Dynamics 365のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

Dynamics 365のシステム開発は、対象業務とKPIを定め、標準機能を優先しながら要件整理、選定、設計開発、テスト、稼働、定着の6フェーズで段階的に進める方法が適切です。

「Dynamics 365を導入したいものの、Salesだけで足りるのか、FinanceやSupply Chain Managementまで必要なのか分からない」「ライセンス以外にどのような費用が発生するのか不安です」「Excelや旧CRMからの移行、権限設定、利用定着まで失敗なく進めたいです」と悩む企業は少なくありません。この記事では、Dynamics 365のシステム開発を実務で進める流れを6つのフェーズに分け、アプリ選定の判断基準、具体的なチェックリスト、2026年時点の費用相場、開発会社から見積もりを取るポイントまで解説します。

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Dynamics 365のシステムの全体像

Dynamics 365のシステム全体像を検討するイメージ

Dynamics 365は単一の業務ソフトではなく、営業、顧客サービス、財務、販売、在庫、製造、プロジェクトなどのアプリを組み合わせるクラウド型の業務アプリケーション群です。Microsoft 365、Teams、Outlook、Power BI、Power Platform、Azureとの連携を前提に、業務データを共通基盤へ集めて利用します。したがって、導入の成否は製品名を選ぶことよりも、どの業務をどのアプリで管理し、どこまで標準化するかを決めることに左右されます。

業務領域ごとにアプリを組み合わせます

営業活動の可視化や案件管理が中心ならDynamics 365 Sales、問い合わせとナレッジ管理ならCustomer Service、技術者の訪問や作業指示ならField Serviceが候補です。財務会計や予算、債権債務を中心に管理するならFinance、購買・在庫・倉庫・生産までつなげるならSupply Chain Managementを組み合わせます。中堅・中小企業が財務、販売、購買、在庫、プロジェクトを一つにまとめたい場合はBusiness Centralも比較対象です。

営業部門だけで始めるのか、顧客サービスまで含めるのか、複数法人の会計や製造まで対象にするのかで、必要なデータモデル、移行量、権限、テスト量、プロジェクト期間は大きく変わります。最初から全社の理想像を一度に実装するのではなく、最初のリリースで解決する業務と、将来の拡張候補を分けておくと、予算と現場の負担を管理しやすくなります。

標準アプリ、Dataverse、Power Platform、連携を一つの構成として考えます

構成の基本は「Dynamics 365の標準アプリ」「DataverseまたはFinance・運用系のデータモデル」「Power AppsやPower Automateによる拡張」「Azureや既存基幹とのAPI連携」「Microsoft Entra IDによる認証と権限」です。SalesやCustomer Serviceでは、取引先、担当者、案件、ケースなどのテーブルとセキュリティロールを先に設計します。FinanceやSupply Chain Managementでは、法人、勘定科目、品目、倉庫、在庫、税、原価、締め処理の関係を整理します。

拡張は、標準機能で対応する領域、設定で対応する領域、Power Platformで補う領域、外部システムに残す領域、個別開発が必要な領域に分けます。デンソー工機部の事例では、Dynamics 365を基盤にコミュニケーション情報と設備づくりの情報を蓄積し、約20%の作業工数削減と年間約8万時間の創出が期待されています(出典: Microsoft Customer Stories「デンソー 工機部、Dynamics 365を活用」、2026年)。AIを先に導入するのではなく、データを蓄積して業務で使える状態にする順序が参考になります。

Dynamics 365のシステム開発はどのように進めますか?

Dynamics 365のシステム開発を段階的に進めるイメージ

Dynamics 365のシステム開発は、要件整理、選定、設計開発、テスト、稼働、定着の6フェーズで進めます。結論として、各フェーズで「何を決めたら次へ進めるか」を終了条件として合意し、標準機能に業務を合わせる範囲と、拡張する範囲を早く確定することが重要です。以下では、各段階で発注者が確認すべき成果物と判断基準を整理します。

フェーズ1:要件整理で業務課題とKPIを決めます

最初に「Dynamics 365を導入する」という製品起点の計画をやめ、解決したい業務課題を言語化します。営業であれば案件化率、受注率、失注理由、入力から予実確認までの時間、顧客対応であれば一次解決率、平均処理時間、未対応ケース数、ERPであれば月次締め日数、在庫精度、原価差異などを候補にします。現状値、目標値、測定方法、責任部署を決めると、稼働後の効果検証ができます。

業務ごとに、担当者、入力データ、承認者、例外処理、出力帳票、利用頻度、繁忙期を棚卸しします。併せて、Excel、旧CRM、会計、販売管理、在庫、メール、外部ポータルなどのデータ源を一覧化します。チェック項目は、対象法人・拠点、利用ユーザー数、個人情報や営業機密の有無、保持期間、連携先、RTO・RPO、希望稼働日、許容停止時間です。要件整理の終了条件は、対象業務と対象外業務、優先順位、KPI、現行データの責任者が決まっていることです。

フェーズ2:選定で対象アプリと標準化の境界を決めます

選定では、Sales、Customer Service、Finance、Supply Chain Management、Business Centralなどを業務要件に当てはめます。営業部門が10〜50人程度で、案件・活動・見積の可視化が目的ならSalesから始める案が現実的です。複数法人の会計、販売、購買、在庫、生産を統合する場合はFinanceやSupply Chain Managementを中心に、法人構造や日本の商習慣への適合性を検討します。中堅・中小企業で財務と販売管理を一体化する場合はBusiness Centralを比較し、対象ユーザーの権限も確認します。

候補アプリが決まったら、Fit to Standardのワークショップを行います。標準機能で業務を変える領域、設定だけで対応する領域、Power Apps・Power Automate・Power BIで拡張する領域、APIやファイル連携で外部に残す領域、個別開発が避けられない領域を色分けします。判断の基準は、独自機能が競争優位に直結するか、将来のアップデートに耐えられるか、利用者が業務を変えられるか、追加費用と保守負担を許容できるかです。

画面デモだけで決定せず、実データに近いサンプルで案件登録、承認差戻し、顧客重複、月次締め、在庫引当、権限エラー、連携失敗を試します。複数社を比較する場合は、同じ業務シナリオ、同じデータ件数、同じ受入条件を渡し、提案の巧さではなく、要件を構造化して説明できるかを見ます。このフェーズの終了条件は、アプリ構成、標準化方針、PoCの範囲、候補パートナー、概算予算が合意されていることです。

フェーズ3:設計開発でデータ、権限、連携を具体化します

設計では、業務プロセス、データモデル、画面、帳票、ワークフロー、権限、連携、監査、運用を一つの構成図に落とします。Dataverseを使う顧客接点アプリでは、取引先と担当者の重複ルール、案件の状態遷移、所有者とチームの関係、セキュリティロールを設計します。FinanceやSupply Chain Managementでは、法人・拠点・勘定科目・品目・倉庫・在庫・税区分・原価のマスタを誰が登録し、誰が承認し、どのタイミングで変更するかを定義します。

連携設計では、リアルタイムAPI、Azure Logic AppsやFunctions、ETL、定時ファイル連携のどれを使うかだけでなく、送信元と送信先の正、再送、重複排除、順序逆転、タイムアウト、監視、障害時の責任分界を明記します。Power Platformの拡張では、環境分離、ソリューション管理、開発・テスト・本番の移送、コネクタの認証情報、フローの所有者も決めます。標準コードを直接変更せず、アップデートで壊れにくい拡張方式を優先します。

開発期間中は、週次の課題管理と、節目ごとの設計レビューを行います。成果物は、要件定義書、Fit & Gap一覧、データ移行仕様、権限マトリクス、連携仕様、画面・帳票一覧、テスト計画、運用手順、教育計画です。担当者の頭の中だけに判断理由を残さず、標準機能を採用した理由や個別開発を見送った理由まで記録すると、後の変更管理と引き継ぎが容易になります。

フェーズ4:テストで業務、移行、権限、連携を検証します

テストは、単体テスト、結合テスト、総合テスト、ユーザー受入テストに分けます。Salesなら案件の登録から受注・失注・売上見込みまで、Customer Serviceなら受付から担当割当、回答、エスカレーション、クローズまで、Financeなら伝票、承認、請求、支払、締めまでを一連の業務シナリオとして試します。正常系だけでなく、重複データ、必須項目漏れ、権限不足、承認差戻し、API停止、通信遅延、日付や通貨の境界値を含めます。

移行テストでは、顧客、商品、担当者、勘定科目、在庫、取引履歴などの件数、必須項目、金額、日付、文字コード、重複、参照関係を照合します。旧システムとDynamics 365で同じ処理を行い、合計金額や残高、在庫数が一致するかを確認します。移行リハーサルを少なくとも一度行い、差異の修正担当、再実行方法、移行対象外データの保管方法を決めておくと、本番切替時の混乱を抑えられます。

セキュリティテストでは、職務分掌と最小権限を確認します。Dynamics 365のセキュリティはMicrosoftと利用企業の共有責任であり、Microsoftがデータセンターや基盤を担う一方、利用企業はデータ分類、ユーザー管理、セキュリティロール、監査、連携資格情報を管理します(出典: Microsoft Learn「Secure your Dynamics 365 data and apps」、2026年確認)。管理者権限で見える画面を一般ユーザーでも見られると思い込まず、営業秘密、個人情報、給与、原価などのアクセス境界を実ユーザーで検証します。

フェーズ5:稼働で切替手順とロールバック条件を決めます

稼働方式は、全社一斉切替、部門単位の段階展開、Salesだけ先行する方法、1法人で始めてテンプレートを横展開する方法を比較します。全社一斉切替はデータと業務をまとめやすい反面、問題発生時の影響が大きくなります。段階展開は学習と改善の時間を確保できますが、旧システムとの二重運用や連携が増えます。利用者数、業務の重要度、締め日、拠点差、旧システムの保守期限から決めます。

切替手順書には、データの最終抽出、停止開始、移行実行、件数照合、代表業務の確認、利用開始、問い合わせ窓口、監視、経営層への報告を時系列で記載します。切替前に「どのエラー率なら中止するか」「何時までに復旧しなければ旧システムへ戻すか」「誰が最終判断するか」を決めます。ロールバックできない処理や二重登録を避けるため、戻す対象と戻せない対象を事前に明示します。

稼働判定では、ログインだけでなく、KPIに直結する代表業務、データ件数、帳票、承認、連携、監査ログ、バックアップ、アラート通知を確認します。初週は問い合わせを集中的に受け付けるハイパーケア期間とし、問い合わせを操作ミス、設計不備、データ不備、追加要望に分類します。追加要望をその場で無制限に実装せず、業務影響と契約範囲を確認して変更管理へ回すことが大切です。

フェーズ6:定着で教育、運用、アップデートを回します

定着では、操作説明会を一度開催して終わりにしません。役割別の短い教材、業務シナリオに沿った演習、よくある質問、現場チャンピオン、問い合わせ窓口、利用状況の確認を組み合わせます。入力率、案件の更新遅延、未処理ケース、承認滞留、マスタ申請の差戻しなどを定期的に確認し、利用されない項目や複雑な画面を改善します。教育の責任者と、運用ルールを変更できる業務責任者を分けておくと、問い合わせが特定の担当者に集中しにくくなります。

Dynamics 365は継続的に更新されるため、稼働後もリリースノートの確認、サンドボックスでの回帰テスト、影響範囲の判断、ユーザーへの告知が必要です。Microsoftの2026年リリースウェーブ1は2026年4月から9月にかけて機能が提供され、年2回のリリースウェーブで更新されます(出典: Microsoft Learn「Dynamics 365 2026年リリースサイクル1の計画」「リリーススケジュール」、2026年)。新機能をすべて採用するのではなく、業務効果、セキュリティ、教育負担、既存拡張への影響を評価します。

運用引き継ぎでは、構成図、権限一覧、データ辞書、連携仕様、障害時のランブック、バックアップ・復旧手順、アップデート手順、問い合わせのSLA、変更申請の流れを納品物として確認します。月次または四半期ごとにKPI、ライセンス数、容量、連携エラー、権限棚卸し、追加開発の backlog を見直し、定着した業務から次の部門へ展開します。導入目的を「Dynamics 365を稼働させること」ではなく、業務指標を改善し続けることに置くと、システムが長く使われます。

Dynamics 365のシステム開発にかかる費用相場

Dynamics 365のシステム開発費用を見積もるイメージ

Dynamics 365の総額は、ライセンス、初期設定・開発、データ移行、外部連携、テスト、教育・切替、保守・運用、追加容量やAI利用料に分けて見積もります。以下の開発費レンジはDynamics 365固有の公定価格ではなく、リサーチノートの業務システム相場と、想定する構成・工数をもとにした予算計画上の目安です。対象ユーザー数、法人・拠点、データ量、連携本数、非機能要件で大きく変わるため、発注前には同じ前提条件で個別見積もりを取得します。

ライセンス費はユーザー数とアプリ構成で変わります

2026年8月にMicrosoft公式日本語ページで確認した年払い相当・税別の表示価格では、Dynamics 365 SalesはProfessionalが9,745円、Enterpriseが15,742円、Premiumが22,488円のユーザー・月相当です。10ユーザーで単純計算すると年間約116.9万円から約269.9万円ですが、消費税、導入支援、移行、連携、追加容量、Power Platform、Azure、サポートは含みません(出典: Microsoft公式「Dynamics 365 Salesの価格」、2026年8月確認)。

Financeは31,484円、Finance Premiumは44,977円のユーザー・月相当で、10ユーザーならライセンスだけで年間約377.8万円から約539.7万円です。Business CentralはEssentialsが11,994円、Premiumが16,491円、Team Membersが1,199円のユーザー・月相当と表示されています。ライセンスは利用者全員を同じプランにするとは限らないため、フルアクセス、制限付きアクセス、承認だけを行うユーザーなど、役割ごとに必要権限を確認します(出典: Microsoft公式「Dynamics 365 Financeの価格」「Business Centralの価格」、2026年8月確認)。

導入・開発費は小規模300万〜800万円が一つの目安です

小規模CRM導入は、300万〜800万円、3〜6か月程度が予算検討の目安です。Salesを10〜30人で利用し、標準設定、権限、簡単な帳票、少数のデータ移行、1〜2本の連携に絞る構成を想定しています。標準機能の確認やデータのクレンジングを発注者側で行える場合は下がる可能性がありますが、ライセンス費は別に計上します。

中規模のCRM・SFAでは800万〜2,000万円、6〜12か月程度が目安です。20〜100人の利用、旧CRMの履歴移行、OutlookやTeams連携、複数部門の承認、Power Apps・Power Automate・Power BI、外部基幹とのAPI連携、UATと教育を含む想定です。FinanceやSupply Chain Managementを複数法人・複数拠点へ導入する場合は2,000万〜1億円以上、9〜24か月程度となることがあります。

大規模グループ展開では、1億円超、1〜3年以上も想定します。最初の1社だけの設定費ではなく、共通テンプレート、データ標準、ガバナンス、海外ローカライズ、拠点展開、教育、運用組織まで含めるためです。実際にAGC化学品カンパニーは、異なる基幹システムを使っていた関係会社3社から始め、FinanceとSupply Chain Managementで業務・データを標準化する構成を採用しました(出典: Microsoft Customer Stories「AGC化学品カンパニー」、2026年5月公開)。

保守・運用費と追加利用量も別に見積もります

保守・運用費は、一般的な業務システムの目安として初期開発費の年15〜25%、または月15万〜80万円程度を参考にできます。ただし、Dynamics 365ではMicrosoftへのライセンス費と、パートナーの問い合わせ、監視、障害対応、軽微改修、アップデート検証、マスタ保守を分けます。24時間監視や休日対応、SLA、法改正対応、追加開発の時間単価が契約に含まれるかで、年間費用は変わります。

Power Platformの容量、AzureのAPI・Functions・Logic Apps、Power BI、バックアップ、データ転送、Copilot Studioのクレジットなども追加費用になり得ます。AIエージェントを使う場合は、利用人数だけでなく、実行回数、対象データ、Azureサブスクリプション、アクセス権限を確認します。初年度の導入費だけでなく、3年間のライセンス、運用、アップデート、拡張の総保有コストを比較すると、見積もりの安さだけで判断しにくくなります。

見積もりを取る際のポイントとチェックリスト

Dynamics 365のシステム開発会社から見積もりを取るイメージ

見積もりを比較するときは、合計金額よりも作業範囲、成果物、前提条件、除外事項、責任分界を確認します。「Dynamics 365導入一式」とだけ書かれた見積もりでは、要件定義、移行照合、負荷試験、教育、切替支援、アップデート検証が含まれているか判断できません。候補会社には同じ要件書と業務シナリオを渡し、同じ粒度で回答してもらいます。

要件書にはユーザー数だけでなく業務シナリオを入れます

見積もり前に、対象アプリ、利用ユーザー数と役割、法人・拠点、現行システム、データ件数と履歴年数、連携先、帳票、承認、権限、性能、可用性、セキュリティ、希望時期を整理します。Salesなら「リードを登録し、担当を割り当て、案件化し、見積承認を経て受注する」など、始点から終点までを業務シナリオにします。ERPなら、受注、購買、生産、入出庫、請求、入金、月次締めを一連の流れで示します。

資料には、現行画面のスクリーンショット、データサンプル、マスタ一覧、連携一覧、帳票サンプル、組織図、権限の考え方、繁忙期の処理量、目標KPIを添えます。個人情報や営業秘密は匿名化し、サンプルデータの利用範囲を決めます。要件が未確定の項目は未確定のまま隠さず、仮説、確認期限、見積もり上の扱いを記載します。曖昧な部分を一律に開発費へ含めるより、調査・PoC・追加変更の費用を分ける方が予算を管理しやすいです。

複数社を同じ条件で比較し、担当者と体制を確認します

候補会社には、対象アプリと業種が近い事例、担当コンサルタントの経験、Microsoft製品とPower Platformの資格・実績、データ移行の方法、テスト体制、教育と定着支援、運用窓口、SLA、再委託の有無を確認します。大手SIerの総合力、Microsoft専門会社の製品知識、業種特化会社の業務理解では強みが異なるため、会社規模だけで選ばないことが重要です。

提案時は、候補会社が標準機能と個別開発の境界を説明できるかを見ます。「できます」という回答だけでなく、標準機能を使う場合の業務変更、Power Platformで拡張する場合の保守、アドオンを採用する場合のアップデート影響、外部連携にする場合の障害対応まで示してもらいます。可能であれば、代表的な業務シナリオを使ったデモと、PoCの評価項目を同席者全員で確認します。

移行、権限、アップデートのリスクを見積もりに含めます

見積もりで抜けやすいのは、データクレンジング、移行リハーサル、過去履歴の照合、権限棚卸し、監査ログ、バックアップ復元、性能試験、切替リハーサル、ユーザー教育、運用引き継ぎです。特にExcelや旧CRMの顧客名、商品コード、担当者コードに表記揺れがあると、移行作業だけでなく連携や帳票も影響を受けます。発注者側のデータ整理の担当者と期限を決め、遅れた場合の追加費用やスケジュール変更を契約条件に記載します。

セキュリティでは、Entra IDの認証、多要素認証、環境へのアクセス、ロールと職務分掌、個人情報の分類、監査ログ、連携先の秘密情報、退職者のアカウント停止を確認します。法務・経理部門が関わる場合は、適格請求書、電子取引データ、電子帳簿保存法、保存期間、検索性、証憑と仕訳のひも付けを要件化します。日本向け機能があることだけで、自社の法的要件が自動的に満たされるわけではありません。

Dynamics 365は年2回のリリース波で更新されるため、契約時から回帰テストと変更判断の体制を入れます。採用する新機能、見送る機能、既存カスタマイズへの影響、教育資料の更新、検証環境の利用、緊急修正の費用を確認します。安価な初期見積もりでも、これらがすべて別料金であれば、稼働後の総額は高くなる可能性があります。

よくある質問(FAQ)

Dynamics 365のシステム開発について相談するイメージ

最後に、Dynamics 365のシステム開発を検討する企業からよく寄せられる質問に回答します。費用や期間は前提条件で変わるため、ここでは判断の軸と、開発会社へ確認する内容を中心に整理します。

Dynamics 365のシステム開発費用はどれくらいですか?

小規模CRMなら300万〜800万円、中規模CRM・SFAなら800万〜2,000万円、複数法人のERPなら2,000万〜1億円以上が予算計画の目安です。これはライセンス費を含まない開発・移行・テストなどの推定レンジであり、Dynamics 365固有の一律価格ではありません。対象アプリ、ユーザー数、法人・拠点、データ量、連携、教育、保守の条件をそろえて個別見積もりを取る必要があります。

SalesとFinanceは同時に導入すべきですか?

必ずしも同時導入する必要はありません。営業プロセスの可視化を早く実現したいならSalesを先行し、財務・在庫・生産まで一体化する必要があるならFinanceやSupply Chain Managementを中心に全体設計します。ただし、将来連携する顧客、商品、法人、担当者、勘定科目などのマスタ方針は初期フェーズで決め、先行導入が将来の統合を妨げないようにします。

標準機能に業務を合わせるべきですか?

原則として、標準機能に合わせるFit to Standardを第一候補にします。標準機能はアップデート、サポート、教育、他部署への横展開を行いやすいためです。一方で、法令、顧客への独自価値、製造や原価などの競争優位に関わる要件まで無理に変える必要はありません。業務変更、設定、Power Platform、外部連携、個別開発の順に代替案を比較し、保守負担と将来の変更費を含めて判断します。

Excelや旧CRMのデータはどこまで移行できますか?

技術的には顧客、商品、担当者、案件、取引履歴などを移行できますが、すべての過去データを同じ品質で移すとは限りません。参照頻度、法令・監査上の保存要件、データの正確性、移行費用を基準に、現行データ、要約データ、必要時に参照するアーカイブへ分けます。移行前に重複、欠損、表記揺れ、コード体系、日付と金額、個人情報の扱いを整理し、件数と合計値の照合を受入条件にします。

まとめ

Dynamics 365のシステムを定着させるイメージ

Dynamics 365のシステム開発は、製品を契約して画面を作るだけのプロジェクトではありません。対象業務とKPIを定め、Sales、Customer Service、Finance、Supply Chain Management、Business Centralなどから必要なアプリを選び、標準機能と拡張の境界を決めることが出発点です。

6フェーズの終了条件を合意してから次へ進みます

要件整理では課題とKPI、選定ではアプリと標準化の境界、設計開発ではデータ・権限・連携、テストでは業務と移行後の整合性、稼働では切替とロールバック、定着では教育・運用・アップデートを確認します。各フェーズで成果物、判断者、未決事項、次の条件を明示すれば、後工程への課題の先送りを減らせます。

最初は業務シナリオと見積もり前提をそろえます

まずは対象部門、利用人数、現行システム、移行データ、連携先、希望時期、予算、改善したいKPIを1枚にまとめ、候補会社へ同じ条件で相談します。ライセンス、導入開発、移行連携、教育切替、保守、CopilotやAzureなどの追加利用量を分けた見積もりを依頼し、3年間の総額と定着支援まで比較することが、Dynamics 365を事業成果につなげる近道です。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。