契約管理システム開発を外注する進め方は、発注前に法務・業務・ITの要件を整理し、開発中も法的要件への対応を確認していく流れが基本です。
発注前の準備からRFPの作成、進捗管理、リリース後の定着支援まで、流れに沿って見ていきます。
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契約管理システム開発を外注する前の注意点

外注を成功させるには、発注する前に何をどこまで準備するかを、最初に正確に押さえておく必要があります。
特に契約管理システムは法的要件への対応が欠かせません。そのため、発注側が法務・業務・ITの各側面から準備を整えておくことが大切です。
外注で失敗する典型的なパターン
契約管理システムの外注でよく見られる失敗を知っておくと、同じ失敗を繰り返さずに済みます。
- 保存要件の未実装:電子帳簿保存法の保存要件を要件定義に含めず、リリース後に「保存要件を満たしていない」と判明するケースが最も多いです。
- 例外処理の未定義:承認ワークフローの例外処理を定義しないまま進み、緊急契約・代理承認・条件付き承認等の設計が抜けてしまいます。
- 法務部門の不参加:要件定義に法務部門が加わらないまま進みます。
保存要件の未実装は、電子取引で授受した契約書の電子保存が義務化されているにもかかわらず、法令要件をシステム要件に落とし込まずに開発を進めてしまうことで起きます。
現場で頻繁に発生するイレギュラーケース(緊急契約・代理承認・条件付き承認等)が設計に含まれていないため、リリース後に現場から大量の改修要求が寄せられます。
法務の確認が抜けた設計では、電子署名の法的効力や契約書の原本性の確保に問題が出ることもあります。こうした失敗は、発注前の準備と体制づくりで防げます。
発注前に社内で整理すべき事項
開発会社に要件を伝える前に、社内で押さえておく事項は、目的や体制から既存システムとの連携まで幅広くあります。
- 目的と課題:開発の目的と解決したい課題を文書にまとめ、「何のためにシステムを作るか」を経営層・法務・現場が合意できているかを確かめます。
- 契約書の現状:管理対象の契約書の種別・件数・現在の保管方法を洗い出し、紙と電子の比率、保存場所、管理責任者の確認も、この段階でまとめて行います。
- 法的要件:電子帳簿保存法の保存要件、電子署名法への対応方針、インボイス制度対応要件を整理します。この整理は法務担当者が主導します。
- 推進の担当者:プロジェクトオーナーやプロジェクトマネージャー、法務担当キーパーソン、各部門のキーユーザーの選定を行い、推進体制を決めます。
- 予算と期限:上限予算と希望リリース時期を確認します。
- 既存システムとの連携:ERP・CRM・SFA・稟議システム等の連携候補の確認を行い、どれを連携させるかを洗い出します。
発注の準備から契約までの手順

発注の準備で特に大切なのは、業務フローの整理、法的要件の明文化、RFPの作成です。これらを丁寧に行うと、開発会社から的確な提案と精度の高い見積もりを受けられます。
契約管理システムでは、業務フローの整理と並行して、法務部門が求める法的要件を詰めていきます。これは、他の業務システム開発と異なる点です。
契約業務フローの整理と可視化
契約業務フローの整理では、現在の契約管理業務がどんな手順で行われているかを、フロー図に描き起こします。契約書の種別ごとに、「起案→法務審査→稟議→相手先との交渉・修正→電子署名または記名押印→保管→更新・終了」という一連の流れを整理します。そのうえで、誰が、何を、どのツールや帳票を使って行っているかを明記します。
承認ワークフローは、契約金額や種別によって承認ルートが変わり、例外や差し戻しも起こります。そのため、ルートの違いを分岐条件、例外処理、差し戻し・再申請の3つに分けて洗い出します。
- 分岐条件:契約金額・種別・相手先によって承認ルートが変わることです。
- 例外処理:緊急対応、暫定合意、条件付き締結が含まれます。
- 差し戻し・再申請:承認が差し戻された場合の再申請の流れです。
また、現在の課題(期限管理の漏れ・承認の遅延・契約書の検索困難・版管理の混乱等)とその原因も同時に整理します。課題と原因がそろうと、システムで解決すべき点が明確になります。この整理の中で、電子化できる部分と当面は紙で対応する部分を仕分けておくことをおすすめします。
開発会社の選定と相見積もりの取り方
開発会社の選定は、RFPを3社以上に送付して相見積もりを取るのが基本です。
契約管理システムでは、技術力だけでなく、次の観点も評価軸に加えます。
- 電子署名法・電子帳簿保存法への対応知識
- 承認ワークフロー系システムの開発実績
- 法務部門とのコミュニケーション経験
提案書では、電子帳簿保存法の保存要件をどの方法で実装するか、電子署名サービスとの連携方式が妥当か、承認ワークフローの複雑な分岐への対応策が具体的に示されているかを重点的に確認してください。
費用の比較では、法改正対応、データ移行、電子署名連携が見積もりに含まれているかを必ず確認します。これらが除外されている最安値の提案は、後から追加費用が発生する「落とし穴見積もり」である可能性があります。
契約形態(請負・準委任)の選び方
開発の契約形態は、「請負契約」と「準委任契約」の2種類が主流です。
- 請負契約:成果物(完成したシステム)の納品に対して報酬を支払う形態で、要件が固まっている場合に適しています。
- 準委任契約:工数(時間・人月)に対して報酬を支払う形態で、要件が流動的な場合やアジャイル開発の採用時に使われます。
契約管理システム開発では、フェーズ別に契約を分けることも一般的です。要件定義・法的要件整理フェーズは準委任契約、設計・開発・テストフェーズは請負契約とする分け方です。
法的要件の整理は、開発着手前に完全に確定しきれない場合もあります。そこで、要件定義フェーズだけを準委任で進めて要件を固めてから本開発を請負で発注する方法が、要件の明確化とリスク管理の両面で有効です。
RFP(提案依頼書)の書き方と注意点

RFP(提案依頼書)は、開発会社に正確な提案と見積もりを求めるための文書です。
契約管理システムのRFPには、一般的な業務システムのRFPと同じ内容に加えて、法的要件に関する情報を具体的に記載する必要があります。
RFPに含めるべき主な項目
RFPでは、項目ごとに情報を整理し、法的要件については具体的な対応方針の提案を求めます。
- 背景と契約書情報:現状の課題、開発目的、契約種別・件数・保管方法、紙と電子の比率
- 機能と法的要件:必要な機能に加えて、電子帳簿保存法、電子署名の有効性、インボイス制度への対応要否
- 環境・利用・連携:クラウドまたはオンプレミス、セキュリティ、ユーザー数、部門、デバイス、連携先と連携内容
- 期限と予算:希望するスケジュールと予算感
- 提案内容:法的要件への対応方針、電子署名サービスの案、費用の内訳、体制、実績、提出期限
RFP作成上の注意点
RFP作成では、解決したい課題と業務範囲は具体的に書き、実現手段(電子署名サービスの選定や技術アーキテクチャ等)はある程度開発会社に委ねるバランスが大切です。特定の電子署名サービスや技術を指定しすぎると、開発会社の最適な提案を制限してしまう場合があります。
一方で、「電子帳簿保存法に準拠したシステムにすること」「電子署名の法的有効性を確保すること」といった要件は、明確に書く必要があります。また、「現状の承認フローをそのままシステム化してください」と指定すると、複雑なワークフローがコスト増の原因になります。そのため、「現状フローの整理・最適化も提案に含めてください」と書き加えておくとよいです。
RFP作成自体に困難を感じる場合は、riplaのような上流工程から支援できる会社に相談することも有効な選択肢です。
開発中の進捗管理と品質確保

発注と契約が完了してプロジェクトがスタートした後も、発注側の関与は重要です。
契約管理システムは法的有効性に関わる機能を含むため、開発の各マイルストーンで「法的要件への対応状況」を確認する体制が必要です。
プロジェクト管理体制の構築
プロジェクト管理体制では、発注側に「プロジェクトオーナー(経営層)」と「プロジェクトマネージャー(IT部門または業務部門リーダー)」を置きます。さらに、「法務キーパーソン(法的要件の判断・確認担当)」と「各部門キーユーザー(現場担当者代表)」も加えて、体制を整えておくことをおすすめします。
開発会社とは定例ミーティング(週次・隔週)を設け、進捗報告、課題共有、意思決定を定期的に行う仕組みを作ります。
特に、「電子帳簿保存法の対応方針の確認」「電子署名サービスとの連携方式の承認」「承認ワークフローの分岐条件の最終確認」など、法的・業務的な判断が必要な場面では、法務担当者を必ず参加させます。また、仕様変更が起きた場合は、変更管理のプロセスを経ることで、法令対応の漏れや追加費用の発生を防げます。
テスト・品質管理のポイント
契約管理システムのテストは、開発会社任せにせず、発注側も積極的に関わることが大切です。特に、ユーザー受け入れテスト(UAT)は、実際の業務シナリオを使って法務・調達・営業担当者がシステムの動きを確認する工程で、発注側が主体となって行うべきテストです。
UATでは、まず全ての契約種別と金額帯で承認ワークフローが正常に動くかを確かめます。メインフロー、差し戻し、代理承認などが対象です。さらに、電子帳簿保存法の保存要件への準拠として、タイムスタンプまたは電子署名の付与と検索機能の動作を見ます。
電子署名の送信・受信では、取引先へのリンク送信と署名完了通知の流れを確認します。期限アラートの通知タイミングと通知先、アクセス権限(閲覧・編集・承認権限の部門別・役職別制御)、全文検索の精度と速度も確認します。テスト前にシナリオとチェックシートを法務担当者と共同で作成しておくと、テストの品質が向上します。
リリース後の定着支援と運用体制

契約管理システムは、リリースすれば終わりではありません。現場に根づいて日常的に活用されて、初めて目的を果たします。そのため、リリース後の定着支援と継続的な運用体制づくりが、長期的なシステム価値を決めます。
リリース後の定着支援施策
契約管理システムのリリース後の定着支援では、まず社内への周知とトレーニングを行うことが重要です。また、法務・調達・営業・管理部門など利用部門ごとに操作マニュアルを整え、承認者向け、起案者向け、閲覧者向けなど役割に応じた操作手順を分かりやすく説明する資料を用意します。
集合研修と個別フォローを組み合わせた操作トレーニングを行います。特に、電子署名の送受信、承認ワークフローの操作、全文検索の活用方法は、丁寧に説明することが定着の鍵です。
取引先への電子署名依頼には、取引先向けの案内文と操作ガイドを準備して展開すると、電子化への移行を促進できます。さらに、リリース直後の1〜2ヶ月はヘルプデスクを設けて問い合わせに迅速に対応し、リリース後3ヶ月時点で利用状況をモニタリングして、定着の課題を把握して対処します。
継続的な運用体制と法改正対応
運用体制では、社内の管理者(システム管理者・法務担当者)が担う役割を明確にしておくことが大切です。日々の管理業務には、ユーザーアカウントの管理(採用・退職時のアクセス権限の追加・削除)や、承認ワークフローの設定変更(組織改編時の承認者変更)があります。そのほか、契約書テンプレートの更新や期限アラート設定の見直しも、社内で担える体制を整えておきます。
特に大切なのは「法改正対応体制」です。電子帳簿保存法、インボイス制度、個人情報保護法など、契約管理システムに影響する法改正は今後も続くと見込まれます。そのため、法改正の情報は法務担当者が集め、システム改修は開発会社(またはIT部門)が担うため、両者の連携体制を組んでおくと、法改正に迅速に対応でき、長期的な運用の安定につながります。
riplaはリリース後の定着支援、改善サポート、法改正対応まで一気通貫で提供しています。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
