電力小売管理システム開発の完全ガイド

電力小売管理システムは、顧客・契約の管理、使用量と料金の計算、請求と収納を一つにまとめ、制度に沿った連携を支える仕組みです。

開発では、事業規模や制度への対応に合わせて、標準のクラウドサービスからフルスクラッチまでの中から方式を選びます。方式によって、費用や期間、稼働後の運用の負担が大きく変わります。

▼関連記事一覧
・電力小売管理システム開発の進め方
・電力小売管理システム開発でおすすめの開発会社6選と選び方
・電力小売管理システム開発の見積相場・費用
・電力小売管理システム開発の発注・外注・委託方法

電力小売管理システムの全体像と主要機能

電力小売管理システムを中心に、顧客・契約・料金、使用量・請求・収納、スイッチング支援・一般送配電・決済・会計との関係を示す図。
CISの業務機能と周辺システムのつながりを整理しています。

電力小売管理システムは、電気を販売するうえで必要な顧客・契約・使用量・料金・請求を、一つの流れでつなぐ仕組みです。

電力小売管理システムは、一般的な顧客管理ツールとは違い、制度に沿った契約切替や確定使用量の受信、料金メニュー変更、請求と収納の突合まで正確に処理します。

CISが担う顧客・契約・料金の一元管理

中心となるCIS(顧客情報システム)は、契約状態が変わったときに、それを業務の起点として扱います。

  • 顧客・契約:申込や本人確認、供給地点特定番号、需要場所、契約容量、料金メニュー、切替・解約・名義変更の履歴の管理。
  • 料金計算:基本・従量料金、季節・時間帯別単価、燃料費調整、再エネ賦課金、割引や日割り、遅延損害金を扱う。
  • 料金設定:単価や適用期間を設定で変えられる設計にし、制度改定や新メニューに備える。

低圧と高圧では、契約項目や使用量の扱いが異なります。そのため、対象となる顧客の比率は要件定義の早い段階で確定させておきます。

料金ロジックをプログラムに固定せず、設定で扱える形にしておけば、制度改定や新メニュー追加のたびに大規模な改修をせずに済みます。

使用量・請求・収納を正確につなぐ機能

使用量・請求・収納は、データを正しく受け取り、照合できるかで業務の正確さが決まります。

  • 使用量の受信:一般送配電事業者から検針値、30分値、確定値を取り込み、欠損・重複・異常値を検知したら、再取得や確認につなげる。
  • 請求・収納:請求書・検針票、カード・口座振替・コンビニ、全銀データ、入金消込、再請求、未収の扱い。
  • データ照合:契約、使用量、計算結果、請求額、入金結果を突き合わせ、決済代行や会計との責任範囲を項目ごとに確認する。

使用量は、需要家向けの画面や社内分析にも出力します。特に高圧契約では、30分値を省エネ提案や需要予測にも使うため、採用した確定値とその時点を追跡できる設計が必要になります。

照合ができない場合は、問い合わせや月次決算の手作業が増えます。

外部連携を含めたシステム境界

このシステムは単独では完結せず、スイッチング支援、一般送配電、需給管理、卸電力取引と連携します。さらに、決済、会計、CRM、問い合わせ管理、代理店ポータルなどとも、APIまたはファイルでつなぎます。

スイッチング支援システムでは、設計書や取扱マニュアル、API連携テスト申込書などが公開されています。連携方式により、開発範囲とテスト計画が変わります(出典: 電力広域的運営推進機関、2025年10月改版資料)。

電力小売管理システムの種類と選択肢

標準SaaS・クラウド、パッケージ、パッケージと周辺開発、全面スクラッチの4方式を並べた図。
標準機能の活用から個別構築まで、方式を段階的に見渡せます。

方式は、標準SaaS・クラウド、パッケージ、パッケージと周辺開発、全面スクラッチの4つに大きく分かれます。

選ぶ際は、需要家数に加えて、料金メニューや代理店モデルといった業務の特徴を確認します。既存基幹との連携や制度改定への対応、3〜5年後の事業規模も、あわせて見ておきます。

標準SaaS・クラウド型が向くケース

標準業務をサービスに合わせられ、初期投資を抑えて早く立ち上げたい場合に適しています。さらに、インフラの調達や運用監視の負担も軽くできます。

月額料金は、IDや契約数に連動する場合もあれば、需要家数や処理量に連動する場合もあるため、課金の単位を確認します。成長後の費用は、5年分で試算して比べます。

パッケージ型が向くケース

電力小売の業務知識を取り入れながら、一定のカスタマイズや自社での運用を組み合わせたい場合に適しています。特に、低圧と高圧の併用、複数の請求締め日、大量の代理店申込がある場合は、標準機能と追加開発の境界を確かめておく必要があります。

クラウドかオンプレミスかで、障害対応やバックアップ、バージョンアップの役割分担も変わります。

周辺開発・全面スクラッチを選ぶ条件

方式を選ぶ際は、独自性の度合い、開発と保守の体制、CIS外の業務範囲をあわせて見ます。

  • 周辺開発:独自料金モデル、再エネ・蓄電池・EV、特殊な販売チャネルが強みなら、標準CISに周辺機能を加える。
  • 全面スクラッチ:自由度は高い一方、制度改定や料金計算の境界値、移行、障害復旧を自社で検証・改修する体制が必要になる。
  • CIS外の範囲:需給管理やBPOを含め、販売開始の時期と、自社で高度化する業務に応じて境界を設計する。

販売開始までの期間を優先するなら、CISと運用支援を組み合わせる方法があります。一方で、電源調達や需給計画を自社で高度化する場合は、需給管理、予測、インバランス管理の分担を決めておきます。

ポイント

方式を選ぶ判断は、需要家数や料金メニュー、既存基幹との連携、3〜5年後の事業規模で決めます。標準機能で足りるか、周辺開発や全面スクラッチが必要かを、業務の特徴に照らして見極めます。

電力小売管理システム開発の進め方

事業モデルと要件の定義、料金計算と外部連携の先行検証、データ移行・総合テスト・並行稼働、リリース後の運用設計へ進む流れ図。
要件を定めて先行検証を行い、移行と運用設計へ進みます。

画面一覧から開発を始めると失敗しやすいため、まず事業モデルと制度上の業務フローを定めておきます。そのうえで、料金計算、連携、移行、運用を一つの計画にまとめ、工程ごとに、納める成果物が受入条件を満たしているかを確かめます。

事業モデルと要件の定義

要件定義では、まず事業条件を決め、次に将来の対象、作成する資料、データの責任者を順に確定します。

  • 事業条件:対象エリアや低圧・高圧、需要家数の現状と3年計画、直販・代理店比率、料金メニュー、締め日、収納。
  • 対象時期:再エネやPPA、卒FIT、蓄電池やEV、デマンドレスポンスを、初期導入と将来の拡張に分けて扱う。
  • 成果物:業務フロー図、データ項目・料金メニュー・外部システム一覧、責任分界表、非機能要件をまとめる。
  • データ責任:契約、メーター、使用量、請求、入金のデータについて、誰が作成し、誰を正とするかを決める。

前提が曖昧なまま見積もると、連携や料金計算の範囲が後から増えて、費用と納期が膨らみやすくなります。一方、データの正を決めておけば、後工程の照合が進めやすくなります。

料金計算と外部連携の先行検証

設計に入る前に、確認すべき計算ケースと、連携方式ごとの設計事項を一覧にしておきます。

  • 料金計算:通常月や日割り、契約変更、燃料費調整、再エネ賦課金、異常値や欠損、請求取消と再請求の各ケースを試す。
  • 計算の確定:業務部門が期待結果を照らし合わせ、計算式と丸め規則を決める。
  • API連携:省力化につながる半面、認証、再送、タイムアウト、重複登録、障害時の復旧の設計が欠かせない。
  • ファイル連携:受信時刻、ファイル世代、文字コード、エラー行の扱いを設計する。
  • 手動登録:手動運用を残す場合は、操作履歴と二重登録防止を要件に含める。

データ移行・総合テスト・並行稼働

移行から切り替えまでに確かめる事項を、段階ごとにまとめます。

  • 移行対象と照合:顧客や契約、供給地点やメーター、料金、請求や入金、問い合わせ履歴を名寄せし、件数・金額・残高・契約状態・履歴の連続性を確かめる。
  • 事前リハーサル:例外処理に備えて、本番直前より早い段階でサンプル移行とリハーサルを行う。
  • 業務テスト:申込からスイッチング、使用量、料金、請求、入金消込までを通しで確かめる。繁忙期のバッチやAPI停止、決済エラー、災害復旧も確認する。
  • 切替判定:旧システムと並行稼働し、請求額とデータ件数の一致を切り替えの条件とする。

データクレンジングを本番直前に始めると、例外処理が間に合わないおそれがあります。

リリース後の運用設計

稼働後も、料金メニューの追加や制度改定、データ補正、未収対応、問い合わせ、障害復旧が続きます。そのため、担当者が単価を変更できる範囲と、開発会社へ依頼する範囲、緊急時の承認者をあらかじめ決めておきます。

監視やバックアップ、脆弱性対応の進め方を、運用設計書と契約書に記載します。RPO・RTOや問い合わせ窓口、制度改定時の期限も、同じ書類に入れておきます。

▶ 詳細はこちら:電力小売管理システム開発の進め方

ポイント

事業条件やデータの正を先に決め、料金計算や連携を早めに確かめているかが判断の目安になります。前提が曖昧なままでは、費用と納期が膨らみやすくなります。

電力小売管理システムの費用相場と5年TCO

電力CISは公開価格が少なく、費用は需要家数や低圧・高圧の比率、料金メニューによって変わります。要件定義や連携の難易度、移行、カスタマイズ、セキュリティの要件によっても、費用は上下します。

ここに示す金額と期間は、2025〜2026年時点で公開されている提供形態と導入期間、一般的な業務システム開発の工数をもとにした編集部の概算です。実際の金額は、個別の見積で確認してください。

方式別の初期費用・期間の目安

標準型から個別開発まで、方式ごとの初期費用、月額費用、導入期間を比べます。要件定義や連携の難易度によって費用は上下するため、ここに示す数字は方式どうしを比べるための目安として読んでください。

  • 標準SaaS・クラウド:初期0〜500万円、月額10〜150万円、導入期間3〜6か月程度が目安。
  • 連携や軽微なカスタムを追加:初期500〜2,000万円、月額30〜200万円、期間6〜12か月程度。
  • 大規模パッケージCIS:初期2,000万円〜1億円、年額の保守・利用費は数百万円〜数千万円程度、期間12〜36か月が目安。
  • フルスクラッチ:初期3,000万円〜数億円、18〜36か月以上となる可能性。

「連携や軽微なカスタムを追加」の数字は、クラウドに決済やCRM、顧客ポータルを加えたり、既存基幹との連携や軽微なカスタムを加えたりする場合の目安です。月額は需要家数や処理量に連動することがあるため、最大利用時の料金も確認しておきます。

見積に含めるべきコスト項目

見積は、要件定義・設計・開発の費用を分けて示してもらいます。そのほかの費用は、稼働までと稼働後に分けて確認します。

  • API・ファイル連携:認証や再送、障害時の復旧にかかる設計と開発の費用を分けて示してもらう。
  • データ整備・移行:名寄せや照合、サンプル移行とリハーサルにかかる費用を見る。
  • 受入テスト・並行稼働・教育:業務テストや切替判定、社内の教育にかかる費用を確認する。
  • 監視・障害対応・制度改定:稼働後の監視、バックアップ、障害対応、制度改定にかかる費用を分けて見る。

追加の料金メニューや請求書の帳票変更、決済手段、代理店機能の追加費用も、見積の中で確かめます。

5年TCOでの比較

5年TCOの費目、需要家数の推移、変動シナリオを、方式ごとにそろえて比べます。

  • 費目:初期費用、60か月分の利用・保守、クラウド・通信、制度改定と追加開発、人件費、移行・障害対応。
  • 費用変動:需要家が増えて従量課金が大きくなると、2年目以降に他方式を上回ることがあります。一方、独自改修を長く使う場合は、総額を抑えられることもあります。
  • 需要予測:開始時と1年後、3年後、5年後の需要家数と低圧・高圧比率、請求件数、メニュー数、連携数を変数にする。
  • シナリオ:計画未達・急増や、制度改定による追加テストも比較し、料金体系のリスクを見る。

方式ごとに費目をそろえることで、初期費用だけでは見えない長期の負担も比べられます。

▶ 詳細はこちら:電力小売管理システム開発の見積相場・費用

ポイント

費用は方式や需要家数、連携や移行の範囲で変わるため、初期費用だけでなく5年分のTCOで方式どうしを比べます。見積は、稼働までと稼働後の費用を分けてもらうと、比べやすくなります。

電力小売管理システムの開発会社・サービスの選び方

候補は、知名度や初期費用に加えて、電力小売の業務・制度・運用への理解で比べます。実績は、小売CISの処理範囲や低圧・高圧の扱い、需要家規模を確かめます。移行や稼働後の支援も、あわせて確認します。

業務単位での電力小売の実績確認

実績は業務ごとに分けて確かめます。申込やスイッチング、使用量・確定値は、どこまで実績があるかを見ます。

  • 料金計算:制度や料金メニューに沿った計算を扱った実績があるか。
  • 請求・収納:請求書や口座振替、全銀データを扱った実績があるか。
  • 未収:未収の扱いや再請求まで含めた実績があるか。
  • 代理店:代理店からの申込を扱った実績があるか。
  • 顧客ポータル:需要家向けの画面を提供した実績があるか。

制度改定時の料金計算や帳票更新、障害やデータ補正の対応手順を聞くと、稼働後の対応力を判断できます。

標準機能と追加開発の境界

候補を比べる際は、標準機能と追加開発の境界を次の項目で確かめます。

  • 機能の境界:標準、設定、追加開発が必要な機能を分ける。
  • Fit to Standard:標準に合わせる業務は合わせ、料金メニューや顧客体験など競争優位に直結する部分だけをAPIなどで拡張する。
  • API連携:認証やレート制限、データ形式、再送の仕組み、エラーコード、テスト環境、更新通知を確認する。
  • ファイル連携:受け渡し時刻、再処理方法、暗号化、保存期間を確かめる。
  • 契約終了時:データの返却形式を確認しておく。将来の乗り換えリスクに関わる点です。

拡張を競争優位に直結する部分に絞るこの考え方は、納期や制度改定への対応に有効です。

運用体制と契約条件の比較

運用支援と契約条件、実際の操作の確認を、同じ視点で比べます。

  • 支援体制:問い合わせや料金調査、データ補正、監視、脆弱性対応、制度改定、請求締め日の支援範囲。
  • 比較軸:機能、費用(初期・月額・5年TCO)、連携と移行、セキュリティや実績、サポート、終了時のデータ返却。
  • 実地確認:提案書だけでなく、料金計算、障害時の操作、データ出力、権限設定をデモや検証環境で確かめる。

24時間の監視が必要か、営業日の対応で足りるかを、自社の業務への影響に合わせて決めます。緊急時の連絡先と復旧目標も、同じ考え方で定めておきます。

▶ 詳細はこちら:電力小売管理システム開発でおすすめの開発会社6選と選び方

ポイント

開発会社は、電力小売の業務や制度への理解、低圧・高圧の扱い、需要家規模に近い実績で比べます。標準機能と追加開発の境界や、稼働後の支援範囲を文書と実地の両方で確かめます。

電力小売管理システムの発注・外注・委託方法

料金や顧客対応、収納ルール、制度上の責任は、自社が決めることとして明確にします。そのうえで、要件整理から運用までの委託範囲も定めます。

RFPに入れるべき前提情報

RFPには、事業規模や連携条件、非機能要件、受入基準を盛り込みます。

  • 事業・移行前提:開始時と3年後の需要家数や供給エリア、低圧・高圧比率、メニュー数や締め日、収納と代理店、既存システムと移行件数。
  • 外部連携:接続先や方式、データ項目、頻度、想定エラー、テスト環境を記載する。
  • 非機能要件:可用性や監視、性能やピーク時の計算時間、バックアップやRPO・RTO、権限やログ、暗号化や脆弱性、個人・決済情報。
  • 受入基準:料金計算や請求額、入金消込、異常値、連携停止、復旧の合格条件を明記する。

前提がそろえば、提案の内容と見積の条件を同じ土台で比べられます。

請負・準委任・SaaS利用の使い分け

要件と成果物が固まった開発には請負が、要件整理や伴走支援のように変更が多い部分には準委任が適する場合があります。

SaaSでは、利用規約やサービスレベル、保管場所、障害通知、バックアップのほか、料金改定や終了時のデータ返却を確認します。企画・開発・運用の性質に応じて、契約を分ける方法もあります。

責任分界・再委託・データ所有権の取り決め

契約では、障害対応と情報管理の担当を決め、終了時のデータの扱いも定めておきます。

  • 運用責任:障害調査、再処理、データ補正、制度改定、セキュリティ事故、再委託先管理の担当を定める。
  • 情報管理:個人・決済情報の権限、ログ、持ち出し、削除、監査、事故報告期限を確認する。
  • 再委託:多階層の委託では、先の委託先に変更があった際の通知と、その審査方法も決める。
  • 契約終了:顧客や契約、請求、入金、操作ログの返却形式、旧環境の削除時期、移行支援日数を合意する。

データの所有権と利用権は、契約を始めるときだけでなく、終えるときを基準に考えます。

▶ 詳細はこちら:電力小売管理システム開発の発注・外注・委託方法

2026年時点で押さえたい制度・セキュリティの最新動向

2025年3月末の小売電気事業者の登録数は761者です。また、2024年12月時点の新電力の販売電力量シェアは約17%です(出典: 経済産業省・資源エネルギー庁「エネルギー白書2025」)。

市場環境は変わり続けるため、導入時点で完成と考えず、料金メニューや販売チャネルの変更を短い期間で取り込める設計が重要です。

スイッチング・市場連携の仕様更新への備え

仕様改版の監視と、市場システムへの将来の対応は、分けて確認します。

  • スイッチング仕様:連携仕様やAPIテスト資料の改版に備えておく。
  • 改版の運用:RFPで仕様参照・改版監視の担当者を定め、テスト環境で再検証する手順も決める。
  • 需給調整市場:市場システムの改修動向を把握する。
  • 将来の連携:需給管理や分散型リソースを扱う可能性があれば、CIS外も含めて初期に責任分界を確かめる。

設計書や取扱マニュアルは2025年10月に改版されました(出典: 電力広域的運営推進機関)。API連携テスト資料も更新されています(出典: 電力広域的運営推進機関「スイッチング支援システムとのシステム連携に関する規格等」)。

2026年度に向けて、需給調整市場システムの改修が予定されています(出典: 電力広域的運営推進機関)。

取引時間単位の30分化が示されています(出典: 電力広域的運営推進機関「需給調整市場ビジネスプロトコル標準規格」)。同規格は、機器個別計測への対応も示しています。

サプライチェーンと委託先の安全性確認

公表された手引きの内容と、委託やシステム運用で確かめるべきリスクを、あわせて見ておきます。

  • 手引き:電力制御システムのセキュリティ対策を確認する。
  • 委託先管理:制御系と直結しない小売管理システムでも、委託先・再委託先・クラウド基盤を確かめる。
  • 対象リスク:分散型リソースやデマンドレスポンスでは、IoT機器、クラウドゲートウェイ、在宅状況を推測できる情報にも注意する。
  • 運用対策:多要素認証や最小権限、通信・保存時の暗号化、監査ログ、脆弱性情報の受領、パッチや事故報告を要件化する。

資源エネルギー庁は2025年6月に電力制御システムの対策を公表しました(出典: 経済産業省・資源エネルギー庁、2025年6月3日)。この手引きは、リスク管理や仕様確認、機器管理などを扱っています。

電力小売管理システム開発で起きやすい失敗と対策

制度・データ・運用の境界が曖昧なまま進めると、失敗が起きやすくなります。何を作るかに加えて、正とするデータや例外処理の担当、制度改定の受け入れ方も決めておきます。

初期費用だけを見た判断

初期費用が低くても、後から需要家の増加に伴う従量課金や、料金メニュー、API、移行、制度改定、運用代行の費用がかかる場合があります。

方式ごとに初期費用、月額、従量課金、追加開発、保守、5年TCOを分けて、需要家数の複数シナリオで比べます。

移行の本番直前までの後回し

契約・請求履歴には、表記の揺れや住所・名義変更、欠損、旧料金メニューなどの例外があります。移行を後回しにすると、新しいデータモデルに収まらない情報が後から見つかり、切替日や請求に影響が出ます。

サンプル移行と全件移行、リハーサルを分けて行い、件数・金額・残高・契約状態の照合結果を記録します。

稼働後の責任分界が決まらないこと

料金計算や連携、決済、クラウドのどこに原因があるかを切り分けられないと、復旧が遅れます。そのため、監視項目やログ保管、再処理権限、一次窓口、エスカレーションの手順、復旧目標を決め、訓練で確かめておきます。

制度改定には、情報の受領から影響調査、見積、テスト、リリース、請求後の検証まで、それぞれ期限と担当を決めておきます。

料金単価や賦課金が変わるときは、過去月の再計算と再請求の扱いも、事前に確認しておきます。

ポイント

制度・データ・運用の境界が曖昧なまま進めていないかが、失敗を防ぐ目安になります。初期費用は5年TCOで、移行は照合結果で、稼働後は責任分界の決まり具合で判断します。

よくある質問(FAQ)

導入の判断は、需要家数や料金メニュー、既存システムの状態によって変わります。

電力小売管理システムはCISだけ導入すれば十分ですか?

需給管理や請求・収納、顧客ポータルのほか、会計、問い合わせ、制度連携を、別システムや委託でどこまで担うかによります。

販売開始までの業務フローを確認し、CIS外の機能と責任分界を一覧にしておきます。

導入費用と開発期間はどのくらいですか?

標準SaaS・クラウドの目安は、初期0〜500万円、導入期間3〜6か月です。連携や移行を含む場合は、500〜2,000万円、6〜12か月となることがあります。

大規模パッケージやスクラッチでは、2,000万円〜数億円、12〜36か月以上となる可能性があります。いずれも概算です。

需要家数や料金メニュー、連携、移行対象をそろえて、複数の見積を比べます。

30分値や確定使用量は必ず管理する必要がありますか?

契約の種類や目的によって異なりますが、高圧契約の照会や請求、需要予測、省エネ支援では、30分値と確定使用量が欠かせません。

欠損や異常、再受信、確定状態を管理し、請求に使ったデータを追跡できるようにします。

既存の契約・請求データは安全に移行できますか?

既存の契約・請求データは移行できますが、データの品質と名寄せのルールは、早期に確認が必要です。移行の対象には、顧客や契約、供給地点も含まれます。

  • メーター:供給地点ごとのメーターの情報を、契約と結びつけて移行する。
  • 請求:過去の請求額と請求の状態を、新旧で照合できる形にする。
  • 入金:入金の記録と残高を移行し、消込の結果を照合する。
  • 履歴:契約の切替や名義変更の履歴が途切れないように移行する。

サンプル移行とリハーサルを行い、件数・金額・残高・契約状態を新旧で照合します。並行稼働の後には、切り替えの条件を満たしたかを確かめます。

セキュリティ要件はどこまで確認すべきですか?

個人・決済・使用量・契約の情報を扱うため、権限や認証、暗号化を確かめます。

  • 監査ログ:操作の記録を残し、後から追えるかを確認する。
  • 脆弱性:脆弱性情報の受領と、パッチの適用手順を確かめる。
  • バックアップ:保存と復旧の手順、RPO・RTOの目標を確かめる。
  • 障害連絡と復旧:障害時の連絡先と、復旧までの対応手順を決めておく。

委託先や再委託先、クラウド基盤の保管・処理場所、アクセス管理、事故報告期限も、契約に定めます。

まとめ

電力小売管理システムは、顧客・契約・使用量・料金・請求・収納を中心に、スイッチングや送配電、決済、会計、需給管理などをつなぐ仕組みです。

標準SaaS・クラウド、パッケージ、周辺開発、スクラッチの4つは、需要家数や料金、制度連携といった観点で比べます。移行や運用、セキュリティ、5年TCOも、比べる観点に入れます。

検討の際は、事業モデルや業務フロー、料金計算を固めたうえで、RFPにまとめます。

  • 連携:接続先や方式、想定エラー、テスト環境を記載する。
  • 移行:件数・金額・残高・契約状態の照合で、合格条件を決める。
  • 非機能要件:可用性や監視、バックアップ、権限、暗号化の条件を記載する。
  • 受入条件:料金計算や請求額、入金消込の合格条件を明記する。

標準機能と追加開発、障害時の責任、制度改定、契約終了時のデータ返却を確認すると、導入後の追加費用や運用の負担を抑えやすくなります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。