ファシリティマネジメントシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ファシリティマネジメントシステムの発注は、対象の整理、方式の選定、RFPによる比較、PoC、段階的な移行の順に進めると、現場に定着しやすくなります。

発注方式、要件、契約、費用、委託先、FM-BIMやIoTまで、発注の判断に必要な論点を取り上げます。

▼全体ガイドの記事
・ファシリティマネジメントシステム開発の完全ガイド

ファシリティマネジメントシステムの発注・外注で最初に決めること

発注の前にまず決めるのは、施設管理の課題、対象となる業務、そして利用者です。

製品名や開発言語は、発注の前には決めず、その後の比較で絞り込みます。

対象には、CAFM、IWMS、BMS・BEMS、FM-BIMなど複数の領域があります。

範囲が曖昧だと、会社ごとに見積の条件が異なるため、比較ができません。

ソフトウェアとISO 41001の役割の違い

同じ語で検索すると、施設情報を管理するソフトウェアと、FMサービスを継続的に改善する仕組みの両方が出てきます。

  • ソフトウェア:CAFMやIWMSが扱う、建物・部屋・設備の台帳、修繕、スペース、エネルギー、契約、工事の情報。
  • ISO 41001:2018:FM方針、責任、リスク、利害関係者の要求、KPI、記録、改善を管理する規格です。

ソフトウェアを導入しただけでは、ISO 41001の認証は取得できません。そのため、RFPではシステム導入と業務・マネジメント設計を分けて依頼します。

対象施設とKPIの絞り込み

全拠点の設備、座席、契約を一度に統合すると、データ移行と運用設計の負担が大きくなります。エネルギー、会計、IoTまで加えると、負担はさらに増えます。そこで、範囲と目標を絞ります。

  • KPIは2〜5個:点検漏れの削減、予算の平準化、Excelから共有データへの移行などから選びます。
  • 対象範囲:1拠点、主要設備、法定点検、修繕申請など、測定しやすい単位で区切ります。
  • 測定指標:点検期限超過件数、故障受付から完了までの時間、台帳登録率、予算差異、エネルギー使用量など。

測定しやすい単位で対象を絞っておくと、PoCから段階的な展開へ進めます。

ポイント

ソフトウェアかマネジメント規格かを切り分け、対象範囲とKPIを先に絞ってから発注先を比べます。製品名より、対象と目的が決まっているかを判断の基準にします。

発注形態の選び方(SaaS・パッケージ・受託開発・運用委託)

発注形態を選ぶ際に確認する標準化できる業務、独自要件、社内の運用担当者、データ所有権を4つのカードで示した図。
4つの軸を揃えると、見積条件を比較しやすくなります。

発注形態は、業務を標準化できるか、独自のルールが必要か、社内に運用担当者がいるかで決まります。

価格に加えて、データ所有権、API公開範囲、現場アプリを比べます。

導入支援、障害時の責任、解約時のデータ返却も確認します。

開発会社、製品ベンダー、SIerのほか、建設・BIM会社やFM-BPO会社もあり、担う役割はそれぞれ異なります。

同じ見積書を単純に横並びにするだけでは、その違いが見えにくくなります。

標準化できる業務に向くSaaSやパッケージ

業務の基本形を変えられる場合は、標準化できる業務と独自要件を分けて、適合度を確認します。

  • 標準業務:設備台帳、点検予定、写真報告、作業指示、修繕履歴は、SaaSやCAFMが候補になります。
  • 運用負担:短期間で始めやすく、クラウド基盤や定期アップデートを自社で持たずに済みます。
  • 独自要件:承認ルート、法定帳票、複雑なLCC、BMS・会計連携は、追加設定や開発になる場合があります。

デモでは機能の有無だけでなく、担当者がスマートフォンで設備を検索し、写真付きの異常報告を完了できるかを確かめます。

独自連携や複雑な運用の部分開発・スクラッチ

BMS・BEMSやERP・会計との接続、施設ごとの安全手順には、追加開発が必要になる場合があります。

連携先は、購買や入退室、CAD・GIS、BIM、IoTセンサーなど多岐にわたります。

開発の範囲と手段は、次のように分けて考えます。

  • 標準製品と追加開発:台帳・点検・ワークオーダーは標準製品を使い、独自の分析や連携だけを追加すると、保守の範囲を抑えやすくなります。
  • 開発手段の使い分け:パッケージへの追加開発、API連携、ローコード、スクラッチ開発は、組み合わせて使えます。
  • スクラッチの契約:5年後の担当者でも仕様が分かる文書と、ソースコードの扱いを契約に含めておきます。

運用委託とシステム導入の責任分界

運用委託を検討するなら、システム導入後の業務分担もあわせて整理します。

  • 委託範囲:点検計画、業者手配、修繕受付、データ更新までを委託する方式もあります。
  • メリットと注意点:人手不足や拠点ごとの運用差を解消しやすい反面、データ更新者が曖昧だと台帳が古くなります。
  • 依頼範囲:システム開発会社とFM-BPO会社で、依頼する範囲を分けます。
  • 責任分界表:設備マスタの更新責任、点検結果の承認、緊急連絡、再委託、KPI報告の頻度を書き込みます。

ポイント

業務を標準化できるならSaaSやパッケージを、独自の連携が多いなら部分開発やスクラッチを候補にします。運用担当者が社内にいない場合は、運用委託との責任分界を先に決めます。

ファシリティマネジメントシステムの発注・外注の進め方(6段階)

発注は、製品選定や契約より前に、現状の業務と利用者を整理するところから始まります。データや連携先、受入条件も、同じ段階で確認します。

提案と開発、移行と教育、稼働後の支援までを、ひとつの工程として設計します。工程は次の順で進めます。

  1. 現状調査
  2. 構想と対象範囲の決定
  3. RFP配布と提案比較
  4. 要件定義・設計
  5. 開発・移行・受入テスト
  6. 教育・段階稼働

現状調査での業務フローとデータ不備の洗い出し

調査では、管理場所と現場作業の流れを一緒に洗い出します。

  • 管理情報:建物、部屋、設備、什器、契約、点検周期、工事履歴、担当者、法定帳票。
  • データの不備:拠点ごとのExcel列名の違い、図面と台帳の設備番号の不一致、共有フォルダに残る写真を確認します。
  • 判断と作業:担当者の記憶で決まる優先順位と、現場の作業手順。

現場に同行して、設備の検索や点検、異常の登録を見ます。また、承認から業者依頼、完了記録までの流れも確認します。

RFPによる同一前提の提案・見積依頼

RFPは、完成した設計書ではなく、各社が同じ条件で提案するための依頼書です。そのため、前提をそろえて書く必要があります。

  • 対象と目的:背景、目的、対象拠点、利用者数、設備点数、現行業務。
  • 要件と条件:必須・希望機能、連携先、移行、セキュリティ、希望日程、予算の考え方を含めます。
  • 提案依頼:提出項目を指定し、受入テストに使える業務シナリオで要件を書きます。

例えば、設備IDから点検項目を表示し、写真と異常内容を登録して、承認後に作業依頼へ連携する流れを示します。

PoCと段階移行による現場定着とデータ品質の確認

本契約の前にPoCと段階移行を行い、現場での利用とデータ品質を確かめます。

  • PoC対象:1拠点または代表設備群を選び、画面の使いやすさと台帳の粒度を見ます。
  • 現場条件:QRコード、通信環境、写真容量、承認の滞留、既存システムとのID対応を検証します。
  • 移行と展開:現行設備、保証期限、直近の点検・修繕履歴を先に移し、過去の履歴は後から段階的に移す。

移行後は、件数の照合と不備一覧を成果物として定めます。さらに、現場での確認と修正期限も、その成果物に含めます。

並行して教育を進めながら、拠点を段階的に増やします。

ポイント

製品選定や契約の前に、現状の業務とデータを整理できているかを判断の目安にします。PoCで現場に使われるかを確かめてから、拠点を増やします。

RFPと要件整理の作り込み範囲

RFPに整理する機能要件、非機能要件、データモデルとAPI連携を3層に分けた図。
分類を分けると、機能以外の前提も見積条件に含められます。

発注側がすべての仕様を決めておく必要はありません。そのかわり、業務上譲れない条件と現場の制約は具体的にします。連携先、データ量、受入条件についても、書き出しておきます。

標準機能と追加開発の範囲を提案会社に分けて示してもらうと、見積根拠と将来の保守負担を確認できます。

施設・設備・作業をひとつの流れで書く機能要件

機能要件は、マスタ登録から点検・修繕、履歴の活用までの一連の業務で整理します。

  • 施設情報:建物・部屋・設備・什器のマスタと、図面やBIM属性との紐付け。
  • 保全業務:点検計画、作業指示、故障受付、写真、修繕見積、承認、業者管理、契約・SLAを含めます。
  • 計画と分析:長期修繕計画、LCC、予算、エネルギー、帳票、ダッシュボードを含めます。

紙で行っていた判断は、画面の入力項目とワークフローに置き換えます。そのうえで、検索から履歴集計までを業務シナリオとして書きます。

現場利用・監査・復旧まで含む非機能要件

現場利用と情報管理、復旧、契約終了時の扱いを、非機能要件に含めます。

  • 利用条件:利用者・同時利用数、拠点別権限、端末、オフライン入力、応答、画像容量、保持期間を定めます。
  • 安全と復旧:バックアップ、復旧目標、ログ、認証、SSO、多要素認証、暗号化、脆弱性、障害通知、保守時間。
  • データと権限:データ所在と返却形式を確認し、点検者、委託業者、入退室、工事履歴の権限を分けます。

誰がいつ何を変更したかを追える監査証跡は、事故対応と法定記録の確認に役立ちます。

データモデルとAPI連携の先行確認

連携設計の前にID体系を揃え、RFPで接続先と連携条件を明記します。

  • ID体系:建物、部屋、設備、作業、契約、業者、エネルギーの識別子を決めます。
  • 接続先:BMS・BEMS、ERP・会計、購買、入退室、BI、SSO、CAD・GIS、BIM、IoTセンサーを示します。
  • 連携条件:データの向き、更新頻度、再送、API仕様、CSV入出力、責任分界。

ID体系を決めないまま連携開発を始めると、設備が複数のIDで登録され、集計やアラートが壊れてしまいます。

BIMは3Dモデルの表示だけでなく、部屋・設備・仕様・保証などの属性を運用で再利用できるかが重要です。

契約形態の使い分け(準委任・請負・保守)

仕様は既存台帳や現場業務を調べてから固まるため、工程ごとに契約を使い分けます。

要件定義・現状調査は準委任、仕様確定後の開発・連携・移行は請負、稼働後は保守運用契約が現実的です。

契約名に加えて、成果物、検収、変更管理、責任範囲を条項で確認します。さらに、知的財産、再委託、障害対応、データ返却についても条項で確認します。

現状調査・RFP作成・PoCでの準委任契約

準委任契約は、専門家の知識や作業時間の提供を受ける形です。現状調査や業務ヒアリング、データの洗い出しに向いています。

RFP作成支援、製品選定、プロトタイプ検証にも使えます。標準機能と追加開発の境界を、発注側と受託側で決める段階です。

作業時間だけでなく、業務フローや要件一覧、データ定義を成果物にすると、引き継ぎやすくなります。課題管理表と比較評価書は、別の成果物として残します。

開発・連携・移行での請負契約と検収条件

請負契約では、成果物を完成させて、発注側が検収します。合意した仕様と受入条件を具体化します。

  • 成果物:画面、帳票、API、バッチ、権限、ログ、移行データ、テスト結果、マニュアルの一覧。
  • 受入条件:指定設備の点検項目を表示し、必須項目未入力では完了できない状態を定めます。
  • 変更管理:仕様変更の手順と追加費用の算定方法を契約前に合意します。

写真と異常区分の保存や、承認後に作業依頼を発行する条件まで定めておくと、検収時の解釈のずれが減ります。

保守運用契約の障害・改修・データ更新の範囲

保守運用契約では、日常対応、改修、データ更新、終了時の引き継ぎを定めます。

  • 障害・更新:問い合わせ、一次対応、復元、脆弱性修正、OS・ブラウザ更新、外部API変更を扱います。
  • 改修・受付:設備マスタ、帳票、法令・社内ルール変更の費用区分、受付時間、重大障害の連絡期限を決めます。
  • 継続と終了:復旧目標、再委託先、保守終了時の引き継ぎ。

SaaSの場合も、データの返却形式は契約書と利用規約で確認します。台帳や点検履歴、写真に加えて、工事履歴と監査ログも対象になります。

ポイント

仕様が固まっていない段階は準委任、仕様が決まった開発や移行は請負、稼働後は保守運用契約と、工程ごとに契約形態を分けます。どの契約でも、成果物、検収、データ返却を条項で確かめます。

ファシリティマネジメントシステムの費用相場とコスト内訳

小規模SaaSから大企業向けIWMS・スクラッチまで、4つの発注規模別に初期費用レンジを横棒で比較した図。
対象範囲が広がるにつれて初期費用の幅も大きくなります。

価格は、施設数、延床面積、設備点数、ユーザー数で変わります。さらに、BIM・CAD、センサー数、既存連携、移行データ量も影響します。

主要IWMSの公開価格は多くありません。そのため、リサーチノート、設備管理SaaSの公開価格、類似業務システムの相場から、2026年時点の推定レンジをまとめました。

この数字は、同じ条件で複数社に依頼する際の基準として使い、確定見積としては扱いません。

小規模SaaSから大規模IWMSまでの予算レンジ

施設数と連携範囲に応じて、費用と期間の推定レンジを分けます。

  • 小規模SaaS:初期0〜100万円、月額1万〜20万円程度、導入2週間〜3か月程度。
  • パッケージ・CAFM:初期100万〜500万円、月額5万〜30万円または年額契約、3〜6か月程度。
  • 中規模構築:初期500万〜1,500万円、月額10万〜50万円、6〜12か月程度。
  • 大企業向けIWMS・スクラッチ:初期1,500万〜4,000万円以上、9〜18か月以上の可能性。

小規模SaaSは1〜数拠点の台帳、点検、写真報告向けです。パッケージは、複数拠点の台帳、保全、修繕、帳票を扱います。

中規模構築は、BIM・CAD、会計・購買、BMS・API連携を含みます。大企業向けは、多数拠点やワークプレイス、LCCを含みます。IoTや細かな権限・監査も、その範囲に入ります。

金額は、FM固有の公開見積ではなく、設備・業務システムの公開価格と類似案件からの推定です。

2026年8月時点で確認した「設備管理の匠WEB版」では、月額9,900円(税別)が掲載されています(出典:株式会社エコニティ「設備管理の匠 価格」)。

ただし、これは設備管理に特化したサービスの一例です。複数拠点のFM全体やBIM、エネルギー、会計連携まで含む価格ではありません。

公開価格は、最小構成の下限を確かめる目安に使います。導入支援や移行費を含む総額は、個別見積で確認します。

初期費用の内訳:データ整備・移行・教育

初期費用は工程ごとに分け、作業量の根拠も確かめます。

  • 開発と移行:要件定義、設計、設定・開発、API、データ整備、図面・BIM、移行を分けます。
  • 導入支援:端末・QR、テスト、教育、マニュアル、プロジェクト管理を別項目にします。
  • 作業量の根拠:拠点・設備数、データ行数、図面枚数、連携本数、研修回数、移行期間。

設備ID整理や履歴の電子化、図面変換が別料金になっていると、初期開発費が安く見えても総額は増えます。センサー設置や現場教育が別料金の場合も、その分が総額に加わります。

5年間のTCOによるライセンス・保守・社内工数の比較

比較期間を揃え、初期費用以外の支出も含めて、TCO(総所有コスト)を試算します。

  • 利用費:月額利用料、クラウド基盤、端末、センサー、通信、API利用料を含めます。
  • 運用費:保守、データ更新、教育、社内運用担当者の工数。
  • 提示条件:TCO表は初期、毎月、年次、スポット、解約・移行費を分けてもらいます。

試算期間は3〜5年です。また、保守費は初期費用の年5〜15%程度、または年10〜20%程度と記載されることがあります。

ただし、保守費は契約範囲によって大きく変わるため、一般化はできません。同じ利用期間と利用者数をそろえて、各社を比べます。

委託先の選び方と見積比較の確認事項

委託先は、FM業務の理解、データ移行、現場アプリを同じ条件で評価します。連携、保守、導入後の定着も、同じ基準で見ます。価格の低さよりも、この評価を優先します。

専業パッケージ会社やIWMS製品会社、SIerのほか、建設・BIM会社やFM-BPO会社もあり、得意領域は異なります。

候補を3〜5社程度に絞ります。同じRFP、サンプルデータ、デモシナリオで確認すると、提案の差が見えます。

施設数・設備数・業界が近い導入実績の確認

企業名の数より、自社に近い業務をどこまで担当したかを確認します。

  • 施設規模:建物数、延床面積、設備点数、拠点の分散を比べます。
  • 業務と連携:点検業者数、BIM・BMS・会計連携、現場端末、移行件数を見ます。
  • 稼働後:保守期間や担当者交代後の運用を確認できる事例を選びます。

事例として、富国生命保険相互会社は200棟を超える建物を管理し、FM-Refineで竣工後60年までの長期修繕コストを試算しています(出典:株式会社FMシステム「富国生命保険相互会社様導入事例」)。

Excelからの移行についても、事例先へ質問します。

見積の比較:前提・工数・除外項目

見積は、要件定義から保守まで工程ごとに、同じ行で比べます。会社によって移行費の扱いが違うと、合計額だけでは判断できません。

ユーザー数、拠点数、設備点数、画像容量を前提として揃えます。API本数、履歴年数、研修回数、サポート時間に加え、税・クラウド費の扱いもそろえます。

見積が安い理由は、標準機能の活用なのか、テストや教育の省略なのか、将来の追加費用なのかを確認します。

評価表とリスク質問による担当者の力量の見極め

評価表で提案と体制を確認し、デモとリスク質問で担当者の力量を見ます。

  • 評価軸:業務適合性、移行、API、現場操作、セキュリティ、導入体制、保守、TCO、透明性を比べます。
  • デモと体制:点検完了、未対応要件の開示、責任者、教育担当、障害窓口を点数化します。
  • リスク確認:退職時の引き継ぎ、再委託、障害時の継続、データ返却、追加開発単価・期間を質問します。

ポイント

候補は3〜5社に絞り、同じRFPとデモシナリオで比べます。見積は合計額よりも、前提、工数、除外項目がそろっているかで判断します。

2026年の発注で重視したいFM-BIM・省エネ・IoTセキュリティ

施設情報だけでなく、建築・施工データを運用へ引き継ぎ、エネルギーや設備データの分析で現場判断を支援する発注が増えています。

AIやデジタルツインという言葉だけで機能を選ぶと、データ品質や担当者が不足します。そのため、使うデータと判断者を先に確認します。

誤検知が起きたときの対応や、運用で更新する項目も、発注の時点で決めておきます。

FM-BIMの運用属性と引き継ぎ方法

NTT DATAの2025年5月公開事例は、データセンターの構築から運用をデジタルでつなぎ、BIMによるFM業務変革を紹介しています(出典:NTT DATA「デジタルでつなぐデータセンター構築とFM業務」、2025年)。

竣工図や3Dモデルを保存するだけでなく、設備属性、点検項目、交換部品、保証期限、関連文書を運用システムで検索できる設計が必要です。

RFPには、竣工時の受領形式、属性の必須項目、モデル更新者、BIMと台帳のID対応、改修後の差分更新を含めます。

省エネ・衛生管理の記録と業務要件

国土交通省は、2025年4月以降に着工する原則すべての住宅・建築物に、省エネ基準への適合を義務付ける制度を案内しています(出典:国土交通省「建築基準法・建築物省エネ法」)。

法制度に関わる記録は、施設の用途に応じて運用要件へ落とし込みます。

  • 省エネ実績:電力、空調、照明、水、CO2を記録し、設備更新や運用改善の判断につなげます。
  • 衛生管理:建築物衛生法の対象施設では、環境衛生管理と記録を運用します。
  • 適用確認:システムは記録・期限管理を支援しますが法令適合は保証しません。専門家に適用法令を確認します。

BMS・IoT連携のセキュリティ(導入から廃棄まで)

センサーやBMSを接続する場合は、導入から廃棄までを管理対象にします。

  • 機器管理:脆弱性、ファームウェア更新、認証情報、通信暗号化、ネットワーク分離、ログを扱います。
  • RFP記載:機器一覧、接続先、保守責任、パッチ、事故連絡、バックアップ、再委託先を含めます。
  • 終了時:廃棄時の初期化と契約終了時のデータ・認証情報の扱いを定めます。

IPAの2025年9月公開「IIoT機器ライフサイクル管理構築手引き」は、全期間のリスク評価と関係部門の役割分担を整理しています(出典:IPA、2025年)。

ファシリティマネジメントシステムの発注・外注でよくある質問

費用や期間は要件によって変わるため、次の回答は一律の答えではなく、発注前に判断するための目安として読んでください。

ファシリティマネジメントシステムの開発費用はいくらですか?

小規模SaaSは初期費用0〜100万円、月額1万〜20万円程度が目安です。パッケージ導入は初期費用100万〜500万円程度です。

BIM・CAD、会計・購買、BMS・IoT連携を含む構築は500万〜1,500万円です。大企業向けIWMSやスクラッチは1,500万〜4,000万円以上となる可能性があります。

これは公開価格と類似システムの相場からの推定です。データ移行、教育、端末、センサー、保守を含むかどうかで変わります。

パッケージとスクラッチ開発はどちらを選ぶべきですか?

設備台帳、点検、修繕、写真報告など標準化しやすい業務は、SaaSやパッケージを優先すると、期間と保守負担を抑えやすくなります。

独自の安全手順、特殊帳票、複雑な連携が競争力や法令対応に直結する場合は、標準製品への部分開発やスクラッチを検討します。

全機能を作る前に、標準機能、設定、追加開発の順で適合度を確認します。

RFP作成から開発会社へ依頼してもよいですか?

依頼はできます。社内にFM業務とIT調達を整理できる人がいない場合は、第三者に支援を頼むと、提案比較の前提を揃えやすくなります。

支援範囲には、現状調査や業務フロー、要件一覧、候補会社の評価があります。一方で、優先順位、予算、法令対応、現場運用の最終責任は発注側に残ります。

成果物、守秘義務、候補会社との利益相反、作成後の選定支援範囲を、契約前に確認します。

導入にはどれくらいの期間がかかりますか?

設備台帳と点検に絞ったSaaSは2週間〜3か月程度、複数拠点のパッケージ導入は3〜6か月程度が目安です。

BIM・CAD・会計・BMS連携を含む構築は6〜12か月程度、大規模IWMSや多数拠点の移行は9〜18か月以上となる可能性があります。

要件定義、データ整備、現場教育、並行運用を予定に含めます。特に、リリース日だけを先に決めない点に注意します。

ファシリティマネジメントシステムの発注・外注まとめ

最初に、対象施設、課題、KPI、利用者、業務責任者を決めます。業務を標準化できる場合は、SaaSやパッケージが候補になります。

独自連携や特殊な要件には部分開発・スクラッチを、運用人材が不足する場合にはFM-BPOを組み合わせます。

RFPには、機能だけでなく、設備IDやデータ移行、BIM・BMS・会計連携を記載します。さらに、現場のオフライン利用、権限、監査ログも含めます。

バックアップと解約時のデータ返却も、RFPに含めます。見積は、初期費用だけでなく5年間の総額で比較します。

5年間の総額での見積比較

FM専用の公開価格が少ないため、費用は要件別レンジとして捉えます。

初期費用に、データクレンジングや図面・BIM整備、端末、センサーの費用を足します。さらに、教育、クラウド、保守、追加開発、社内工数も含めたTCOで比べます。

各社へ同じRFPとデモシナリオを渡し、含む項目と除外項目を確認します。工数や前提、追加費用、保守範囲も、同じ形式で比べます。

発注前の現場確認とRFP・責任分界表の作成

発注準備は、現場確認から試行までを段階的に進めます。

  • 現場整理:代表拠点に同行し、台帳・図面のサンプル、業務フロー、MUST・WANTを確認します。
  • PoCと契約:使いやすさとデータ品質を確かめ、要件定義・開発・移行・教育・保守を段階的に契約します。
  • 展開範囲:将来のBIM、エネルギー、IoT、AIを見据え、点検・修繕・台帳など測定しやすい業務から始めます。

▼全体ガイドの記事
・ファシリティマネジメントシステム開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。