災害対策(DR)システム開発は、業務影響度分析(BIA)で復旧の条件を決め、方式を選んでPoCで検証し、本番移行後に復旧訓練で確かめる流れで進めます。
この順に進めると業務の再開につながります。全体像や費用、見積もりの確認点は、この後の見出しで順に取り上げます。全体像は完全ガイドの記事もご覧ください。
▼全体ガイドの記事
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災害対策(DR)システムの全体像

地震や水害だけでなく、ランサムウェアや誤操作でも本番環境は停止します。ハードウェア障害やクラウド障害によっても、本番環境は停止します。DRは、本番環境が止まったときに、重要なデータと業務システムを別拠点や別リージョンへ切り替え、事業を再開するための仕組みです。
バックアップはデータのコピーを作ります。一方で、DRはアプリケーションやインフラまで対象にします。ネットワークや運用手順も含め、復旧できる状態を計画・設計・訓練します。
DR・バックアップ・BCPの役割の違い
復旧計画の抜けを防ぐには、3つの仕組みの役割を分けて把握することが欠かせません。
- バックアップ:データを消さずに残すことが目的です。
- DR:止まった業務を再び使える状態に戻すことが目的です。
- BCP(事業継続計画):経営レベルの計画で、人員の安否確認、代替拠点、取引先や委託先との連携、意思決定体制までを含みます。
DRシステムは、BCPのうち技術面を支える手段の一つです。ただし、バックアップがあっても、復旧手順が関係者に共有されていなければ、有事に業務を戻せない恐れがあります。
高可用性(HA)は、局所的な障害が起きても業務を止めずに続けることが目的です。一方で、DRは広域災害や大規模インシデントからの再開を目指すものです。
同じデータセンター内で冗長化していても、その施設が被災すると復旧できません。そのため、要件定義の段階でHAとDRを分けて検討します。
構成方式の3種類への大別
構成方式は、求める復旧時間と運用コストを比べて選びます。
- アクティブ・アクティブ:主系とDRサイトの両方を常時稼働させる方式です。
- アクティブ・スタンバイ:待機系をあらかじめ保有しておく方式です。
- パイロットライト/バックアップ型:平時はデータを保管し、有事にサーバーを起動する方式です。
アクティブ・アクティブは復旧時間が最も短くなりますが、その分、二重運用の費用が常時かかります。
パイロットライト型は費用を抑えやすい一方で、有事の起動や設定反映に時間がかかります。そのため、業務ごとの許容停止時間と照らして選びます。
DRの主な機能には、遠隔バックアップ・レプリケーション、スナップショット、世代管理があります。さらに、フェイルオーバー/フェイルバック、復旧手順の自動化、RTO(目標復旧時間)・RPO(目標復旧時点)の監視も含まれます。
そのほか、復旧訓練・テスト起動や障害検知・通知があります。加えて、権限管理、多要素認証、監査ログも主な機能です。
安否確認や災害対策本部との情報連携も対象です。企業では、重要業務の優先順位と代替業務を決めておきます。また、連絡網や担当者の代理も管理対象になります。
依存サービスの復旧順序も、管理の対象です。外部委託先やDNSに加えて、認証やネットワークも対象になります。
災害対策(DR)システム開発の進め方

開発は、業務と災害シナリオを決めるところから始めます。まずBIAでRTO・RPOを定め、そのうえで資産の棚卸しと方式の比較へ進みます。PoC、本番移行、訓練は、その後の段階です。
全システムを一律に守るより、停止時の影響が大きい業務から優先するほうが、費用と復旧の確実性を両立させる出発点になります。
要件定義・企画フェーズでのBIAとRTO・RPOの決定
要件定義では、業務の影響度と資産の依存関係を明らかにします。
- 売上、受発注、決済、顧客対応など、停止時の影響が大きい業務の特定
- BIA(業務影響度分析)による、業務ごとの許容停止時間、許容データ損失、復旧順序、縮退運転の可否の決定
- サーバーやデータベースなどの現行資産の棚卸しと、業務との関係の整理
RTO・RPOは後工程の技術仕様と予算に直結します。そのため、担当者の感覚ではなく、業務データと関係者へのヒアリングから決めます。
棚卸しでは、サーバーやデータベース、アプリケーションを一覧にします。ネットワークやDNS、認証も、同じ一覧に加えます。
外部SaaSやライセンス、バッチ処理も対象に含めます。さらに、データ連携や委託先、運用担当者も洗い出し、停止時に影響する業務と各資産を結びつけます。棚卸しを省くと、バックアップ対象に入れ忘れたシステムが後から見つかる恐れがあります。
設計・開発フェーズの方式比較とPoC
方式の選定では、導入の速さ、固有要件への対応、運用負担を比べます。
- パッケージ/SaaS:定型機能を短納期で導入しやすい方式です。
- クラウドDR:遠隔リージョン、従量課金、必要時のみの起動、マネージドサービスを活用できます。
- スクラッチ開発:独自要件に対応できますが、開発・保守の負担が大きくなります。
パッケージ/SaaSは、固有業務や複雑な基幹連携に制約が出る場合があります。
クラウドDRは、ストレージ、転送、復旧時の計算資源が積み上がりやすい点に注意します。
スクラッチ開発では、設計とテストの工数を見積もります。さらに、保守と人材確保の負担も考慮します。
バックアップやレプリケーションは標準サービスに任せる構成も検討できます。業務固有の判断や承認は、ローコードや個別開発で補います。通知や連携も、同じ方法で補えます。
方式を絞ったら、PoCで実データに近い条件を検証します。確認するのは、実データ量、変更率、ネットワーク帯域です。さらに、復旧時間とライセンスも確かめます。
PoCでは、依存サービスと権限分離も確認対象です。IaC(Infrastructure as Code)や構成管理ツールを使うと、待機系への設定反映漏れを早く見つけられます。平時の設定変更が待機系に反映されていない状態は、「設定ドリフト」と呼ばれます。
テスト・リリースフェーズでの復旧訓練
本番移行のあとは、手順と連絡体制を確認し、業務が使える状態まで戻せるかを訓練で検証します。
- 復旧手順:手順書とフェイルオーバー/フェイルバックの流れの整備
- 連絡体制:連絡網とエスカレーション方法の決定
- 訓練と改善:年1回以上の訓練と、結果を運用に反映すること
復旧テストでは、データが残っているかだけでなく、業務が実際に使えるかを確かめます。全システムを同時に復旧しようとすると、帯域が足りなくなる例があります。待機系に設定変更が反映されない例もあります。
訓練が不足していると、担当者が不在のときに復旧できません。平常時の切替だけでなく、担当者不在や複数障害の同時発生も想定します。
発注担当者からは、「本番の設定変更が待機系に反映されない」「担当者不在で復旧できない」といった不安が強く挙がります。こうした不安に対しては、訓練シナリオに担当者交代のケースを含めると、解消しやすくなります。
費用相場とコストの内訳

DR専用開発について、全国一律の公的な相場は公開されていません。そこで、類似システムの概算と、2025〜2026年時点のクラウド公式料金例を組み合わせた目安を示します。
ここに示す数字は、参考レンジとして見てください。金額は台数やデータ量で変わるほか、RTO・RPOや既存システムとの連携によっても変わります。
人件費と工数の方式別の違い
類似システムの概算では、規模や方式によって初期費用と期間に幅があります。
- 小規模バックアップ:50万〜100万円、数週間〜2か月が目安です。
- ノーコード/SaaS連携:100万〜800万円、1〜4か月が目安です。
- ローコード・パッケージ:300万〜1,500万円以上、2〜5か月程度です。
- フルスクラッチ・基幹連携:800万〜3,000万円以上、6か月〜1年以上です。
小規模整備は、まずデータ保護から始めたい組織に適しています。SaaS連携では、安否確認や被害報告が対象になります。さらに、通知や簡易ワークフローも含まれます。
ローコード・パッケージでは、複数部署の連携と基本的な冗長化を含みます。一方で、フルスクラッチは複雑な基幹系と独自の復旧制御を含みます。
ここまでの金額と期間は、類似システムの概算に基づく2026年時点の編集用目安です(出典: NotebookLMリサーチノート)。
数十人規模で主要サーバーの遠隔バックアップを整える場合は、150万〜300万円、1〜3か月が目安です。100人前後で複数システムや拠点の復旧を扱う場合、DRサイト整備は300万〜600万円、3〜6か月が一つの目安です。
人件費は、要件定義・制度調査と業務設計の工数を分けて確認します。さらに、レプリケーション設計と復旧手順の自動化も見ておきます。
テストや教育、切替支援の工数も確認すると、工程ごとの配分が見えてきます。
初期費用以外のランニングコスト
運用費は初期費用と分けて見積もり、費目と目安を確かめます。
- 主な費目:保守、監視、訓練、回線、ストレージ。
- 慣行的な目安:初期費用の年15%前後。クラウド従量料金や24時間運用で変動します。
AWS Elastic Disaster Recoveryは、アクティブにレプリケートするソースサーバー1台あたり0.028米ドル/時間です。EBS、EC2、スナップショット、転送などは別途発生します。100台・30TB構成の月額合計例は6,389.03米ドルです(出典: AWS「Elastic Disaster Recoveryの料金」、2026年確認)。
Microsoftの公開構成例では、オンプレミス1台のAzure Site Recoveryサービス利用料は2,873.37円です。同じ構成例で、ストレージなどを含めた合計は9,822円です(出典: Microsoft「クラウドはじめの一歩シリーズ #2」)。
NEC Cloud IaaSの公開例では、仮想サーバー5台・10Mbps回線の物理サーバー用DRが月額35万円〜です(出典: NEC「Cloud IaaS DRサービス」)。
これらは特定の条件での公式例です。為替やリージョンで金額は変わり、容量や割引、構成によっても変わります。そのため、見積もりでは平時、訓練時、有事の3パターンに分けて料金を確認します。
見積もりを取る際のポイント
見積もりの精度は、業務要件と復旧の許容範囲をどれだけ言語化できるかで決まります。
依頼の時点で、対象業務とRTO・RPOを伝えておくと、各社の前提がばらばらになりにくくなります。既存環境や依存サービスも含め、機能要件と非機能要件を分けて提示します。
要件の明確化と仕様書の準備
見積もりの前提をそろえるため、仕様書に記載する要件を整理します。
- 業務要件:対象業務、BIA、業務別RTO・RPO、復旧順序、縮退運転の可否。
- 障害シナリオ:自然災害、ランサムウェア、設定ドリフト、認証基盤障害、委託先停止、クラウドリージョン障害。
- 環境情報:資産台帳、台数、データ量、連携先、依存するDNS・認証・外部SaaS。
- 見積条件:復旧テストの受入基準と、設計・レプリケーション・監視・訓練・保守の内訳。
初期費用だけを見て比べると、復旧テストを実施できない恐れがあります。そのうえ、データ量が増えると従量課金が膨らむ場合もあります。
DRサイトの容量が足りないことも、失敗につながります。そのため、仕様書には復旧テストの受入基準を定めておきます。
現行の資産台帳や連携先を添えれば、見積もりの前提がそろいます。
複数社比較と発注先の選び方
候補企業は、実績に加えて、要件の整理から復旧訓練までをどこまで支援できるかで比べます。
- 設計支援:資産棚卸し、BIA、RTO・RPOの合意、依存関係の洗い出し。
- 運用支援:訓練設計とセキュリティ事故時の隔離。
- 契約・費用:料金表、再委託、データ所在地、監査権限。
- 継続性:撤退時のデータ移行とベンダーロックイン。
RFPには、同規模・同業種での復旧実績と、RTO・RPOを満たす設計の根拠を盛り込みます。
確認しておきたいのは、24時間の障害対応と復旧訓練の支援範囲です。さらに、再委託やデータ所在地、監査権限も確かめます。
平時、訓練時、有事それぞれの料金表も、比べる対象にします。撤退時のデータ移行条件も、RFPに記載します。
AWSやMicrosoft Azureは、クラウド基盤サービスの提供元です。実装や移行、運用は、認定パートナーやSIerと組む前提で比べます。
相見積もりでは、基盤利用料とSIerの設計・移行・運用費を分けると、総額の内訳を把握できます。
注意すべきリスクと対策
バックアップ保護と委託先管理の要点を、仕様に反映します。
- 保管:複数コピーと遠隔保管の組み合わせ、ネットワークからの隔離
- 改ざん対策:不変またはオフラインの保管先と、復旧テストの検討
- アクセス制御:バックアップ用アカウントと復旧用権限の分離
- 委託管理:安全管理措置、再委託、監査、取扱状況の確認
IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025」が示す3-2-1ルールを基本にします。
内容は、3つのコピーを2種類の媒体に保ち、そのうち1つは遠隔地に保管するというものです(出典: IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025 セキュリティ対策の基本と共通対策」)。
ネットワークから隔離した保管、地理的に離れた保管、複数世代管理も要件に含めます。
「3-2-1-1-0」は、1つをイミュータブル(改ざん耐性)またはオフラインで保管する発展形です。こうした考え方では、バックアップ自体がランサムウェアの標的になる前提に立ちます。そのうえで、復旧テストを行い、エラーがないことを確かめます。
ランサムウェアによる被害を想定し、保管方法とアクセス制御を要件として定めます。さらに、MFAや暗号化、管理操作ログも対策に含まれます。
復旧用の緊急権限や、マルウェア侵入前の復元ポイントの選択も決めておきます。
個人情報を委託先や再委託先で扱う場合は、個人情報保護委員会のガイドラインに沿って委託先を選びます。
契約で安全管理措置を定め、再委託を把握し、監査や取扱状況を確認します(出典: 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」)。
DRシステムの導入を一律に義務づける法律は、必ずしもありません。そのため、業界、データ種別、委託形態ごとの要件を確認します。
よくある質問(FAQ)
開発を検討する際によく寄せられる質問のうち、進め方と費用に関するものに答えます。
DRシステムとバックアップは何が違いますか?
バックアップはデータのコピーを作ります。一方で、DRはアプリケーションやインフラ、運用手順まで整えて、業務を再開できる状態にします。バックアップデータがあっても、復旧手順や体制がなければ、有事に業務を戻せません。
RTOとRPOはどう決めればよいですか?
RTO(目標復旧時間)とRPO(目標復旧時点)は、担当者の感覚ではなくBIA(業務影響度分析)から決めます。
まず、停止時の売上損失、顧客影響、法令上の制約を数値化し、そのうえで許容停止時間とデータ損失量を関係者と合意します。合意した内容は、システムの技術仕様と予算に落とし込みます。
DRシステムの導入にはどれくらいの期間がかかりますか?
小規模なクラウドバックアップは数週間〜2か月、ノーコード/SaaS連携は1〜4か月が目安です。
ローコード・パッケージ活用は2〜5か月、複雑な基幹系を含むフルスクラッチは6か月〜1年以上です。
期間は方式や規模によって変わるため、対象業務とRTO・RPOを決め、前提をそろえたうえで開発会社に確認します。
復旧訓練はどのくらいの頻度で行うべきですか?
年1回以上の復旧訓練と、訓練後の改善を、運用に組み込みます。
担当者不在や複数障害の同時発生も想定します。確認すべきは、「データがある」だけでなく、「業務が使える」ことです。
制度改定やシステム変更があった際は、定期訓練とは別に臨時訓練を検討します。
まとめ
災害対策(DR)システム開発は、BIAでRTO・RPOを定めるところから始めます。サーバーの二重化を出発点にせず、資産を棚卸しして方式を比べます。
PoC、本番移行、復旧訓練までを、一連の取り組みとして計画します。想定する障害には、自然災害に加えて、ランサムウェアや設定ドリフトがあります。委託先の停止やクラウドリージョン障害も考慮します。
停止時の影響が大きい業務からの優先順位づけ
全システムを一律に守ると費用が膨らみ、復旧確実性も下がります。そのため、BIAで許容停止時間とデータ損失量を数値化し、優先度の高い業務から段階的にDR体制を整えます。
この順序が、限られた予算で成果を出す近道です。
訓練を前提にした体制づくり
導入後の手戻りを抑え、訓練を続けられる体制にするため、次の順で進めます。
- 現行資産の棚卸しと、BIAの結果に基づく業務ごとのRTO・RPOの合意
- 方式の比較と、実データに近い条件でのPoCを経た本番移行
- 復旧訓練を初期から運用計画に含めることと、体制の継続的な見直し
継続して見直せる訓練体制があってこそ、実効性のある災害対策(DR)システムにつながります。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
