選挙管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

選挙管理システム開発は、まず業務と例外処理を整理し、RFI・RFPで条件を統一します。そのうえで移行・テスト・リハーサルを順に行い、正確な投票事務と業務継続につなげます。

開発の全体像は、選挙管理システム開発の完全ガイドもあわせてご覧ください。

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選挙管理システム開発の全体像

選挙管理システムを中心に、名簿管理、投票受付、開票、履歴と継続の4領域を示す図
業務の範囲を4領域に分けて整理できます。

選挙管理システムは、選挙事務のデータを正確に扱いながら、多数の職員や投票所の動きを支える業務基盤です。

必要な範囲は、選挙の種類や自治体の規模によって変わります。そのうえで、名簿・投票・開票を中心に、帳票や権限、ログ、バックアップまでを一体で設計します。

名簿・投票・開票の一連の業務管理

名簿から開票までの業務をつなぐためには、管理対象と運用上の備えを先に整理しておくことが欠かせません。

  • 名簿管理:選挙人・在外選挙人名簿、選挙区、投票区、投票所、候補者、政党が対象
  • 投票受付:期日前・不在者・当日投票の受付情報と投票済み情報の連携
  • 開票:投票所別の状況から、結果入力、速報、確定結果、帳票、統計まで
  • 履歴と継続:変更履歴の追跡、バーコードや本人照合の機器が使えないときの紙台帳への切り替え手順

名簿には、定時登録と選挙時登録、転入・転出・死亡などの異動を反映します。さらに、名簿抄本や入場券も作成します。

投票済み情報を正しく連携することが、二重投票の防止につながります。また、選挙当日は、誤操作を早い段階で見つけるための確認画面が必要です。

標準化対象と自治体独自要件の切り分け

標準化の対象と自治体独自の論点を切り分けておくと、要件と費用の両方を整理できます。

  • 標準化対象:選挙人名簿管理は、基幹業務システム標準化の20対象事務の一つに当たります。
  • 投票所の機器:受付端末、読取機器、電子投票機は、別立てで検討する対象です。
  • 独自業務:選挙公報の作成と自治体独自の帳票

デジタル庁の「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」には、選挙人名簿管理システム標準仕様書の第1.4版が掲載されています(出典:デジタル庁、2026年)。

データ要件・連携要件各論は、2025年9月30日付の第4.1版として案内されています(出典:デジタル庁、2026年4月更新)。

要件定義では、標準仕様に合わせる機能、既存運用を残す機能、別システムとして連携する機器を一覧にします。切り分けが曖昧なままだと、標準化移行と電子投開票の費用を比べられません。

ポイント

業務の範囲を決めるときは、名簿から開票までを一連で見たうえで、標準化の対象と自治体独自の論点を分けて考えると判断しやすくなります。

選挙管理システム開発の進め方

企画・要件定義からRFIとRFP、設計・移行・テスト、リハーサルへ進む工程図
選挙日の前にリハーサルを置く工程です。

開発では、画面の作成より先に、選挙種別ごとの業務とデータの流れを確定させ、そのうえで設計へ進みます。

期間の目安は、既存パッケージの設定・移行で6〜12か月です。一方、複数業務の更新や大規模連携を含む場合は、12〜24か月程度です。

計画は選挙日から逆算し、稼働後最初の選挙までに、実際の手順で少なくとも一度リハーサルを終えておきます。

企画・要件定義での業務と例外処理の洗い出し

企画・要件定義では、対象範囲と選挙事務の時系列を具体的に決めます。

  • 対象範囲:導入する業務の広さ
  • 時系列:登録、異動、入場券、投票、開票、結果確定、保存の順序
  • 役割と成果物:入力・承認・参照の担当者、帳票、連携先

対象範囲は、名簿だけに絞る場合と、名簿と期日前・不在者投票まで含める場合、当日投票と開票速報まで含める場合、周辺業務まで含める場合に分けて考えます。

例外処理では、異動データの未着や投票所端末の停止を想定します。

候補者情報の訂正や在外・不在者投票の確認遅延も、例外の一つです。

選挙当日の通信断も対象です。

代替手段と再入力、二重登録の防止を決めたうえで、責任者の承認や復旧後の突合を要件定義書に記します。

RFIとRFPによる実現方式と提案条件の統一

RFIで実現方式や対応条件を確かめ、その結果をRFPの共通条件に反映します。

  • 方式:標準準拠パッケージ、クラウド、庁内設置、既存改修、期間限定機器のどれに対応できるか
  • 実績と連携:標準適合、移行実績、API・ファイル連携仕様についての質問
  • 運用と契約:選挙当日支援、障害時運用、終了時のデータ返却の条件

RFPには、対象業務と利用者数、投票所数、端末台数、データ量を明記します。さらに、選挙種別、希望納期、納品物も示します。

評価項目には価格だけでなく、技術点を含めます。加えて、移行・テスト計画、操作性、セキュリティを項目に入れます。さらに、保守SLA、法改正対応、撤退条件も評価の対象にします。

たとえば、横浜市の移行業務では、契約金額だけでなく総合評価の技術点も使われています(出典:横浜市「選挙人名簿管理システム等標準化に係る移行業務委託」契約結果、2024年)。

設計・移行・テスト・リハーサルの連続実施

設計から本番稼働まで、確認すべきデータと運用を段階的に固めていきます。

  • 設計:画面、帳票、データ、コード、権限、ログ、バックアップ、連携時期の取り決め
  • 移行:項目対応表の作成と、件数、欠損、重複、文字化け、過去データの検証
  • テスト:単体・連携・総合に加えて、権限、負荷、バックアップ復元、障害復旧、紙運用からの再入力
  • リハーサル:職員と臨時職員が本番と同じ役割で操作し、手順を直したうえで稼働に入る

住民基本台帳連携では、差分の取込時期と全件照合、異動訂正の戻し方を決めておきます。また、氏名の外字や行政事務標準文字、候補者名の表記、投票区変更は、サンプルを使って確かめます。

リハーサルでは、操作時間や問い合わせ内容を振り返り、帳票の照合と責任者の承認手順も見直します。

ポイント

進め方で迷ったときは、選挙日から逆算して、例外処理まで要件定義書に書けているかどうかを目安にします。稼働前に実際の手順でリハーサルを終えられるかも、同じ目安で見ておくとよいでしょう。

選挙管理システム開発の費用相場とコストの内訳

選挙1回の支援、標準化と移行、中規模自治体の更新、大都市の移行について費用目安を並べた図
金額を比べる前に、契約の対象範囲をそろえます。

費用は人口や投票所数、対象業務で変わります。そのほか、既存ベンダー、標準化の範囲、端末や機器の台数によっても変わります。

2026年時点の公開契約を見ると、選挙1回向けの環境設定や運用支援は100万円台から2,000万円程度です。一方、標準化対応とデータ移行は600万円から3,000万円程度です。

中規模自治体の複数業務更新は3,000万円から1億円程度、大都市の大型移行は1億円から3億円超が、初期検討の目安として挙げられます。ただし、これらは定価ではなく、案件の範囲をそろえて検討するための目安です。

公開契約の対象範囲を分けた相場の読み取り

公開契約は、対象範囲の違いを確かめたうえで費用の目安として読みます。

  • 選挙1回の環境設定:札幌市の選挙人情報管理システム稼働環境設定等の契約
  • 大都市の標準化移行:横浜市の標準化に関わる移行業務の契約

札幌市の契約対象は第27回参議院議員通常選挙で、受託者は株式会社日立製作所北海道です。契約金額は718万9,000円です(出典:札幌市「選挙管理委員会事務局指名競争入札及び随意契約の結果」、2025年)。ただし、この金額は自治体全体の新規開発費とは分けて考えます。

また、横浜市の契約対象は「選挙人名簿管理システム等標準化に係る移行業務委託」で、株式会社ムサシが受託しました。契約金額は2億4,505万6,900円です(出典:横浜市、2024年)。

公開金額は、契約名や対象年度、税の扱い、開発・移行・運用の範囲と併せて読みます。

初期費用と運用費を分けた5年総額の比較

費用を比べるときは、見積書の初期費用と継続費用を分けて確認します。

  • 構築・移行:要件定義、調達支援、設定・追加開発、連携、データ整備・移行に分けて見る
  • 機器・基盤:端末、バーコードリーダー、クラウド、ネットワークごとの費用
  • 稼働支援:テスト、研修、リハーサル、立会い、保守、法改正対応の内訳

選挙1回だけの設定費と毎年の保守費が「システム利用料」としてまとめられている場合は、その内訳を確認します。

初期費用だけでなく、5年間の総保有コストで比べます。選挙回数やアカウント、端末更新も、その計算に加えます。

さらに、夜間・休日支援と法改正改修を総額に入れます。バックアップ媒体、データ保存、契約終了時の移行も、総額の中で見ます。

クラウドやSaaSは初期投資を抑えやすい一方で、利用期間やデータ保持、回線、支援時間によって総額が変わります。

パッケージは導入しやすい反面、独自帳票や運用の追加開発が重なると保守費が増える場合があります。そのため、設定と改修の境界を確認します。

ポイント

費用を比べるときは、公開契約の金額をそのまま使わず、対象範囲をそろえ、初期費用と運用費を分けて5年総額で見ると判断を誤りにくくなります。

選挙管理システムの見積もりを取る際のポイント

見積もりの精度は、依頼前に条件をどれだけそろえられるかで決まります。ただし、全仕様を先に確定しておく必要はありません。

対象業務と既存システム、利用者、データ量は、同じ資料にまとめて各社に渡します。端末や希望時期、支援範囲も、その資料に入れます。

提案に含む内容と別途費用になる内容を明確にしておくと、価格以外の差も比べられます。

仕様書に書くデータ・機器・運用条件

見積条件に抜けが出ないよう、仕様書には業務と運用、データ、納品物の条件を記載します。

  • 業務と規模:選挙種別と回数、選挙区・投票区・投票所数、期日前・不在者・在外の扱い
  • 利用条件:同時利用者数と端末台数の想定
  • 機能と保管:連携頻度、候補者や政党のマスタ、帳票、過去データの保存期間
  • 権限と継続:権限、ログ、バックアップ、復旧目標、紙運用、当日支援時間

データ項目については、文字コード、外字、コード値、日付、識別子、欠損時の扱いまで指定しておきます。

標準仕様に準拠していても、独自帳票や庁内連携が自動で引き継がれるとは限りません。そのため、移行の対象年度と移行後の照合方法も、仕様書に記載しておきます。

RFPには受入テストの合格条件を含めます。加えて、データ辞書や連携仕様書、操作手順書、障害対応手順、バックアップ復元手順も納品物に指定します。

複数社の価格・技術・継続性による比較

事業者の得意分野と、契約後も運用を続けられるかどうかを、同時に比べます。

  • 標準化実績:選挙人名簿管理の標準化経験を持つ会社
  • 基幹連携:自治体基幹システムとの連携に強い会社
  • 機器運用:端末や機器を含む運用に強い会社

現行ベンダーに継続して依頼する場合でも、データや仕様を他社が移行できる形式で保管できるかを確認します。

特定ベンダーしか扱えない部分がある場合は、専有データやAPI、終了時の返却費用、再委託先を明記します。

評価では価格に加えて、移行の現実性、標準仕様の改版への対応、自治体の情報セキュリティポリシーへの適合を見ます。さらに、操作研修と選挙当日の要員体制、障害時の復旧手順も確かめます。

たとえば、臨時職員が名簿検索や受付、訂正、取消、再確認まで行う画面デモを見ると、現場での使いやすさを比べられます。

標準化・電子投票・障害対応の区別

標準化と電子投票機は、別々に評価します。そのうえで、投票方式の要件と導入効果を確かめます。

  • 期待効果:電子投票機で期待される、開票時間や無効票の削減
  • 法令上の条件:二重投票の防止、投票の秘密、記録保護、権限のない操作の防止が定められている
  • 通信要件:投票機は電気通信回線に接続してはならないとされています

法令上の条件の根拠は、電磁的記録式投票機の特例法です(出典:e-Gov法令検索「電磁的記録式投票機を用いて行う投票方法等の特例に関する法律」)。

インターネット投票と電子投票機は、別々のものとして扱います。

京セラの公式事例では、新富町が2026年3月の町議会議員補欠選挙で電子投開票を利用しました(出典:京セラ公式導入事例、2026年)。同事例では、前回選挙と比べて開票時間が約2分の1、開票人数が約4分の1になったと紹介されています。

効果は、規模や候補者数、投票方法、運用体制によって変わります。そのため、自治体の実測条件で検証します。

ポイント

見積もりを比べるときは、仕様書に業務・データ・運用の条件を書き込み、価格だけでなく移行の現実性と撤退条件も同じ条件で比べることが欠かせません。

選挙管理システム開発でよくある質問(FAQ)

開発を検討する段階で、自治体の担当者から寄せられやすい質問に答えます。金額や納期を決める前にこれらを確認しておくと、事業者への相談内容が具体的になります。

選挙管理システムの開発費用はいくらですか?

費用は、対象範囲や自治体の条件によって変わります。そのため、公開契約の金額をそのまま予算に置き換えないようにしてください。

  • 選挙1回の支援:100万円台から2,000万円程度
  • 標準化・移行:600万円から3,000万円程度
  • 複数業務の更新:3,000万円から1億円程度
  • 大都市の大型移行:1億円から3億円超の場合もあります

人口や投票所数、既存資産、端末、保守を含むかどうかで、金額が変わります。

選挙管理システム開発にはどのくらいの期間が必要ですか?

開発期間は構成によって、6〜12か月から12〜24か月超まで幅があります。そのため、選挙前のテストと研修の時期から逆算して考えます。

  • 既存パッケージ中心:設定・移行に6〜12か月です。
  • 複数業務を含む:投票業務と基幹連携、端末、帳票、リハーサルまでを扱い、9〜18か月程度です。
  • 大型移行・スクラッチ:12〜24か月超の可能性があります。

法改正の時期や候補者マスタの確定時期も、計画に入れておきます。

選挙管理システムはクラウドにできますか?

クラウド、LGWAN、専用回線、庁内設置などから選べます。あわせて、自治体の情報セキュリティポリシーに適合するかを確かめます。

  • 基盤の確認:保管場所、認証、暗号化、ログ、バックアップ
  • 投票所の端末・電子投票機:名簿管理システムのクラウド化とは別に評価する通信要件
  • 障害時運用:紙運用と、復旧後のデータ突合の提案

価格に加えて、選挙当日に通信できない場合の対応も確かめておきます。

ポイント

金額、期間、クラウドの可否は、対象範囲と自治体の条件で大きく変わります。公開契約の数字は、そのまま予算や納期に当てはめないようにします。

まとめ

選挙管理システム開発では、名簿や住民基本台帳連携、各種投票、開票を一連の業務として整理します。帳票や権限、ログ、バックアップ、障害時運用も、同じ整理のなかで扱います。

標準化の対象と自治体独自の運用、別途評価する電子投票機などの機器は、切り分けて考えます。

業務・データ・リハーサルの先行整理

開発と調達は、業務の整理から稼働後までを順に進めます。

  1. 現行業務と例外処理を洗い出します。
  2. 標準仕様を確かめ、RFIとRFPを行います。
  3. 要件定義と設計を進め、データ移行と連携テストを行います。
  4. 障害復旧訓練と選挙前のリハーサルに臨みます。
  5. 稼働後に運用を振り返ります。

見積もりは、初期費用だけでなく5年総額で比べます。その総額には、法改正への対応や選挙ごとの設定、端末保守を含めます。さらに、夜間・休日支援と終了時のデータ返却も見ておきます。

自治体の条件の整理と相談

人口や投票所数が近い自治体の公開契約を参考にしながら、相談の条件をそろえます。

  • 自治体の条件:対象業務、既存システム、データ量、端末、希望時期、選挙当日の支援体制の整理
  • 事業者の比較:価格、標準化、移行、操作性、保守、撤退条件の各面

最初から機能を増やすよりも、正確な投票事務と業務継続を優先し、段階を分けて計画します。

その進め方が、長く安定して使える選挙管理システムにつながります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。