CLM(契約ライフサイクルマネジメント)の導入を検討するとき、製品ごとに何ができるのかを正しく理解しないまま比較すると、「思っていた機能が標準では使えなかった」「必要な機能が高額オプションだった」という後悔につながります。CLMは、契約書の作成・審査・承認・締結・保管・更新管理という契約の一生(ライフサイクル)を一気通貫で扱うシステムであり、各フェーズで担う機能が異なります。どの機能が標準で、どの機能が追加コストになるのかを押さえることが、製品選定と要件定義の土台になります。
本記事は、CLM・契約ライフサイクルマネジメントの必要機能・標準機能を、発注企業の視点から体系的に解説する「機能特化」の記事です。契約書作成・テンプレート管理、審査・承認ワークフロー、電子契約による締結(立会人型/当事者型)、契約書の一元管理・全文検索・バージョン管理、更新期限アラート、そしてAI契約レビューやAI-OCRといった先進機能まで、標準機能とオプションの切り分けを意識しながら掘り下げます。読み終えるころには、自社に必要な機能の優先順位が描けるはずです。なお、CLMの全体像をまだ把握していない方は、まずCLM・契約ライフサイクルマネジメントの完全ガイドから読むことをおすすめします。
▼全体ガイドの記事
・CLM・契約ライフサイクルマネジメントの完全ガイド
契約書の作成・審査・承認を担う機能

契約ライフサイクルは「作成」から始まります。CLMの最初のフェーズを担うのが、契約書の起案・テンプレート管理と、法務による審査・承認の機能です。ここを電子化することで、Wordファイルをメールで往復させる属人的な審査から脱却できます。契約締結という最終アウトプットの前段にあたるこの工程こそ、CLMが「単なる電子契約」と一線を画す部分です。
テンプレート管理と起案の機能
契約書作成の標準機能として、まず雛形(テンプレート)の一元管理があります。秘密保持契約書、業務委託契約書、売買基本契約書などの承認済み雛形をシステムに登録しておき、現場はそこから選んで必要事項を入力するだけで起案できます。これにより、古い雛形や個人が勝手に改変した版が使われるリスクを防げます。法務が承認した最新の雛形のみが使われる状態を担保することが、コンプライアンスの基盤になります。
起案の機能では、入力フォームに沿って当事者名・金額・期間などを埋めると、自動的に契約書ドラフトが生成される仕組みが一般的です。これにより、契約書作成の専門知識がない事業部門でも、一定品質のドラフトを起こせます。ただし、複雑な条項の出し分けや、自社固有の契約類型に合わせた高度なテンプレート制御は、標準機能で対応しきれない場合があります。自社の契約パターンの複雑さを棚卸しし、標準のテンプレート機能で足りるかを見極めることが重要です。
審査・承認ワークフローと条件分岐の機能
起案された契約書は、法務審査と社内承認のワークフローを通ります。CLMのワークフロー機能の核は、契約の種類や金額に応じて承認ルートを自動で切り替える「条件分岐」です。たとえば100万円未満は部長承認まで、それ以上は役員承認まで、海外取引はさらに法務部門長を加える、といったルートを設定できます。複雑な条件分岐を正確に再現できるかどうかが、ワークフロー機能の実力を測る最大のポイントです。
審査の過程では、法務が条項に修正コメントを付け、事業部門と版を往復させる「赤入れ」のやり取りが発生します。CLMでは、この修正履歴と承認証跡がすべてシステム上に残るため、「誰がいつどの条項をどう直したか」を後から追跡できます。スマートフォンからの承認に対応した製品なら、決裁者の不在による滞留も防げます。承認ルートの再設計と権限制御は、稟議システムやワークフローシステムの機能とも重なる領域であり、自社の承認規程をどこまで忠実に再現できるかを要件として詰めることが欠かせません。
ワークフロー機能の実力を見極めるには、承認の差し戻しや代理承認、ルートの動的な変更にどこまで対応できるかも確認します。承認者が長期不在のときに代理者へ委任できるか、審査の途中で追加の決裁者を差し込めるか、といった柔軟性が、現場の実運用では効いてきます。標準機能が硬直的だと、現場が例外に対応できず、結局システムの外で処理してしまいます。承認電子化により決裁スピードが上がる一方、現実の業務の揺らぎを吸収できる柔軟さを備えているかが、使われ続けるワークフロー機能の条件です。
電子契約による締結を担う機能

審査・承認を経た契約書は、いよいよ締結フェーズに進みます。ここで中心になるのが電子契約の機能です。紙と印鑑の代わりに、電子署名とタイムスタンプによって契約を成立させます。電子契約には大きく「立会人型(事業者署名型)」と「当事者型」の二方式があり、どちらを採用するかで法的証拠力やコスト、相手方の負担が変わります。締結機能の理解は、この二方式の違いを押さえることから始まります。
立会人型・当事者型の署名とタイムスタンプ
立会人型は、電子契約サービスの事業者がメール認証などで本人性を確認し、事業者名義の電子署名を付与する方式です。相手方は電子証明書を用意する必要がなく、メールを受け取って同意ボタンを押すだけで締結できるため、導入のハードルが低いのが特長です。送信料は1件あたり50〜300円(平均で税込110〜220円程度)が相場で、手軽さからもっとも普及している方式です。一方、当事者型は当事者本人が電子証明書を用いて署名する方式で、本人性の証明力が高い反面、相手方にも電子証明書の発行費(1万円前後)が発生します。
いずれの方式でも、契約の存在時刻を証明するタイムスタンプの付与が標準機能として組み込まれています。これにより、「その時刻にその内容の文書が存在し、その後改ざんされていない」ことを証明できます。電子署名法第3条が定める要件を満たすことで、紙の契約書と同等の法的効力を持たせられます。自社の契約の重要度や相手方の事情に応じて、どちらの方式を標準にするかを設計することが、締結機能の要件定義の中心になります。
電子帳簿保存法対応と保管・送信の機能
締結した電子契約は、電子帳簿保存法の要件に沿って保存する必要があります。CLMの保管機能は、タイムスタンプや検索要件(日付・金額・取引先での検索)を満たした形で契約データを保存し、電帳法対応を標準で実現します。これにより、電子取引の保存義務を満たしつつ、必要なときに条件で検索して取り出せます。法対応が標準機能に組み込まれているかどうかは、製品選定で必ず確認すべきポイントです。
送信・締結の機能では、誤送信を防ぐ制御も重要です。承認が完了していない契約書は送信できない、宛先を二重チェックする、といった仕組みを備えた製品なら、未承認契約の誤送信という事故を構造的に防げます。なお、電子契約システムの導入率は2025年の調査で78.3%に達しており(資料請求数は前年同期比236%増)、締結の電子化は今や標準的な選択肢になっています。締結機能を選ぶ際は、署名方式・法対応・誤送信防止という三点を軸に評価してください。
締結の局面では、相手方の負担を下げる機能も評価ポイントになります。立会人型では、相手方は専用アカウントの登録なしに、届いたメールのリンクから内容を確認し同意できるのが一般的です。相手方の操作が複雑だと締結が進まず、電子化率が上がりません。送信時に署名箇所を視覚的にガイドする、進捗(相手方が開封したか・署名したか)を可視化する、といった機能があれば、締結のリードタイムをさらに短縮できます。締結機能は自社の効率化だけでなく、相手方にとっての使いやすさまで含めて見ることが大切です。
締結後の一元管理・検索・更新管理を担う機能

契約は締結して終わりではありません。むしろ締結後の保管・検索・更新管理こそ、CLMが「契約ライフサイクル」を名乗る所以です。一次データでも、電子契約導入後の課題として「契約書の情報を一元管理できない」が39.5%と最多で挙げられており、締結後の管理機能の重要性がうかがえます。このフェーズの機能が、契約資産を活きた状態で維持します。
全文検索・バージョン管理と更新期限アラート
一元管理の中核機能が、全文検索とメタデータ検索です。契約日・当事者・金額・契約類型といったメタデータに加え、本文の全文検索ができれば、「この取引先と交わした契約の中で、この条項を含むものを探す」といった調査も一瞬で完了します。契約書を版ごとに保持するバージョン管理機能があれば、締結版と過去のドラフト版を区別して保管でき、どの版が最終締結版かを取り違える事故も防げます。
更新管理で欠かせないのが、更新期限・解約通知期限のアラート機能です。契約をメタデータ付きで登録しておくと、更新の数か月前にシステムが自動で通知し、不要な自動更新や、解約したいのに通知期限を逃すといった機会損失を防ぎます。これはCLMが電子契約単体と決定的に違う点であり、契約を「締結して終わり」ではなく「ライフサイクル全体で管理する」ための要となる機能です。自社の契約類型ごとに、どのタイミングで誰に通知すべきかを設計することが、アラート機能を活かす鍵になります。
メタデータの管理機能も、一元管理の質を左右します。契約日・当事者・契約金額・契約類型・更新条件といった属性を構造化して保持できれば、「今期に更新を迎える契約の総額」「特定の取引先と結んだ全契約」といった切り口での集計・分析が可能になります。契約を単なる文書の山ではなく、検索・分析できる資産として扱えるようになる点が、CLMの一元管理機能がもたらす本質的な価値です。どこまでの属性をメタデータとして持つかを、自社の管理ニーズに合わせて設計します。
AI契約レビュー・AI-OCRの位置づけ
近年のCLMでは、AI契約レビューやAI-OCRといった先進機能が注目を集めています。AI契約レビューは、契約書ドラフトの不利な条項や抜け漏れをAIが指摘し、法務の一次チェック工数を削減する機能です。AI-OCRは、紙でスキャンした契約書から当事者名や契約日といったメタデータを自動で読み取り、登録の手間を減らします。過去の紙契約を大量に移行する局面では、AI-OCRが移行コストを大きく下げます。
AI契約レビュー機能の実利は、法務の一次チェックを高速化できる点にあります。雛形との差分を自動で抽出し、自社に不利な条項や、抜けている定番条項を指摘してくれるため、法務担当者は指摘された箇所を重点的に確認すればよくなります。これにより、契約審査のリードタイム短縮と、見落としの防止を両立できます。ただし、AIの指摘はあくまで補助であり、最終的な法的判断は人が行う前提です。AIに頼り切るのではなく、人の判断を支援する道具として位置づけることが、機能を正しく活かす姿勢です。
ただし注意すべきは、これらのAI機能が「標準機能か、月額数万円規模の追加オプションか」が製品によって大きく異なる点です。さらに、AIの指摘や読み取りには誤認識のリスクがあり、最終的な法務判断を完全に代替できるわけではありません。AI機能を要件に含める際は、追加コストと、想定される法務工数の削減効果を天秤にかけ、誤認識を前提とした確認フローも併せて設計することが大切です。riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、AI機能を含む機能要件を「標準で足りるか、作り込みや連携が必要か」という観点で切り分ける支援を重視しています。
連携・権限制御・コンプライアンスを支える機能

契約のライフサイクルを支える機能は、各フェーズの機能だけでは完結しません。それらを横断して動かす「連携機能」「権限制御機能」「コンプライアンス機能」が、CLMを業務基盤として成立させます。これらは表に出にくい縁の下の機能ですが、ここが弱いと、業務が分断したりセキュリティ事故が起きたりします。製品選定では、見えにくいこれらの機能こそ丁寧に評価する必要があります。
CRM/SFA・会計との連携機能
連携機能は、契約データを孤立させないための要です。CRM/SFAと連携すれば、取引先マスタを共有でき、契約起案時の当事者入力が不要になります。会計システムや経費精算と連携すれば、契約に紐づく金額情報が自動で流れ、転記とダブルチェックの工数が消えます。一次データでは「システム間で業務が分割され非効率」が導入後課題の38%を占めており、連携機能の有無が業務の連続性を大きく左右することが分かります。
連携の実現方式は、API連携、CSV連携、ファイル連携などがあり、製品によって対応範囲が異なります。リアルタイムで双方向に同期できるのか、バッチで一方向に流すだけなのかによって、業務の自動化レベルが変わります。標準で主要な会計・SFA製品との連携コネクタを備える製品もあれば、個別開発が必要な製品もあります。自社の既存システム構成を棚卸しし、どの連携が標準で、どこに開発が必要かを見極めることが、機能評価の重要な観点になります。
権限制御・アクセスログとコンプライアンス機能
契約は機密情報の塊です。誰がどの契約を閲覧・編集できるかを細かく制御する権限管理機能が欠かせません。部門別・役職別にアクセス権を設定し、機密性の高い契約は限られた担当者しか見られないようにします。さらに、誰がいつどの契約にアクセスし、何を変更したかを記録するアクセスログ・操作証跡の機能があれば、不正や情報漏えいの抑止と、万一の際の追跡が可能になります。
コンプライアンス機能としては、承認が完了するまで送信できない制御や、バックデート(契約日の遡及操作)を防ぐ仕組みが重要です。未承認契約の誤送信や、不適切な日付操作は、ガバナンス上の重大なリスクです。これらを機能で構造的に防げるかどうかが、内部統制の質を決めます。riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、連携・権限・コンプライアンスという横断機能を含めて、自社の統制要件に合った機能構成を設計することを重視しています。表に出にくいこれらの機能こそ、CLMを安心して使える基盤にするための核心です。
権限制御は、組織変更への追従性も評価ポイントです。人事異動や組織再編が起きたときに、権限を一括で見直せる仕組みがあれば、退職者や異動者が機密契約にアクセスし続けるリスクを防げます。逆に、権限の更新が手作業でしか行えない製品だと、運用が追いつかず権限が放置されがちです。さらに、各部門が勝手に別ツールで契約を扱うシャドーITを防ぐには、契約管理の窓口をCLMに一本化する運用が前提になります。機能とその運用のしやすさをセットで評価することが、長く安全に使えるCLMを選ぶ条件です。
まとめ

CLM・契約ライフサイクルマネジメントの機能は、契約の一生に沿って整理すると理解しやすくなります。作成フェーズではテンプレート管理と起案、審査フェーズでは条件分岐を備えた承認ワークフロー、締結フェーズでは立会人型/当事者型の電子署名・タイムスタンプと電帳法対応、そして締結後は全文検索・バージョン管理・更新期限アラートによる一元管理が中心です。さらにAI契約レビューやAI-OCRは効果が大きい一方、標準かオプションか、誤認識リスクをどう扱うかの見極めが必要です。
機能を選ぶときに大切なのは、製品の機能一覧を眺めることではなく、自社の契約業務のどのフェーズに課題があるかを起点に、必要機能の優先順位を付けることです。一元管理ができないという最多の課題を解くなら検索・アラートを、審査の滞留を解くなら承認ワークフローを軸に据えます。riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走を組み合わせ、自社の契約類型と業務フローに合わせた機能要件の整理を支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
