配送/運送業界のシステム開発の完全ガイド

配送・運送業界では、2024年4月から時間外労働に年960時間の上限が適用され、限られた人員で効率よく届ける仕組みが急務です。

宅配便は過去30年で約4倍に増え、2021年度に年間50億個を超えました。課題から費用、発注、開発会社の選び方まで、一連の流れで全体像をつかめます。

▼関連記事一覧

・配送/運送業界のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・配送/運送業界のシステム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・配送/運送業界のシステム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・配送/運送業界のシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

配送・運送業界のシステム開発の概要

TMSの配送計画や配車管理と、WMSの入荷・保管・出荷管理を左右に分けて示した図。
両システムの連携で倉庫から配達先までをつなげられます。

配送・運送業界のシステム開発は、輸送や配送に関わる業務をデジタル化・自動化するソフトウェアや基盤を構築することです。

配車やルート最適化、在庫など、業務の幅広い場面を一つのシステムで管理できます。ドライバーの管理や顧客対応、請求処理も、同じシステムの中で扱えます。さらに、自社の業務フローに合わせて作ると、人的ミスの削減や業務効率の向上が期待できます。

業界が直面する課題とDXの必要性

配送・運送業界では、ドライバー不足と業務の属人化が深刻になっています。とくに、ベテランの経験と勘に頼る配車や、手作業の伝票処理が、まだ多く残っています。

  • 人手不足と属人化:国土交通省の調査では平均年齢が年々上昇しており、2030年に労働力の約24%が不足する試算です。
  • 2024年問題:2024年4月から時間外労働は年960時間が上限となり、配送量を保つには1回で多くの荷物を効率よく届ける必要があります。
  • 物流市場:システム市場は2021年の6,282億円から、2026年には9,627億円へ成長すると予測されています。
  • DXの効果と課題:効果の見えにくさとDX人材の不足が課題です。早期導入企業は配送効率の向上、燃料費・ドライバー残業の削減を実感しています。
  • 着手時期:競争が激しくなる中、システム化の時期と進め方が問われています。

配送・運送業界で使われる主なシステムの種類

配送・運送業界で中心になるシステムは、TMS(輸配送管理システム)とWMS(倉庫管理システム)です。両者は管理する業務が異なるため、それぞれの役割を分けて考えることが必要です。

  • TMS:配車管理とルート最適化の機能に加え、動態管理とコスト管理も備えて、トラックの配送計画から実績までを管理します。
  • WMS:入荷と保管、ピッキング、出荷を管理し、在庫精度と作業効率の向上に役立ちます。

両システムを連携させると、倉庫から配達先までを一続きで管理できます。たとえば、GPS動態管理では車両の位置をリアルタイムで把握し、AI自動配車では最適なルートを即座に算出します。

配送通知や不在時の再配送を自動化する仕組みは一般的になり、顧客満足度の向上にもつながっています。また、車両センサーによる積載の計測も広まりつつあります。

ドライブレコーダーと連携した安全管理や、電子帳票によるペーパーレス化も進んでいます。ただし、導入するシステムと順番は、自社の業務課題や規模に合わせて明確にすることが成功への近道です。

▶ 詳細はこちら:配送/運送業界のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

ポイント

どの業務をシステムで支えるかは、課題の大きさとTMSやWMSの役割を照らして決めると、後の工程で判断がぶれにくくなります。

配送・運送業界のシステム開発の進め方

要件定義・企画、設計・開発、テスト・リリースと運用の順に進む開発工程図。
現場確認と運用改善まで工程に含める構成です。

開発を成功させるには、工程を明確に分け、要件定義からリリースまでを管理することが欠かせません。各段階で意思を確かめ合うと、手戻りを抑えられ、現場に合うシステムに近づきます。

要件定義・企画フェーズ

要件定義では、現場の業務フローを聞き取り、非効率や課題が起きている業務を洗い出します。課題は数値とともに整理しておくと、どこから手を付けるかを判断しやすくなります。

  • 配車:担当者が毎日2時間かけて、手動でルートを組んでいます。
  • 伝票:転記ミスが月に数十件発生しています。

課題を整理したら、システム化する範囲と優先順位を決めます。全業務を一度に対象にすると、開発費用が膨らむうえ、現場への導入も難しくなります。そのため、効果の高い機能から順にリリースし、段階的に広げていくアジャイル型が特に有効です。

また、成果を測るKPI(成功指標)には、配送効率◯%向上や残業時間◯時間削減などを設定します。

設計・開発フェーズ

設計では、基本設計と詳細設計の2段階で仕様を固めます。基本設計では、画面や機能、データ連携の全体像を定めます。

詳細設計では、テーブルやAPI、各画面の動作を具体的に決めます。基幹・帳票システムやGPSデバイス、デジタコ(デジタルタコグラフ)との連携仕様も、ここで明確にします。

  • フルスクラッチ:自社業務に合わせて作り込めますが、コストと期間がかかります。
  • パッケージカスタマイズ:既存製品を使うため、開発を早め、費用も抑えられます。

パッケージでは、製品の制約に業務を合わせる必要が出てくる場合もあります。こうした長所と短所を比べ、自社要件の独自性と予算、スケジュールを踏まえて選びます。

テスト・リリースと運用フェーズ

テストから運用までを段階的に進めるときは、安全性と現場での使いやすさを確かめます。

  • テスト:単体、結合、ユーザー受入テスト(UAT)を行い、実業務に近いデータで検証します。
  • 現場確認:ドライバーや配車担当者も操作テストに加わり、使いやすさを改善します。
  • リリース:一括で切り替えるより、営業所や路線ごとに始めるパイロット方式が安全です。
  • 運用改善:月次や四半期ごとに現場の意見を集め、システムの価値を保ち、高めていきます。

本番で誤動作すると、遅配や誤配に直結します。そのため、十分な検証が欠かせません。

▶ 詳細はこちら:配送/運送業界のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

ポイント

工程ごとに誰が何を確認するかを先に決めておくと、要件定義での取り決めが設計や運用に引き継がれ、手戻りの原因を早く見つけられます。

システム開発の費用相場とコスト内訳

フルスクラッチ、パッケージ、クラウド型SaaSの初期費用を3つのパネルで示した図。
方式によって初期費用の幅が異なります。

配送・運送向けシステムの費用は、開発方式と機能範囲によって変わります。さらに、開発会社の所在地やサポート体制も費用に影響します。予算の目安をつかむには、まず費用項目を把握することが必要です。

開発方式による費用の違い

開発方式ごとに、初期費用や期間、導入後の支払い方を比べ、自社の要件に合う選択肢を検討します。

  • フルスクラッチ:初期費用は200万円〜1,000万円以上です。連携や機能が多いと1,000万円超になり、期間は半年〜1年以上の場合があります。
  • パッケージ:カスタマイズ費用は50万〜300万円程度で、期間は2〜4ヶ月程度のケースが多くあります。
  • クラウド型SaaS:配車管理SaaSやWMSクラウドは、初期費用がゼロ〜数十万円程度で、月額数万〜数十万円がかかります。

費用だけでなく期間も一緒に比べると、方式の違いがつかみやすくなります。また、まずクラウド型を導入し、業務が固まってから自社開発へ移る企業も増えています。

導入後のランニングコストと保守費用

導入後の費用は、サーバーの保守を自社で持つか、サービス料金に任せるかによって、運用の負担が大きく変わります。

  • オンプレミス型:サーバー保守、OSやミドルウェアの更新、バックアップに年間数十万円〜数百万円かかります。
  • クラウド型:保守などの費用はサービス料金に含まれることが多く、運用の負担を減らせます。
  • 保守・改修:法改正や業務変更に備えて、初期開発費の15〜20%程度を毎年積み立てることが推奨されています。

契約時に保守・改修の対応範囲と費用の仕組みを決めておくと、想定外の支出を抑えられます。

▶ 詳細はこちら:配送/運送業界のシステム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

ポイント

方式ごとの初期費用だけでなく、導入後のランニングコストと保守・改修の費用まで含めて比べると、予算の見誤りを抑えられます。

開発会社への発注・外注方法

外注では、発注先の探し方と契約形態を事前に検討しておく必要があります。準備が不足すると、要件のずれ、費用超過、スケジュール遅延のリスクが高まります。

発注先を探す方法と比較のポイント

発注先は、探し方と比べる観点をそろえて検討します。候補を3〜5社程度に絞り、相見積もりを取ることが重要です。

  • 探し方:マッチングサイトの利用、物流特化ベンダーの調査、業界団体や展示会での紹介。
  • 実績・提案:業界実績、提案の具体性、業務理解の深さ。
  • 体制・支援:PMの有無、保守範囲と費用。
  • 見積もり:開発費用の内訳と透明性。

価格が妥当かどうかは、複数社を比べて初めて見えてきます。1社だけで決めると、後から他社を知って悔やむこともあります。業界知識のある会社は、要件定義の段階から提案でき、開発品質も高くなる傾向があります。

発注時に失敗しないための注意点

発注前には要件定義書(RFP:提案依頼書)を用意し、各社に比べられる形で見積もりを依頼します。

  • 記載内容:業務フロー図、課題、必要機能、スケジュール、予算感、利用者数。
  • 請負契約:完成した成果物に対して支払い、仕様変更には追加費用が発生します。
  • 準委任契約(SES):エンジニアの作業時間に対して支払い、変わりやすい要件やアジャイル開発に向いています。

未確定の事項も、分かる範囲で書き込んでおくと、提案の質が変わります。契約形態は、案件に応じて開発会社と相談して選びます。

▶ 詳細はこちら:配送/運送業界のシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ポイント

発注先は複数社を比べ、契約形態は要件が固まっているかどうかで選ぶと、契約後の仕様のずれや追加費用を減らせます。

配送・運送業界のシステム開発会社の選び方

業界固有の業務やデータ連携を理解している会社を選ぶことが基本です。技術力に加えて、業界知識、進行管理、サポート体制を総合的に評価します。

物流・運送業界への専門知識と開発実績

まず、配送・運送の業務フローに対する理解度を確認します。配車計画の立て方や、ドライバー管理に関わる法令をどこまで理解しているかが主な確認点です。請求書の慣習や、荷主システムとのEDI連携も見ておきます。

業界知識が豊富な会社は、要件定義の段階で助言してくれます。また、ホームページの実績から、物流・運送・配送システムの事例があるかを確認します。

物流DXやTMS開発、WMS構築を多く手がける会社は、よくある落とし穴や設計パターンを熟知しています。さらに、初めて開発する企業も、その知見があれば進めやすくなります。

開発体制とアフターサポートの充実度

開発体制とリリース後の支援内容を確認し、障害が起きたときにも業務を支えられるかを判断します。

  • 開発体制:専任PM、要件定義から保守までの窓口担当者、定期報告の仕組みの有無。
  • 緊急対応:24時間365日の対応の有無と、夜間・休日に稼働する業務への支援。
  • 保守条件:バグ修正の速さと、機能追加・改修の費用を、契約前に明確にしておきます。

PMがいない場合は、進捗や品質の管理が特定の人に偏り、遅延や仕様漏れが起きやすくなります。障害は業務の停止に直結するため、サポートは技術力と同じくらい大切です。

▶ 詳細はこちら:配送/運送業界のシステム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

ポイント

開発会社は、業界の業務を理解しているかと、リリース後に支えてくれる体制があるかの2点で比べると、判断がぶれにくくなります。

まとめ

配送・運送業界では、2024年問題やEC市場の拡大を背景に、物流DXが急務になっています。システム開発への投資は、競争力を保ち、高めることに関わります。

まず、自社の課題を数値で把握して要件を定め、予算や期間、要件の独自性に合う開発方式を選びます。そのうえで、発注前の資料を準備し、複数社を比べることが欠かせません。

開発会社は、物流業界の知識を確かめたうえで選びます。また、システムは法改正や業務の変化に合わせて改善し、信頼できるパートナーと長く運用していきます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。