図面管理(EDM)の保守・運用費用は、導入形態、利用人数と保管容量、CADや業務変更への対応範囲によって変わります。金額の目安は、SaaSは月額48,000円から、フルスクラッチは月額で初期開発費の5〜15%程度です。
導入形態別の費用、CAD図面に固有の費用、運用費を抑える工夫を順に見ていきます。
▼全体ガイドの記事
・図面管理(EDM)開発の完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
図面管理(EDM)の保守・運用費用の全体像

ここでいう図面管理(EDM)は、社内のファイルを保管する汎用的なファイル・ドキュメント共有基盤とは異なり、設計で作られる2次元・3次元CAD図面のメタデータとワークフローを管理する仕組みです。この専門性があるため、単純なファイルサーバーやクラウドストレージとは、コスト構造が異なります。
具体的には、図面ごとのリビジョン(版数)管理、設計変更(ECN/ECO)の履歴追跡、図番体系とBOM(部品表)の紐付けを扱います。さらに、設計から検図・承認・出図までの承認ワークフローや、専用CADソフトなしで閲覧できるCADビューア連携にも対応します。また、取引先・協力会社への図面貸与と機密管理も、EDMが担う機能です。
図面管理(EDM)のランニングコストは、「ライセンス費用(またはインフラ費用)」「保守・運用費用」「継続的なシステム変更費用」の三つで構成されます。3D CADデータの保管やCADソフトの更新、設計変更や図番ルール改定に伴う費用も、これらの要素で捉えられます。
EDMは製品仕様や組織、連携先の変化に合わせて改修を続けるため、初期開発費だけを見ても予算は組みきれません。導入形態を比べるときは、初期費用とランニングコストを合わせた総所有コスト(TCO)で確認します。
保守・運用費用を構成する要素
ランニングコスト全体は、利用を続けるための費用、システムを維持する費用、CADデータを保管する費用、仕様や承認ルートの変更に応じる費用の四つに分けても、何のために費用がかかっているかを切り分けられます。ランニングコスト全体は、保管費を加えた次の四つに分けても捉えられます。
- ライセンス・インフラ:利用の継続に必要な費用。
- 狭義の保守:不具合修正、セキュリティ更新、技術支援を含む費用。
- ストレージ・バックアップ:大容量のCADデータを保管する費用。
- システム変更:製品仕様や承認ルートの変更に対応する費用。
製品仕様や品目属性の追加、BOM(部品表)レイアウトの変更が起きるたびに、継続的な対応が必要になります。組織変更に伴う承認ルートやアクセス権限の見直しでは、エンジニアやプロジェクトマネージャーの人件費もかかります。CADツールやERPと連携している場合は、連携先の仕様変更に伴うAPI連携の改修費も見込む必要があります。つまり、これらを合算したものが、EDMの実質的なランニングコストです。
導入形態別の費用構造の違い
導入形態を比べるときは、初期費用に加えて、利用規模と保管量に応じた継続費も見ます。
- SaaS/クラウド型:初期費用を抑えやすく、月額または年額で利用する。
- オンプレミス型:初期開発費は高めだが、費用の中心は保守料と自社インフラ費。
- フルスクラッチ:自社仕様に合わせられるが、継続的な保守を自ら担う必要がある。
SaaS/クラウド型は、サーバーの調達やインフラ維持をベンダーに任せられます。その一方で、利用ユーザー数や保管容量に応じて費用が積み上がる傾向があります。
どの形態が有利かは、利用規模と図面量、利用期間、自社で担う運用範囲によって変わります。具体的な費用の目安は、次の節で導入形態ごとに見ていきます。
SaaS/クラウド型のライセンス費用とオンプレ・フルスクラッチの保守費

SaaS/クラウド型の図面管理・PLMシステムは、「ユーザー課金型」と「定額(ユーザー・容量無制限)型」に分かれます。課金モデルを選ぶ際は、利用人数の見込みと、社外協力会社へのアクセス権付与が出発点になります。
SaaSのユーザー課金型と定額型の相場
SaaSの費用は、利用人数に応じて増えるのか、定額で見通しを立てやすいのかで比べます。
- ユーザー課金型:利用人数に応じてライセンス費用が増える。
- 定額型:ユーザー数や図面保管数が増えても追加課金なし。
日本オラクルの「Oracle Fusion Cloud PLM」は、1ユーザー月額約38,000円で、最低10ユーザーから利用できます。また、NECの中堅・中小企業向けSaaS「Obbligato for SaaS」は、含有化学物質管理機能を20名で利用する場合などで、月額16万円〜です。
ユーザー課金型は、少人数で始めると初期コストを抑えやすい一方、利用部門を広げるほど費用が増えます。定額型の例としては、図面管理に特化した「図面バンク」が月額48,000円から利用できます。
全社利用や社外協力会社への広いアクセス権付与では、定額型のほうが見通しを立てやすい場合があります。そのため、利用規模の拡大見込みを踏まえ、どちらが総額で有利かをシミュレーションします。
オンプレミス・フルスクラッチの年間保守費の目安
オンプレミス型パッケージとフルスクラッチでは、初期費用に加えて、継続的な保守費も見込んでおく必要があります。
- オンプレミス型パッケージ:パッケージ価格の10〜20%、またはライセンス価格の20〜40%が年間保守費の目安。
- フルスクラッチ開発:初期開発費の5〜15%程度を、月額保守費として見込む。
オンプレミス型パッケージの保守費には、バージョンアップ権利と技術サポート、不具合対応が含まれます。一方、フルスクラッチは自社仕様に合わせられますが、保守は自社とベンダーで担う必要があります。
たとえば、初期開発費5,000万円のフルスクラッチでは、月額およそ250万〜750万円です。年間に直すと、初期費用の6割〜1.8倍に相当する保守費がかかる計算になります。
継続コストを織り込まずに導入を決めると、後の予算計画が苦しくなります。そのため、導入の判断では、初期費用と年間保守費を含めた長期的な総額を比べます。
CAD図面という大容量ファイルに固有のランニングコスト

図面管理(EDM)では、CAD図面を大容量のまま長期間保管するため、汎用的なファイル共有にはない費用が発生します。
主な項目は、データ容量に応じたストレージ・バックアップ費用と、CADソフトの更新に追従する保守負担です。汎用システムでは見落とされがちなこれらの費用も、EDMでは長期的に無視できません。
ストレージ増加・バックアップ・アーカイブコスト
ストレージ費用は、3D CADデータの量と保管期間、リビジョンの保持方針によって増減します。
- 長期保管:製品のライフサイクル全体で図面を保持する。
- リビジョン管理:最新版だけでなく、過去の版もすべて保持する。
- 保管場所:オンプレミスは機器、クラウドは容量に応じた費用が必要。
製造業では、製造が終わった後も、保証や補修部品の供給に備えて図面を手元に残しておく必要が出てきます。
図面の版が更新されるたびにデータ量は増え、サーバーやバックアップの費用が積み重なっていきます。クラウドでは、保管する容量に応じた課金がそのまま積み上がります。一方、オンプレミスでは、ストレージ機器の増設とバックアップ用ストレージの確保も定期的に必要になります。
設計変更が頻繁で図面点数が多い企業ほど、ストレージコストは無視できません。そこで、オンラインで参照する図面と、低コストのアーカイブ領域へ退避する図面を分けておきます。
データのライフサイクルに応じた保管方針をあらかじめ決めておくと、コストを抑えることにつながります。
CADソフトのバージョンアップ追従とビューア更新の保守負担
CADソフトやERPが更新されると、EDMのビューアや取り込み機能にも改修が必要になります。
- 外部仕様変更:CADツールやERPとのAPI連携を改修する。
- CADフォーマット:新しい図面形式にビューアや取り込み機能を合わせる。
- カスタマイズ:更新時に独自アドオンの修正が必要になる場合がある。
CADソフトの新バージョンで図面フォーマットが変わると、最新の図面を正しく表示・保管できないおそれがあります。こうしたバージョンアップ追従の改修は、稼働後も継続的に発生する保守項目です。
パッケージ製品の更新時には、独自に開発したカスタマイズコードが動かなくなることがあります。その場合、カスタマイズの修正費用が高額になるケースもあります。
「Aras Innovator」のように、追加カスタマイズの移行保証をサブスクリプションの中で提供する製品もあります。
カスタマイズを多用するほど、バージョンアップ時の改修費がかさみます。そのため、製品を選ぶ際は、バージョンアップポリシーとカスタマイズ移行保証の有無を確認しておきます。
継続的に発生する運用メンテナンスと社外貸与コスト
EDMは業務プロセスの変化に合わせて、稼働後も改修と運用が続きます。なかでも、設計変更・図番ルールの改定や、社外への図面貸与・権限運用に伴う費用は、日々発生するため見えにくい費用です。一方で、積み重なると相応の負担になります。
設計変更(ECN/ECO)運用・図番ルール改定に伴う継続メンテナンス
継続改修の費用は、業務ルールやマスタ、承認・権限設定が変わるたびに発生します。
- 業務プロセス:製品仕様、品目属性、BOMの変更に対応する。
- 組織変更:承認ルートやアクセス権限を見直す。
- 図番ルール:採番ルールの見直しや新しい製品カテゴリに対応する。
運用しながら改善を重ねるため、エンジニアやプロジェクトマネージャーの人件費も継続的に発生します。設計変更(ECN/ECO)が活発な企業では、変更管理のワークフローや通知先を調整する場面が増えます。その都度、システム側の設定変更や改修が必要になります。
事業の成長や組織再編で図番の採番ルールを見直す際には、マスタデータの整備も必要になります。新しい製品カテゴリを追加するときも、システムの設定変更が欠かせません。
そのため、専任の運用担当者を社内に置くか、ベンダーとの保守契約で対応するかは、事前に決めておきます。決めないまま進めると、変更のたびに個別見積もりが積み重なり、予算を圧迫します。
社外(協力会社)への図面貸与・アクセス権限運用コスト
社外への図面貸与では、次の項目を継続して管理する必要があります。
- アクセス制御:閲覧・ダウンロード・編集の権限を管理する。
- 監査ログ:図面に対する操作を記録・管理する。
- セキュリティ:大容量CADデータの保管・プレビューを暗号化する。
- 社外ライセンス:ユーザー課金型では社外利用者分が追加される。
図面やCADデータは企業の重要な機密情報であり、知的財産でもあります。社内外で安全に共有し続けるため、こうした仕組みの運用と維持にも費用がかかります。
協調設計で協力会社やサプライヤーと組む場合は、社外ユーザーの人数によって、ライセンス費用の総額が大きく変わります。協力会社が多い企業では、定額(ユーザー数無制限)型のほうが有利になるケースもあります。
図面の貸与では、ダウンロードを許可する範囲と、持ち出した後の管理方法も決めておく必要があります。さらに、運用ルールを継続的に監視する体制を保つことにも、コストがかかります。
機密管理のレベルを上げるほど運用の負荷は増えるため、図面の重要度に応じて、利便性とのバランスを設計します。
ランニングコストを抑えるポイント
EDMのランニングコストを抑えるには、標準機能の活用、段階的な導入、データルールの統一という三つの面から計画を立てておくと効果的です。
- Fit-to-Standard:標準機能に業務を合わせ、過剰なカスタマイズを避ける。
- スモールスタート:限定範囲でPoC(概念実証)を行い、段階的に拡張する。
- データ標準化:品目コードや図面番号、BOMのルールを統一する。
ランニングコストを押し上げる最大の要因は「過剰なカスタマイズ」です。既存のやり方を無理に再現すると、改修の範囲が広がり、費用が膨らみます。
過剰なカスタマイズを避けると、初期開発費だけでなく、将来のバージョンアップ時の改修費用も抑えられます。
たとえば、特定の製品ラインや「図面管理+承認ワークフロー」から始め、最初から全社・全機能を連携させないようにします。効果を確かめながら機能を広げていけば、無駄な投資を防げます。さらに、使われない機能への投資と、それに伴う保守費も抑えられます。
データ標準化は、導入前に経営層のリーダーシップのもとで進めます。ルールをそろえると、データの作り方も統一されます。そのため、不要なカスタマイズを省け、システムを連携しやすくなります。
これら三つは、初期開発の段階から意識しておくと、長期のランニングコストに差が出ます。
まとめ
図面管理(EDM)の保守・運用費用は、CAD図面という専門的な情報を扱うため、独自の費用構造を持ちます。SaaS/クラウド型では、ユーザー課金型と定額型で費用構造が異なります。
金額の目安として、Oracle Fusion Cloud PLMは1ユーザー月額約38,000円、図面バンクは月額48,000円からです。オンプレミス型パッケージの年間保守費は、パッケージ価格の10〜20%、またはライセンス価格の20〜40%が目安です。フルスクラッチ・カスタマイズ開発では、月額で初期開発費の5〜15%を見込みます。
EDM特有の費用には、大容量CADデータのストレージ・バックアップ費用があります。さらに、CADソフトの更新追従やビューア更新、ECN/ECO運用、図番ルール改定にも保守負担が生じます。社外への図面貸与では、アクセス権限運用とライセンスのコストも見込む必要があります。
コストを抑えるには、Fit-to-Standardで過剰なカスタマイズを避け、スモールスタートで無駄な投資を防ぐことが有効です。あわせて、導入前にデータ生成ルールを全社で統一しておきます。そのうえで、初期費用だけでなく、稼働後の総所有コスト(TCO)まで見据えることが、長期運用の鍵です。
最適な形態と費用感を具体化するには、複数の会社に相談して、TCOを含めた見積もりを比べるとよいでしょう。
▼全体ガイドの記事
・図面管理(EDM)開発の完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
