電子契約システム開発を発注・外注するには、発注前の準備、開発会社の選定、契約と要件定義の順に進めます。その後は、開発・テスト・リリースを経て、運用保守へと移ります。
- 発注前の目的・要件・スコープの整理
- 実績・開発体制・比較軸をもとにした外注先の選定
- 契約形態と要件定義の責任範囲の確認
- 開発・テスト・運用保守の流れと体制の明確化
▼全体ガイドの記事
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社内にエンジニアがいない場合はもちろん、IT部門があっても、電子契約の法的要件やセキュリティ基準を満たす開発は容易ではありません。そのため、外部への委託が現実的です。
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電子契約システム開発の外注・委託の全体像
電子契約システムの開発を外注・委託するには、まず全体像をつかんでおくことが大切です。電子署名法や電子帳簿保存法への対応、タイムスタンプ機能の実装、PKI(公開鍵基盤)を用いたセキュリティ設計など、専門的な技術知識が求められる分野です。そのため、多くの企業が外部の開発会社への委託を選びます。
外注の形態は大きく「受託開発型」と「ラボ型(エンジニア派遣)」に分かれます。最適な方式は、プロジェクトの性質や予算によって異なります。
外注・委託のメリットとデメリット
電子契約システムを外注する最大のメリットは、専門的な技術力とノウハウを即戦力として使える点です。たとえば、電子署名の実装には暗号化技術の深い知識が必要で、電子帳簿保存法の要件に沿ったシステム設計には法律の理解も求められます。専門性を持つエンジニアを社内で育てるには時間とコストがかかるため、外注なら経験豊富な開発会社のリソースを必要な時に使えます。
また、開発期間中だけリソースを確保できるため、固定費を抑えられる点も大きな利点です。一方で、社内にナレッジが蓄積されにくい点はデメリットとして挙げられます。
開発を完全に外部へ依存すると、運用後の仕様変更や機能追加のたびに再度外注が必要になり、コストと時間が継続してかかります。また、コミュニケーションコストが増え、認識のズレも生じやすくなります。外注によるプロジェクト失敗の多くは、この認識の齟齬が原因で、事前の要件定義と継続的なコミュニケーションが成否を左右します。
発注の主要な契約形態(請負契約・準委任契約)
電子契約システムの開発委託における契約形態は、主に「請負契約」と「準委任契約」の2種類があります。請負契約は、一定の成果物(完成したシステム)を完成させることを約束し、その対価として報酬を受け取る形態です。
成果物が完成しない場合は受注側が責任を負う(契約不適合責任)という明確な責任関係があるため、仕様が固まっている場合や納期が明確な場合に適しています。一方、準委任契約は、一定の業務を遂行すること自体を目的とした契約です。報酬は成果物の完成ではなく、業務の遂行に対して支払われます。
アジャイル開発やスプリントごとに要件を詰める開発スタイルとは相性が良く、仕様が変更になりやすい初期段階や要件が固まっていない段階では、準委任契約が使われることが多いです。実際の電子契約システム開発では、要件定義を準委任契約、本開発を請負契約とするなど、フェーズごとに契約形態を使い分けるケースも少なくありません。
電子契約システム開発の発注前準備
外注・発注を成功させるには、開発会社に問い合わせる前の準備段階が特に大切です。発注前に要件が曖昧なまま進めると、開発途中で仕様変更や認識の相違が頻発し、遅延や予算超過の原因になります。
電子契約システムは法的要件を満たしたうえで安全に動作する必要があるため、準備段階の詰めの甘さが、そのままトラブルにつながりやすい分野です。発注前に何を準備すべきか、順に見ていきます。
要件定義と目的・スコープの明確化
発注前に最初に行うべきことは、「何のためにシステムを開発するのか」という目的を明確にすることです。電子契約システムに求める機能は企業ごとに異なるため、既存の基幹システムとのAPI連携、特定業界に特化した電子署名要件、マルチテナント対応の要否を整理しておく必要があります。
また、対象とする契約の種類(売買契約、業務委託契約、雇用契約など)や、年間の契約件数・ユーザー数といった規模感も、事前に把握しておきます。機能要件だけでなく、非機能要件の整理も欠かせません。
具体的には、可用性(稼働率)やパフォーマンス要件(同時接続数や応答時間)を明確にします。さらに、セキュリティ要件(暗号化方式、アクセス制御、監査ログ)や法令対応要件(電子署名法・電子帳簿保存法・e-文書法)も押さえておきます。非機能要件は開発コストに大きく影響するため、「できれば対応してほしい」「必ず対応が必要」といった優先度をつけて整理することをお勧めします。
RFP(提案依頼書)の作成と活用方法
複数の開発会社から提案を受けて比較検討する際には、RFP(Request for Proposal:提案依頼書)の作成が有効です。RFPとは、発注者が開発会社に自社の要件や条件を伝え、具体的な提案を依頼するための文書です。RFPを作成すると、複数のベンダーに同じ条件で提案を依頼できるため、金額や技術アプローチ、開発体制などを公平に比べられます。
電子契約システム開発のRFPに記載すべき主な項目は、①プロジェクトの背景と目的、②開発対象の機能一覧(機能要件・非機能要件)、③既存システムとの連携要件です。ほかにも、④セキュリティ・法令対応の要件、⑤希望する開発スケジュール、⑥予算の目安または上限が挙げられます。さらに、⑦提案・見積の提出期限と評価方法、⑧契約形態の希望(請負/準委任)も記載します。
RFPの品質が提案の質に直結するため、できるだけ具体的かつ詳細に書くことが大切です。また、機密情報を含む場合は、NDA(秘密保持契約)を締結してからRFPを共有してください。
外注先・開発会社の選定方法

開発会社の選定は、プロジェクトの成否を左右する重要なステップのひとつです。電子契約システムは法的有効性やセキュリティが特に求められる分野のため、技術力だけでなく法令知識や業界実績も選定の基準になります。そのうえで、3〜5社程度に絞り込んでRFPを送付し、提案内容を比べるのが一般的です。
ベンダー選定の評価基準と比較ポイント
開発会社を評価する主な基準は、まず「電子契約・法的テクノロジー分野の開発実績」です。たとえば、電子署名システムや契約管理システムの開発経験がある会社は、技術面だけでなく法令面の要件理解も深く、リスクの少ない開発が期待できます。具体的には、過去の開発事例(ポートフォリオ)の公開有無や、類似業界での導入実績を確かめましょう。
次に大切なのが「技術スタックの適合性」です。電子契約システムに求められる技術要素(暗号化ライブラリの扱い、PKIの実装、タイムスタンプサービスとの連携など)は、問い合わせや提案ヒアリングの場で確認します。
また、「プロジェクト管理体制」の充実度も評価すべき点です。担当するプロジェクトマネージャーの経験年数や、アジャイル・ウォーターフォールいずれの開発手法が得意かも把握しておきましょう。さらに、「コミュニケーション体制」として、定例会議の頻度や進捗報告の方法、課題管理の仕組みも比較の観点になります。
実績と開発体制の確認方法
実績は、開発会社のWebサイトに掲載された事例だけでなく、ヒアリングや提案プレゼンテーションの場で具体的に質問して確かめることが大切です。質問例は、「電子契約システムや電子署名を用いたシステムの開発実績はあるか」「電子帳簿保存法や電子署名法に準拠したシステムの開発経験はあるか」「参照先企業を紹介してもらえるか(リファレンスチェック)」などです。
特にリファレンスチェックは、開発会社の本当の姿を知る有効な手段です。そのため、可能であれば積極的に依頼することをお勧めします。
また、開発体制の確認も欠かせません。プロジェクトを担当するエンジニアの人数や経験年数、主要な担当者の途中交代のリスクを、事前に確認しておきましょう。外注先によっては、受注後に別の会社へ再委託(二次委託)することがあるため、その範囲と管理体制を明確にするよう求め、契約書にも再委託の条項を盛り込むことが大切です。
電子契約システム開発の発注・委託の流れ

電子契約システム開発の発注・委託は、問い合わせから本リリースまで、複数のフェーズにわたって進みます。各フェーズで発注者が主体的に関わり、適切な意思決定を重ねることが、プロジェクトを成功させる鍵です。
問い合わせ〜提案評価フェーズ
まず、候補となる開発会社3〜5社にRFPを送付し、提案を依頼します。提案書の提出期限は2〜3週間程度に設定するのが一般的で、受領後は評価基準に基づいてスコアリングを行います。
評価基準には、技術的アプローチの妥当性や開発スケジュールの現実性、費用の妥当性などを設定しておきます。また、開発体制の充実度や過去実績の類似性なども、評価基準に含めます。
提案内容に疑問点があれば、プレゼンテーション(ヒアリング)の場を設けて質問します。その際、担当者の理解度や対応力も評価材料にします。この段階でNDA(秘密保持契約)を締結しておく必要があります。
契約締結と要件定義フェーズ
開発会社を決定したら、まず基本契約(秘密保持・著作権帰属・瑕疵担保など基本的な取り決め)と個別契約(各フェーズの業務内容・納期・金額)を締結します。電子契約システムの開発では、特に著作権の帰属先を明確にしておくことが大切です。開発会社が著作権を保持する形では、後から機能追加や改修を行う際に費用が発生するリスクがあります。
そのため、「発注者に著作権を帰属させる」か「ソースコードの開示を求める」といった条項を、契約に明記するよう交渉してください。契約締結後は要件定義フェーズに入り、発注者側と開発会社双方が参加するワークショップやヒアリングを通じて、機能や業務フローを詳細に整理します。
電子契約システムの場合は、契約書のテンプレート管理や署名フローの設定、承認ワークフローなど、機能ごとの業務上のユースケースを具体的に洗い出す作業が必要です。通知・リマインダー機能や証跡の保存と管理も、洗い出す対象になります。そのうえで、要件定義の成果物となる「要件定義書」を作り、双方が内容を確認・承認してから次のフェーズへ進みます。
開発・テスト・リリースフェーズ
設計・開発フェーズでは、開発会社がシステムアーキテクチャの設計、画面設計(UI/UX)、データベース設計を行います。一方で、発注者側もこの段階で定期的に進捗を確認し、画面デザインや業務フローのレビューを行います。電子契約システムではUIの使いやすさが現場への普及率に直結するため、実際に使う担当者が早い段階でプロトタイプを確認し、改善要望を伝えると効果的です。
テストフェーズでは、開発会社が行う単体テストや結合テストに加えて、発注者側によるユーザー受け入れテスト(UAT: User Acceptance Testing)も欠かせません。UATでは、実際の業務に沿ったシナリオでシステムを動かし、要件定義書に定めた機能が正しく実装されているかを検証します。
また、電子署名の法的有効性に関わるタイムスタンプ付与の動作確認や、異常系(ネットワーク遮断時の動作、期限切れ証明書の処理など)のテストも、必ず実施してください。テスト完了後はリリース計画を作成し、本番環境への移行とユーザー教育(マニュアル整備・研修実施)を経て、リリースとなります。
発注・委託で失敗しないための重要ポイント

電子契約システムの開発委託で失敗するケースには、共通したパターンがあります。「発注者側の関与不足による認識ズレ」「セキュリティ・法令要件の後からの追加」「運用保守体制の未検討」などが、代表的な失敗原因です。そのため、これらを事前に把握し、適切な対策を講じることで、プロジェクトの成功確率を大幅に高められます。
丸投げを避けた発注者の主体的な関与
外注に慣れていない企業の担当者が陥りやすい失敗として、開発会社に「丸投げ」してしまうケースがあります。開発の専門的な部分は外注先に任せるとしても、プロジェクトの方向性を決める意思決定や、業務要件の細部を詰める作業は、発注者側が主体的に担う必要があります。
具体的には、週次または隔週の定例会議への積極参加、進捗レポートの確認とフィードバック提供、仕様確定が必要な事項への迅速な意思決定などが求められます。開発会社任せにすると、完成したシステムが実際の業務フローと合わないという事態が頻発します。
また、発注者側では社内調整も重要な役割を担います。電子契約システムは法務・営業・総務・IT部門など複数の部署に影響するため、各部署の要件を取りまとめるプロジェクトオーナーを明確に決め、社内の意思決定をスムーズにしておくことが欠かせません。社内の意見が分散して一本化されないまま開発が進むと、後から「この部署の要件が考慮されていない」という問題が生じます。
セキュリティ・法的要件の事前確認
電子契約システムは法的効力を持つ文書を扱うため、セキュリティと法的有効性の確保が最重要課題です。そのため、発注の段階で、電子署名法・電子帳簿保存法・e-文書法への対応方針を、開発会社が明確に示せるか確認してください。具体的には、電子署名の種類(当事者型署名か立会人型署名か)や、タイムスタンプ連携の方式を確認事項に挙げておきます。
さらに、データの暗号化方式(TLS通信・保存データの暗号化)やアクセス制御・権限管理の設計方針も、発注時点で確認事項に含めます。また、個人情報保護法への対応も見落とせません。電子契約システムでは、署名者の氏名・メールアドレス・印影データなど多くの個人情報を扱います。
加えて、データの保存場所(国内サーバーか海外クラウドか)、保存期間と削除ポリシー、サードパーティへの提供の有無も、確認事項として契約書や仕様書に明記すべきです。近年では、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証取得企業や、SOC2レポートを保有する開発会社を選ぶことが、セキュリティ水準の担保に有効です。
運用保守体制の事前確認と契約への盛り込み
システム開発の発注で見落とされがちなのは、リリース後の運用保守体制の取り決めです。電子契約システムは一度稼働すると、法令改正への対応(電子帳簿保存法の改正など)や、利用者の増加に伴うスケーリング対応が必要になります。そのほかにも、セキュリティパッチの適用や障害発生時の対応など、継続的なメンテナンスも求められます。
開発契約と合わせて、リリース後の保守契約(SLA:サービスレベルアグリーメント)も事前に交渉・合意しておくことを強く推奨します。保守契約で確認したいのは、障害発生時の対応時間(応答時間・復旧時間の保証)や、法令改正への対応費用の取り決めです。
そのほか、機能追加時の見積もり基準や、定期バックアップと災害復旧(DR)計画の有無も確認します。特に電子帳簿保存法は、数年に一度改正が行われることがあり、その都度対応が必要になります。そのため、保守契約で改正対応費用の上限や対応期間を予め取り決めておくことで、将来的な追加コストのリスクを管理できます。
まとめ
電子契約システム開発の発注・外注・依頼・委託を成功させるには、まず発注前の準備(目的と要件の整理、RFPの作成)を丁寧に行う必要があります。そのうえで、実績のある開発会社を選び、プロジェクト全体を通じて発注者が主体的に関わることが欠かせません。
特に電子契約システムは法的有効性とセキュリティが重要な分野です。そのため、発注段階でこれらの要件を明確にし、開発会社がその対応能力を備えているかを確かめることが成功の鍵です。
ここまでの流れは、①外注・委託の全体像と契約形態の理解、②発注前の要件定義とRFP作成、③開発会社の評価基準と実績確認に大別できます。さらに、④発注から本番リリースまでの進め方、⑤失敗しないための丸投げ回避・セキュリティ確認・運用保守体制の整備を押さえることが大切です。
電子契約システムの開発は専門性が高い分野ですが、適切なパートナー企業を選び、発注者として主体的に関わることで、理想のシステムを実現できます。この記事を参考に、成功するシステム開発の第一歩を踏み出してください。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
