建設・建築業界のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

建設・建築業界のシステム開発は、現場業務と経営管理の要件を整理したうえで、要件定義、設計、テスト、移行、運用・保守の順に段階を踏んで進めるのが基本です。業界固有の業務が絡むため、各フェーズには特有の考慮事項も出てきます。

  • 工程、原価、安全、現場モバイルの要件を整理する
  • 建設ERP、積算、BIMなど既存システムとの連携を設計する
  • 現場検証、移行、教育、保守の計画を立てる

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・建設・建築業界のシステム開発の完全ガイド

建設・建築業界のシステム開発の全体像

建設業界のシステム開発で考慮する4つの事情を並べた図解
工事ごとの違いから法令対応まで、考慮点は幅広く分かれます。

開発フェーズの概観

建設・建築業界のシステム開発も、一般的なソフトウェア開発と同じく「要件定義→設計→開発→テスト→リリース→運用・保守」の流れで進みます。ただし、業界固有の複雑な業務プロセスが絡むため、各フェーズに特有の考慮事項があります。

特に、現場作業者がスマートフォンやタブレットを使う「現場モバイル対応」や、建設ERP・積算ソフト・BIMツールとの「外部システム連携」は、開発前から計画に組み込む必要があります。

プロジェクト期間は規模によって異なります。一般的な目安は、小規模(単機能の管理ツール)で3〜6ヶ月、中規模(工程管理+原価管理の統合)で6〜12ヶ月、大規模(全社横断の統合基幹システム)で12〜24ヶ月以上です。

建設業界特有の開発難易度

建設・建築業界のシステム開発が他業種と異なる主な理由は、4つあります。①工事ごとに異なる業務フロー、②現場・本社・協力会社間の三者連携、③建設業法(施工体制台帳・技術者管理・下請け規制)への法的対応、④BIM/CIMや3次元設計データの取り扱いです。

業界特有の事情を考えずに汎用システムを導入すると、現場での実用性が低くなりがちです。

成功のカギとなる3つのポイント

建設・建築業界のシステム開発を成功させるポイントは、3点あります。①現場担当者を含めたステークホルダーの巻き込み、②段階的な機能リリース(スモールスタート)、③既存の業務フローを整理して標準化することです。

特に、現場が実際に使えるシステムにすることを最優先に考え、現場担当者の声を要件定義の段階から取り入れることが大切です。

要件定義フェーズの進め方(建設業界固有の業務要件の洗い出し)

要件定義で整理する現状業務、機能、非機能、既存システム連携の4領域を示す図解
業務の現状からシステム連携まで、要件を4方向から捉えます。

現状業務の可視化とAs-Is分析

要件定義の第一歩は、現状業務を見える形にすることです。工程管理・原価管理・施工管理のほか、安全管理・労務管理・図面管理など、建設業界特有の業務プロセスを一覧にします。そのうえで、各業務の担当者、使用ツール、課題、データの流れを整理します。

ヒアリングは、現場監督・経理・安全管理者・経営層など多角的な立場から行い、「現場で実際に困っていること」を引き出すことが欠かせません。次に、業務フロー図(As-Is)を作成し、工事の受注から完工・精算までの一連の流れを文書にまとめます。

建設業では工事番号ごとに原価が発生するため、原価コード体系の整理も必須の作業です。また、建設業法に基づく施工体制台帳・再下請負通知書の作成や技術者の専任管理など、法令対応の要件も漏れなく洗い出します。

機能要件・非機能要件の定義

機能要件では、「何ができるシステムにするか」を具体的に定義します。建設業界で典型的な機能要件には、工程表(バーチャート・ネットワーク工程表)の作成・管理、出来高管理、原価実績の自動集計があります。

そのほか、施工写真の管理・提出、安全パトロール記録、作業員の入退場管理(グリーンサイト連携等)もよく挙がります。さらに、協力会社への発注・支払い管理も含まれます。

非機能要件では、「どの程度の品質・性能・セキュリティが必要か」を定義します。建設現場での利用を想定すると、電波状況が悪い環境でのオフライン動作対応、スマートフォン・タブレット対応のレスポンシブ設計、雨天・日差しの中でも視認しやすいUIが特有の要件になります。さらに、図面ファイル(PDF・DWG)の大容量データを扱うストレージ設計も必要になります。

既存システムとの連携要件の整理

建設会社では、既存の積算ソフト(KOUSYS・建設大臣・ヤマトシステム等)、建設ERP(PCA・奉行・SAP)などを既に利用していることが多いです。加えて、グリーンサイトやBIMツール(Autodesk Revit・ArchiCAD等)も使われることが多いです。そのため、新システムとのデータ連携要件を明確にしておく必要があります。

連携方式はAPI連携・CSV連携・データベース直結など複数の選択肢があり、それぞれコストと保守性が異なります。

要件定義の段階で連携対象システムと連携内容(どのデータを・いつ・どの方向で)を詳細に定義しておけば、設計・開発フェーズでの手戻りを防げます。

ポイント

要件定義では、現場で実際に困っていることが要件に入っているか、連携先と連携内容が決まっているかを目安にすると確かめやすくなります。

設計・開発フェーズの進め方

システム設計(基本設計・詳細設計)

設計フェーズは、「基本設計(外部設計)」と「詳細設計(内部設計)」の2段階で進めます。基本設計では、画面設計(ワイヤーフレーム)とデータベース設計(ER図)のほか、システム構成設計(インフラ・クラウド環境)や外部インターフェース設計も行います。

建設業界では、工事台帳・原価台帳・工程表など複雑なデータ構造が求められるため、データモデリングに十分な時間をかけることが大切です。詳細設計では、各機能の処理ロジックを細かく定義します。

たとえば、工程管理機能であれば、工程表の自動更新ルール、クリティカルパスの計算ロジック、遅延アラートの判定条件などを具体的に記述します。また、原価管理では、予算対実績の差異計算、原価消化率の算出方法、完成工事総利益の予測ロジックなどを設計します。

現場を意識したUI/UX設計

建設現場では、作業員がヘルメットを着用した状態でスマートフォンを操作することが多く、片手操作、大きなタップ領域、見やすいフォントサイズといった現場特有のUI要件が生まれます。また、日差しの強い屋外での視認性を確保するために、コントラスト比の高い配色設計が求められます。

プロトタイプを早期に作って現場担当者にユーザビリティテストを実施すると、「使われないシステム」になるリスクを大幅に低減できます。

アジャイル開発vs.ウォーターフォール開発の選択

建設業界のシステム開発では、要件が比較的明確で変更が少ない場合にウォーターフォール開発が、業務の変化が激しく段階的に機能を広げたい場合にアジャイル開発(スクラム等)が適しています。

近年は「ハイブリッド型」として、要件定義はウォーターフォールで固め、開発はスプリント単位のアジャイルで進める方式が増えています。この方式なら、変化への対応力と計画的な進捗管理を両立できます。

ポイント

設計では、データ構造と処理ロジックを具体的に決められているかが目安になります。開発方式は、要件が変わりやすいかどうかで選ぶと考えやすくなります。

テスト・検証フェーズの進め方

単体テストからユーザー受入テストまでの4段階の順序を示す図解
テスト対象を機能単位から実際の利用者へ広げます。

テストの種類と実施順序

テストフェーズは、「単体テスト→結合テスト→システムテスト→ユーザー受入テスト(UAT)」の順で実施します。

単体テストでは、開発者が各機能モジュールを個別に検証します。続く結合テストでは、複数機能間のデータ連携・API連携が正しく動くかを確認します。

システムテストでは、本番環境に近い構成で性能テスト・セキュリティテスト・障害復旧テストを実施します。

現場でのユーザー受入テスト(UAT)の実施方法

UATは、実際の現場担当者がシステムを操作し、業務フローに沿ってすべての機能を検証するテストです。建設業界では、工事番号・作業員情報・協力会社情報等を含む工事データを使い、現実に近いテストシナリオを作ることが大切です。

テスト期間中に発見した不具合や改善要望は、バグ管理ツール(Backlog・Jira等)に集めて管理し、優先度を付けて修正します。また、UATの合格基準を事前に合意しておくと、リリース可否の判断が明確になります。

現場環境でのパイロット運用

全社展開の前に、特定の工事現場でパイロット運用(試験導入)を行うことをおすすめします。パイロット運用では、実際の業務の中でシステムを使うことで、テスト環境では発見できなかった課題を洗い出せます。たとえば、電波の弱い地下現場での動作や、大量データ処理時のレスポンス低下などがあります。

パイロット期間は通常1〜2ヶ月程度です。その間にフィードバックを集め、本番展開の前に改善を行います。

ポイント

リリース可否は、事前に決めた合格基準を現場担当者のテストで満たせたかを目安にします。パイロットで出た課題も、本番展開の前に直しておきます。

リリース・移行フェーズの進め方

データ移行の計画と実施

既存システムやExcelから新システムへのデータ移行は、リリースフェーズで最もリスクの高い作業のひとつです。建設業界では、工事台帳・取引先マスタ・作業員情報・原価実績などの過去データを、新システムへ移す必要があります。

移行作業は「データクレンジング(整合性チェック・重複排除)→移行プログラム開発→テスト移行→本番移行」の順で進めます。本番移行の前には必ずリハーサルを行います。移行後も、データの欠損や誤りがないかを十分に確かめます。

ユーザートレーニングと展開計画

建設・建築業界では、ITリテラシーに差がある現場作業員・事務員・経営者など、多様なユーザーが使います。そのため、役割ごとのトレーニングプログラムを用意しておくことが大切です。

操作マニュアル、動画マニュアル、よくあるQ&Aといった教育コンテンツを整えます。そのうえで、リリース前に各部門のキーユーザーへトレーニングを行います。

拠点ごとや機能ごとに順次展開する段階的リリースを採用すると、全社一斉リリースのリスクを分散できます。

ポイント

移行とリリースでは、過去データに欠損や誤りがないことと、教育と段階的な展開の計画が立っていることが判断の目安になります。

運用・保守フェーズの進め方

システム監視と障害対応体制の構築

本番稼働後は、システムの稼働状況を継続的に監視する体制を作ります。クラウドシステムの場合は、AWS CloudWatch・Azure Monitor等の監視ツールを使い、サーバーリソース、レスポンスタイム、エラー発生率などを常時モニタリングします。

障害が起きたときの対応フロー(エスカレーション先、復旧手順、ユーザーへの通知方法)は、あらかじめ定めておきます。そのうえで、SLA(サービスレベルアグリーメント)として開発会社と合意しておく必要があります。

継続的な機能改善と建設DX推進

システムの価値を保つには、ユーザーからのフィードバックを定期的に集め、機能改善のサイクルを回すことが欠かせません。建設業界では、2024年問題(時間外労働の上限規制)、インボイス制度対応、電子帳簿保存法対応など、法令変更への継続的な対応も必要です。

BIM・CIMの普及、IoTセンサーによる現場管理、AIによる工程最適化などの建設DXの最新技術を、段階的に取り込む中長期のロードマップも用意しておくと、システムの陳腐化を防げます。

運用・保守コストの適正管理

システムは、開発が済んだあとも運用・保守の費用が継続してかかります。一般的に、開発費の15〜20%程度が年間の運用・保守コストの目安です。

保守契約の内容(対応範囲・応答時間・費用)は、開発会社と明確に合意しておきます。そのうえで、予算計画にも組み込みます。

内製化できる範囲(マスタ管理、ユーザー追加等)は社内で行い、専門性の高い作業(セキュリティアップデート、バージョンアップ対応等)は開発会社に任せます。この分担は、コスト効率の観点から有効です。

ポイント

運用では、障害時の対応をSLAとして開発会社と合意できているかと、保守の範囲と費用を予算に組み込めているかが目安になります。

まとめ

要件定義から運用・保守まで、建設・建築業界のシステム開発には、各フェーズに固有の考慮事項があります。

工程管理・原価管理・施工管理・安全管理など複雑な業務プロセスを正確にシステム化するには、現場担当者を巻き込んで丁寧に要件を定義することと、現場環境を考えたUI/UX設計が成功の鍵になります。

本記事で解説した進め方を参考に、自社の状況に合ったシステム開発計画を立ててください。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。