紙の押印と郵送を電子署名に置き換える電子契約システムは、導入形態によって開発期間が大きく変わります。SaaSは最短即日〜数週間、パッケージは数ヶ月〜半年、フルスクラッチは半年〜数年が目安です。
形態の選定、署名方式と法要件の整理、取引先との合意形成の順に進めると、納期を無理なく組めます。
▼全体ガイドの記事
・電子契約システム開発の完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
電子契約システム開発の開発期間の全体像

電子契約システムの期間は、導入形態、署名方式、取引先対応によって変わります。クラウドサインや電子印鑑GMOサインなどのSaaSをそのまま使う場合は、最短即日〜数週間で始められます。
一方、自社サーバーにパッケージを構築する場合は、数ヶ月〜半年かかります。独自の締結フローや高度なセキュリティ要件をゼロから開発する場合は、半年〜数年が見込まれます。
電子契約システムは、電子署名、改ざんを証明するタイムスタンプ、なりすましを防ぐ本人確認、署名依頼から締結までのワークフローで構成されます。なお、SaaSではこれらが標準で搭載されています。
計画の第一歩は、自社が目指す導入形態を見極めることです。さらに、現実的な計画を立てるには、開発そのものに加えて、社内承認フローの調整と取引先との合意形成にかかる時間も見込んでおく必要があります。
開発期間に幅が出る理由
期間に幅が出るのは、機能の実装だけでなく、取引先が締結方式を受け入れるかどうかが大きく関わるためです。社内で完結する契約書の保管・検索とは違い、電子契約では相手方との合意が欠かせません。
- 方式への理解:電子署名の法的な仕組みを、関係者に説明する工数。
- 相手方の受容:取引先の規定や不安に応じて、合意を得る作業。
- 社外調整:技術工数とは別に確保する、理解と合意の時間。
取引先が社内規定で紙の押印を求めていたり、電子署名の有効性に不安を持っていたりする場合は、運用をすぐには始められません。
JIPDEC(日本情報経済社会推進協会)の調査では、電子契約導入後の最大課題は取引先への対応依頼時の説明・調整負荷で、その割合は37.3%でした。また、社外調整は社内完結の業務システムより長引きやすい傾向があります。
導入形態・規模別の開発期間の目安
期間と体制の目安は導入形態によって異なり、パッケージ導入では、自社サーバーや連携の有無も期間に関わります。
- SaaS:最短即日〜数週間で利用できます。
- パッケージ:数ヶ月〜半年。カスタマイズ費用は数十万円〜数百万円規模です。
- フルスクラッチ:半年〜数年。最小体制はディレクター1名、デザイナー1名、エンジニア2名程度です。
クラウドサインや電子印鑑GMOサインなどのSaaSは、ネット経由でベンダーの環境を使います。そのため、サーバー構築が不要で、初期費用0円で始められるのが一般的です。さらに、署名やタイムスタンプは標準機能として備わっており、アカウントを発行した当日に試験締結できる場合もあります。
社内では、電子化する契約類型、承認経路、送信権限を規定で決めておく必要があります。また、ベンダーの導入支援を使う準備にも、数週間かかることがあります。
パッケージ型は、ライセンスを購入したあとに自社サーバーやプライベートクラウドへ構築・設定します。高度な基幹連携を行う場合は、数十万円〜数百万円規模のカスタマイズ費用と期間が生じます。
フルスクラッチは、独自の締結フローや高度なセキュリティ要件に対応します。要件が複雑になるほど規模が大きくなり、署名方式や取引先調整、タイムスタンプ・本人確認の実装も期間の差につながります。
電子契約システム構築の工程別スケジュールと期間配分

中規模のカスタマイズ開発(パッケージのカスタマイズ、または部分的なフルスクラッチ)は、5工程を目安に計画します。工程別の期間配分を把握しておくと、見積もりが妥当かどうかを判断しやすくなります。
- 上流工程:要件定義、署名方式の選定、法要件の整理。
- 設計・実装:締結ワークフローと署名・タイムスタンプ・本人確認機能。
- 連携・展開:基幹・契約管理システム連携、テスト、取引先展開、運用準備。
要件定義、署名方式の選定、法要件の整理からなる上流工程と、取引先を含むテスト・展開には、とくに時間がかかります。この部分にどれだけ時間を確保できるかが、成否を分けます。また、締結の法的有効性や相手方の利用方法も、工程に含めて考えます。
要件定義・署名方式選定・法要件整理フェーズ(前半)
要件定義は通常2〜4週間です。対象契約、署名方式、満たすべき法要件を先に確定しておくと、後半の手戻りを防げます。
- 対象範囲:業務委託契約、売買契約、雇用契約など、電子化する契約類型を決めます。
- 署名方式:当事者型、立会人型、契約の重要度に応じた併用のいずれかを選びます。
- 法要件:電子署名法に基づく本人性・非改ざん性の担保と、電子帳簿保存法が求める真実性・可視性の確保。
当事者型は、本人が電子証明書で署名するため本人性の確実性が高い一方、相手方にも証明書の準備を求めます。立会人型は、事業者がメール認証などで署名を付与するため相手方の負担が軽く、現在の主流です。
一般的な業務システムと違い、電子契約では署名方式と法要件の整理を上流で先に行います。方式の選択によって後続の実装や取引先への説明が変わるため、最初に固めておく必要があります。
社内では、法務部門と準拠方針を決め、電子契約を正式な手段として扱えるよう、押印規程の改定にも着手します。
電子署名・タイムスタンプ実装〜締結ワークフロー〜テストフェーズ(後半)
方式と法要件が固まったら、署名機能、ワークフロー、テストの順に実装し、検証します。SaaSでは機能が標準で搭載されているため、実装工数はほとんど発生しません。
- 署名関連:方式に沿った署名と、締結後の改ざんを確認するタイムスタンプ。立会人型はメール認証、必要に応じてeKYC。
- 締結フロー:社内承認から相手方の署名、締結完了までを設計します。
- テスト・展開:契約書サンプルでテストし、取引先との試行後に対象を段階的に広げます。
フルスクラッチや高度なカスタマイズでは、認定タイムスタンプ局との連携や暗号化技術の実装に期間がかかります。また、三者間以上の署名順序制御、未署名者への自動リマインド、進捗のオンライン可視化も設計の対象です。
テストでは、電子署名とタイムスタンプが正しく付与されるか、法的に有効かを確かめます。さらに、取引先の操作や合意を確かめる工程を軽く見ると、本番後に停滞を招きます。そのため、この工程には十分な期間を確保します。
署名方式・本人確認・タイムスタンプ実装が納期に与える影響
電子署名の方式、本人確認の厳格さ、タイムスタンプによる非改ざん証明の水準が、法的な有効性と納期を左右します。
これらは、契約書を保管するシステムにはない、締結システム固有の要素です。そのため、作り込みの水準によってスケジュールは変わります。とくに期間に直結するのは、署名方式の選択と、本人確認・タイムスタンプの実装です。
当事者型・立会人型の選択と取引先調整というリードタイム
署名方式は開発期間に大きく影響します。立会人型は、証明書が不要で利用料の負担もないケースが多いため、合意を得やすく、導入から締結までを大幅に短縮できます。
- 立会人型:事業者が署名を付与し、固有URLへのアクセスなどで本人を確認する方式。
- 当事者型:本人がICチップ入りカード等の電子証明書を用意して署名する方式。
- 段階設計:早期稼働は立会人型で進め、重要な契約には当事者型を併用する進め方。
当事者型は本人性の確実性が高い一方で、相手方もシステムや証明書を用意する必要があり、費用がかかる場合があります。全面的に採用すると、取引先ごとに準備や社内承認を求めることになるため、合意に時間がかかります。
JIPDECの調査では、取引先への説明・調整の負荷が導入後の課題の37.3%を占めました。そのため、立会人型を基本に、重要な契約だけ当事者型を併用すると、期間短縮とリスク管理を両立しやすくなります。
タイムスタンプ・長期署名(LTV)・eKYC実装が期間に効く理由
タイムスタンプと本人確認の実装水準も、期間を左右します。タイムスタンプは文書の非改ざん性を証明し、長期署名(LTV)は電子証明書の有効期限を超えて証拠力を保ちます。
- SaaS:タイムスタンプやLTVが標準で搭載されていて、導入期間には影響しません。
- 独自実装:TSA連携やPAdES対応により、開発が数ヶ月単位で長引く場合があります。
- 本人確認:独自のeKYCを加える場合は、API調整やセキュリティ設計が必要になります。
電子証明書の有効期限は通常数年程度ですが、10年を標準で付与するシステムや、LTVで長期契約に対応するシステムもあります。
フルスクラッチで認定タイムスタンプ局(TSA)とAPI連携し、PAdESなどを独自に実装する場合は、暗号化や法要件への対応が必要になります。とくに、総務大臣等の認定を受けた局との連携や認証テストには、高度な技術が求められます。
簡易なメール認証であれば、実装や運用に時間はかかりません。一方で、身分証や顔写真で本人を確認するオンラインのAPIであるeKYCでは、外部ベンダーとの仕様調整、セキュリティテスト、個人情報の暗号化保管が必要です。
必要な証拠力と本人確認の精度を見極め、過剰な作り込みを避けることが、納期を守る助けになります。
導入形態による期間の違いと早期稼働の勘所
期間は、導入形態と、どの契約類型から使い始めるかによって変わります。押印や郵送をなくすことを優先するか、全社の契約を電子化して統制するかで、進め方を選ぶことになります。
SaaS型・パッケージ型・フルスクラッチの立ち上げ速度の違い
早く締結を始めたいならSaaS、セキュリティや連携の自由度を求めるならパッケージ、自社仕様を優先するならフルスクラッチが候補です。
- SaaS型:最短即日〜数週間で開始できます。
- パッケージ型:サーバー構築などを経て、数ヶ月〜半年かかります。
- フルスクラッチ:独自要件に対応できますが、半年〜数年を要します。
SaaSは、アカウントと送信者・承認者を設定すれば、専門のエンジニアがいなくても始められます。署名やタイムスタンプ、立会人型の本人確認は標準機能で、押印や郵送をなくして締結を早めたいというニーズに応えます。
パッケージ型は、セキュリティポリシーへの適合や既存連携の自由度が高まります。フルスクラッチは契約実務に合わせて作り込めます。ただし、法改正への対応も自社の負担になります。
まずSaaSの無料トライアルで運用イメージと取引先の反応を確かめ、標準機能では足りないと分かった段階で、カスタマイズやAPI連携へ広げる方法もあります。こうすると、初期導入を早めつつ、本格運用へ進められます。
対象契約類型を絞った段階的稼働によるクリティカルパスの短縮
全契約・全取引先の合意を待つと、取引先調整がクリティカルパスとなって全体が長引きます。そのため、電子化のハードルが低い契約から、段階的に始めるのが定石です。
- 先行する契約:主導しやすい業務委託や、頻度の高い注文書・発注請書。
- 社内で完結する契約:雇用契約や秘密保持契約。
- 並行交渉する契約:調整に時間がかかる大口取引先との基本契約。
この順で進めると、締結リードタイムの短縮効果を早く得ながら、時間のかかる取引先調整を後から進められます。
法務は規程の改定と説明資料、エンジニアはワークフローや基幹API連携を、並行して進めます。それぞれの作業結果を一つにまとめれば、社外調整と機能実装のクリティカルパスを無理なく短縮できます。
納期遅延の典型要因と対策

遅延要因を放置すると、期間や工程を把握していても計画は崩れます。主な原因は、取引先の合意、法要件と規程、連携や機能実装の見込み違いです。
取引先の合意形成不足による稼働遅延
システムが完成しても、取引先の合意がなければ締結は始められません。法的な有効性への確認、紙の契約を前提とした規定、操作方法への不安などで、停滞することがあります。
- 説明を前倒し:要件定義の段階で、取引先への説明や合意形成を予定に入れます。
- 資料を準備:電子署名法による真正な成立の推定と、相手方の操作手順をまとめておきます。
- 試行する:協力的な取引先数社と、パイロット締結を行います。
電子契約は双方向の手続きで、自社の準備だけでなく相手方の受容が運用開始を左右します。そのため、アカウント登録なしで署名できる立会人型を基本にすると、相手方の心理面・手続き面の負担を下げられます。また、試行で質問や操作のつまずきを確認しておけば、本格展開後の停滞を減らせます。
法要件・社内規程の整備遅れと連携の見込み違い
法要件や社内規程の整備を後回しにすると、稼働が遅れます。電子契約は電子署名法・電子帳簿保存法に基づくため、紙を前提とした規程のままでは契約を正式に扱えず、運用が止まります。
- 規程と保存要件:法務・経理と押印規程を改定し、保存方針を決めます。
- 連携調査:基幹システムや外部サービスのAPI仕様と制限を確認します。
- 調査工程を計上:実現性の確認を、着手前の見積もりに含めます。
電子帳簿保存法では、取引年月日・取引金額・取引先で検索できるように保存することが求められます。この要件を満たさない場合は、税務上の要件を欠くおそれがあります。
基幹連携やタイムスタンプ、本人確認の工数を軽く見積もると、遅延につながります。とくに会計・販売管理、認定タイムスタンプ局、eKYCは仕様の調整が多く、調査が不足していると、テスト後の手戻りを招きます。
まとめ
電子契約システムの期間は、SaaSで最短即日〜数週間、パッケージで数ヶ月〜半年、フルスクラッチで半年〜数年が目安です。
中規模開発では要件定義から始め、署名機能の実装、テスト・展開へと工程を順に組みます。
納期を左右するのは、署名方式の選択、取引先の合意、法要件と社内規程の整備です。また、立会人型を基本にする方法や、電子化しやすい契約から段階的に稼働させる方法もあります。
法務・経理と保存要件を早めに固めることも、納期の設定とリスク管理に役立ちます。なお、締結した契約書は、そのあとに契約管理システムへ引き渡し、保管や期限管理を行うのが一般的です。
具体的なスケジュールを相談する際は、契約類型、取引先の状況、求める証拠力を、複数の開発会社に伝えて見積もりを取ります。
▼全体ガイドの記事
・電子契約システム開発の完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
