています(出典: 個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」、2025年6月一部改正)。

  • 対象情報:要介護度、既往歴、服薬、家族情報、心身の状態。
  • アクセス管理:暗号化、役割別権限、MFA、閲覧・変更・出力ログ。
  • 保全と委託:バックアップ、復元テスト、委託先との責任の分け方。

移行時は、ID重複や氏名表記、日付形式を確かめます。保存期間や添付ファイル、退所者データも対象です。連携コードも、移行時に見ます。

参照の頻度や保存の義務に応じて、直近分だけを移行し、古い記録は参照用に保管する方法もあります。

障害が起きたときに紙へ戻す方法、復旧後の再入力、二重登録の防止を決めておきます。判断する担当者は、契約書や運用手順に残します。

契約前に決める納品物と受入条件

契約前に、要件定義から運用までの成果物と、責任の範囲を文書にします。

  • 設計資料:要件定義書、画面一覧、データ項目、権限一覧、連携仕様。
  • 受入準備:テスト計画、操作マニュアル、研修資料。
  • 運用資料:運用手順、障害時の連絡方法。

SaaSでは、初期設定や移行方式、アカウント作成を明記します。帳票設定とサポート範囲も、書き添えておきます。

個別開発では、追加要件と変更の承認、ソースコードやデータの帰属を決めます。さらに、契約終了時のデータ返却も決めておきます。

受入条件は、実際の業務で合否を判断できる形にします。利用者登録、権限外閲覧の防止、通信復帰後の重複しない同期を確かめます。変更履歴、帳票出力、請求データの項目も検証します。

発注側は、現場代表を受入の工程に加え、納品日だけで判断しないようにします。

ポイント

見積もりを比べるときは、同じ要件整理資料を各社に渡し、作業項目ごとの金額をそろえてから判断します。「一式」だけの見積もりは、追加費用の範囲を確かめてから比べます。

介護記録システム開発のよくある質問

介護記録システムの最適な進め方は、事業所の規模や記録の範囲で変わります。既存システムや現場の通信環境によっても違いが出ます。

導入期間や小規模事業所、AI音声入力、補助制度は、検討の途中で迷いやすい点です。

介護記録システムの開発期間はどのくらいですか?

既製クラウドの初期設定は1〜8週間、パッケージ導入や移行は1〜4か月が目安です。

準カスタムは3〜9か月、スクラッチ開発は6〜18か月程度を見込みます。MVPは要件と体制が明確であれば3〜6か月、複数連携を含む個別開発は6〜12か月程度と推定されます。

期間は案件ごとの推定で、現場ヒアリングや移行データ、連携先の仕様によって変わります。さらに、受入テストの回数でも差が出ます。

小規模事業所でも介護記録システムを開発・導入できますか?

導入はできます。職員数が少ない場合は、記録専用のクラウドを1拠点・1業務から始め、利用率や入力時間を測ってから、請求連携や拠点追加を検討する方法が現実的です。

最初から独自開発へ進む前に、標準機能で解決できない業務だけを整理します。そのうえで、既製サービスと連携開発の費用を比べます。

AI音声入力や要約を介護記録システムに入れてもよいですか?

導入はできますが、AIの出力をそのまま確定記録にしない運用が必要です。

音声認識の誤りや固有名詞の取り違え、否定表現の欠落が起こり得ます。周囲の会話が混ざることもあります。そのため、職員が内容を確かめ、確定者と確定時刻を残します。

PoCでは、騒音や方言を含む現場の実環境で、認識率や修正時間、誤記録の発生を確かめます。AIを使わない場合と比べて、効果と費用を見ます。

介護記録システムの導入に補助金を使えますか?

補助を使えるかは、制度と所在地の条件を確かめて判断します。

  • 自治体・年度:対象経費、申請時期、研修要件は異なるため、公募要領の確認が要ります。
  • 介護情報基盤:2026年はカードリーダー購入等を支援し、ポータルで助成申請を受付中です(出典: 厚生労働省「介護情報基盤について」、2026年)。
  • 介護テクノロジー定着支援:研修受講や導入後の活用が条件となる例があります。

ポイント

期間は案件ごとの推定として扱い、小規模事業所は記録専用のクラウドから始める方法を検討します。AI音声入力や補助金は、制度と運用の条件を確かめてから判断します。

介護記録システム開発の進め方まとめ

介護記録システムの開発と導入は、六つのフェーズで進みます。要件整理、選定、設計・開発と続き、テスト、稼働、定着へ至ります。最初に現場の一日の流れを業務フローに書き起こし、記録や申し送り、請求、家族説明のどこを改善するかを決めます。

選定では、既製クラウドからスクラッチ開発までの方式を、機能と費用、運用、拡張性の条件で比べます。

発注前に確認するチェックリスト

発注前には、対象範囲と運用環境を確かめます。移行や保守、障害対応も確認します。必須要件と将来要件は、分けておきます。

  • 規模・環境:サービス、拠点、職員・利用者数、端末、通信。
  • 記録・権限:必要項目、修正履歴、帳票、既存システム連携。
  • 導入・運用:データ移行、バックアップ、研修、問い合わせ、保守。
  • 継続性:障害時の切り戻し、制度改定への対応。

受入条件は、実際の操作で検証できる文章で書きます。

最初の一歩は現場観察と小さなPoC

全拠点の開発に進む前に、小さく試して本番の範囲を決めます。

  1. 1サービス・1拠点・1業務から始め、入力時間と転記件数を測る。
  2. PoCで現場の負担と効果を確かめ、必要な連携とセキュリティを整理する。
  3. 過剰開発や作り直しを抑える本番範囲を定める。
  4. 月額・開発費だけでなく、5年間のTCOと職員の運用負担で見積もる。

2026年は、介護情報基盤の標準化と連携が進む時期です。2026年4月以降、標準化対応が完了した市町村から順次、情報共有を始めます(出典: 厚生労働省「介護情報基盤について」、2026年)。

2028年4月までに全市町村での活用開始を目指すスケジュールです。この情報も踏まえ、将来の標準仕様や連携、個人情報の保護、現場への定着まで計画します。

▼全体ガイドの記事
・介護記録システム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。