契約管理システム開発のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

契約管理システムのフルスクラッチは、独自要件や複雑な連携が必要な場合の候補です。厳格なセキュリティ要件や保守体制も判断材料になります。

起案から更新までをワークフローで統制するCLM(契約ライフサイクルマネジメント)も選択肢です。本稿は締結済み契約の保管・検索・期限管理・台帳管理を中心に扱います。

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契約管理システムにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発の定義

フルスクラッチは、既製のパッケージやSaaSを使わず、自社の要件に合わせてシステムを設計・開発する方法です。契約管理では、保管・検索・期限アラート・台帳管理を、自社独自の項目や検索条件、アラート条件に合わせて作ります。また、既存システムとの連携仕様も、自社の運用に沿って設計できます。

SaaSは、用意された機能に自社の運用を当てはめて使う形です。一方で、フルスクラッチは自社の運用に合わせてシステムを作ります。

標準機能で足りる企業にはSaaSが有利ですが、既製品の制約が業務を妨げる場合は、自由度に価値があります。方式の違いと選ばれる背景を知ることが、適切な選択の出発点です。

パッケージ・SaaSとの違い

導入形態は、費用・導入期間・カスタマイズの自由度を並べて比べます。

  • SaaS型:初期費用0〜数万円程度、月額数百円/人〜で、導入は即日〜数週間。
  • パッケージ型:初期費用100万〜500万円程度、導入まで数ヶ月〜半年。
  • フルスクラッチ型:初期費用は最低500万円以上、導入期間は半年〜数年。

SaaSは低コストで始めやすい一方、機能やカスタマイズはベンダーが用意した範囲に限られます。

パッケージ型は、自社サーバーへの構築や一定のカスタマイズに対応します。ただし、基本設計を大きく超える変更には限界があります。

フルスクラッチは既存ツールを使わずに開発します。機能や連携が複雑になるほど費用が増え、数千万円以上に達することもあります。その分、自社の要件に100%合わせたシステムを構築できます。

パッケージへの過度なカスタマイズで費用や期間が膨らむと、結果としてフルスクラッチに近い費用になるケースもあります。カスタマイズが一定量を超えるなら、最初からフルスクラッチを選ぶ方が合理的な場合もあります。

フルスクラッチが選ばれる背景

SaaSの機能が充実し、多くの企業は契約管理をSaaSで賄えます。それでも、既製品では対応できない事情がある企業は、フルスクラッチを選ぶことがあります。

  • 独自の管理項目:業界特有の情報や契約類型を扱う必要がある場合。
  • 既存システムとの連携:契約データを業務の流れに組み込むこと。
  • 自社独自のノウハウ:契約管理の知見をシステムに反映すること。

契約書には機密情報が含まれるため、社内規程やセキュリティポリシーによっては、自社環境での運用が必須となる企業もあります。

業務に合うシステムの価値が、フルスクラッチの高い費用と長い期間を上回ることがあります。ただし、明確な理由がないままフルスクラッチを選ぶと、SaaSで足りる機能に多額の投資をしてしまうおそれがあります。

検討では、「なぜ既製品ではダメなのか」を具体的に言葉にしておく必要があります。

ポイント

まずはSaaSの標準機能で業務が回るかを確かめます。標準機能で回らない部分が業務の核にあるかどうかで、フルスクラッチの価値を見極めます。

フルスクラッチが必要になるケース

契約書を中心に、自社管理のオンプレミスやアクセス制御などのセキュリティ要件を示した図
保管環境とアクセス管理の両面から要件を整理できます。

フルスクラッチが合理的なのは、限られたケースです。既製のSaaSやパッケージでは満たせない代表例を、独自要件・複雑な連携とセキュリティの観点から見ていきます。

標準機能では満たせない独自要件・複雑な連携

大企業向けのパッケージやSaaSでも、機能不足や運用とのずれ、独自項目への対応が課題になる場合や、密接で高度な基幹連携が必要な場合は、フルスクラッチが検討されます。

  • 独自の台帳項目:業界特有の契約情報を既製品で表現できない場合。
  • 複数システムとの連携:会計・販売・購買へ契約データを自動連携する場合。
  • 一気通貫の処理:契約から請求・支払いまでを連続して処理したい場合。

既製品のカスタマイズやAPI連携でも一部は対応できますが、範囲が広がるほど費用がかさみます。さらに、カスタマイズ費用は数十万〜数百万円規模で積み上がることもあります。

既製品の基本設計に縛られ、理想の連携を実現できない場合もあります。過度なカスタマイズを重ねるより、業務フローに沿って設計する方が、長期的に費用と使い勝手で有利なことがあります。独自要件が業務上不可欠かどうかは、冷静に見極める必要があります。

セキュリティ・オンプレミス要件

契約書には、取引条件・金額・機密保持事項など、機密性の高い情報が含まれます。金融・医療・公共など規制の厳しい業界や、独自のセキュリティポリシーを持つ大企業では、外部クラウドの利用が認められない場合があります。

  • 運用環境:自社管理のオンプレミスやプライベートクラウドが必要になる場合。
  • 既製品の制約:SaaSはクラウド前提のため、要件を満たせない場合。
  • 高度な要件:独自のアクセス制御、監査ログの保持、暗号化方式への対応。
  • 閉域接続:社内ネットワークとの接続要件も対象。
  • 個別構築:既製品で難しい要件は、フルスクラッチで合わせる方が確実です。

契約管理SaaSが要件に対応できない場合は、オンプレミス型パッケージも導入候補になります。

オンプレミスやフルスクラッチでは、サーバー構築・監視・セキュリティ更新を自社または委託先が継続して担います。そのうえで、セキュリティ要件を理由に選ぶなら、SaaSでは不要な運用負荷を担う体制まで計画に含めます。

ポイント

独自の台帳項目や連携、セキュリティ要件は、既製品の機能と照らし合わせて一つずつ確かめます。すべてが業務上不可欠とまでは言えない場合は、要件を絞ることで費用を抑えられることもあります。

フルスクラッチ開発の費用相場と体制

初期費用、開発期間、年間保守費用それぞれの目安を3枚のパネルで示した図
開発時と稼働後の見積もりを並べて検討できます。

費用相場と必要な開発体制に加えて、稼働後に見落としやすい保守運用の負担も見ていきます。

費用相場と開発体制

費用や期間は、体制と要件の規模によって変わります。見積もりの目安を、項目ごとに見ていきます。

  • 最小体制:既存ツールを一切使わずゼロから開発する場合、ディレクター1名、デザイナー1名、エンジニア2名程度です。
  • 初期費用:要件定義・設計・開発・テストで最低500万円以上です。
  • 開発期間:規模に応じて半年〜数年と幅があります。
  • 費用要因:契約類型・台帳項目の数、機能の複雑さ、連携数と難易度、セキュリティの厳しさです。

機能や外部連携が増えて複雑になるほど、開発費は高くなります。基幹システムとの高度な連携では、数千万円以上に達することもあります。

見積もりでは複数社に要件を示し、機能ごとの工数と費用の内訳を比べます。同じ要件でも会社によって見積もりに差が出ることがあるため、内訳を精査すると機能ごとの費用が把握できます。さらに、優先度の低い機能を削り、予算に収める判断もできます。

稼働後の保守運用の負担

稼働後の保守運用も、初期費用とあわせて見積もる必要があります。

  • SaaS:サーバー運用・監視、更新、法改正対応が月額料金に含まれます。
  • フルスクラッチ:サーバー運用や改修は、自社または委託先が担います。
  • 法令対応:電帳法などの改正に備えた体制と費用が必要です。
  • 年間保守費用:初期開発費の15%前後が目安とされることがあります。

フルスクラッチで開発したシステムは、自社資産として保有します。

保守の対象には、サーバーの構築・監視・メンテナンス、不具合対応、機能改修が含まれます。OSやライブラリのセキュリティ更新も欠かせません。

契約管理は法令と関わるため、法改正のたびにシステムの改修が必要になります。数千万円規模の開発では、年間の保守費用も相応の金額になります。

TCO(総保有コスト)で評価するなら、初期開発費だけでなく、長期の保守費用と体制も含めて考えます。保守の負担を軽く見ると、稼働後に想定外のコストや運用の重さに苦しむことになります。

ポイント

見積もりは、作るための金額と、動かし続けるための負担を分けて見ます。両方を合わせた金額で、SaaSやパッケージと並べて比べます。

フルスクラッチのメリット・デメリット

フルスクラッチには、明確なメリットと無視できないデメリットがあります。両面を比べて、自社に合う選択かどうかを判断します。

フルスクラッチのメリット

最大の利点は、自社の契約管理業務に適合したシステムを構築できることです。

  • 業務への適合:独自の項目や検索条件、アラート条件をシステムに反映できます。
  • システム連携:基幹・業務システムとの連携を自由に設計できます。
  • 自社での拡張:ベンダーのサービス終了や料金改定に左右されません。

承認や運用ルールもシステムに落とし込めます。現場に合うUIと業務フローにできるので、システムに合わせて業務を歪めずに済みます。

さらに、会計・販売・購買など複数システムとの連携により、契約から請求・支払いまでの自動化も可能です。

システムを自社資産として持つため、自社の判断で機能を拡張・改修できます。契約管理を競争優位の一部と位置づける企業にとって、完全な制御性とカスタマイズ性は、フルスクラッチを選ぶ十分な理由になります。

デメリットと注意点

最大のデメリットは初期費用と開発期間です。稼働後の保守と開発品質にも注意が必要です。

  • 初期負担:費用は最低500万円以上で、開発に半年〜数年かかります。
  • 継続運用:保守や法改正対応を自社で担い、SaaSにはない体制と費用が必要です。
  • 品質と陳腐化:開発会社の技術力や自社の改善に左右されます。

複雑な要件では数千万円以上になることもあります。一方で、SaaSは即日〜数週間、低い月額で始められます。

開発品質は、開発会社の技術力と、自社が要件を正確に伝えられるかに左右されます。要件定義が曖昧なままだと、完成品が期待とずれ、多額の投資が無駄になるおそれがあります。

SaaSは他社の利用実績をもとに機能が改善されます。フルスクラッチは、自社で改善し続けなければ陳腐化します。

明確な独自要件があり、長期の保守体制を確保できる企業に向いた選択肢です。該当しない場合は、まずSaaSやパッケージを十分に検討します。

ポイント

メリットとデメリットのどちらが重いかは、社内で保守を回せる力があるかで変わります。その力が乏しければ、まずは既製品から始めます。

失敗しないフルスクラッチの進め方

PoCで確認するデータ化工数、利用定着の見込み、削減コストの3項目を示した図
3つの材料をそろえると、投資回収期間を検討できます。

投資額が大きいため、失敗時の損失も大きくなります。PoCでの事前検証や、ハイブリッド・段階的な開発で、リスクを抑えます。

PoCによる実現可能性・ROIの検証

着手前にPoC(概念実証)を行い、実現可能性と投資対効果を検証します。たとえば、数千万円規模の開発に入る前に、SaaSの無料トライアルへ自社の契約書を登録してみる方法もあります。

標準機能で満たせる範囲と独自開発が必要な範囲を切り分けます。標準機能で足りる部分まで作り込むと、コストの無駄になります。この検証により、本当に必要な独自機能が明確になり、開発範囲を最小限に絞れます。

PoCでは、投資回収の判断材料となる実績を確認します。

  • データ化工数:実際にかかった作業時間。
  • 利用定着の見込み:現場で使われる可能性。
  • 削減コスト:削減できる費用の試算。

これらをもとに投資回収期間を計算し、高額な投資に見合うリターンかを評価します。ROIが見合わない場合は、SaaSやパッケージへの切り替えや要件の絞り込みを検討できます。

小さなPoCへの投資は、高額な開発の失敗を防ぐ手立てになります。費用対効果も高い工程です。

ハイブリッド・段階的スケールという選択肢

併用や段階的な機能追加を組み合わせれば、フルスクラッチとSaaSの両方を使って進められます。

  • ハイブリッド:標準機能はSaaS、独自部分は個別開発。
  • 段階的な拡張:最小限の機能で始め、運用後に追加。

標準化された締結や電子署名には既製の電子契約SaaSを使い、独自の台帳管理や基幹連携だけを開発できます。標準機能ではベンダーの改善や保守を受けられるため、独自性が必要な部分に開発費を集中できます。

初期リリースでは、検索・保管・期限アラートに絞ります。そのうえで効果を確認し、基幹連携や高度な分析を追加できます。

必要な部分を必要な時期に作れば、大きな投資を一度に行うリスクを分散し、効果を積み上げられます。

ポイント

投資を始める前に、回収の見込みを数字で示せるかを確かめます。示せない段階では、大きく作り込まないことが安全です。

まとめ

ここまで、SaaS・パッケージとの違い、必要になるケース、費用と体制、メリットとデメリット、進め方を見てきました。SaaSは初期0〜数万円、月額数百円/人〜で即日〜数週間、パッケージは初期100万〜500万円で数ヶ月〜半年が目安です。

フルスクラッチは、既製品で満たせない独自要件や複雑な連携、外部クラウドに預けられないセキュリティ要件がある場合に限り、合理的な選択肢です。初期費用は最低500万円以上で、複雑な要件では数千万円以上です。さらに、開発期間も半年〜数年かかります。

最小体制の目安は、ディレクター1名・デザイナー1名・エンジニア2名程度です。稼働後はサーバー運用や法改正対応を含む保守を担います。年間保守費用は、初期開発費の15%前後とされることがあります。

過度なカスタマイズを重ねるより、フルスクラッチが有利な場合もあります。その際は「なぜ既製品ではダメか」を具体的に言語化することが前提です。

PoCで実現可能性とROIを確認して、独自開発の範囲を絞ります。また、SaaSとの併用や段階的な拡張も、投資リスクを分散する方法です。

複数社から機能別の見積もりを取り、内訳を比較します。そのうえで、本当に必要かをPoCで確かめてから進めることが大切です。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。