Dynamics 365のシステム開発の完全ガイド

Dynamics 365は、CRMからERPまでの業務アプリを、業務に合わせて組み合わせて使うクラウド型の業務基盤です。

導入では、改善したい業務を定め、必要なアプリを選び、標準機能を確かめてから段階的に広げると、業務に合う基盤を整えられます。

▼関連記事一覧
・Dynamics 365のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・Dynamics 365のシステム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・Dynamics 365のシステム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・Dynamics 365のシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

Dynamics 365のシステムの全体像

Dynamics 365は、顧客との接点からバックオフィスまでの業務領域ごとにアプリを選び、データとプロセスをつなぐクラウド型の業務アプリケーション群です。

営業部門だけを先に整える構成も、財務・販売・在庫まで含むERPの構成も選べます。そのため、改善したい業務と経営指標から必要な範囲を決めます。

業務アプリを組み合わせるプラットフォーム

Dynamics 365では、顧客接点からバックオフィスまでのアプリを、業務に合わせて組み合わせて使います。営業や問い合わせはCRM、会計や在庫はERPで扱い、承認や見える化はデータと自動化の機能で補います。

  • CRM:Salesで営業案件を、Customer Serviceで問い合わせを管理します。
  • ERP:Financeで財務会計を、Supply Chain Managementで購買・在庫・生産を扱います。
  • Business Central:販売・購買・在庫・プロジェクトを一つにまとめる構成です。
  • データと自動化:Power Automateで承認・通知を自動化し、Power BIで状況を見える化します。

必要な構成は、対象業務と利用者数、法人・拠点数によって変わります。たとえば、顧客情報にDataverseを使い、現場の画面をPower Appsで作る方法があります。

そのため、「Dynamics 365を導入したい」という相談だけでは、見積もりは決まりません。既存システム、移行データ、必要な連携、法令・監査条件も具体化しておく必要があります。

導入は、最初から全社に広げず、効果を測りやすい営業プロセスや一つの事業会社から始めるのが現実的です。

Microsoft 365やAzureとの連携

Microsoft 365との連携では、メールや会議を案件に関連付けられます。また、AzureやAPIで外部システムとつなぐ場合は、同期の範囲と運用の責任まで決めておく必要があります。

  • Microsoft 365連携:Outlook・Teams・Excelと業務データをつなぎ、メールや会議を案件に関連付けます。
  • 外部システム連携:AzureやAPIで、基幹システム、EC、物流、外部認証基盤とつなげます。
  • 同期範囲:全データをリアルタイムで同期すると、重複や更新の不整合、再送、個人情報の拡散が起きるおそれがあります。
  • 運用責任:正とするシステム、更新担当、エラーの検知と復旧の担当を決めておきます。

転記作業を減らせる点は魅力ですが、連携できることと、連携すべきことは同じではありません。そこで、Microsoft製品の利用状況と連携範囲を確認しておくと、導入効果と設計上の注意点を整理できます。

ポイント

迷ったときは、改善したい業務と経営指標から必要な範囲を決めます。CRMかERPか、どこまで広げるかは、その範囲を標準機能で満たせるかで判断します。

Dynamics 365の種類と自社に必要な構成

アプリを選ぶときは、まず課題が営業部門だけのものか、顧客サービスも含むか、会計・在庫・生産まで一体で扱うかを切り分けます。CRMとERPでは、データの持ち方や導入体制、必要な業務知識、移行の難しさが異なります。

営業・顧客サービス向けのCRM構成

CRMを使うときは、営業活動と問い合わせ対応のどこまでを扱うかを、先に決めておきます。

  • Sales:リード、取引先、担当者、案件、活動、見積、受注の情報を一か所に集めます。
  • 案件管理:ステージや受注確度、次回アクション、売上予測の扱いを共通ルールでそろえます。
  • Customer Service:ケース、チャネル、担当割り当て、ナレッジ、対応履歴、サービスレベルを設計する項目です。

10〜50人程度の営業組織なら、標準機能とMicrosoft 365連携を中心に、小さく始められます。そのうえで、部門ごとの承認や独自の見積ロジックに絞って追加する構成も検討しやすくなります。

メール、チャット、電話など問い合わせの入口が増えるほど、顧客の識別や重複ケース、回答テンプレート、エスカレーションのルールが求められます。また、営業とサポートのデータをつなぐなら、同じ顧客を同一と扱えるマスタ設計を先に決めておきます。

財務・販売・在庫・生産向けのERP構成

ERPでは、扱う業務の範囲と、会社・拠点ごとに共通にするルールを整理します。

  • 財務:Financeで会計、請求、予算、固定資産、原価を扱います。
  • 供給網:購買、在庫、倉庫、生産を、Supply Chain Managementで扱う範囲です。
  • 共通ルール:勘定科目、税区分、取引先、商品、倉庫、ロットを、会社や拠点をまたいで同じ基準にそろえます。締め処理、承認、証憑、監査ログも対象です。

複数の法人・拠点・通貨を扱う場合は、共通のプロセスと各拠点の個別要件を分けて考えます。

公式事例には、複数社の老朽化した基幹システムを、複数会社で使う単一のシステムに刷新したケースがあります。共通マスタと業務ルールを整え、2社目以降へ展開できる設計が参考になります。

取引量や業務の特殊性が標準機能に合わないときは、追加開発に進む前に、業務手順を変えられる範囲を検討します。

Business CentralとPower Platformによる段階構成

中堅・中小企業では、Business CentralとPower Platformを組み合わせて段階的に導入する方法も候補になります。

  • 業務の土台:Business Centralで財務・販売・購買・在庫・プロジェクトを扱います。
  • 現場の補完:固有の入力や承認を、Power AppsとPower Automateで補います。
  • 段階展開:販売と会計から始め、必要に応じて倉庫、サービス、分析へ広げます。
  • 統制:環境、ソリューション、命名規則、データ所有者、リリース手順の取り決めです。

日本での契約価格は、契約形態やユーザー権限によって変わります。公開ページの情報だけで金額を断定せず、見積もりで確認します。

部門ごとにアプリやフローが増えると、同じ顧客や商品を別々に持つ状態になりがちです。そこで、業務部門が作れる範囲と開発チームが管理する範囲を分け、小規模な改善と全社データの統制を両立させます。

Dynamics 365のシステム開発・導入の進め方

Dynamics 365導入を構想・KPI・PoC、Fit & Gap、データ移行・テスト・教育・切替の3段階で示す図。
対象範囲を決めてから、仕分けと移行検証へ進む構成です。

導入では、要件をすべて聞いてから作るより、標準機能を確かめながら業務を整えるほうが適しています。まず目的と範囲を決め、Fit to Standardを基本に、設定、拡張、連携、対象外を分けます。

期間の推定目安は、営業CRMで3〜6か月程度、複数法人のERPで9〜24か月程度です。ただし、データ品質と意思決定の速さによって、期間は変わります。

▶ 詳細はこちら:Dynamics 365のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

構想・KPI・PoCによる対象範囲の絞り込み

改善したい業務の成果は、KPIとして数字で測れる形にしておきます。営業、問い合わせ、財務、在庫では、測る指標がそれぞれ異なります。

  • 営業:案件化率、受注確度、予測作成時間、入力漏れ
  • 問い合わせ:一次回答までの時間、未処理件数、ナレッジ利用率
  • 財務:月次締め日数、手入力仕訳、請求差戻し
  • 在庫:棚卸差異、欠品率

代表業務を一つ選び、実データに近いサンプルで試します。画面、権限、承認のほか、検索、帳票、連携も確かめます。

デモを見る際も、実際の場面で確かめる項目を決めておきます。たとえば、重複顧客、差戻し、担当変更、月末締めなどです。さらに、API停止、権限不足、過去履歴の参照も確認します。

PoCで解けない課題は、後の工程で仕様変更や追加費用につながります。

Fit & Gapによる標準・設定・拡張・連携の仕分け

要件ごとに対応方法を仕分けます。独自開発が必要になった場合は、標準化できない理由と、将来の更新時に必要な改修も記録しておきます。

  • 標準機能:製品に備わる機能で対応する要件です。
  • 設定:既存機能を調整します。
  • 拡張:Power AppsやPower Automateで補います。
  • 外部連携:業務を外部システムに残して接続します。

既存の帳票や例外処理をすべて再現しようとすると、クラウドパッケージの保守性を失いやすくなります。そのため、まず標準機能に業務を合わせられる範囲を検討します。

SalesやCustomer Serviceのように、Dataverseを中心とするアプリでは、テーブル、列、関連、ビューを設計します。あわせて、ビジネスルール、プラグイン、フローの依存関係も確認します。

FinanceやSupply Chain Managementでは、標準データエンティティと拡張モデルを確認します。対象には、電子報告やバッチ処理、会社・サイト・倉庫などの組織構造も含まれます。

拡張点とAPIを使い、標準コードは直接変更しない方針にすると、製品更新への備えになります。

データ移行・テスト・教育・切替の繰り返し

移行では、旧システムから出力できるかだけでなく、新システムで業務に使えるかまで、次の順で確かめます。

  1. 顧客、担当者、商品、価格表を整理する。勘定科目、在庫、取引履歴も対象に含める。
  2. 重複、欠損、表記ゆれ、不要データの有無を確かめる
  3. 移行前の件数・金額・合計値を記録し、移行後に照合する
  4. 複数回リハーサルを行い、業務ユーザーが結果を見て判断する

開発、テスト、ユーザー受け入れ、本番の環境は分けて用意します。そのうえで、権限、性能、連携の再送、障害復旧、監査ログをテストします。教育では、操作だけでなく、項目の意味や登録しない情報も伝えます。

重複を見つけたときの連絡先や、月末処理の進め方も説明しておきます。切替当日は、最終移行、凍結時間、問い合わせ窓口、切り戻し条件を決めます。

ポイント

導入の進め方に迷ったら、標準機能を基本に業務を整える方針を取り、最初は対象を一つの部門や業務に絞ります。効果とデータ品質を見てから、対象を広げるかどうかを決めます。

Dynamics 365のシステム開発費用相場と内訳

小規模CRM、中規模CRM、複数法人ERP、海外含む複数法人の4構成について、導入・開発費の推定目安を並べた図。
小規模CRMから海外含む複数法人まで、費用帯が広がります。

費用は、ライセンス、初期設定・開発、データ移行・連携のように項目ごとに分けて考えます。さらに、教育・切替や、保守・追加利用量も別々に把握します。公式価格として確認できるのは主にライセンスで、導入支援や個別開発費は別見積もりです。

ここで示す開発費は、業務システム全般の相場とDynamics 365の構成要素を照らし合わせた推定で、公式の定価ではありません。

▶ 詳細はこちら:Dynamics 365のシステム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

ユーザー数とアプリで変わるライセンス料金

2026年8月時点の公式表示価格は、年払い相当で税別です。SalesとFinanceについて、プラン別の月額単価を比べます。

  • Sales:Professionalは1ユーザー月額9,745円、Enterpriseは15,742円、Premiumは22,488円
  • Finance:通常プランは月額31,484円、Premiumは44,977円

10ユーザーで単純計算すると、Salesだけで年間約116.9万円から約269.9万円です。

この金額には、導入支援、消費税、追加容量が含まれません。Power Platform、Azure、連携、サポート費も、この金額の外にあります(出典: Microsoft公式「Dynamics 365 Salesの価格」、2026年8月確認)。

Financeを10ユーザーで使うと、年間約377.8万円から約539.7万円です。実際には、フルユーザーだけでなく、参照・軽作業向けの権限や法人構成、契約条件も含めて考えます。

Copilotやエージェントを使う場合は、プラン内クレジット、従量課金、Azureサブスクリプションが必要かどうかも確認します(出典: Microsoft公式「Dynamics 365 Financeの価格」、2026年8月確認)。

導入・開発費の規模別目安

導入・開発費と期間の推定目安は、規模と対象範囲によって異なります。

  • 小規模CRM:300万〜800万円、3〜6か月
  • 中規模CRM:800万〜2,000万円、6〜12か月
  • 複数法人ERP:2,000万〜1億円以上、9〜24か月
  • 海外含む複数法人:1億円超、1〜3年以上の計画もあります

小規模CRMの目安は、Salesを10〜30人で使い、標準設定や権限、簡単な帳票に絞る場合です。移行は少数にとどめ、連携は1〜2本とします。

中規模CRMは20〜100人で、旧CRMの履歴を扱います。Outlook・Teams連携や承認に加えて、Power Apps、Power Automate、BI、外部基幹APIも含まれます。

複数法人・拠点のERPでは、FinanceやSupply Chain Managementを使います。会計と税務、購買、在庫、生産に加えて、移行リハーサルや教育まで含めて考えます。海外展開では、グループ共通のテンプレートを作る場合もあります。

実際の費用と期間は、要件、工数、体制、契約範囲によって変わります(出典: 業務システム全般の調査ノート、2026年8月整理)。

保守・運用費と追加サービスの見積もり

保守・運用費は、定常作業、契約範囲、追加サービスの変動費に分けて整理します。

  • 定常作業:問い合わせや障害監視、軽微な改修、利用者追加が含まれます。加えて、データ修正、権限棚卸し、更新検証、法改正対応、教育も含まれます。
  • 費用目安:一般的な業務システムでは、初期開発費の年15〜25%、または月15万〜80万円程度です。
  • 契約条件:対応時間、緊急度、月次作業時間、追加改修単価、更新対応、障害時の責任分界
  • 変動費:データ容量、API・コネクタ、Azure実行量、Copilotクレジット

Dynamics 365のサービス料金と、開発会社の運用支援費は、分けて確認します。

AI機能は、従量課金の場合もあれば、対象プランに含まれる場合もあります。そのため、想定ユーザー数と月間利用量から上限を試算し、初期費用だけでなく3年間の総保有コストで比べます。

ポイント

費用は、ライセンス料金に加えて、導入・開発費や保守・追加利用量まで合わせて比べます。導入支援や個別開発費は別見積もりになるため、規模と対象範囲をそろえて比べるのが目安です。

セキュリティ・データ移行・法令対応の注意点

顧客情報を中央に置き、セキュリティロール、最小権限、監査ログ、復旧手順で囲む図。
権限の設定から記録と復旧までを組み合わせます。

クラウドサービスを選んでも、企業側のセキュリティ設計は欠かせません。ユーザー、環境、アプリ、データについて、自社の責任の範囲を整理します。さらに、連携先の認証、監査ログ、復旧手順も、自社が担う部分として定めます。

顧客情報や営業機密のほか、給与や財務情報まで同じ基盤で扱う場合は、誰が何を見て、作成・変更・削除できるかを業務単位で定義します。

ロールと最小権限の業務シナリオによる検証

Dataverseでは、テーブルやアプリへのアクセスを、セキュリティロールで管理できます。そのうえで、業務シナリオに沿って最小権限を検証します。

  • 営業担当者:自分の案件を編集できても、他部門の機密案件は閲覧できないようにします。
  • サポート担当者:顧客情報を参照できても、財務項目は変更できないよう制限します。
  • 操作テスト:案件登録、担当変更、承認差戻し、退職者の代理処理、顧客情報の出力を検証します。
  • 権限運用:管理者を増やしすぎず、異動や退職、兼務のときに権限を見直します。

ロール表を作って終わりにせず、実際の操作で許可と拒否を確かめます(出典: Microsoft Learn「Dataverseのロールに基づくセキュリティロール」、2026年8月確認)。

Entra IDのグループとアプリのロールの連動、連携用アカウントの権限、監査ログの確認担当も、あわせて決めておきます。

日本の会計・税務要件の業務要件への落とし込み

Financeでは、経理・税務の担当者とともに、日本の制度要件を業務手順に落とし込みます。

  • 制度と保存:消費税、適格請求書、電子取引データ、電子帳簿保存、証憑の保存・検索を確認します。
  • 仕訳と監査:受領データの管理画面、証憑フロー、承認者、保存期間を確認します。仕訳との関連付け、訂正・削除履歴、検索も確かめます。
  • 変更への備え:設定変更の手順と検証環境を用意します。

日本向けの機能があっても、自社の運用要件を自動で満たすとは限りません。そのため、法令の解釈や保存要件は、社内の責任者や専門家とも確認します。

税制や社内規程の変更に、あらかじめ備えておくと、稼働後の負担を抑えられます。

AIとアップデートの導入後の運用

AI機能や製品アップデートは、利用する業務とデータ、導入後の検証体制と合わせて検討します。

  • 対象機能:2025年リリースサイクル2は、2025年10月〜2026年3月提供の機能を案内しました。
  • 対象アプリ:Sales、Customer Service、Finance、サプライチェーン管理などです。
  • 営業支援:Salesでは、AIインサイトや自律型エージェントを使った支援が示されています。
  • 運用:回帰・権限テスト、ユーザー周知、利用状況の確認を保守に含めます。

機能ごとに、使う業務と根拠となるデータを決めます(出典: Microsoft Learn「Dynamics 365 2025年リリースサイクル2プラン」、2026年8月確認)。

顧客、案件、活動履歴が正しく構造化され、権限も適切であれば、AIの効果を得やすくなります。逆に、入力漏れや重複が多いと、要約や予測で誤りが増える可能性があります。

運用では、新機能の影響範囲を調べ、利用状況も継続的に確認します。

ポイント

利用者ごとの権限を業務単位で決め、その設定どおりに操作できるかを実際に試すことが目安です。法令や保存義務の解釈は、社内の責任者や専門家と確かめます。

Dynamics 365の開発会社/ベンダーの選び方

開発会社は、知名度や見積金額に加えて、経験の中身で選びます。具体的には、対象アプリや業種、規模の経験と、移行、連携、教育、保守の経験を見ます。

Salesに強い支援会社と、FinanceやSupply Chain Managementの複数法人展開に強い支援会社とでは、得意な要件が異なります。

候補を比べるときは、同じRFPとサンプルデータを渡して、提案の前提と対応範囲をそろえます。

対象アプリと同規模・同業種の実績

「Dynamics 365を導入した」という説明を聞いたら、まずSalesかFinanceかを確かめます。あわせて、利用者数と法人・拠点数、通貨数を聞いておきます。移行件数と連携内容、稼働後の保守担当も、確かめておきます。

似た業務の画面やRFPの例を見せてもらい、標準機能と追加開発の範囲を分けて説明してもらいます。営業CRMであれば、案件ステージや予測、活動履歴、Outlook連携、承認の経験を確認します。

ERPでは、勘定科目、税・請求、在庫、原価の経験が求められます。加えて、月次締め、複数会社、移行リハーサルの経験も確かめます。テンプレートがある場合は、自社要件との差分と、更新時の維持方法を確認します。

提案書と見積書の前提・責任分界の比較

提案書と見積書は、作業範囲、費目、責任分界を項目ごとに比べます。

  • 提案の範囲:要件定義、設計、設定、開発の各工程が入っているかを見ます。テスト、移行、教育、切替、保守まで含むかも見ます。
  • 見積の費目:ライセンス、初期構築、追加開発、データ整備、移行リハーサルを見ます。連携、テスト、教育、出張、運用支援も、費目として分かれているかを確認します。
  • 一式作業:成果物、回数、前提データ量、担当者、期限を明らかにします。
  • 契約条件:要件変更、追加工数単価、遅延・障害対応、更新検証、終了時のデータ返却の取り決めです。

移行や教育が別料金であれば、初期費用が低くても、総額は変わってきます。稼働後に自社で運用できる状態まで含めて比べます。

RFPに明記するユーザー数・既存システム・希望時期

候補先が同じ前提で提案できるよう、RFPには業務、体制、条件を記載します。

  • 共通情報:対象アプリ・業務、利用者数・権限、法人・拠点数、既存システム、移行量、連携先
  • 制約と体制:法務・税務要件、希望時期、予算上限、社内担当者
  • 営業の詳細:案件管理、営業ステージ、見積・受注とのつながり、メール・会議の扱い
  • ERPの詳細:会計、購買、在庫、生産の範囲に加え、請求、締め処理、マスタ管理者の担当

RFPが未完成でも、候補先に現状業務のヒアリング支援があるかを確認できます。候補先ごとの前提をそろえるため、共通のシナリオとサンプルデータを用意します。

デモでは、顧客登録から案件化、承認、受注、請求、分析までを一続きで確かめます。例外処理や運用画面も見ます。

▶ 詳細はこちら:Dynamics 365のシステム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

▶ 詳細はこちら:Dynamics 365のシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ポイント

ベンダーは、知名度や見積金額に加えて、対象アプリと同規模・同業種の実績から絞り込むのが目安です。同じRFPと業務シナリオで提案を比べ、稼働後の運用まで任せられるかを見ます。

Dynamics 365のシステムに関するよくある質問

導入を検討する際によく寄せられる質問をまとめます。料金や期間は会社ごとに変わります。そのため、判断の基準があると、相談先の提案を自社の条件に照らして確かめやすくなります。

Dynamics 365は小規模企業でも導入できますか?

導入できます。営業部門の10〜30人でSalesを始め、標準機能と権限、少数の連携、必要なデータ移行に絞れば、全社ERPより小さな計画にできます。

将来の拡張を見越して顧客・商品・組織のコードを整理しておくと、全社展開後も重複しないデータ設計にできます。

Dynamics 365とスクラッチ開発はどちらがよいですか?

一般的な業務を早く整え、定期更新や標準セキュリティを活かしたいなら、標準機能中心のDynamics 365が向いています。

独自の業務が競争力の中心で、標準機能や拡張では要件を満たせず、長期の専用保守を続けられる場合は、スクラッチ開発も比較対象になります。

まず、標準、設定、拡張、連携で実現できる範囲を検証します。そのうえで、残る差分だけをスクラッチ開発と比べます。

AIやCopilotを最初から導入したほうがよいですか?

最初からAIを導入するより、まず業務プロセスと入力項目を整え、AIが使うデータを信頼できる状態にするほうが、AIを使う場面で誤りを減らせます。顧客・案件・商品のマスタ、権限、評価指標も、あわせて整えておきます。

その後は、案件要約や問い合わせ分類、次のアクション提案など、効果とリスクを測りやすい業務から試します。利用量と権限を確かめながら、対象を広げます。

既存のExcelや基幹システムのデータは移行できますか?

移行はできますが、すべての履歴をそのまま移すとは限りません。顧客、担当者、商品、価格のデータは、目的、保存義務、検索頻度、移行費用で分類します。勘定科目、在庫、取引履歴も、同じ基準で扱います。

必要な期間と粒度を決め、件数・金額・残高を移行の前後で照合します。また、複数回のリハーサルと業務ユーザーによる確認も行います。

まとめ:標準を軸にしたデータと運用の設計

導入前に確認する三つの基準

導入前には、改善したい業務とKPI、必要なアプリと標準化の範囲、移行・連携・権限・運用の責任者を、それぞれ確かめます。

三つが曖昧なまま機能や画面を増やすと、使われないカスタマイズや想定外の追加費用が生じやすくなります。

小さく始めて段階的に広げる進め方

導入後は、次の順で対象を広げ、業務基盤として継続的に育てます。

  1. 初回リリースでは、全社の例外は後回しにして、代表部門で標準機能と運用を確立する
  2. データ品質と権限を確認してから、対象部門を広げる
  3. 利用率、入力漏れ、処理時間、問い合わせ数を測り、改善の優先順位を更新する

Dynamics 365は、営業と顧客サービス向けのCRMから、財務・販売・在庫・生産を一体で扱うERPまで、課題に合わせて構成できるクラウド型の業務基盤です。

導入時は、改善業務とKPI、利用者、データを明確にします。連携先や法令要件も、あわせて整理します。

費用は、ライセンスだけでなく、初期設定・開発の費用も含めて比べます。移行・連携や教育・切替の費用も、対象に入れます。さらに、保守・追加利用量まで見ておきます。

小規模CRMは300万〜800万円、中規模CRMは800万〜2,000万円、複数法人のERPは2,000万〜1億円以上が推定目安です。

費用は要件とデータ品質で大きく変わります。標準機能を基本に差別化領域を拡張すると、長期的な保守性と定着率を高められます。

ベンダー選びでは、対象アプリや同規模・同業種の実績を確かめます。移行・連携・テスト・教育の範囲と、更新対応、見積もりの透明性も見ます。同じRFPと業務シナリオを渡し、自社運用まで提案できるかを比較します。

▼関連記事一覧
・Dynamics 365のシステム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・Dynamics 365のシステム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・Dynamics 365のシステム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・Dynamics 365のシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

 

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。