CLM・契約ライフサイクルマネジメント開発/導入のメリット/デメリット/効果と判断基準について

CLMの導入判断は、契約件数によって変わるメリットの大きさと、取引先の同意や従量課金といったデメリットを比べて行います。

判断の観点は、導入方式、コスト構造、開発手法の三つです。全体像をまだ把握していない場合は、まずCLM・契約ライフサイクルマネジメントの完全ガイドから読むのがおすすめです。

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導入のメリットとデメリットの正しい理解

CLM導入のメリットとして印紙税の不要化、デメリットとして取引先の同意を左右に示した比較図。
相手方の受け入れも導入効果とあわせて見ておけます。

判断の前提は、CLM導入のメリットとデメリットを正確に把握しておくことです。メリットばかりに目を向けると過大な期待を抱き、デメリットを軽く見ると、導入後に「こんなはずではなかった」となりかねません。そのため、両面を並べて自社にとっての正味の効果を見積もることが、判断の出発点になります。

コスト削減・効率化というメリットの定量的な中身

CLMの最大のメリットは、コスト削減と業務効率化を定量的に示せる点です。たとえば、一次データでは、月20件の契約を電子化すると、印紙税・郵送資材費・事務人件費の削減によって年間約96万円のコスト削減につながると試算されています。

費用削減で重視される項目を見ると、「印紙税の不要化」が30.6%(小規模企業では34.9%)で最も多く、次いで「郵送費削減」が20.0%です。さらに、「印刷費削減」も19.8%で続きます。これらは、契約件数が多いほど効果が大きくなる、規模に比例したメリットです。

効率化のメリットも見逃せません。稟議・承認を電子化すると、決裁者の不在による滞留が解消され、契約締結までのリードタイムが短くなります。

岡山県環境保全事業団では、遠隔申請により1件5分以上を短縮し、年150万円分の人件費を削減しました。また、KEC関西電子工業振興センターでは、会計転記とダブルチェックを減らすことで、申請処理業務を約4割削減した事例があります。

契約を一元管理すると、更新期限の見落としを防ぎ、機会損失を回避できます。これらは金額に換算しにくいものの、ガバナンス強化という形で確実に効いてきます。

自社の効果を見積もるときは、契約件数と効率化の効果を、自社の数字に当てはめて確かめます。

  • 契約件数:月に電子化する件数と、それに応じた削減額の大きさ
  • 効率化の効果:稟議の滞留や申請処理にかかる時間の削減幅

月に数件しか契約しない企業では、削減額が限られ、システム費用に見合わない場合もあります。逆に、月数十件から数百件の契約を扱う企業では、印紙税の非課税化と事務工数の削減だけで投資を十分に回収できます。

効果は契約件数で大きく変わります。そのため、自社の契約ボリュームを起点に金額を冷静に見積もることが、過大評価も過小評価も避ける判断の起点になります。

取引先同意・従量課金というデメリットの実像

一方で、CLM・電子契約には固有のデメリットがあります。最大のものは、相手方(取引先)の理解と同意が必要な点です。

電子契約は自社だけの判断では完結せず、相手方が電子での締結に応じなければ成立しません。取引先が紙の契約にこだわると、結局その取引だけ紙で対応せざるを得ず、紙と電子が混在して管理が二重化します。また、定期借地契約や任意後見契約のように、法律で書面交付が義務付けられ、電子化できない契約類型も存在します。

もう一つのデメリットは、想定外の従量課金です。立会人型の電子契約では送信1件あたり50〜300円の送信料がかかり、契約件数が想定を超えると月額コストが膨らみます。

固定費の安いプランを選んだつもりでも、送信が増えるとかえって割高になるケースもあります。さらに、AI契約レビューやAI-OCRは月額数万円規模の追加オプションとなり、当初予算を圧迫しかねません。

デメリットは、想定とコスト構造を見誤ると割高になる性質のものです。そのため、事前のシミュレーションで回避できます。

導入の前に、取引先の受け入れ具合と月額コストを、自社の状況に照らして見ておきます。

  • 取引先の受け入れ:電子での締結に応じるか、紙の契約が残るか
  • 月額コストの見通し:送信件数の想定と、オプションを含めた費用

運用面のデメリットとして、導入後に現場へ定着させるまでの手間も見込んでおく必要があります。一次データでは、導入企業の約8割が何らかの課題を抱えており、その多くが「現場で使われない」という定着の問題です。

新しいツールへの移行には、社内マニュアルの整備、現場教育、権限と承認ルートの再設計といった工数がかかります。これらを軽視すると、せっかくのメリットが現場の抵抗で打ち消されかねません。

デメリットを正しく見積もるには、コストだけでなく、定着までに要する社内の労力も計算に入れる必要があります。

ポイント

メリットは契約件数で大きく変わるため、自社の月間件数から金額を見積もります。デメリットは取引先の同意と従量課金が中心なので、導入前に相手方の受け入れと月額コストを確かめておくのが目安です。

方式選択の判断基準(クラウド/署名方式)

導入すると決めたら、次は「どう導入するか」を選びます。CLMでは、クラウド型かオンプレミス型か、署名方式は立会人型か当事者型かという、二つの観点があります。

最適な方式は、自社のセキュリティ要件、契約の重要度、相手方の事情によって変わります。だからこそ、判断基準を持って選ぶことが、後悔を避けるうえで欠かせません。

クラウド型とオンプレミス型の判断基準

クラウド型の利点は、初期費用が0円から始められ、サーバーの構築や保守の手間がかからない点です。電子契約サービスの多くはクラウド型で、月額基本料5,000〜10,000円程度から導入できます。

アップデートや法改正への対応もベンダーが行うため、運用の負担が軽く、中堅・中小企業にとって扱いやすい面があります。一方で、機密性の高い契約データを外部のクラウドに預けることへの抵抗や、自社の業務に合わせた深いカスタマイズに制約がある点はデメリットです。

オンプレミス型は、自社のサーバーで運用するため、セキュリティポリシー上クラウドが使えない金融機関や官公庁などに適しています。データを自社管理下に置けるうえ、業務に合わせた深いカスタマイズも可能です。ただし、初期構築費(連携カスタマイズを含めると数十万〜数百万円)と継続的な保守負担が発生します。

方式を選ぶときは、自社の状況をセキュリティとカスタマイズの両面から当てはめます。

  • セキュリティ要件:社内のポリシーがクラウドの利用を認めるかどうか
  • カスタマイズの深さ:業務に合わせた改修がパッケージの範囲で収まるか

クラウド型を選ぶ場合も、データの保管場所や、ベンダーのセキュリティ認証の取得状況は確認しておきます。契約は機密情報を扱うため、「クラウドだから不安」と漠然と捉えるより、暗号化やアクセス制御、第三者認証といった具体的な対策で安全性を評価することが大切です。

社内に運用リソースが乏しい場合は、保守をベンダーに任せられるクラウド型のほうが、かえって安定した運用につながる面もあります。多くの企業は、まずクラウド型で始め、要件が高度化した段階でオンプレミスや独自開発を検討する流れが現実的です。判断は、セキュリティと運用体制の両面から、自社の実情に合わせて下すことが肝心です。

立会人型と当事者型の使い分け基準

署名方式の判断基準は、契約の重要度と相手方の負担のバランスで決まります。立会人型(事業者署名型)は、相手方が電子証明書を用意せず、メール認証だけで締結できるため、手軽さからシェアの大半を占めます。

レビューシェアでもクラウドサインが66%、電子印鑑GMOサインが10%と、立会人型のサービスが市場を牽引しています。大多数の取引では、この立会人型が現実的な選択肢になります。

当事者型は、当事者本人が電子証明書で署名するため証拠力が高い反面、相手方にも電子証明書の発行費(1万円前後)が発生し、導入のハードルが上がります。

判断基準としては、「極めて高い証拠力が求められる重要契約は当事者型、日常的な取引は立会人型」という使い分けが合理的です。すべてを当事者型にすると相手方の負担で契約が進まず、すべてを立会人型にすると重要契約の証拠力に不安が残ります。

契約類型ごとに方式を出し分ければ、メリットを生かしつつデメリットを抑えられます。

方式を決めるときは、契約ごとの重要度に目を向けます。

  • 契約の重要度:取引の影響が大きく、高い証拠力が要る契約か
  • 相手方の慣れ:電子契約の操作に不慣れで、手軽な方式が合う取引先か

方式選択では、相手方の事情への配慮も判断材料になります。取引先の多くが電子契約に不慣れであれば、操作が簡単な立会人型を基本に据えるのが現実的です。逆に、金融機関や官公庁のように高い証拠力を求める相手とは、当事者型を選ぶ場面もあります。

自社の都合だけでなく、相手方が無理なく応じられる方式を選ぶことが、電子化率を高め、メリットを実際の成果に変えるうえで欠かせません。

ポイント

方式は、クラウドかオンプレミスか、署名は立会人型か当事者型かで決めます。判断の目安は、セキュリティ要件と取引先の負担で、重要な契約だけ当事者型を使う出し分けが現実的です。

コスト構造と開発手法の判断基準

固定費型と従量課金型、パッケージの標準機能と独自の契約類型・深い連携を4枚のパネルで整理した図。
契約件数と業務の複雑さで見る場所が分かれます。

残る観点は、コスト構造(固定費型か従量課金型か)と、開発手法(パッケージかフルスクラッチか)です。この二つを件数とコストの観点で見極めることが、長期的な投資効率を左右します。

とくにコスト構造は、損益分岐点を計算すると、自社に最適なプランが見えてきます。

固定費型と従量課金型の損益分岐点

料金プランは「固定費高め・送信無料」型と「固定費無料・送信課金」型に分かれます。

一次データの件数別の実質コストを見ると、月5件ではfreeeサイン(7,180円)やマネーフォワードクラウド契約(約7,128円)が安い水準です。一方、月200件になると、マネーフォワード(一律約7,128円)やGMOサイン(31,680円)が、送信課金型のクラウドサイン(55,000円)やDocusign(82,500円)より有利になります。

判断基準は明快で、「月の契約件数が一定を超えるなら、固定費が高くても送信無料・低額のプランが得」という損益分岐点を計算することです。想定外の従量課金を避けるには、この計算を自社の件数で具体的に行うことが最善策になります。

送信課金型は件数が少ないうちは安く見えますが、件数が増えると送信料が積み上がっていきます。逆に件数が少ないなら、固定費の安いプランで十分です。

プランを比べる前に、自社で押さえておく数字を一覧にしておきます。

  • 月間の契約件数:損益分岐点を見るための基準になる数
  • プランの月額と送信料:固定費と送信課金のどちらが安いかを比べる材料

判断では、現在の件数だけでなく将来の伸びも織り込む必要があります。導入初期は件数が少なくても、全社展開が進めば送信件数は増えていくためです。

たとえば、今の件数だけで送信課金型を選ぶと、展開後に割高になる可能性があります。件数が増えない見込みなのに固定費の高いプランを選ぶと、固定費を回収できません。

一次データの件数別コスト(月5件・50件・200件)を、自社の現在と数年後の見込み件数の両方に当てはめて比べれば、長期的に損をしないプランを選べます。コスト構造の判断は、時間軸を持って行うことが欠かせません。

パッケージとフルスクラッチの判断基準

開発手法の判断は、自社の業務がパッケージの標準機能でどこまで回るかで決まります。業務の流れが標準機能の範囲に収まるなら、クラウド型パッケージで十分です。

短期間・低コストで導入でき、運用負担も軽くなります。そのため、多くの企業にとって、まずはパッケージで始めるのが現実的かつ堅実な選択です。

一方で、独自の契約類型や基幹システムとの深い連携が必要な場合は、パッケージの標準機能では対応しにくくなります。さらに、契約・文書・稟議・帳票を一気通貫でつなぐ業務フローが必要な場合にも、標準機能だけでは対応しきれません。

「システム間で業務が分割され非効率(38%)」という課題は、パッケージを継ぎ接ぎした結果として生じやすいものです。

こうした場合は、フルスクラッチ開発で業務に合わせたシステムを構築する選択が有効です。riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、「パッケージで足りるか」「業務フロー全体を設計し直すべきか」の判断を、件数・連携・業務の連続性の観点から支援します。

判断では、業務の範囲と連携先を書き出して確かめます。

  • 承認ルート:標準的な流れで足りるか、条件分岐が多くないか
  • 連携先:既存システムとの接続が汎用的な範囲に収まるか

ポイント

料金は、現在と数年後の契約件数で損益分岐点を計算して比べます。開発手法は、業務がパッケージの標準機能で回るかどうかで決め、承認ルートや連携が複雑ならフルスクラッチを検討します。

総合的な投資判断と補助金活用の視点

ROI試算と補助金活用に関わる契約件数と平均金額、人件費の単価、対象製品の範囲、予算と回収期間を示すチェックリスト図。
効果の試算と初期負担の確認を並行して進められます。

個々の方式やコスト構造の判断観点を押さえたら、最後にそれらを合わせて、自社として「導入すべきか」「どの規模で投資すべきか」を決めます。その際に役立つのが、ROIによる稟議の通し方と、補助金の活用です。

投資判断は、削減効果を数字で示すことと、初期投資を抑える方法をセットで考えると、現実的な判断になります。

ROIで稟議を通すための定量化

導入の意思決定で最大の関門が、経営層への稟議です。ここを通すうえで効果が大きいのが、定量的なROIシミュレーションです。

一次データでは、月20件を電子化すると年間約96万円の削減になると示されています。その内訳は、印紙税、郵送資材費、事務人件費の削減によるものです。また、月100件では月12.5万円の削減(紙16.5万円→電子4万円)が試算されています。

自社の契約件数・平均金額・人件費単価に当てはめて削減額を算出し、システム費用と比べれば、何か月で投資を回収できるかが見えてきます。

とくに印紙税の削減は、稟議で訴求力が高い項目です。1件あたりでは、1,000万円の契約で1万円、7,000万円の契約で6万円、5,000万円超〜1億円以下の契約で3万円の印紙税が不要になります。

高額契約を多数交わす業種なら、印紙税の非課税化だけで年間数百万円規模の効果が出ます。そのため、削減効果を出典付きの具体的な金額で示すことが、稟議を通す決め手になります。判断に迷うときは、まずこのROI計算から始めるのが定石です。

稟議の資料には、自社の数字を当てはめる項目を揃えておきます。

  • 契約件数と平均金額:印紙税の削減額を算出する基になる数字
  • 人件費の単価:事務工数の削減を金額に換えるための数字

補助金で初期投資を抑える判断

IT導入補助金などの公的支援を使えるかどうかは、初期投資の負担を考えるうえで欠かせない視点です。多くの製品が補助金の対象となっており、ソフトウェアの導入費用の一部が補助されます。

インボイス枠やセキュリティ対策推進枠といった区分によって、補助率や上限が異なります。場合によっては、PCやタブレットといったハードウェアも対象になることがあります。

補助金を使えば、同じ予算でより充実した機能を導入したり、初期投資の回収期間を短縮したりできます。ただし、補助金には申請のスケジュールや要件があり、計画的な準備が必要です。

表示だけで判断せず、自社が使える枠、補助率と上限、申請から交付までの流れを事前に確かめます。補助金の有無は、パッケージかフルスクラッチか、どこまでの機能を初期に入れるかという判断にも影響します。

riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走の立場から、ROIによる稟議設計と補助金活用を含めた総合的な投資判断を支援し、無理のない規模での導入を後押しします。判断とは、メリットとデメリットを比べるだけでなく、回収計画と投資を抑える策まで描き切ることなのです。

補助金を検討する際は、対象製品の範囲と初期費用の見通しを押さえます。

  • 対象製品の範囲:自社が導入する機能や製品が補助の対象に入るか
  • 予算と回収期間:補助を使った場合の初期投資の額と、回収期間の見通し

ポイント

投資は、削減額をROIで数字にして稟議に出し、初期投資は補助金の枠を確かめて抑えます。どちらも自社の件数と予算に当てはめて考えると、無理のない導入の判断になります。

まとめ

CLM・契約ライフサイクルマネジメントのメリットは、月20件で年96万円のコスト削減や申請処理の約4割削減といった定量効果と、更新管理によるガバナンス強化に集約されます。

デメリットは、取引先同意の必要性、電子化できない契約類型、想定外の従量課金です。これらを踏まえて、クラウドかオンプレミスか、立会人型か当事者型か、固定費型か従量課金型かを選びます。

パッケージかフルスクラッチかの判断も含め、自社のセキュリティ要件と契約の重要度に加えて、件数や業務の連続性に照らして選ぶことが、判断の中心になります。

大切なのは、メリットを確かめたうえで、損益分岐点とデメリットの回避策をセットで設計することです。件数別コストを計算し、相手方の事情を踏まえ、業務の連続性を損なわない手法を選べば、CLMは確実に投資に見合う成果を生みます。

riplaはフルスクラッチ受託と業務伴走を組み合わせ、メリット・デメリットの定量化から最適な導入方式の選定までを支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。