図面管理(EDM)開発の完全ガイド

図面管理(EDM)の開発は、版管理・承認・権限・既存システムとの連携を先に整理することから始まります。

そのうえで、パッケージ・クラウド・スクラッチの適合性、費用、開発会社の選び方を順に比べる流れになります。

図面管理(EDM)の定義

図面管理EDMシステムのイメージ

EDM(Engineering Document Management)は、製品の設計図面、CADデータ、仕様書などの技術文書を、デジタルで一か所にまとめて管理する仕組みです。変更履歴や承認記録も、その対象に含まれます。

製造業では「図面管理システム」とも呼ばれます。

この仕組みは、設計・製造・品質・調達などの部門が、共通の図面リポジトリにアクセスして業務を進めるための土台です。

EDMはPDM(Product Data Management:製品データ管理)やPLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)と関係の深いシステムです。

そのなかでもEDMは、文書や図面の登録・検索・版管理・配布に特化した領域を担います。

従来の図面管理は、ファイルサーバーのフォルダ整理、Excelの管理台帳、紙の図面ファイルが中心でした。

しかし、この方法では、どれが最新版か判断しにくい、改訂が関係者に行き届かない、同じ図面の複数版が混在して混乱する、といった問題が慢性的に起きます。

EDMを導入・開発すると、図面の登録から廃版・アーカイブまでを一貫してデジタルで管理できます。そのため、設計ミス、品質トラブル、情報漏洩リスクを大きく下げられます。

EDMシステムの主な機能

EDMの機能は、図面の保管から部門間の連携までを支えています。登録・版管理、検索、承認、権限管理、システム連携の5つが、その中心です。

  • 登録・版管理:CADやPDFの保管と、改訂履歴・過去版の管理。
  • 検索:図面番号・品番・属性で絞り込み、対応製品では図面内の文字も探せます。
  • 承認:設計・レビュー・決裁の順に進む流れと、差し戻しの履歴。
  • 権限管理:部門や役職ごとに、閲覧・編集・取得の範囲を分けて設定できます。
  • システム連携:CAD属性を取り込み、ERPやPLMなどとデータをつなぎます。

EDM・PDM・PLMの違いと関係性

EDM、PDM、PLMは、扱う範囲が順に広がるシステムです。EDMを起点に、PDM、PLMへと段階的に広げていく関係にあります。

  • EDM:図面・仕様書などの技術文書の管理に特化しており、登録・検索・版管理・配布が主な機能です。
  • PDM:EDMの機能に加えて、部品表(BOM)・材料情報・製品構成の管理まで範囲を広げたシステムです。
  • PLM:製品の企画から廃棄までのライフサイクル全体を、デジタルで管理するシステムです。

多くの中小〜中堅製造業では、まずEDMの仕組みを整備することが現実的な第一歩です。PLMは大規模企業向けで導入コストが非常に高いため、自社の規模や課題に合った範囲から始めることが大切です。PLMには、設計変更管理、プロジェクト管理、サプライヤ連携なども含まれます。さらに、EDMを起点に段階的にPDM・PLMへ広げていくと、失敗のリスクを小さくできます。

図面管理(EDM)を導入・開発するメリットと課題

図面管理EDM導入のメリット

EDMを開発・導入すると、製造業が長年抱えてきた図面管理の課題を根本から解決できます。ファイル保管の電子化にとどまらず、設計品質や業務効率の向上、情報セキュリティの強化、技術ノウハウの継承といった多面的な効果が期待できます。

導入に当たっては、既存業務の見直しや、組織として運用を定着させる取り組みが必要です。メリットと課題の両面を正確に理解して開発・導入を進めることが、成功への近道です。

EDM導入の5つのメリット

図面の管理を電子化すると、次の5つの効果が期待できます。

  • ①最新版の確実な共有:バージョン管理で常に最新の正式版図面が明確になり、旧版の誤使用による製造ミスや品質トラブルを防ぎ、設計変更の周知漏れも解消できます。
  • ②業務効率の大幅改善:図面を探す時間が大きく減り、紙やフォルダを探し回る手間もなくなるため、設計者が本来の設計業務に集中できます。
  • ③組織全体での情報共有:部署や拠点をまたいで図面にアクセスでき、設計情報の特定担当者への偏りを解消します。退職や異動による技術ノウハウの喪失リスクも減らせます。
  • ④セキュリティの強化:閲覧・編集・ダウンロードを役職・部門・プロジェクトごとに設定し、外部流出リスクを下げます。アクセスログで不正アクセスの早期検知も可能です。
  • ⑤承認プロセスの透明化:設計変更の申請・承認・公開の流れをシステム上で管理し、承認漏れや遅延を防いで進捗を見えるようにします。

EDM開発・導入における課題と対策

開発や導入の段階では、次の4つの課題が起きやすくなります。

  • 運用定着の難しさ:現場がファイルサーバーやメール管理に戻ると効果は半減するため、使いやすい画面設計、段階的な展開、研修と運用ルールの整備が欠かせません。
  • 既存図面の移行:長年蓄積された紙図面やCADデータの属性情報の付与、重複・廃版の整理に工数がかかるため、移行の範囲と優先順位を決めて計画的に進めます。
  • 権限設計の複雑さ:部署や役職、プロジェクト、図面の種類によって権限が絡み合い、設計を誤ると業務停止や情報漏洩につながります。
  • 他システムとの連携:ERPやPLMとのデータ連携は、インターフェース設計が複雑になりやすく、開発工数やテスト工数が膨らみがちです。

権限の設計は、要件定義の段階で権限マトリクスを丁寧に整理しておくことが欠かせません。連携は、優先度を段階的に決め、まずはスタンドアロンで稼働させてから範囲を広げるのが現実的です。

図面管理(EDM)開発の進め方

図面管理EDM開発の進め方

EDMの開発は「要件定義→設計→開発→テスト→リリース→運用・保守」の流れで進みます。開発期間は規模によって異なりますが、中規模の製造業向けEDM開発で6〜12ヶ月、PLM連携を含む大規模開発では12〜18ヶ月以上が目安です。

一般的なシステム開発と同じフェーズ構成ですが、EDMには版管理ロジック・権限設計・承認フロー・CAD連携・既存図面の移行といった固有の複雑さがあります。そのため、各フェーズで製造業のドメイン知識が欠かせません。特に要件定義で曖昧さを残すと、後続のフェーズで手戻りが多発し、コストとスケジュールの超過につながります。

各開発フェーズの詳細と注意点

要件定義で決めた図面の種類や権限の範囲は、後の工程の作業量を左右します。作業は要件定義から始まり、設計、開発、テストを経て、リリースと運用・保守へ進みます。

  1. 要件定義:図面の種類・件数・ファイル形式、改訂と承認のルール、ERP/PLMとの連携範囲を聞き取ります。
  2. 基本設計:構成(オンプレミスかクラウドか)を決め、図面マスタ、版管理テーブル、権限マスタのデータベースと、CAD・外部システム連携のAPI、画面を設計します。
  3. 詳細設計・開発:各機能のコーディングと単体テストを行います。
  4. 結合テスト・UAT:業務シナリオでシステム全体を検証し、設計者・現場スタッフ・品質担当者が受け入れテストを行います。
  5. リリース・移行と運用・保守:本番環境への切り替えと操作研修を行ったあと、障害対応、機能追加、セキュリティアップデートを続けます。

要件定義では、使用するCADの種類や権限・セキュリティ、検索とプレビューの要件も、この段階で整理します。版管理や権限設計の工数は見えにくいため、要件定義に工数を惜しまないことが大切です。

版管理ロジック、承認フローエンジン、検索インデックスの構築は特に複雑なため、経験豊富なエンジニアの配置が求められます。既存図面の移行には属性情報の整備が必要なため、まず新規図面から運用を始め、順次移行するのが現実的です。

パッケージ・クラウド導入とスクラッチ開発の選び方

EDMの構築方法は、大きく3種類に分かれます。

  • パッケージ導入:既製品をそのまま、または軽微なカスタマイズで使う方法です。導入コストが低く、短期間で稼働できます。
  • クラウドサービス(SaaS):月額課金制で初期投資を抑えられ、リモートアクセスや多拠点での共有が容易です。
  • スクラッチ開発(フルカスタム開発):自社の業務フローに完全に合わせて、システムをゼロから構築する手法です。

製造業向けの基本機能がそろった製品には、NAZCA5 EDM・図管王などがあります。ただし、業務フローをシステムに合わせる必要があり、自社固有の承認ルールや他システム連携に限界が出ることもあります。

クラウドでは、ベンダーが機能を継続的にアップデートしてくれるものの、カスタマイズ性には制限があります。

複雑な版管理ルールや独自の承認フロー、既存基幹システムとの密接な連携など、パッケージでは実現が難しい要件を持つ企業には、スクラッチ開発が適しています。開発費用や期間はかかりますが、長期的な競争優位を確保でき、運用コストも抑えられる見込みです。判断の基準として、業界標準の運用で足りるならパッケージやクラウド、自社固有の要件で差別化が重要ならスクラッチ開発が向きます。

関連する解説:EDM開発の進行手順を検討する際は、関連する解説もご覧ください。

ポイント

構築方法は業界標準の運用で足りるかどうかで決め、足りない場合にスクラッチを検討します。要件定義に工数を惜しまないことが、開発期間と手戻りを抑える出発点になります。

図面管理(EDM)開発の費用相場

図面管理EDM開発の費用相場

EDM開発の費用は、システムの規模、構築方法、カスタマイズの範囲、連携するシステムの数によって大きく変わります。パッケージ導入からスクラッチ開発まで、数十万円から数千万円以上と幅広い価格帯があります。

費用感を事前につかんで予算計画を立てることが、プロジェクトを成功させるうえでの前提条件です。初期開発費用だけでなく、年間の保守・運用費用も含めた総所有コスト(TCO)で評価することが欠かせません。

規模別の費用相場

小規模(単一部門・シンプルな版管理・100件以下の図面)では、パッケージ導入で200万〜500万円程度、スクラッチ開発で300万〜600万円程度が目安です。中規模(複数部門・承認フロー・CAD連携・500〜5,000件の図面)では、パッケージのカスタマイズ導入で500万〜1,000万円、スクラッチ開発で600万〜1,200万円程度となります。

大規模(多拠点・複雑な権限管理・PLM/ERP連携・5,000件以上の図面)では、スクラッチ開発や大規模なカスタマイズで1,500万〜3,000万円以上になることも珍しくありません。既存パッケージの価格例として、NAZCA5 EDMのセルフ導入プランは195万円から、フルカスタムプランは800万円からです。

クラウド型のSaaSは、月額数万円からの定額制サービスも提供されており、ユーザー数や図面件数に応じて費用が変わります。いずれの場合も、初期費用に、年間保守費用(初期費用の15〜20%程度が目安)、ユーザー研修費用、既存図面の移行費用を足した総費用で比べることが欠かせません。

EDM開発費用を適正化するためのポイント

費用を適正化するには、次の5つの進め方があります。

  • ①要件の具体化:要件定義を丁寧に行い、「何を、どのレベルで実現するか」を明確にします。見積の精度が上がり、追加費用のリスクを下げられます。
  • ②段階的な導入:最初から全部門・全拠点は対象にせず、パイロット導入で効果を確かめてから広げます。PLM・ERP連携はフェーズ2以降に回し、初期費用を抑えます。
  • ③既存テンプレートの活用:開発会社が持つEDM開発のテンプレートや共通基盤を使えば、ゼロからの開発に比べてコストと期間を大幅に短縮できます。
  • ④現場PMの配置:自社のプロジェクトマネージャーが、開発会社との要件調整や意思決定を迅速に行える体制を整えます。手戻りによる追加費用を防止できます。
  • ⑤複数社見積の取得:同一の要件定義書を複数の開発会社に示して見積を取り、費用・技術力・実績を比べることで、適正価格を見極められます。

関連する解説:費用の内訳や相場を確認する際は、費用の解説もご覧ください。

ポイント

費用は初期費用だけでなく、年間の保守費用と既存図面の移行費用を含めた総費用で比べます。規模別の相場は目安にとどめ、見積の前提となる要件がそろっているかを基準にすると判断しやすくなります。

図面管理(EDM)開発の発注・外注方法

図面管理EDM開発の発注外注方法

EDMの開発を外部の開発会社に委託する際は、発注前の準備から契約、プロジェクト管理まで、適切な手順を踏むことが成功への鍵です。

EDMは製造業のコア業務に深く関わるシステムのため、発注先の選定を誤ると、開発の失敗やプロジェクトの遅延、想定外の追加費用といったリスクにつながります。

外注の流れを正しく理解し、リスクを抑えた発注を進めることが大切です。

EDM開発の外注プロセス

EDM開発の外注は、大きく次の流れで進みます。①課題・要件の整理:自社の図面管理の現状と課題、実現したい機能を文書にまとめます。業務フローや連携、セキュリティの要件も併せて書き出します。この段階が不十分だと、開発会社への要件の伝達があいまいになり、RFPの精度も下がります。

②RFP(提案依頼書)の作成:システムの目的、対象業務、必要機能、非機能要件(パフォーマンス・セキュリティ・可用性)、予算上限、スケジュール、選定基準を記載したRFPを作り、複数の開発会社に提示します。次に、③開発会社の選定:提案書・見積書・デモを評価し、技術力、EDM開発の実績、サポート体制、費用の4点を総合的に見て発注先を決めます。

④契約・プロジェクト体制の整備:契約形態(請負契約か準委任契約か)、知的財産権の帰属、納品物の定義を明確にして契約を結びます。保守・運用サポートの範囲も、このときに明確にしておきます。自社側のプロジェクトオーナーとPMを決め、開発会社と定期的にやり取りできる体制も整えます。

  • ⑤開発・受け入れテスト:要件定義から始まる各フェーズで進捗確認とレビューを行い、UAT(受け入れテスト)では設計・製造・品質担当者が業務シナリオで検証します。
  • ⑥リリース・運用移行:本番稼働後の初期サポート期間を設け、問題が起きたときに素早く対応できる体制を保ちます。

外注でよくある失敗と防止策

EDM開発の外注でよく起きる失敗と、その防止策を解説します。失敗①:要件定義の丸投げ。要件定義を開発会社に任せきりにすると、自社業務への理解が足りず、現場に合わないシステムができるおそれがあります。防止策は、自社の設計担当者や製造担当者が要件定義に積極的に加わり、業務フローのヒアリングを複数回設けることです。

失敗②:最安値のみで発注先を選定。単価の安さだけで選ぶと、EDM特有の複雑な版管理や承認ロジックに対応できない会社に発注するおそれがあります。防止策は、EDM・PDMの開発実績を具体的に確認することです。

  • 失敗③:自社側のリソース不足。発注側の担当者が多忙で意思決定が遅れると、納期の遅れや追加費用の原因になります。防止策は、自社のPMに十分な工数を確保します。
  • 失敗④:保守・運用を考慮しない発注。リリース後は機能追加や修正、サーバー管理、セキュリティアップデートが続くため、契約時に範囲と費用、SLAを決めます。

関連する解説:委託範囲と発注手順を検討する際は、外注の解説もご覧ください。

ポイント

発注の前に、要件を文書にまとめ、自社側のPMを決められるかが判断の目安になります。最安値だけで選ばず、EDM・PDMの開発実績と、保守・運用の範囲を契約に残せるかで比べます。

図面管理(EDM)開発会社の選び方

図面管理EDM開発会社の選び方

EDMの開発会社の選定は、プロジェクトを成功させるうえで大切な要素の一つです。

EDMは一般的なWebシステムやスマートフォンアプリとは異なり、製造業の業務への深い理解、版管理・承認フローの設計経験、CADデータやファイルシステムとの連携技術が求められます。

開発後の長期的な保守・運用も見据えて、信頼できるパートナーを選ぶことが大切です。評価基準を参考に、複数の候補会社を比べます。

開発会社を評価する5つの基準

①EDM・PDM・製造業システムの開発実績:同種のシステム開発の経験が豊富な会社は、製造業の業務を深く理解しており、設計ミスや手戻りのリスクが低い傾向があります。「過去にどのような規模・業種のEDMを開発したか」を具体的に確認しましょう。

②要件定義・ヒアリング能力:提案時のヒアリングで、現場業務への理解度や質問の質を見ると、実際のプロジェクトでの対応力を推測できます。製造業の工程や図面管理の流れに詳しい担当者がいるかどうかも、確かめておきたい点です。

  • ③技術スタック・CAD連携実績:AutoCAD・SolidWorks・CATIAなどとのデータ連携と、ファイル保管・全文検索・権限管理の実装経験を確認します。
  • ④保守・運用サポート体制:リリース後の障害対応や機能追加、セキュリティパッチの適用を長期的に支える体制と、担当者の引き継ぎやSLAの明確さを見ます。
  • ⑤コミュニケーション・レスポンスの質:返答の速さや的確さは、やり取りの質を示します。質問への回答が曖昧な会社は、開発でも同じ問題が起きやすいです。

EDM開発会社の種類と特徴

EDM開発を手がける会社は、大きく4タイプに分けられます。

  • ①製造業特化のSIer:製造業の業務理解と技術力のバランスが高く、PLM・ERP・MESとの連携経験も豊富で、EDM開発の有力な候補になります。
  • ②パッケージベンダー:NAZCA5 EDM・図管王などのパッケージを販売・カスタマイズする企業です。導入とカスタマイズを組み合わせ、標準機能が充実しています。
  • ③汎用SIer・受託開発会社:幅広い業種を手がけ、大規模企業では体制が充実しています。ただし、EDM特有の業務知識が薄いこともあります。
  • ④AIエンジニアリング企業:AIを使った図面解析、類似図面の検索、自動タグ付けなどに強みを持ち、EDMにAI機能を加えたい場合に適しています。

汎用SIerに依頼する場合は、製造業の実績を重点的に確認する必要があります。

関連する解説:候補企業の比較を進める際は、開発会社の選び方もご覧ください。

ポイント

開発会社は、製造業の業務理解、CAD連携の実績、保守体制、提案時のやり取りの質で比べます。いずれかを確かめられない会社は、要件を詰め直してから比べ直すと判断しやすくなります。

図面管理(EDM)システムの要件定義・設計のポイント

図面管理EDMシステムの要件定義設計

EDM開発では、要件定義と設計フェーズの質がシステムの成否を大きく左右します。

EDMは画面数だけでは工数を測りにくいシステムです。版管理ロジックや権限設計など、見えにくい設計工数が非常に大きい点が特徴です。

要件定義の段階で曖昧さを残すと、開発フェーズで設計変更が多発し、コストとスケジュールが大幅に超過します。

要件定義で必ず整理すべき項目

EDMの要件定義では、7つの項目を必ず整理します。①管理対象の図面・文書の定義:図面の種類(部品図・組立図・回路図・配管図など)、ファイル形式(DWG・DXF・PDF・STEP・SATなど)、件数の規模、更新の頻度を把握します。

②版管理ルールの詳細:改訂番号の採番ルール(A, B, C…もしくはRev.1, Rev.2…)、正式版と作業版の区別、廃版やアーカイブのルール、版の比較表示機能の要否を決めておきます。

  • ③承認フローの設計:設計者からチェック担当、承認者へと進む経路、複数承認者の条件、差し戻しや再申請のルール、緊急変更時の特例フローを整理します。
  • ④アクセス権限マトリクスの作成:部門・役職・プロジェクト・図面種別の組み合わせごとに、閲覧・編集・承認・ダウンロード・削除の権限を表にまとめます。
  • ⑤使用CADと連携要件:使用CADの種類とバージョン、CADからEDMへの図面属性の自動送信の要否、EDMからCADを起動して編集する機能の要否を確かめます。
  • ⑥外部システム連携の範囲:ERP(部品マスタ・BOM連携)、PLM、品質管理システム、電子承認システムとのデータ連携の範囲と優先度を決めます。
  • ⑦検索・プレビュー要件:どの属性で検索できる必要があるか、CADがなくても閲覧できるプレビュー表示が必要かどうかを確認します。

システムアーキテクチャ設計のポイント

EDMのアーキテクチャ設計では、まずオンプレミスかクラウドかを選びます。機密性の高い図面データを扱う製造業では、セキュリティポリシーによってクラウドの利用が制限される場合があるため、社内のポリシーやコンプライアンス要件を確認したうえで決めます。クラウド型の場合は、データの保存地域が日本国内かどうかの確認も欠かせません。

次に、大量のCADデータやPDF、バージョン履歴を効率よく保管するため、ファイルストレージを設計します。容量の見積もり、将来の拡張性、バックアップと災害復旧の対策を、設計段階で検討します。全文検索エンジンの採用も大切な設計判断で、関連文書や仕様書のテキスト検索が必要な場合は、Elasticsearchなどの組み込みを検討します。

将来のユーザー数や図面件数の増加に備えて、マイクロサービスやコンテナ化などを取り入れた、処理能力を確保できる構成を検討します。CADファイルのプレビュー生成は処理負荷が高いため、非同期処理やキューイングの設計が必要になることもあります。要件定義・設計フェーズへの十分な工数配分が、EDM開発全体の品質と効率を左右します。

ポイント

要件定義では、版管理・承認・権限・連携の決め方が後の設計変更を左右します。曖昧な点は設計に入る前に文書で確認し、誰が決めるかを明らかにしておくと進めやすくなります。

図面管理(EDM)開発を成功に導くためのポイント

図面管理EDM開発成功のポイント

EDM開発を成功させるには、技術面だけでなく、組織としての取り組みとプロジェクト管理の観点も欠かせません。

優れたシステムでも、現場のスタッフが使いこなせなければ、投資に見合う効果は得られません。また、開発会社と良好な関係を築くことが、複雑な要件の実現と長期的な安定運用につながります。

EDM開発の成功事例から抽出したポイントを解説します。

プロジェクト推進・管理のポイント

①経営層のコミットメント:EDMは設計・製造・品質・調達など複数部門に関わるシステムです。部門間の合意づくりや業務フローの変更、データ整備など、現場だけでは解決しにくい課題には経営層の関与が必要です。経営課題として位置づけ、推進体制を整えましょう。

②現場担当者の巻き込み:要件定義から受け入れテストまで、図面を使って業務をする設計者や製造担当者が積極的に加わると、現場のニーズをシステムに正確に反映できます。現場不在で進めると、リリース後に「使いにくい」と反発を受けるリスクが高まります。

③段階的リリースによるリスク低減:一度に全機能・全部門を対象にする大規模リリースは、リスクが高くなります。まず最もニーズの高い部門や図面種別から先行導入し、効果を検証してフィードバックを得ながら、展開範囲を広げる方法が有効です。初期リリースの成功を積み重ねることで、組織全体への展開がスムーズになります。

  • ④運用ルールの明文化と研修:登録ルールや命名規則、版番号の付与基準を文書にまとめ、全ユーザーに研修します。
  • ⑤KPIの設定と効果測定:検索時間の短縮、承認リードタイムの削減、旧版図面の誤使用件数ゼロといった定量的なKPIを決め、定期的に効果を測って報告します。

導入後も新規ユーザーが増えるたびに教育し、運用の定着につなげます。

その成果を組織内に示し続けることで、プロジェクトの価値が伝わります。

EDMを取り巻く技術や市場には、注目すべき動きがあります。

  • AIの活用拡大:類似図面の自動検索、図面内の部品の自動認識、品番の自動タグ付けといった機能が実用化されつつあります。
  • クラウドネイティブ化の進展:製造業でクラウドを使うことへの抵抗感が薄れ、クラウド型EDMの採用が加速しています。
  • 3D設計データへの対応強化:2D図面に加えて、3D CADデータの管理やビューア機能、3Dモデルの構成管理への需要が増しています。
  • サプライチェーン連携の拡大:社内管理にとどまらず、部品メーカーや外注先、顧客と安全に図面を共有する基盤としてのEDMへの期待が高まっています。

過去の図面を大量に蓄積している企業ほど、AIの活用によって設計効率を大きく高める可能性があります。また、テレワークやサプライヤとのリモート協業のニーズが高まり、どこからでもアクセスできるクラウド型の優位性が一段と増しています。

3D CADデータには、SolidWorks・CATIA・NX等のネイティブ形式と、STEP・IGESなどの中間形式があります。これらの動きを踏まえ、将来の拡張性を考えたEDMの設計と開発が求められています。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。