クラウド開発/構築の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

クラウド開発・構築は、目的と運用の要件を整理したうえで、要件定義から設計・開発、テスト・リリースへと段階的に進めます。

工程ごとの進め方、費用相場、発注先の選び方、設計のポイントを順に見ていきます。コスト超過や遅延、セキュリティリスクを防ぐための確認事項も、あわせて整理します。

  • 発注前に行う目的、構成、運用体制、予算の整理
  • AWSなどの方式、安全対策、連携要件の比較
  • テストと監視による、本番後の品質と費用の管理

国内のクラウド市場も拡大を続けています。IDC Japanの調査によると、2024年の国内クラウド市場は前年比29.2%増の9兆7,084億円に達し、2029年には19兆円規模に拡大すると予測されています。

クラウド開発・構築の全体像は、以下の完全ガイドで詳しく扱っています。

▼全体ガイドの記事
・クラウド開発/構築の完全ガイド

クラウド開発/構築の全体像

IaaSのインフラ層、PaaSのアプリケーション実行環境、SaaSの業務アプリケーションを積層で示した図。
上位の形態ほど、利用者が扱う対象はアプリケーションに近づきます。

クラウド開発の種類と特徴

クラウド開発・構築の形態は、クラウド上で何を提供するかによって、大きく3つに分けられます。

  • IaaS(Infrastructure as a Service):仮想サーバーやストレージ、ネットワークといったインフラ層
  • PaaS(Platform as a Service):アプリケーションの実行環境やデータベース、開発ツール
  • SaaS(Software as a Service):業務アプリケーションそのもの

IaaSは、AWSのEC2やMicrosoft AzureのVirtual Machinesが代表例で、インフラの設定や管理は自社で行う必要がある一方、カスタマイズの自由度が高いのが特徴です。PaaSは、Google App EngineやAWS Elastic Beanstalkが代表例です。

インフラ管理の負担を最小限に抑えてアプリケーション開発に集中できるため、スタートアップや中規模企業での利用が多い傾向にあります。

SaaSは、Salesforce、Slack、Microsoft 365などが該当し、自社で開発や構築をしなくても、すぐに機能を使えることが最大のメリットです。また、サーバーレスアーキテクチャやコンテナ技術(DockerやKubernetes)を活用したクラウドネイティブ開発も急速に普及し、より柔軟でスケーラブルなシステム構築が可能になっています。

クラウド開発が選ばれる理由

クラウド開発が多くの企業に選ばれる最大の理由は、初期投資の大幅な削減と迅速な開発開始を両立できる点です。オンプレミス環境では、サーバー購入費用だけで数百万円から数千万円を要することも珍しくありませんが、クラウドならそうした初期投資なしに開発を始められます。さらに、開発フェーズでも必要な計算リソースを必要なときだけ調達できるため、コスト効率が大きく改善されます。

スケーラビリティの高さも、選ばれる理由の一つです。オンプレミスでは、トラフィックの急増に備えて過剰なサーバーを保有しなければなりませんが、クラウドなら需要に応じてリソースを自動的に拡張・縮小できます。また、クラウドベンダーが提供する堅牢なセキュリティ機能や、世界各地にデータセンターを持つ高可用性設計も、クラウド開発を選ぶ強力な理由となっています。

2025年時点では、生成AIとの統合が新たな付加価値として注目されています。AWS BedrockやAzure OpenAI ServiceといったクラウドネイティブなAIサービスを活用すれば、AI機能を自社システムに迅速に組み込むことも可能です。

ポイント

形態は、インフラ管理を自社で担うか、開発に集中したいか、既製の業務アプリで足りるかを基準に選ぶと、判断しやすくなります。

クラウド開発/構築の進め方

要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースの3フェーズを順に並べた図。
各工程の決定事項が、次の工程の判断材料になります。

要件定義・企画フェーズ

クラウド開発・構築の最初のステップである要件定義・企画フェーズでは、「何を作るか」だけでなく「どのように運用するか」まで具体化します。ビジネス課題、定量情報、配置の方針を、この段階で押さえておきます。

  • ビジネス課題:解決すべき課題
  • 定量情報:対象ユーザー数、想定トラフィック、データ量
  • 配置の方針:パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスを組み合わせたハイブリッド戦略が最適かどうか

たとえば「月間100万ページビューに対応できる負荷耐性」「99.9%以上の稼働率」といった数値目標を定めると、設計フェーズで技術的な判断の基準が明確になります。また、次に行うクラウドサービスの選定では、2025年時点の世界市場シェアが、AWSは約29%で首位を維持し、Azureは約22%、GCPは約12%です。

選定の基準は利用目的によって異なり、このフェーズで適切なプロバイダーを選べるかどうかが、プロジェクト全体の成否を左右します。既存のMicrosoft製品(Office 365やActive Directory)との連携を重視するならAzure、データ分析や機械学習が中心ならGCPのBigQueryやVertex AIが適しています。

AWSは、サービスの豊富さと情報量の多さを活かし、幅広い用途に対応できる汎用性が強みです。

設計・開発フェーズ

設計フェーズは、基本設計と詳細設計の2段階で進めるのが一般的です。基本設計で全体の構成を、詳細設計で各部分の仕様を固めていきます。

  • 基本設計:システム全体のアーキテクチャ(マイクロサービスを採用するか、モノリスアーキテクチャを維持するかの判断を含む)
  • 詳細設計:各サービスの設定値、API仕様、データベーススキーマ
  • ネットワークと権限:VPCやサブネットによるネットワーク構成、IAM(Identity and Access Management)によるアクセス権限設計

近年は、開発の独立性と柔軟なスケーリングを実現するため、マイクロサービスとコンテナ技術(DockerおよびKubernetes)を組み合わせた構成が主流です。インフラ構成をコードで管理するInfrastructure as Code(IaC)を採用すると、環境の再現性と管理効率が大幅に向上します。

TerraformやAWS CloudFormationが代表的なIaCツールとして広く利用されています。

開発フェーズでは、CI/CD(継続的インテグレーション・継続的デリバリー)パイプラインを早期に構築することが成功の鍵です。GitHub ActionsやAWS CodePipelineを使い、コードのコミットから自動テスト、ステージング環境へのデプロイまでを自動化すると、開発サイクルを大幅に短縮できます。また、開発・ステージング・本番の各環境を明確に分けて、環境差異によるトラブルを防ぎます。

テスト・リリースフェーズ

テストフェーズでは、クラウド環境特有のテスト項目を漏れなく実施することが求められます。機能テストで各APIエンドポイントや画面が設計どおりに動くかを確認したうえで、負荷テストでは想定最大トラフィックの1.5〜2倍程度の負荷をかけても正常に動くかを検証します。クラウドの自動スケーリングが適切に動いているかも、この段階で確認が必要です。

AWS Load Testing(旧Distributed Load Testing)やk6を使い、負荷を段階的に増やしながらボトルネックを特定します。セキュリティテストも欠かせません。IAMの権限が最小権限の原則に従っているか、ストレージやデータベースへのアクセスが適切に制限されているか、TLS/SSLによる通信の暗号化が正しく設定されているかを検証します。

また、脆弱性診断ツールによる自動スキャンや、専門のセキュリティ会社によるペネトレーションテストの実施も推奨されます。リリース時はブルーグリーンデプロイメントやカナリアリリースを活用し、問題が起きても迅速にロールバックできるようにします。リリース後は、CloudWatchやDatadogで状態を継続的に監視し、問題の早期発見と迅速な対応を可能にします。

ポイント

各フェーズで決めた数値目標や要件は、次の工程の判断材料になります。迷ったときは、前の工程の決定事項に戻って確かめると安全です。

費用相場とコストの内訳

小規模、中規模、大規模のクラウド開発について、本文記載の総開発費用の範囲を並べた図。
規模によって費用帯に大きな幅があります。

人件費と工数

クラウド開発で最も大きいコスト要素は人件費で、クラウドエンジニアの正社員平均年収は約580万円(求人ボックス調べ)です。フリーランスや業務委託の場合は月額60万円〜120万円程度が相場で、AWSやGCPの認定資格を持つ上位エンジニアは、月額100万円を超えることも珍しくありません。クラウドに精通したアーキテクトが必要なため、人員配置は規模に応じて検討することが費用効率の面からも大切です。

プロジェクトの規模別に見ると、小規模なクラウド移行や簡単なWebサービス構築では総開発費用が100万円〜300万円程度で収まることが多く、中規模のカスタムシステム開発では500万円〜2,000万円です。大規模な基幹システムのクラウド移行では、5,000万円〜1億円以上の予算が必要になることもあります。

全体の工数は、要件定義が10〜15%、設計が15〜20%、開発・構築が40〜50%、テストが15〜20%、リリース・移行作業が5〜10%程度を占めるのが一般的です。既存のオンプレミスシステムをクラウドに移すリフト&シフトでは、既存システムの複雑さによって工数が大きく変動します。レガシーシステムの場合は依存関係の整理やコードの改修が必要になるため、新規開発より工数が多くなることもあります。

初期費用以外のランニングコスト

クラウド開発で見落とされがちなのが、ランニングコストです。クラウドサービスの利用料金は従量課金が基本で、利用状況に応じてコストが変動します。AWSやAzure、GCPのサーバー(仮想マシン)は、スペックによって月額数百円から数十万円まで幅広く、一般的な中規模Webシステムでは月額3万円〜30万円程度のインフラコストが発生します。

これに加えて、データ転送料金、ストレージ費用、CDN利用料、データベースのライセンス料なども発生します。システムの保守・運用では、クラウドエンジニアによる継続的な監視・保守に月額20万円〜50万円程度が相場となっています。さらに、アップデートへの対応やセキュリティパッチの適用、パフォーマンスチューニング、コストの見直しも定期的に必要です。

リザーブドインスタンスやスポットインスタンス(AWSの場合)などの割引オプションを使うと、オンデマンド価格と比べて30〜70%程度のコスト削減が可能です。長期的なTCO(総所有コスト)の観点から、オンプレミスとの比較検討を行うことは、クラウド移行の判断で欠かせません。

ポイント

費用は初期開発費だけで比べず、月次の利用料と保守・運用費を合わせて見ると、見積もりの差を正しく読み取れます。TCOで比べる考え方も、判断の目安として役立ちます。

見積もりを取る際のポイント

要件明確化と仕様書の準備

クラウド開発の見積もりを正確に取るには、要件を詳細かつ明確に整理した仕様書を用意することが欠かせません。仕様書では、システムの目的や対象ユーザー、機能要件(どのような機能が必要か)と、非機能要件(パフォーマンス、可用性、セキュリティ水準)を文書にまとめることが第一歩です。

特にクラウド開発では、月間のアクティブユーザー数、1日あたりのAPIリクエスト件数、データ保存量の見込み、必要な可用性(SLA)といった定量的な指標を明確にします。こうすることで、発注先は適切なアーキテクチャを設計し、正確な費用算出を行えます。

仕様書には、利用予定のクラウドプロバイダー、既存システムとの連携要件、データ移行の有無、リリースの希望時期も書いておきます。仕様が曖昧だと、発注先ごとに見積もりの前提が変わって比較しにくくなり、後から追加費用が発生するリスクもあります。不明な点が残る場合は、コンサルティングフェーズとして要件整理だけを先に依頼し、その結果で本開発の見積もりを取る二段階の進め方も有効です。

複数社比較と発注先の選び方

クラウド開発の発注先は、必ず複数社(最低でも3社以上)から見積もりを取ることをお勧めします。費用だけでなく、開発アプローチ、使用技術、プロジェクト体制、保守サポート体制も合わせて比較することが大切です。まず確認したいのは、対象クラウドプロバイダーの認定パートナー資格を保有しているかどうかです。

AWSであればAWSパートナーネットワーク(APN)、AzureであればMicrosoftクラウドパートナープログラム(MCPP)の認定を受けているかどうかが、技術力の目安となります。実績面では、自社の業界や規模に近い事例を持つ企業を優先すると、成功率を高められます。

医療系や金融系など規制要件の強い業界では、HIPAAやPCI DSSなど業界特有のコンプライアンス要件への対応経験を持つ企業に依頼することが不可欠です。開発後の運用・保守を同じベンダーに継続して頼むかどうかも、検討しておきたい点です。クラウド環境は構築後も継続的な見直しが必要なため、長期的なパートナーシップを前提に発注先を選ぶことが、安定運用につながります。

注意すべきリスクと対策

クラウド開発・構築で特に注意したいリスクの一つが、ベンダーロックインです。特定のクラウド固有の機能やサービスに強く依存した設計にすると、将来ほかのクラウドへ移行する際に膨大なコストと工数がかかります。これを防ぐには、固有サービスをできるだけ避け、Kubernetesのようなポータブルな技術やコンテナ技術を使うか、マルチクラウドを前提に設計することが有効です。

従量課金の仕組みでは、利用量が予想を超えると請求額が大幅に膨らむおそれがあります。AWS Cost ExplorerやAzure Cost Managementなどのコスト監視ツールを導入し、月次予算の上限アラートを設定しておくことで、これを防げます。

SLA(サービスレベルアグリーメント)の適用条件にも注意が必要です。たとえばAWSの多くのサービスは、単一のアベイラビリティゾーンだけではSLAが適用されず、複数ゾーンにまたがる冗長構成が求められます。セキュリティリスクは、IAMの権限を最小権限の原則に基づいて厳密に管理し、定期的なセキュリティ監査を実施することで、情報漏洩や不正アクセスを大幅に低減できます。

ポイント

見積もりを比べるときは、各社の前提(要件の範囲や想定する利用量など)がそろっているかを先に確かめると、金額の差の理由が見えてきます。

まとめ

クラウド開発・構築は、適切な手順と知識を持って進めれば、スピーディーかつコスト効率の高いシステムを実現できます。まず要件定義フェーズで目的と非機能要件を明確にし、適切なクラウドプロバイダーを選定することが、プロジェクト成功の第一歩となります。

設計・開発フェーズではInfrastructure as CodeやCI/CDといったクラウドネイティブな手法を積極的に活用し、テスト・リリースフェーズでは負荷テストとセキュリティテストを徹底することが求められます。

費用は開発規模に応じて100万円から数億円まで幅広く変動するため、初期開発費だけでなく月次のインフラ利用料や保守・運用コストを含めたTCOで比較することが大切です。

見積もりを取る際は、詳細な仕様書を準備したうえで3社以上に依頼し、技術力・実績・サポート体制を総合的に評価して発注先を選定してください。ベンダーロックインやコスト管理のリスクを事前に把握し、適切な対策を講じておくことで、クラウド開発の恩恵を最大限に受けられます。

2025年以降もクラウド市場は年率15%以上の成長が見込まれており、生成AIとの融合も進む中で、クラウド開発・構築の重要性は一層高まり続けるでしょう。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。