GCP導入・構築の必要機能や標準機能の一覧について

GCP導入で必要になる機能は、役割ごとに分けて見ると、自社に必要な構成を判断できます。

GCPには数百を超えるサービスがあるため、名前を覚えるより各機能の役割を理解することが大切です。本記事はGCP導入・構築の完全ガイドの機能編として、各機能の中身を一段深く掘り下げます。

  • 可用性:自動スケーリングと冗長化による、安定したサービス提供
  • 実行環境:Cloud RunやCloud Functionsによる、サーバー管理の手間を減らした運用
  • データ活用:BigQueryやAI APIによる、分析と自動化
  • 継続運用:Cloud Buildによる、安全な変更の反映
  • 管理:監視とIAMによる、稼働状況の把握と権限の制御

▼全体ガイドの記事
・GCP導入・構築の完全ガイド

自動スケーリングと高可用性を支える機能

自動スケーリングと高可用性を支える4つの機能を、中央から放射状に示した図。
負荷への対応と障害への備えを、構成要素ごとに見渡せます。

GCPの基盤機能としてまず押さえたいのは、負荷に応じてリソースを自動で増減させる自動スケーリングと、障害が起きてもサービスを止めない高可用性です。オンプレミスでは、アクセスのピークに合わせて余裕を持った台数のサーバーを常に構えておく必要がありましたが、GCPでは需要に追従してリソースを自動で調整できます。そのため、過剰投資を避けつつサービス品質を保てる点が、クラウドの中核的な価値になっています。

マネージドインスタンスグループによる自動スケーリング

GCPで仮想サーバー(Compute Engine)を使う場合は、複数のインスタンスをまとめて管理するマネージドインスタンスグループで自動スケーリングを実現します。CPU使用率やリクエスト数といった指標に基づき、負荷が上がればインスタンスを自動で追加し、下がれば自動で減らします。平常時は最小限の台数で運用してコストを抑え、ピーク時には自動でスケールアウトして応答速度を維持できます。

スケーリングの条件はしきい値で柔軟に設計できるため、自社のトラフィック特性に合わせて調整できます。このスケーリング機能は、ロードバランサと組み合わせることで真価を発揮します。この組み合わせでは、複数のインスタンスに負荷を分散しながら、ヘルスチェックで異常なインスタンスを検知して自動で切り離し、新しいインスタンスを立ち上げます。

こうした仕組みにより、利用者から見れば、裏でインスタンスが入れ替わってもサービスは途切れません。発注側が要件定義の段階で、「平常時とピーク時のアクセス差はどの程度か」「どのくらいの応答速度を保証したいか」を明確にしておくと、スケーリングの設計指針が定まり、過不足のない構成にできます。

リージョン・ゾーン分散による高可用性

高可用性を実現する機能の核は、GCPの物理的に分離されたデータセンター群、すなわちリージョンとゾーンへの分散配置です。複数のゾーンにインスタンスやデータを分散させておけば、一つのゾーンで障害が起きても、別のゾーンで処理を継続できます。重要なシステムでは、さらに複数リージョンにまたがる構成にして、リージョン全体の障害にも耐えられるように設計します。

どこまで可用性を高めるかは、求めるサービスレベル(SLA)とコストのバランスで決まります。加えて、高可用性はサーバーだけでなく、データベースやストレージにも必要です。GCPのマネージドデータベースは、自動でレプリケーション(複製)やフェイルオーバー(障害時の自動切り替え)を備えています。

こうした機能により、自前で複雑な冗長構成を組まなくても、設定だけで高い可用性を確保できます。ただし、可用性の設計でよくある失敗は、Webサーバーだけ冗長化してデータベースが単一障害点になっているケースです。そのうえで、システム全体でどこが止まると業務が止まるのかを洗い出し、ボトルネックを残さない設計が、真の高可用性につながります。

ポイント

平常時とピーク時のアクセス差や求める応答速度を先に決めておくと、自動スケーリングと冗長化をどこまで組むかを判断できます。データベースを含めた可用性も、同じ基準で考えます。

サーバー管理を不要にするサーバーレス機能

サーバーレス機能が肩代わりするOSアップデート、スケーリング設定、障害時の復旧を示す図。
運用負荷を減らせる作業範囲がひと目で分かります。

GCPの大きな特徴は、サーバーの管理そのものを不要にするサーバーレス機能が充実していることです。Cloud RunやCloud Functionsを使えば、開発者はインフラの構築や運用を意識せず、アプリケーションのコードに集中できます。

サーバーのOSアップデートやスケーリングの設定、障害時の復旧といった運用作業をGCPが肩代わりします。そのため、少人数のチームでも本格的なサービスを運用できます。

Cloud Runとコンテナによる柔軟な実行環境

Cloud Runは、コンテナ化したアプリケーションをサーバーレスで動かせるGCPの代表的な機能です。コンテナという形式でアプリを包むことで、開発環境と本番環境の差異が小さく、特定のクラウドに縛られにくいポータビリティを備えています。リクエストが来たときだけ起動し、処理後はゼロまでスケールダウンするため、アクセスのない時間帯のコストが発生しません。

Cloud Runの利点は、サーバーレスの手軽さを保ったまま、アプリの実行環境を柔軟に選べる点にあります。具体的には次の2点です。

  • 環境の自由度:任意の言語やフレームワーク、ミドルウェアをコンテナに含められるため、サーバーレスの制約に縛られすぎず柔軟に動かせます。
  • 料金:GCPのサーバーレスは100万GB秒のコンピューティングが2.5ドルで、AWSの16.7ドルやAzureの16ドルより安く、大量の軽量処理で特に優位です。

一方で、より複雑なコンテナオーケストレーションが必要な場合は、Kubernetesベースのマネージドサービス(GKE)が選択肢になります。要件の複雑さに応じて、Cloud RunとGKEを使い分けるのが定石です。

Cloud Functionsによるイベント駆動の自動処理

Cloud Functionsは、特定のイベントをきっかけに小さな処理を自動で実行するサーバーレス機能です。ファイルのアップロードやデータベースへのレコード追加、HTTPリクエストといったイベントに反応して、あらかじめ書いておいた処理が走ります。サーバーレス機能は、大きなシステムを一度に作るのではなく、必要な処理を一つずつ積み上げていく現代的な開発スタイルを支えています。

GCPのサーバーレスは、API呼び出しが月200万回まで無料で、超過分は100万回あたり0.4ドルです。AWSやAzureより無料枠が広いのが特徴で、定型的な自動処理を小さく重ねていく用途なら、コストを抑えながら業務を効率化できます。

この機能が活きるのは、システム間の連携や、人手で行っていた定型作業の自動化です。たとえば、外部サービスからの通知を受けて社内システムに反映する、アップロードされた画像を自動でリサイズする、定期的にデータを集計してレポートを生成する、といった処理を、サーバーを立てずに実装できます。一つひとつは小さな機能でも、組み合わせれば業務全体の自動化につながります。

ポイント

サーバーレスは、運用に割ける人手が少ないチームほど効果を得やすい選択肢です。ただし、複雑なコンテナ制御が必要なら、Cloud RunとGKEを要件に応じて使い分けます。

データ分析とAIを担う標準機能

BigQueryを中央に、データ連携、テーブル設計、アクセス権限、可視化ツールを注釈線で示した図。
取り込みから可視化までの設計箇所を一つの図で追えます。

GCPが他のクラウドと比べて特に強みを持つのは、データ分析と機械学習の機能群です。Googleが自社の大規模サービスで培った技術を基盤にしており、大量データの高速処理やAIの活用に長けています。こうした機能群が充実していることが、データを価値に変えるための環境としてGCPを選ぶ企業が増えている理由です。

BigQueryによるサーバーレスなデータ分析

BigQueryは、サーバーを用意せずに大量データを高速に分析できるデータウェアハウス機能です。テラバイト級のデータに対しても、SQLでクエリを書くだけで数秒から数十秒で結果が返り、事前にサーバーのスペックを見積もって構築する手間がありません。社内に散在するデータを集約し、必要なときに必要な分析を行う基盤として、多くの企業で活用されています。

データの保存量と、クエリで処理したデータ量に応じた従量課金になっているため、使った分だけ支払う合理的なコスト構造です。BigQueryを活かすうえで重要なのは、データをどう取り込み、どう整理するかの設計です。各システムからのデータ連携の仕組み、テーブルの設計、アクセス権限の管理を適切に行うことで、分析基盤としての価値が高まります。

可視化ツールと組み合わせれば、経営ダッシュボードや業務レポートの自動化も実現できます。データ基盤は、意思決定や業務改善に使われて初めて投資効果が出ます。そのため、構築そのものを目的にせず、その視点で機能を設計することが大切です。

すぐ使えるAI API機能

GCPは、自前で機械学習モデルを構築しなくても、すぐに使えるAI APIを多数提供しています。画像認識や音声認識、自然言語処理、翻訳などの機能を、APIを呼ぶだけで利用できます。専門のデータサイエンティストがいなくても、AIの恩恵を業務に取り込める点が、これらの標準機能の大きな価値です。

画像認識APIは月1,000ユニットまで無料、超過分は1,000ユニットあたり1.5ドルという料金で、まず無料枠で効果を確かめられます。AI APIは、定型業務の自動化と相性がよい機能です。書類の文字を読み取る、画像を分類する、問い合わせ文を解析するといった処理を、人手からAPIに置き換えることで、処理量が増えても人員を増やさずに対応できます。

AIには誤りも生じるため、結果を人がチェックする仕組みや、誤りが許容される範囲を見極めたうえで導入することが、効果と品質を両立させる鍵になります。特に重要なのは、AIに何を任せ、何を人が判断するかという業務設計です。

マネージドデータベースによる運用負荷の軽減

データを扱う基盤として欠かせないのが、Cloud SQLなどのマネージドデータベース機能です。データベースは、バックアップや冗長化、パッチ適用などの運用作業が多く、性能監視も欠かせず、自前で管理すると専門知識と工数が必要になります。マネージドデータベースなら、これらの運用作業をGCPが肩代わりするため、開発者はアプリケーションのロジックに集中できます。

GCPでは、OSSベースのデータベース(4コア/16GB相当)を従量で使う場合に月526ドルと、AWSの654ドルやAzureの794ドルに比べて抑えやすい水準が示されています。こうした料金を踏まえると、マネージドデータベースの設計では、性能要件とコストのバランスを見ることになります。その際は、負荷の性質に応じて料金の掛け方を変えるのが有効で、その使い分けは次の2つです。

  • 基幹データベース:常時高い性能が必要なため、確約利用割引付きの構成
  • 変動の大きいワークロード:従量課金での柔軟な運用

また、自動バックアップの保持期間や、障害時のフェイルオーバー構成をどこまで作り込むかは、データの重要度に応じて発注側と開発会社が決めます。データベースはシステムの中核であるため、ここの可用性と性能の設計が、システム全体の信頼性を左右します。

ポイント

BigQueryやAI APIは、データをどう取り込み、どう整理するか、AIに何を任せて人が何を判断するかを決めてから導入すると効果を出しやすくなります。

CI/CDと監視・権限管理の機能

システムを安定して開発・運用するには、CI/CD(継続的インテグレーション・継続的デリバリー)と、監視・権限管理の機能が欠かせません。アプリケーションは作って終わりではなく、安全に変更を反映し続け、稼働状況を把握し、適切な人だけがアクセスできる状態を保つ必要があります。これらの機能があってはじめて、システムを長期にわたって健全に運用できます。

Cloud BuildによるCI/CDの自動化

Cloud Buildは、ソースコードのビルド、テスト、デプロイを自動化するGCPのCI/CD機能です。開発者がコードを変更してリポジトリに反映すると、自動でテストが走り、問題がなければ本番環境へ届く、という一連の流れを自動化できます。これにより、手作業のデプロイで起きがちなミスを減らし、変更を素早く安全にリリースできるようになります。

DevOps系のサービスは月数万円程度から利用できますが、Cloud BuildはGCPに統合されているため、追加の連携設定を最小限に抑えられるのが利点です。CI/CDの機能を導入すると、効果はリリースの頻度と品質の両面に現れます。自動テストで品質を担保しながら、小さな変更を頻繁にリリースでき、不具合の早期発見や、市場の変化への素早い対応が可能になります。

逆に、CI/CDがないと、リリースのたびに手作業の確認とデプロイが必要になり、頻度が落ち、ミスのリスクも高まります。継続的に改善し続けるシステムにとって、CI/CDは欠かせない基盤機能です。

Cloud MonitoringとIAMによる監視・権限管理

GCPには監視機能として、Cloud MonitoringやCloud Loggingが標準で備わっており、CPU使用率やメモリ、リクエスト数、エラー率を可視化して、異常があればアラートで通知します。問題が起きてから気づくのではなく、兆候を早期に捉えて対処することで、サービスの安定稼働を保てます。

監視の設計では、次の3点を決めておくことが重要です。これが手薄だと、障害の検知が遅れます。

  • 指標:稼働状況を判断する値
  • しきい値:異常とみなす水準
  • 通知先:異常を知らせる担当者

セキュリティの土台となるのが、IAM(Identity and Access Management)による権限管理機能です。誰が、どのリソースに、何をできるかを細かく制御し、必要最小限の権限だけを付与する「最小権限の原則」を実現します。

クラウドのセキュリティ事故の多くは、過剰な権限設定や使われていないアカウントの放置から起きるため、IAMで権限を適切に設計・管理し、定期的に権限を見直すことが大切です。

ロール(役割)を単位に権限をまとめ、個人ではなくグループに紐づけて管理すると、人事異動や組織変更にも追従できます。監視と権限管理は地味ですが、システムの信頼性とセキュリティを支える不可欠な機能です。これらを構築の初期から設計に織り込めば、後から権限の整理に追われる事態を避けられます。

ポイント

CI/CDと監視・権限管理は、変更を安全に届け、障害に早く気づき、権限を必要最小限に保つための仕組みです。構築の初期から設計に含めておくと、後の整理の手間を減らせます。

まとめ

GCP導入・構築で押さえたい機能を整理すると、自動スケーリングと高可用性が、過剰投資を避けつつサービス品質を保つ要になります。Cloud RunやCloud Functionsのサーバーレス機能は、サーバー管理を不要にして、コストと運用負荷を下げます。BigQueryとAI APIは、データ分析と業務自動化という付加価値を生みます。

Cloud BuildのCI/CD、Cloud Monitoringの監視、IAMの権限管理は、システムを長期に安定して運用するための基盤を担います。こうした機能は単独ではなく、組み合わせることで効果が大きくなります。

機能を選ぶときに大切なのは、サービス名から入るのではなく、自社の要件を起点に「どの課題を、どの機能で解くか」を考えることです。求める可用性や想定するトラフィックといった条件に加え、運用体制も踏まえて必要な機能を過不足なく組み合わせれば、無駄のない構成が描けます。

riplaはフルスクラッチ受託と国内開発の立場から、要件に即した機能選定とGCP構築を一貫して支援します。各機能の使いどころを全体像とあわせて確認したい方は、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。