災害対策(DR)システムの費用は、方式、対象業務、RTO・RPOによって変わり、50万〜100万円から800万〜3,000万円以上まで幅があります。
費用を左右するのは、構成方式、対象業務の範囲、復旧時間の短さです。また、全体像は下の全体ガイドもご覧ください。
▼全体ガイドの記事
・災害対策(DR)システム開発の完全ガイド
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災害対策(DR)システムの全体像と費用の考え方

費用を比べる前に、対象業務、構成方式、自動化の範囲を決めておきます。クラウドへのバックアップだけの場合と、フェイルオーバーまで自動化する基幹系DRサイトでは、開発量と運用費が異なります。
構成方式による費用規模の違い
構成方式は、復旧時間と平時の運用費を見比べて選びます。
- アクティブ・アクティブ:主系とDRサイトを常時稼働させる構成
- アクティブ・スタンバイ:待機系を保有する構成
- パイロットライト/バックアップ型:平時はデータを保管する方式
アクティブ・アクティブは復旧時間を最短にできますが、二重の運用費がかかります。
待機系を保有する方式は中間的なコストになり、平時にデータだけを保管する方式なら費用を抑えられます。
パイロットライト/バックアップ型は、有事の起動と設定反映に時間がかかります。
業務ごとのRTO・RPOに応じて方式を使い分けることが、費用最適化の出発点です。
DR専用開発の全国一律の相場は、公開されていません。本記事の金額は、類似システムの概算とクラウド公式料金例を組み合わせた目安です。
2025〜2026年時点の参考レンジであり、台数、データ量、RTO・RPOで変動します。また、既存システム連携も金額を左右します(出典: NotebookLMリサーチノート、公開情報をもとにした2026年時点の概算・推定)。
対象範囲の拡大と見積項目の増加
対象範囲は、停止時の影響が大きい業務から絞り込むと過大見積もりを避けやすくなります。
- バックアップ:データを保管する部分
- レプリケーション:データを複製する部分
- フェイルオーバー・訓練・監視:復旧運用まで対象に含める範囲
業務影響度分析(BIA)なしで依頼すると、ベンダーごとに前提が変わるため、安い初期見積もりの後に追加開発が発生しがちです。
まず、対象に含める機能と復旧運用の範囲を決めておきます。
災害対策(DR)システムの開発・導入の進め方

開発期間は、構築だけでなくBIAから復旧訓練までを含めて計画します。
- BIAと資産棚卸し
- 方式の選定
- PoCで実データと復旧時間を検証
- 本番移行と復旧訓練
小規模なクラウドバックアップ整備は数週間〜2か月が目安です。
ノーコード/SaaS連携は1〜4か月、ローコード・パッケージ活用は2〜5か月で、フルスクラッチ・基幹連携は6か月〜1年以上が一つの目安です。
要件定義で固める対象業務とRTO・RPO
要件定義の段階で、停止時の影響が大きい業務と、業務ごとのRTO・RPOを決めておきます。
- 対象業務:売上、受発注、決済、顧客対応の各業務を確認する
- 現行資産:サーバーから委託先までの一覧
- 障害シナリオ:想定する障害の洗い出し
まずBIA(業務影響度分析)を実施し、停止時の影響が大きい業務を特定します。
サーバー、データベース、アプリケーション、ネットワークを洗い出し、DNS、認証、外部SaaSも対象に加えます。
この段階で抜けや漏れがあると、後工程の追加費用に直結するため、時間をかける価値があります。
障害シナリオには、自然災害、ランサムウェア、設定ドリフトのほか、認証基盤障害、委託先停止、クラウドリージョン障害も含めます。ただし、シナリオを絞りすぎると、対象外の障害が起きたときに追加改修費が発生しやすくなります。
方式選定とPoCによる費用への影響
方式を選ぶときは、初期費用とランニングコストの配分を比べることになります。
- パッケージ/SaaS:標準機能の活用
- クラウドDR:クラウドの保護機能の利用
- スクラッチ開発:独自の復旧制御の組み込み
標準化しやすいバックアップ・レプリケーションはクラウドに任せられます。一方で、業務固有の判断、通知、承認、連携は、ローコードや個別開発で補います。
このハイブリッド構成は、費用と柔軟性のバランスを取りやすい形です。
PoCでは、実データ量、変更率、ネットワーク帯域、復旧時間を検証します。ライセンス費用も検証することで、データ量超過による従量課金の膨張を防ぎます。
災害対策(DR)システムの費用相場とコストの内訳
費用相場は、標準サービスか個別連携か、方式は何か、24時間運用をするかどうかで変わります。
公開価格が少ない領域のため、類似の業務システムから整理した推定レンジを示します。
導入パターン別の初期費用(50万円〜3,000万円超)
導入パターンを比べるときは、初期費用と期間をそろえて見ます。
- クラウドバックアップ:50万〜100万円
- ノーコード/SaaS連携:100万〜800万円
- ローコード・パッケージ:300万〜1,500万円以上
- フルスクラッチ・基幹連携:800万〜3,000万円以上
クラウドバックアップ等は数週間〜2か月で済み、小規模組織のデータ保護に向いています。
ノーコード/SaaS連携は1〜4か月で、安否確認、被害報告、通知を含みます。簡易ワークフローを含む場合も、初期費用は100万〜800万円が目安です。
ローコード・パッケージ活用は2〜5か月で、複数部署連携に対応します。基本的な冗長化を含む場合は、300万〜1,500万円以上が推定されます。
フルスクラッチ・基幹連携は6か月〜1年以上を見込みます。複雑な基幹系、独自の復旧制御、厳格な権限・監査を含む場合の目安です。
数十人規模で主要サーバーを遠隔バックアップする整備は、150万〜300万円で、期間は1〜3か月が目安です。
100人前後で複数システム・拠点を扱うDRサイト整備は300万〜600万円で、期間は3〜6か月が一つの目安です(出典: NotebookLMリサーチノート、類似システムの概算をもとにした2026年時点の編集用目安)。
クラウド公式料金例から見る運用費
運用費は、初期費用とは分けて見積もります。
- AWS Elastic Disaster Recovery:1台0.028米ドル/時間
- Microsoft Azure Site Recovery:1台2,873.37円
- NEC Cloud IaaS:月額35万円〜
保守、監視、訓練、回線、ストレージは初期費用の年15%前後が慣行的な目安です。ただし、クラウドの従量料金や24時間運用の有無で、この目安は変わります。
EBS、EC2、スナップショット、転送などは別途発生します。
AWS Elastic Disaster Recoveryの公開例では、100台・30TB構成の月額合計が6,389.03米ドルです(出典: AWS「Elastic Disaster Recoveryの料金」、2026年確認)。
Microsoftの公開構成例では、ストレージ等を含めた合計が9,822円です。これは、オンプレミス1台をAzure Site Recoveryで保護する場合の例で、出典はMicrosoft「クラウドはじめの一歩シリーズ #2」です。
NEC Cloud IaaSの公開例は、仮想サーバー5台・10Mbps回線で月額35万円〜です。出典はNEC「Cloud IaaS DRサービス」です。
いずれも特定条件の公式例で、為替、リージョン、容量、割引、構成が変わると金額も動きます。条件で変わるので、平時、訓練時、有事の3パターンに分けて見積もりを取ることが重要です。
RTOの短縮と対象範囲の拡大による費用増加
費用の増加要因は、復旧時間、対象業務、運用サービスの追加に分けて確認します。
- RTOの短縮:常時稼働に近づく
- 対象業務の拡大:追加設計が必要
- 運用要件の追加:監視やログの費用の増加
RTOを短くするとアクティブ・アクティブ構成に近づくため、待機系のコンピューティングとストレージに二重コストが発生します。
パイロットライト型は費用を抑えられる一方、有事の起動と設定反映に時間がかかります。業務ごとに許容停止時間を明確にしておくことが大切です。
対象業務を広げる場合は、拡張を見込んだデータモデルと権限設計を検討しておく必要があります。特に、この設計を初期段階で行うかどうかで、追加時の費用が大きく変わります。
復旧訓練の頻度、24時間監視、監査ログの保存期間も、追加費用になりやすい要素です。これらも含め、将来の拡張方針は発注の段階で共有しておくことが望ましいです。
災害対策(DR)システムの見積もりを取る際のポイント

複数社の見積もりは、同じ要件のもとで範囲と価格を分けて比べます。初期構築、レプリケーション、監視、訓練、保守を総額だけで比べないことが重要です。
見積依頼書に明記する対象業務・RTO・RPO・障害シナリオ
見積依頼書は、各社の前提条件をそろえるために作成します。
- 業務条件:対象業務、RTO・RPO、復旧順序
- 資産条件:現行資産と連携先
- 受入条件:復旧テストの基準
また、縮退運転の可否と想定する障害シナリオも記載します。台数やデータ量も併せて示し、DNS、認証、外部SaaSの依存関係も一覧に含めます。
設計、レプリケーション、監視の内訳も指定します。訓練と保守も内訳を分けておくと、初期見積もりからの差額を説明できます。
見落としやすい費用の事前の洗い出し
見積書では、準備、運用、継続(教育・訓練・制度対応)の費用がどこに含まれるかを確認します。
- 準備:要件定義、BIA、資産棚卸し、PoC
- 運用:復旧自動化、権限管理、監査ログ
- 継続:教育、訓練、制度改定への対応
発注側は、各項目が見積もりに含まれるか、別途精算か、誰が責任を持つかを確認します。
訓練をせずに稼働させると、復旧できないというリスクが表に出ることがあります。
個人情報を委託先や再委託先で扱う場合は、安全管理措置の内容も確認します。あわせて、再委託の把握、監査、取扱状況の確認作業にも費用がかかるため、見積もりに含める必要があります。出典は個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」です。
コストを抑える段階導入と標準化の組み合わせ
コストを抑えるには、優先業務への段階導入と機能の標準化を組み合わせます。
- 段階導入:優先度の高い業務から整備
- 標準化:バックアップのクラウド任せ
- 個別開発:判断、通知、連携に絞る
まず最小構成でPoCと復旧訓練を行い、効果を確認してから対象範囲を広げます。この方法なら、早い段階で実効性を確かめながら、追加投資を判断できます。
セキュリティ対策は、後から追加すると高額になりやすい項目です。IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025」は、3-2-1ルールを示しています。
発注側は、初期段階からアカウント分離、MFA、暗号化を要件に含め、イミュータブル(改ざん耐性)ストレージと管理操作ログも対象にします。これらを初期段階で組み込めば、事後対応より費用を抑えやすくなります(出典: IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025 セキュリティ対策の基本と共通対策」)。
災害対策(DR)システムの費用に関するよくある質問
費用や見積もりでよく聞かれる点をまとめました。金額は公開統計ではなく推定レンジのため、正式見積もりと照合してください。
最も安くDR対策を始める方法はありますか?
クラウドバックアップ等は、初期費用と導入期間を抑えて始めやすい方法です。
- 初期費用:50万〜100万円で始められる
- 導入期間:数週間〜2か月が目安
- 段階導入:影響の大きい業務から機能を追加
遠隔地バックアップを整えたあとに復旧自動化や訓練を加えると、初期投資を抑えやすくなります。
運用費は初期費用のどのくらいを見込めばよいですか?
保守、監視、訓練、回線、ストレージは、初期費用の年15%前後が目安です。ただし、クラウドの従量料金や24時間運用の有無で変わる推定値です。
統一された公開価格がないため、年間費用は3パターンで確認します。
- 平時:通常運用の費用
- 訓練時:復旧訓練の費用
- 有事:復旧時の費用
クラウドDRの費用が想定より膨らむのはなぜですか?
クラウドDRは、容量と復旧条件を分けて試算すると、費用の増加要因をつかめます。
- 従量課金:容量、転送量、復旧時の計算資源、世代数で増える
- PoC試算:変更率と復旧時間を測る
平時、訓練時、有事を分けて試算すると、想定外の膨張を防げます。
見積もりで見落としやすい費用は何ですか?
見積書の費用は、準備、運用、継続管理の3つに分けて確認します。
- 準備費用:BIA、資産棚卸し、PoC
- 運用費用:復旧自動化、権限管理、監査ログ
- 継続費用:教育、訓練、制度改定への対応
見積書の項目と精算方法を確認し、復旧テストを実施できない見積もりには注意が必要です。
まとめ
災害対策(DR)システムの費用は、方式と範囲によって大きく変わります。小規模なクラウドバックアップ整備は50万〜100万円が目安で、フルスクラッチ・基幹連携は800万〜3,000万円以上が目安です。
これは公開価格ではなく、2026年時点の推定です。金額は、方式、対象業務、データ量、RTO・RPO、24時間運用の範囲で変わります。
業務の優先順位と方式に分けた費用の判断
費用と対象範囲を分けて記載してもらうと、業務の優先順位が見えてきます。
- 開発方式:標準サービスと個別開発の分け方
- 料金区分:初期費用と運用費の内訳
- 対象範囲:BIAで優先業務を特定し、段階的に広げる
平時・訓練時・有事の料金も分けて確認すると、予算超過を防ぎながら実効性を高められます。
複数社の見積もりを同条件で比べる手順
見積もりを比べるには、先に条件をそろえておく必要があります。
- 条件整理:対象業務、RTO・RPO、障害シナリオをまとめる
- 見積依頼:候補先ごとに同じ条件を提示する
- 受入合意:復旧テストの基準を決めて本開発へ進む
稼働後に「復旧できると思っていたができなかった」という事態を防ぐため、受入の基準を先に決めておくことが重要です。
▼全体ガイドの記事
・災害対策(DR)システム開発の完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
