ECプラットフォーム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ECプラットフォームの発注・外注は、安いカートを選ぶ作業ではなく、商品・顧客・在庫・注文を将来の販売チャネルまでつなぐ業務基盤を、どの範囲まで誰に任せるか決めるプロジェクトです。

本記事では、ECプラットフォーム開発を外部へ依頼する際の発注形態、RFPと要件整理、契約形態、費用相場、委託先の選び方、見積書の比較方法を順に解説します。初期費用だけで判断せず、移行・連携・保守を含む5年TCOで比較したい担当者の方に向けた内容です。

▼全体ガイドの記事
・ECプラットフォーム開発の完全ガイド

ECプラットフォームの発注・外注では何を決めますか?

ECプラットフォーム開発の発注計画を整理する担当者

ECプラットフォームの外注で最初に決めることは、製品名ではなく、事業の目的と委託範囲です。ECサイトの画面だけを制作するのか、受注・在庫・物流・会計まで連携するのかによって、必要な体制も予算も大きく変わります。2024年の国内BtoC-EC市場規模は26.1兆円、EC化率は9.8%まで拡大しており、ECは販売ページではなく業務基盤として設計する段階に入っています(出典: 経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査」、2025年)。

売上だけでなく業務改善まで目的に含めます

発注前に「ECの売上を伸ばす」という目標を、測定できるKPIへ分解します。たとえば、受注処理時間を何時間減らすか、在庫差異をどの程度抑えるか、電話やFAXの受注を何割減らすか、店舗受取を何件可能にするか、といった指標です。売上だけを目的にすると、デザインや広告機能へ予算が偏り、現場が困っている二重入力や欠品対応が残る可能性があります。

また、対象業態を明確にします。BtoCなら販促、会員、レビュー、定期購入が重要になり、BtoBなら取引先ごとの価格、掛け払い、承認、見積・再注文が重要になります。店舗を持つ企業では、ECと店舗の会員ID、商品マスタ、在庫、ポイント、注文をそろえるオムニチャネル要件が加わります。これらを一つの「ECサイト制作費」にまとめず、業務領域ごとに発注範囲へ落とし込むことが大切です。

プラットフォーム提供会社と開発会社を分けて考えます

Shopifyやfutureshopのようなプラットフォーム提供会社と、その上で要件定義・デザイン・連携開発・移行を担う制作会社やSIerは、同じ役割ではありません。SaaSを契約しても、商品データの整理、基幹システムとのAPI連携、テーマ開発、テスト、運用設計を自社だけで完了できるとは限りません。発注先を探す際は、製品を持つ会社、認定パートナー、独自パッケージを持つSIer、スクラッチ開発会社のどこへ何を依頼するのかを分けて整理します。

この役割分担が曖昧だと、障害時に「プラットフォームの問題か、追加開発の問題か、連携先の問題か」が分からなくなります。提案段階で、要件定義、設計、開発、データ移行、決済審査、リリース、保守、障害一次対応の責任者を一覧にしてもらうと、後の責任分界を確認しやすくなります。

ECプラットフォームの発注形態はどのように選びますか?

ECプラットフォームの発注形態を比較するイメージ

発注形態は、事業規模、業務の複雑さ、既存システムとの連携数、社内の開発・運用体制の4軸で選びます。短期立ち上げを優先するならSaaS、標準機能と独自要件を両立するならクラウド型パッケージ、技術担当がいて独自拡張を重視するならオープンソース、既製品で競争上の業務を表現できないならスクラッチが候補になります。

SaaSを利用し制作・連携だけ外注する形態

SaaS型は、サーバー運用や基盤のアップデートをプラットフォーム会社へ任せ、外部のパートナーへデザイン、テーマ開発、商品登録、決済設定、必要なアプリ連携を依頼する形態です。市場テストや新規ブランドの立ち上げなど、早く販売を始めたい企業に向いています。システムの保守負担を抑えられる一方、標準機能にない在庫引当や複雑な承認フローは、外部サービスや追加開発で補う必要があります。

Shopifyの公式料金ページでは、年払い表示でBasicが月3,650円、Growが月10,100円、Advancedが月44,000円、Plusが月368,000円からと案内されています(出典: Shopify日本「料金プラン」、確認時点の公開価格)。ただし、これはプラットフォーム利用料の目安であり、テーマ制作、アプリ、移行、外部決済、取引手数料、運用代行の費用は別に確認します。料金プランだけで「構築費ゼロ」と判断しないことが重要です。

パッケージ・オープンソースを導入して拡張する形態

パッケージやクラウドECは、商品・受注・会員・販促といった標準機能を活用しながら、基幹、POS、WMS、CRMなどを連携させる方式です。中堅企業や、BtoB、定期通販、複数ブランド、店舗在庫連携を扱う企業では、標準機能と追加開発の境界をRFPで明確にします。オープンソースはライセンス費用が不要な場合でも、サーバー、プラグイン、脆弱性対応、アップデート、監視、保守を発注する必要があります。

既存業務に合わせて自由に変更できることは利点ですが、個別カスタマイズが増えるほど、アップデートや担当者交代の負担が増えます。ベンダーには「標準機能で実現する部分」「設定で対応する部分」「個別開発する部分」「業務を変更して合わせる部分」を提案書に分けて記載してもらいます。

フルスクラッチは独自業務に投資する形態

フルスクラッチは、既存製品の制約を受けず、独自の商流、価格計算、受注審査、店舗運営、海外展開などをシステムへ組み込む方式です。ただし、自由度が高いことと、成功しやすいことは同じではありません。要件定義、品質管理、セキュリティ、障害対応、開発者の継続確保まで自社が発注者として管理できる体制が必要です。

将来の差別化につながらない商品登録や一般的な決済まで独自開発すると、費用と保守の負担だけが増えます。既製品の標準機能を使う領域と、利益率や顧客体験に直結する独自業務へ投資する領域を分けることが、発注形態を選ぶ際の現実的な判断になります。

RFPと要件整理はどのように進めますか?

ECプラットフォームのRFPと要件定義を整理するイメージ

RFPは、提案依頼先に同じ条件で回答してもらうための文書です。製品名や希望機能を並べるだけでなく、現状の業務、達成したいKPI、対象範囲、データ量、連携先、非機能要件、希望時期、予算の考え方、提案書に求める回答形式まで記載します。RFPの精度が低いまま相見積もりを取ると、会社ごとに前提が異なり、金額を比べても意味が薄くなります。

現行業務とデータを棚卸しします

最初に、商品登録から注文、決済、引当、出荷、返品、返金、会計計上までを業務フローにします。誰が、どの画面で、どのデータを入力し、どの承認を経て、どの外部システムへ渡すのかを確認します。特に、欠品、部分出荷、注文分割、予約、定期購入のスキップ、店舗受取、店舗とECをまたぐ返品は、デモ画面だけでは見落とされやすい業務です。

データの棚卸しでは、商品マスタ、SKU、価格、在庫、顧客、会員ランク、ポイント、注文履歴、配送先、画像、レビューの項目と件数を整理します。データの重複や表記ゆれを移行時に直すのか、現行のまま移すのかも決めます。AIレコメンドや検索改善を検討していても、商品属性や購買履歴の品質が低ければ効果を測れないため、先にデータ定義と権限を整える必要があります。

機能要件は優先順位と受入条件まで書きます

機能要件は「必要」「できれば必要」「将来検討」の3段階に分けます。商品・カテゴリ・バリエーション、検索・絞り込み、会員、カート、クーポン、ポイント、決済、注文、返品、在庫、配送、CMS、SEO、分析などを一覧にし、業務上の優先度を付けます。BtoBでは取引先別価格、掛け払い、見積、承認、再注文を、定期通販では配送サイクル、停止、スキップ、解約を、オムニチャネルでは会員統合、店舗在庫、BOPIS、店舗返品を明記します。

それぞれの要件に、受入条件を添えます。たとえば「在庫連携に対応」ではなく、「在庫更新から5分以内にECへ反映され、在庫不足の注文は受付前にエラー表示する」と書きます。「決済に対応」ではなく、「与信失敗、二重決済、返金、部分返金、チャージバック時の運用をテストできる」と書きます。受入条件が具体的になるほど、提案会社の回答と見積もりの差を比較しやすくなります。

非機能要件と責任分界を先に確認します

ECでは、機能が動くことだけでなく、繁忙期に止まらないことが重要です。月間注文数、ピーク時の同時アクセス、商品数、会員数、画像容量、在庫更新件数を示し、性能試験の方法と合格基準を決めます。可用性、バックアップ、RTO・RPO、監視、ログ保存、権限、脆弱性診断、障害連絡、復旧訓練、切り戻し手順もRFPに入れます。

さらに、データの所有権、API仕様、追加開発の単価、バージョンアップの影響、解約時のデータ返却形式、再委託先、海外保管の有無を確認します。決済、個人情報、購買履歴を扱うため、委託先のセキュリティ認証だけでなく、自社サイトに埋め込むスクリプトや外部タグの管理責任も確認します。2025年3月31日以降、PCI DSS v4.0.1の将来日付要件が有効になり、EC決済ページのスクリプト管理などが評価対象となっています(出典: PCI Security Standards Council、2025年)。

発注からリリースまでの進め方はどうなりますか?

ECプラットフォームの開発工程を確認するイメージ

ECプラットフォーム開発は、企画、要件定義、設計、開発、移行、テスト、リリース、運用改善の順で進めます。工程を一括発注する場合でも、各段階の成果物と意思決定者を決めておくと、途中で要件が膨らむリスクを抑えられます。特に要件定義を無償提案の範囲に含め、開発開始後に有償変更として扱う会社もあるため、契約と成果物を分けて確認します。

企画とベンダー選定では評価表を作ります

企画段階では、社内の経営、営業、商品、物流、店舗、情報システム、法務、CSから関係者を集めます。候補会社には、同じ業務フローと質問票を渡し、会社概要、実績、方式、構築範囲、体制、スケジュール、費用、前提条件、リスクを同じ順で回答してもらいます。評価表は、機能適合だけでなく、業界・商流の経験、連携力、データ移行、保守、セキュリティ、提案の具体性、担当者との相性も含めます。

デモでは、商品登録やトップ画面だけを見てはいけません。返品、欠品、部分出荷、割引の併用、会員ランク変更、店舗受取、返金、障害復旧、管理者権限、CSV出力、APIエラー時の再送を実際のシナリオで見せてもらいます。自社の現場担当者が操作し、現在の業務より何が簡単になるか、何を変更しなければならないかを記録します。

設計・開発・テストでは段階的に確認します

設計では、画面や機能だけでなく、商品・顧客・注文・在庫のデータモデル、連携方式、エラー処理、権限、ログを決めます。開発中は、週次の進捗会議、課題一覧、変更管理、デモ環境を用意し、発注者が判断を先送りしないようにします。仕様変更を口頭で依頼せず、影響範囲、追加費用、納期、テスト方法を変更管理票に残します。

テストは、単体、結合、総合、受入、負荷、セキュリティ、移行リハーサルに分けます。注文が正常に通るだけでなく、決済失敗、在庫不足、二重送信、配送先変更、返品、キャンセル、返金、外部API停止を確認します。リリース前には本番データのバックアップ、DNSや決済の切り替え、問い合わせ窓口、監視、障害時の切り戻しをリハーサルし、公開後の安定運用までを納品条件に含めます。

移行と運用引き継ぎを開発工程に含めます

ECのリニューアルでは、旧サイトを新しい画面に置き換えるだけではありません。会員パスワードの扱い、注文履歴の移行、商品コードの対応表、在庫の初期値、ポイント、定期購入の次回注文、SEO用URL、リダイレクト、画像、同意履歴を整理します。移行対象と移行しないデータを一覧にし、件数照合とサンプル照合の方法を決めます。

運用開始後に誰が商品を登録し、価格を承認し、在庫を調整し、障害を一次切り分けするのかも決めます。ベンダーへ保守を委託する場合は、受付時間、初動時間、復旧目標、重大障害の連絡経路、月次報告、定例会、軽微改修の範囲をSLAや保守仕様書に記載します。内製化を目指す場合は、ソースコード、設計書、API仕様、運用手順、教育を納品物として明記します。

ECプラットフォーム開発の契約形態はどう選びますか?

ECプラットフォーム開発の契約条件を確認するイメージ

契約形態は、要件が固まっているか、成果物を明確に定義できるか、発注者がプロジェクト管理を担えるかで選びます。EC開発では、要件定義だけ準委任、設計・開発は請負、保守・改善は準委任というように、工程ごとに契約を分ける方法も現実的です。一つの契約ですべてを固定すると、要件変更や連携先の仕様変更に対応しにくくなることがあります。

請負契約は成果物と検収条件を明確にします

請負契約は、合意した成果物を完成させ、検収を受けることを重視する契約です。画面、機能、連携、移行、テスト、設計書、ソースコード、操作マニュアルなど、何を納品するかを一覧にし、検収期限、指摘の修正回数、瑕疵対応、再検収の条件を定めます。見積書に「一式」とだけ書かれている場合は、作業範囲と完成条件を別紙で補足します。

請負に向くのは、要件と受入条件が比較的固まっている開発です。ただし、外部決済や基幹側の仕様が未確定なのに全工程を請負で固定すると、変更費用の交渉が増えます。要件定義の成果物を先に検収し、その結果をもとに開発契約を締結する段階分けも検討します。

準委任契約は役割と作業時間を管理します

準委任契約は、専門家が合意した業務を遂行することを重視する契約です。要件定義、プロジェクト管理、アジャイル開発、運用改善、技術支援のように、状況を見ながら作業内容が変わる工程に向いています。成果物の完成を無条件に約束する契約ではないため、稼働時間、担当者、作業内容、定例会、報告方法、優先順位の決め方を明確にします。

準委任で注意したいのは、発注者が受託会社の担当者へ直接指揮命令するような運用にならないことです。実際の業務分担と窓口を契約書・体制図に整理し、再委託、秘密保持、個人情報の取扱い、知的財産権、成果物の利用範囲、契約終了時の引き継ぎも確認します。月次の作業報告と次月計画を承認する運用にすると、コストと優先順位を管理しやすくなります。

どの契約でも変更・知財・終了条件を確認します

契約形態にかかわらず、要件変更の申請方法、見積再提示の期限、追加開発単価、納期変更の扱い、未使用工数の扱いを決めます。ソースコード、設定、デザイン、テスト仕様書、移行ツールなどの知的財産権が誰に帰属するか、既存ライブラリやオープンソースのライセンスをどう扱うかも重要です。

また、プラットフォームや保守会社を将来変更できるよう、契約終了時のデータ返却、エクスポート形式、移行支援の単価、アカウントやドメインの名義、決済情報の引き継ぎを確認します。解約できることだけでなく、解約時に事業を止めず移行できることが、長期運用における重要な発注条件です。

ECプラットフォームの外注費用相場はいくらですか?

ECプラットフォームの費用相場を確認するイメージ

ECプラットフォームの費用は、利用料、制作・開発費、連携費、データ移行費、決済手数料、保守費を分けて考えます。公開価格のあるSaaSと、要件定義が必要なパッケージ・スクラッチを同じ「初期費用」で比較してはいけません。以下の金額は2025〜2026年時点の公開価格と、類似する業務システム開発の要件から置く予算取り用の目安です。税別、要件別であり、個別案件の確定見積もりではありません。

方式別の初期費用と期間の目安

モール型は初期費用0〜6万円程度、月額0〜13万円程度に販売手数料が加わり、即日から1か月程度で始められる場合があります。ASP・SaaS型は、制作外注を除けば初期0〜10万円程度、月額0〜5万円程度に決済手数料が加わり、立ち上げは即日から1か月程度が目安です。実際には、商品登録、デザイン、撮影、移行、運用代行の費用が別になるため、事業開始までの総額で見積もります。

オープンソースは、構築30万〜200万円程度、サーバー月5,000円〜3万円程度、保守月3万〜15万円程度が一つの目安で、期間は1〜4か月程度です。クラウドECやパッケージは、基幹・WMS連携やBtoB要件を含むと初期300万〜1,500万円程度、期間4〜8か月程度が目安になります。フルスクラッチは3,000万円から数億円、期間6〜18か月以上になる可能性があり、独自業務の範囲と非機能要件で大きく変わります。

公開価格の例として、futureshopは公式料金ページで初期費用22,000円から、月額基本料金27,000円からと案内しています。また、futureshop omni-channelは登録可能商品数30,000商品、初期費用752,000円、月額費用167,000円の掲載です(出典: 株式会社フューチャーショップ「料金」、確認時点の税別公開価格)。ここにもサイト制作、オプション、決済、データ移行などが別途必要になるため、料金表は発注費用の一部として扱います。

連携・移行・保守が予算を左右します

見積もりが膨らみやすいのは、POS、ERP、会計、WMS、CRM、MAなどとの連携、会員・商品・在庫・注文データの移行、複数ブランドや店舗在庫の同期です。3〜6システムの連携と移行を含む場合、類似する業務システム開発からの推定で500万〜3,000万円程度を追加計上することがあります。店舗・ブランドが多く、リアルタイム在庫や複雑な返品まで含む大規模案件では、3,000万円〜1億円超になる可能性もあります。

このレンジは、ECプラットフォーム各社が一律に公開している料金ではありません。連携方向、データ件数、APIの有無、リアルタイム性、エラー時の再送、移行データの整備状況によって変わるため、要件未確定時の予算取りとして使います。ベンダーには、連携先ごとの方式、担当範囲、テスト件数、保守費を分けて記載してもらい、「連携一式」の金額だけで比較しないようにします。

5年TCOで初期費用以外も比較します

5年TCOには、初期構築、月額利用料、決済・販売手数料、アプリ・オプション、サーバー、保守、監視、追加開発、バージョンアップ、データ移行、教育、運用担当者の工数を含めます。SaaSは初期費用が低くても、売上に応じた決済・取引手数料やアプリ費用が積み上がることがあります。スクラッチは利用料が見えにくくても、保守要員、クラウド費、脆弱性対応、改修費が必要です。

比較表には、1年目、3年目、5年目の累計と、注文数が増えた場合の従量費を記載します。売上が増えるほど手数料が増える方式、商品数や会員数でプランが変わる方式、店舗数やAPIコール数で追加費用が出る方式を分けます。安い提案を選ぶのではなく、成長シナリオを当てはめたときに、費用と事業価値のバランスがよい方式を選びます。

委託先選定と相見積もりでは何を比較しますか?

ECプラットフォームの委託先と見積書を比較するイメージ

委託先は、知名度や導入社数だけでなく、自社の商流と運用に合うかで選びます。BtoC、BtoB、定期通販、越境、OMOでは必要な機能と運用が違います。候補会社には、自社と近い商品数、注文数、店舗数、既存システム、移行条件の事例を確認し、単に「導入実績あり」ではなく、どの業務をどのように変えたか、稼働後に誰が保守したかを聞きます。

業界・商流・連携実績を確認します

開発会社へ確認する項目は、業界実績、商品・SKU数、月間注文数、ピーク負荷、BtoB価格、定期購入、店舗連携、海外販売、決済、物流、基幹連携、データ移行です。特に、自社の失敗しやすい業務を再現したデモを依頼します。提案担当と実装担当、保守担当が同じ会社なのか、再委託があるのか、リリース後も同じ知識を持つ担当者が残るのかも確認します。

会社が提供するパッケージ名と、実際に開発・運用を担う会社を混同しないことも大切です。SaaSならプラットフォーム会社と認定パートナーの範囲を、パッケージならライセンス会社と導入SIerの範囲を確認します。障害や仕様変更が起きたときの窓口が一本化されるのか、複数社を発注者が調整するのかで、社内の管理工数が変わります。

見積書は作業単位と前提条件をそろえます

相見積もりでは、総額の大小より先に、同じ条件で積算されているか確認します。要件定義、UI設計、フロント開発、管理画面、API連携、データ移行、テスト、負荷試験、セキュリティ診断、リリース、教育、保守を行単位で並べます。作業時間、単価、担当人数、期間、成果物、除外事項、追加費用の条件が明記されている見積もりほど比較しやすくなります。

「標準機能で対応」「設定で対応」「カスタマイズ」「別サービス」「対象外」を機能ごとに表示してもらいます。API連携であれば、項目マッピング、連携頻度、エラー再送、監視、障害時の手動運用まで確認します。移行費では、対象件数、変換、名寄せ、テスト回数、本番切り替え、旧システム保持期間を確認します。低額な見積もりでも対象外が多ければ、後から追加費用が発生するため注意します。

リスクとプロジェクト管理体制を比較します

提案書には、リスク、発生条件、影響、回避策、発生時の判断者を記載してもらいます。よくあるリスクは、商品マスタが予定どおり整わない、外部APIの仕様が変わる、決済審査が遅れる、ピーク時の性能が不足する、現場が新業務を使わない、担当者が交代する、といったものです。リスクを「問題ありません」と説明する会社より、前提と対策を具体的に示す会社の方が、発注後の管理がしやすくなります。

プロジェクト責任者、テクニカルリード、業務設計者、デザイナー、テスト担当、移行担当、保守担当の役割と稼働率を確認します。定例会の頻度、課題の優先順位、経営層への報告、意思決定の期限、遅延時のエスカレーションも評価項目です。発注者側にも責任者と現場のキーユーザーを置き、判断をベンダー任せにしない体制を作ります。

ECプラットフォームのセキュリティとデータ活用を確認するイメージ

ECプラットフォームでは、決済情報、氏名、住所、購買履歴、閲覧履歴、問い合わせ内容などを扱います。発注時は、保存するデータ、利用目的、権限、暗号化、ログ、バックアップ、委託先、保管場所、削除方法を確認します。特定商取引法に基づく表示、返品・解約、定期購入の最終確認画面など、法令に関わる表示や業務も、要件・テストの対象に含めます。

決済方式とPCI DSSの責任分界を確認します

カード情報を自社環境へ保存・処理・通過させるか、決済代行会社へ完全に委託するかで、セキュリティ要件と確認事項が変わります。外部決済ページへリダイレクトする方式、サイト内に決済フォームを埋め込む方式、トークン化する方式を比較し、どの会社がどの範囲を管理するかを決めます。PCI DSSに準拠している決済会社を使えば発注者の責任がすべてなくなるわけではなく、自社ページのスクリプト、アクセス制御、脆弱性対応も確認が必要です。

PCI Security Standards Councilは、PCI DSS v4.0.1におけるEC決済ページのスクリプト攻撃対策について、2025年3月31日から要件が有効になると案内しています。発注時は、決済ページに読み込むタグの一覧、変更承認、完全性確認、監視、脆弱性診断、インシデント時の連絡経路を仕様書へ入れます。認証の有無だけでなく、実際の運用で証跡を残せるかを提案会社へ確認します。

API・ヘッドレス・AIは目的から採用します

2026年時点では、クラウド、API連携、ヘッドレス、Composable Commerce、PIM、AI検索、レコメンド、チャットボットが提案に登場しやすくなっています。これらを新しいからという理由だけで採用せず、表示速度、複数チャネルへの再利用、商品情報の一元管理、問い合わせ削減など、解決したい課題と対応付けます。フロントエンドとコマース機能を分離すると自由度は上がりますが、開発・監視・障害切り分けの責任も増えます。

AIを導入するなら、商品属性、顧客同意、購買履歴、在庫、価格のデータ品質を先に確認します。AIエージェントに注文変更や返金を任せる場合は、操作範囲、金額上限、承認、人間へのエスカレーション、操作ログ、誤回答時の補償を設計します。AIで売上が上がると断定するのではなく、検索精度、問い合わせ対応時間、レコメンド経由率など検証可能な指標を決め、段階導入することが安全です。

ECプラットフォームの発注・外注でよくある質問

ECプラットフォームのよくある質問を確認するイメージ

ECプラットフォームの発注では、方式、費用、委託先、社内体制に関する質問が多く寄せられます。ここでは、発注前に判断しやすいよう、結論を先に回答します。

ECプラットフォームの発注は自社開発と外注のどちらがよいですか?

短期立ち上げや専門知識が必要な連携・セキュリティを重視するなら、SaaSやパッケージを選び、設計・開発・移行・保守を外注する方法が現実的です。自社に継続的な開発・運用体制があり、独自業務が競争力の中心なら内製や共同開発も候補になります。重要なのは、開発方法ではなく、稼働後に改善を続けられる責任者と体制があることです。

ECプラットフォーム開発の見積もりは何社から取るべきですか?

候補を3〜5社程度に絞り、同じRFPと業務シナリオで提案と見積もりを依頼する方法が一般的です。会社数を増やしすぎると、質問対応と比較に時間がかかり、提案内容が表面的になることがあります。価格だけでなく、前提条件、対象外、体制、実績、保守、データ移行、追加費用、5年TCOを同じ評価表で比較します。

ECプラットフォームの費用は初期費用だけ見ればよいですか?

初期費用だけでは不十分です。月額利用料、決済・販売手数料、アプリ、連携、移行、保守、監視、追加開発、教育、社内運用工数を含む5年TCOで比較します。注文数や商品数が増えた場合の従量費、プラン変更費、解約時の移行費まで確認すると、導入後に予算が膨らむリスクを下げられます。

RFPに最低限入れるべき項目は何ですか?

目的とKPI、業態、商品・会員・注文数、業務フロー、必要機能、既存システム、連携方式、移行対象、ピーク性能、セキュリティ、法令対応、希望時期、社内体制、予算の考え方、保守条件を入れます。さらに、標準機能・設定・追加開発・対象外の区分、データ所有権、API、解約時の返却、提案の評価方法も記載します。候補会社が同じ前提で答えられることが、RFPの最低条件です。

まとめ

ECプラットフォームの発注計画をまとめるイメージ

ECプラットフォームの発注・外注では、まず売上だけでなく、受注処理、在庫、物流、顧客、店舗との連携を含む目的を定めます。そのうえで、事業規模、業務の複雑さ、必要な連携、社内体制から、SaaS、パッケージ、オープンソース、スクラッチの方式を選びます。

RFPには、現行業務とデータ、機能・非機能要件、受入条件、移行、保守、責任分界を記載し、候補会社には同じシナリオで提案してもらいます。契約は工程ごとに請負と準委任を使い分け、変更、知財、データ返却、終了条件を明確にします。

費用は初期構築費だけでなく、プラットフォーム利用料、決済手数料、連携、移行、保守、追加開発、社内工数を含む5年TCOで比較します。低い金額を選ぶのではなく、稼働後も安全に改善でき、自社の業務と成長に合う委託先を選ぶことが、ECプラットフォーム開発を成功させる近道です。

▼全体ガイドの記事
・ECプラットフォーム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。