ホテル・宿泊業向けPMS開発の完全ガイド

ホテル・宿泊業向けPMSは、施設の規模や業態、現場の運用に合う方式と機能を選ぶことで、予約から精算までの運営を支える仕組みです。

PMSの種類と機能、導入の進め方、費用、開発会社の選び方を、順に確認していきます。

▼関連記事一覧
・ホテル・宿泊業向けPMS開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・ホテル・宿泊業向けPMS開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・ホテル・宿泊業向けPMS開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・ホテル・宿泊業向けPMS開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ホテル・宿泊業向けPMSの全体像

PMSを中心に、予約受付や在庫配信を担うシステムとの役割を示す図解。
予約受付と滞在後の管理で、システムの担当範囲が分かれます。

PMSはProperty Management Systemの略で、宿泊施設の予約、客室、宿泊者、会計情報を扱います。

観光庁の2025年速報では、日本人の国内延べ旅行者数は5億5,366万人でした(前年比2.5%増、出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査」、2026年公表)。

紙の台帳をデジタル化するだけでなく、予約から滞在、売上締めまでの情報をつないで、現場の判断を早める役割を持ちます。

PMSが持つべき正本データ

まず、PMSを正本とする情報と、周辺システムが担う情報を分けて考えます。どの情報を正とするかが決まっていると、画面ごとのずれを防げます。

  • PMSの正本データ:部屋割り、宿泊者情報、滞在状況、追加料金、精算結果を一か所にまとめます。
  • 周辺システムの役割:在庫調整、自社予約画面、飲食売上のPOSを、それぞれ別に担います。
  • 転記のリスク:別画面へ写し替えると、日付、人数、部屋タイプの入力を誤るおそれがあります。
  • データの流れ:予約受付、在庫配信、滞在と精算の確定場所を、先に決めておく必要があります。

予約管理システムやサイトコントローラーとの違い

各システムの役割を分けて捉えると、予約から精算までの情報の受け渡し方が見えてきます。

  • 予約管理システム:予約の受付や在庫管理が担当範囲です。
  • サイトコントローラー:複数のOTAへ料金と在庫を配信する役割です。
  • 自社予約エンジン:公式サイトで予約を受け付けます。
  • PMS:予約後のフロント、客室、宿泊者、精算、売上を管理します。
  • 一体型製品:複数の機能を一つにまとめた製品もあります。

一体型の製品でも境界が曖昧だと、データの重複や二重更新が起きます。そのため、予約変更、キャンセル、連泊、団体、ノーショー、返金について、確定先と連携時期を確認します。

ホテル・宿泊業向けPMSの種類と選び方

PMSの方式は、クラウド型、オンプレミス型、カスタマイズ型、スクラッチ型に分かれます。

近年は、本体をクラウドに置き、決済端末や鍵、館内機器だけを施設内で連携させるハイブリッド構成も、現実的な候補になっています。

クラウド型PMSが向く施設

クラウド型は、利点と契約前に確かめる条件を分けて見るのが基本です。

  • 利用方式:ネット経由で使えるため、施設側でサーバーを買い、更新する必要がありません。
  • 複数施設の管理:本部から各施設の状況を確認できます。
  • 向く施設:10室前後や無人化を目指す施設で、初期費用を抑えやすい方式です。
  • 段階追加:予約、決済、セルフチェックインを順に追加できます。
  • 契約前の確認:障害時の業務継続、データ出力、API追加費用が、確かめる項目です。

バックアップ、障害連絡、復旧目標、サポート時間も、契約前に具体化しておきます。

オンプレミス型・パッケージ型の確認事項

オンプレミス型とパッケージ型は、運用の負担と個別対応の範囲を比べて選びます。

  • オンプレミス型:施設や会社のサーバーに設置し、館内ネットワークで業務を続けられる方式です。
  • 個別環境への適合:独自帳票や既存設備に合わせられる場合があります。
  • 保守負担:サーバー更新、バックアップ、脆弱性対応、復旧、担当者の確保が必要です。
  • パッケージ型:標準機能を基盤に、料金体系や団体処理などを追加して使う方式です。
  • 個別改修:更新のたびに検証が要るため、運用の変更で代えられないかを先に検討する点です。

発注側は、改修を加える前に、その差分が本当に必要かを見極めます。

施設規模と業態で選ぶ構成

構成を選ぶ際は、客室数に加えて、施設の業態や独自業務も踏まえて判断します。

  • 小規模施設:10室前後の民宿や無人施設では、クラウドSaaSが候補です。
  • 中規模ホテル:20〜150室程度であれば、標準クラウド型を検討できます。
  • 旅館:食事、団体、複数部門の精算がある場合は、業務カスタマイズ型が合うことがあります。
  • チェーン:本部でマスタや顧客、売上、在庫を横断するデータモデルが欠かせません。
  • 独自モデル:会員制度や販売が競争力になる場合に限り、スクラッチ開発を検討する選択肢です。

小規模施設では、予約、在庫、宿泊者情報、決済、本人確認を少ない操作で扱えることが求められます。

ホテルでは、OTA、公式予約、清掃、会計との連携に加えて、複数の担当者が使う場面も確認します。

旅館では、部屋食や日帰りの業務も確認します。そこで、最初から全施設を一括で切り替えず、標準化する業務と施設ごとに残す業務を分けると、開発範囲を抑えられます。

ポイント

方式は、施設規模と業態、独自業務の多さで絞り込むと判断の軸がそろいます。独自の業務が多い場合は、個別対応の範囲も含めて比べるのが目安です。

ホテル・宿泊業向けPMSの主要機能と連携先

機能要件では、予約からチェックアウトまでの変更や例外を含めて処理できるかを確かめます。

連携がエラーになった場合に備えて、再送、重複防止、担当者への通知も設計します。

予約・在庫・客室管理で必要な機能

予約から客室の準備までを回すには、日々の登録や部屋割りの範囲に加えて、OTAとの連携と通信障害時の決め事も必要です。

  • 予約:登録、変更、キャンセル、連泊、部屋タイプ、プランを扱います。料金、人数、食事条件、団体、重複予約も対象です。
  • 客室:部屋割りとアサインに加え、清掃の状況も扱います。故障、販売停止、アップグレード、早着の確認により、フロントと清掃担当の連絡を短くできます。
  • OTA連携:在庫、料金、予約、キャンセルのうち、どれをリアルタイムで連携させるかを、先に決めておきます。
  • 通信が途切れたとき:在庫更新、二重登録の防止、エラー再処理のそれぞれの担当。

フロント・顧客・清掃の業務のつなぎ方

接客と客室準備を滞らせないよう、担当の間で共有する情報と、業務のつなぎ方を決めておきます。

  • フロント:チェックイン・アウト、本人確認、鍵、領収書、精算が対象です。
  • 顧客管理:宿泊履歴、要望、会員、法人・団体の情報を参照します。
  • 清掃:口頭や紙の依頼をPMS上に移し、優先度と期限を伝えて遅れを見つけます。

フロントでは、デポジットや返金、日帰り利用、未収金も扱います。

顧客情報は、担当者ごとに閲覧範囲を分け、必要以上に表示しないようにします。

清掃の状態は、チェックアウト済み、清掃中、点検待ち、販売可能などを、スマートフォンで共有します。

通信障害に備えて、紙の代替手順も残しておきます。

売上分析と省人化機能の必要範囲

経営状況の把握と省人化の範囲は、施設の運営方法に合わせて決めます。

  • 経営指標:日次締め、入金、部門別売上、稼働率を見ます。平均客室単価、RevPAR、予実も対象です。
  • 複数施設の集計:コードや料金区分をそろえ、本部で比べられる状態にします。
  • 機能例:オンラインチェックイン、セルフチェックイン、キャッシュレス決済、スマートロック。
  • 機能例:ダイナミックプライシング、チャットボット、多言語対応。

導入前に、マスタの命名規則と集計単位を決めておきます。

こうした機能は、省人化や顧客体験の改善に役立ちます。一方で、本人確認や決済の失敗、客室未準備、機器停止が起きたときに備え、有人対応へ引き継ぐ手順も評価しておく必要があります。

ホテル・宿泊業向けPMS開発・導入の進め方

現場観察から要件定義、実データ検証、移行後の改善へ進むPMS導入手順の図解。
試行と検証を挟むことで、全施設への展開前に課題を確かめられます。

PMSの導入は、契約や初期設定を終えたあとも、稼働後の運用や改善まで含めて一連の作業になります。

導入は繁忙期を避けて進め、現場の代表者が意思決定に加わる体制を整えます。

  1. 現場を観察し、業務要件と導入後に測るKPIを決めます。
  2. 外部連携、セキュリティ、障害時の要件を設計する段階です。
  3. 実データで検証し、小さな範囲から試験導入します。
  4. 移行、研修、並行稼働を経て展開し、効果を測ります。

作業は、前半では現場観察、要件定義、連携設計、移行の順に、後半ではテスト、研修、並行稼働、効果測定の順に進みます。

詳細はホテル・宿泊業向けPMS開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順をご覧ください。

現場観察と要件定義で決めること

予約担当、フロント、清掃、経理、本部の業務を、時間の流れに沿って見ていきます。そのうえで、転記、部屋割り、清掃指示、追加料金、締め、キャンセル料回収にかかる時間と、起きたミスを記録します。

チェックイン時間や手入力件数など、導入後に測るKPIを決めておきます。あわせて、施設、部屋タイプ、プラン、料金、税、食事のマスタを洗い出します。在庫、顧客、法人、団体、権限、帳票のマスタも整理の対象です。

変更、キャンセル、連泊、部屋移動、早着といった場面を、シナリオとして用意します。延泊、ノーショー、返金、団体精算も対象に含めます。例外が曖昧なままだと、導入後の追加開発につながります。

連携・セキュリティ・障害時の要件設計

外部連携と情報保護は、一緒に設計します。

障害時にも業務を続けられる条件を整えておきます。

  • 連携先:OTA、予約、決済、POS、会計が中心です。鍵、本人確認、清掃、連絡、BIも洗い出します。
  • 連携仕様:送受信項目、処理時期、認証方式、再送、重複防止を決めます。ログ保存期間や利用停止時の代替手順も含みます。
  • 情報保護:最小権限、二要素認証、暗号化、ログ、バックアップを設けます。カード番号は保存しません。

APIの有無に加えて、必要な項目を実際に送受信できるかを試します。カード決済では、決済側のトークンを参照します。退職者のアカウント停止も、情報保護の運用に含めます。

PCI DSSは、カード会員データを扱う場合の基準です。

2024年6月にv4.0.1が公開され、2025年にも関連資料が更新されています(出典:PCI Security Standards Council文書ライブラリ、2025年確認)。

実データのPoCとパイロット導入

デモ画面を見ただけでは、PMSが自施設に合うかを判断しにくいものです。

  • 実データ検証:匿名化した過去データを使い、自施設への適合性を試す段階です。
  • 小規模な試行:本番は1施設、1フロントなど、小さい範囲から始めます。
  • 段階展開:並行稼働で旧システムと照合し、課題を標準手順と教育資料に反映してから展開します。

検証データには、連泊、団体、外国人宿泊者、返金、部屋移動の場面を含めます。

登録、連携、締め処理、帳票出力にかかる時間と手順も測っておきます。

並行稼働では、予約数、残室、売上、顧客情報を旧システムと照合します。全施設を一斉に切り替えると、障害の原因と習熟不足を切り分けにくくなります。

データ移行と稼働後の改善設計

過去の予約、顧客、会員、法人の情報について、何年分を移すかを決めます。部屋、プラン、料金、未収金も、移す範囲を決めておきます。全データをそのまま移すと、重複や誤った住所が持ち込まれることがあります。

移行の前には、名寄せ、項目変換、不要データの整理を行い、件数と金額を突き合わせます。稼働後90日間は、週ごとに問い合わせとエラーを確かめます。

入力項目や権限、清掃の更新、二重計上で問題が出た場合は、機能を追加する前に運用から見直します。対応の優先度は、顧客、売上、法令・セキュリティへの影響、現場工数を基準に判断します。

ポイント

導入は、現場観察と要件定義で決めた内容を、試験導入と並行稼働で確かめてから全施設へ広げるのが目安です。稼働後の改善までを、一連の作業として計画します。

ホテル・宿泊業向けPMSの費用相場と内訳

PMSの費用を判断するには、初期費用や月額料金に加えて、総保有コストで考える必要があります。

総保有コストには、施設数、客室数、利用者数、連携先、端末を含めます。加えて、カスタマイズ、データ移行、研修、保守、決済手数料も対象に入ります。

以下は、2025〜2026年に確認できた公開価格と、施設系業務システムの個別開発相場をPMSに当てはめた目安です。数値は全国統計ではなく、見積額は要件によって変わります。

詳細はホテル・宿泊業向けPMS開発の見積相場や費用/コスト/値段についてをご覧ください。

導入パターン別の費用相場

方式ごとの費用と導入期間を並べて比べ、予算や導入計画を立てる材料にします。

  • 小規模クラウドPMS・SaaS:初期0万〜50万円、月額1万〜15万円、導入2週間〜3か月。
  • 標準クラウド型:20〜150室程度で初期50万〜300万円、月額5万〜30万円、導入2〜6か月。
  • カスタマイズ付きパッケージ:初期300万〜1,500万円、導入4〜12か月程度。
  • チェーン基幹・データ統合:初期1,000万〜3,000万円、導入9〜18か月程度。
  • スクラッチ開発:初期1,500万〜5,000万円以上、導入12〜24か月程度の場合があります。

複数施設の段階展開や既存基幹との統合があるほど、期間と費用は増えていきます。

初期費用・月額以外にかかる費用

継続利用や周辺作業にかかる費用も、見積書の項目ごとに確かめます。

  • 導入・運用作業:要件定義、初期設定、マスタ作成、データ移行、API連携、端末を分けて見積もります。現地設置、研修、テスト、並行稼働、保守、更新も含みます。
  • 機器・決済:自動チェックイン機や鍵の機器代、工事、通信、保守を見ます。決済端末、月額、手数料、返金、チャージバックも確認します。

公開例には、2025年10月から初期費用をなくし、3ライセンスで月額税抜9,000円とするクラウドPMSがあります(出典:料金改定の公開資料、2025年)。ただし、これは基本ライセンスの例で、API、端末、決済、移行、サポートは含みません。

別の資料では、セルフチェックイン機能の導入が30万円程度から、月額4万〜6万円程度の例もあります(出典:宿泊施設向けセルフチェックイン機能の公開資料、2023年)。

比べるときは、自施設の必要機能を加えた年間総額で見ます。

総保有コストの計算方法

月々の料金に加えて、導入後の利用規模と業務効果も含め、長期の負担を見積もります。

  • 5年間の費用:初期費用、月額利用料60か月分、保守、端末更新を合算します。連携費、決済費、移行費、研修費、社内の運用担当者工数も含めます。
  • 施設追加料金:月額がどう増えるかと、施設・利用者・帳票・APIの従量課金を見ます。
  • 効果の対象:人件費に加え、予約ミス、販売停止、空室を含めます。締め、問い合わせ、未収金も対象です。

導入前の月間作業時間とエラー件数を記録し、導入後90日、180日、1年で比較します。目標値は施設ごとに異なるため、一般的な削減率を実績として扱いません。

ポイント

費用は初期費用と月額だけで比べず、導入作業や機器、決済、5年間の総額まで含めて判断します。連携や移行が別料金の場合は、見積もりの総額が大きく変わることがあります。

ホテル・宿泊業向けPMSの開発会社・サービスの選び方

開発会社は、知名度や機能数よりも、自施設と同じ課題を解決した経験で比べます。その前に、標準機能で導入するか、個別開発するかを決めておくと、比べる軸がそろいます。

同規模・同業態の実績の確認方法

施設数だけでなく、客室数、業態、フロント人数、OTA数を見ます。団体・食事、セルフチェックイン、移行範囲も確認します。

公開事例では、導入前の課題、担当者の作業、導入後の変化、残った課題を聞きます。候補先には同じRFPを渡し、施設、客室、チャネル、連携先、利用者を伝えます。帳票、希望日、サポート時間、予算も同じ条件で示します。

デモでは自施設の予約シナリオを使い、通常処理に加えてキャンセル、返金、部屋移動、通信障害、機器停止を試します。

API・データ移行・データ返却の確認

APIの公開範囲、項目、リアルタイム性、制限を確かめます。追加料金、認証、障害時の再処理も見ておきます。変更、キャンセル、返金、顧客更新まで反映できるかも、あわせて見ます。

連携先の仕様が変わったときに誰が対応するかも、契約に記載します。顧客、予約、売上、帳票、操作ログを、どの形式でいつ返すかも確認します。

取り出せない、変換費用が高い、契約終了後すぐ削除される条件は、将来の選択肢を狭めます。そのため、サンプルで出力と取り込みを試しておきます。

サポート体制と契約条件の比較

夜間営業を支える対応範囲と、契約期間中および終了時の条件を見比べます。

  • 夜間・休日の支援:受付、緊急連絡、復旧目標、代替手順、現地対応の範囲が対象です。
  • 契約条件:最低期間、解約、料金改定、再委託を見ます。個人情報、監査、削除、責任の分け方も確認します。
  • 追加費用:教育、運用改善、施設・利用者の追加を、5年間の総額に含めて考えます。

24時間対応といっても、電話だけなのか、機器や回線、現地対応まで含むのかで範囲が異なります。サービスレベル合意書と障害連絡フローも確認します。

詳細はホテル・宿泊業向けPMS開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方、ホテル・宿泊業向けPMS開発の発注/外注/依頼/委託方法についてをご覧ください。

ポイント

開発会社は、自施設と同じ課題を解決した実績と、デモで自施設のシナリオを試せるかで比べます。標準機能で導入するか個別開発するかを先に決めると、比べる軸がそろいます。

PMSの法令・個人情報・セキュリティ対策

PMSには、氏名、住所、連絡先、国籍、旅券番号が集まります。予約履歴や決済情報も集まるため、権限、ログ、退職者のアクセスは要件定義の段階から設計します。

宿泊者名簿と外国人宿泊者情報の管理

宿泊者情報は、記載事項に加えて、保存期間や利用目的も含めて管理します。

  • 名簿項目:氏名、住所、連絡先を記載します。国内住所のない外国人は、国籍と旅券番号も対象です。
  • 本人確認:セルフ・遠隔確認は、営業形態や自治体基準に合わせて行い、失敗時は有人対応に切り替えます。
  • 利用目的:名簿をCRMとして無制限に使わない前提で、アクセス範囲を分けておきます。

名簿は電磁的に保存でき、施行規則では作成日から3年間保存するとされています(出典:厚生労働省「旅館業法施行規則」第4条の2、2026年確認)。そのうえで、必要項目、本人確認記録、閲覧権限、削除方針を設計します。

決済情報と個人情報を守る設計

決済情報と個人情報が通る範囲を把握して、漏えいを防ぐ運用を設計します。

  • カード情報:番号は保存せず、トークン化して、決済結果や下4桁だけを保持する形です。
  • 決済範囲:機器、予約エンジン、POS、PMSを図にし、PCI DSSの適用範囲を確かめます。
  • 個人情報・AI:権限、暗号化、ログ、復元、事故連絡の体制を整えます。生データは生成AIに入力しません。

個人情報では、脆弱性対応とバックアップも欠かせません。AI機能を使う場合は、入力の学習利用、外部送信、保存期間を確かめます。

PMS導入で起きやすい失敗と対策

機能一覧を見て選ぶと、清掃指示や締め処理が紙に残り、全体の工数が減らないことがあります。

  • 現場検証:実際に操作して、導入前後で短縮できた時間を測る方法です。
  • 連携・移行:サンプルデータで、税、料金、団体、返金、機器停止を試す形です。
  • 定着支援:施設ごとに教育担当を置き、質問を改善要望として記録します。

移行責任者、照合方法、切り戻し条件、障害時の代替運用は、契約前に決めておきます。

ポイント

PMSには個人情報と決済情報が集まるため、権限、ログ、退職者のアクセス停止を要件定義の段階から設計します。カード番号は保存せず、トークンで扱うのが基本です。

PMS導入後に測定するKPIと改善方法

PMS導入後の現場業務、セルフチェックイン、経営管理で確認する指標を並べた図解。
現場作業と経営指標を並べて、異なる変化を捉えます。

導入効果は、感覚だけでなく業務ごとの数字で測ります。そのため、導入前に基準値を取っておき、繁忙期と閑散期を分けて需要の変動と比べます。

現場業務で見るKPI

導入後の改善につなげるため、現場作業の時間や発生する問題を数値で追います。

  • 通常業務:チェックイン時間、予約の入力と変更、客室更新、清掃、日次締め、問い合わせです。
  • セルフチェックイン:利用率、確認失敗、有人引継ぎ、機器停止、再操作を見ます。

導入後90日間の目標例には、チェックイン時間の20%削減、手入力の半減、清掃状況を一覧で把握できること、締め作業の短縮、キャンセル料の回収漏れの削減があります。

これらは目標の例で、実績値ではありません。施設ごとに現状を測ったうえで、無理のない目標を設定します。

経営管理で見るKPI

施設間で比べられるよう定義をそろえたうえで、指標の変化が経営に与える影響を確かめます。

  • 経営指標:稼働率、平均客室単価、RevPAR、チャネル売上を見ます。キャンセル、追加売上、利益も対象です。
  • 集計定義:売上計上日、宿泊日、キャンセル日、税の定義を統一し、比較の誤りを防ぎます。
  • 月次確認:KPIを現場の記録と照合し、予約数と売上など複数の指標で判断する方法です。

ノーショー率、リピーター率、施設別利益も見ていきます。たとえば、予約数が増えても売上が伸びない場合は、複数の変化を組み合わせて読み取ります。PMSは、運用改善のデータ基盤としても使えます。

ホテル・宿泊業向けPMSに関するよくある質問

導入の検討では、費用、規模、連携、法令、使いやすさがよく話題になります。検討の初期によく出る疑問を、順に取り上げます。

小規模な民宿でもPMSを導入する価値はありますか?

客室が少なくても、予約チャネルが複数ある場合や、無人運営、夜間対応の削減、安全な宿泊者情報の管理が必要な場合は、効果が出やすいです。

二重入力が多い予約、在庫、本人確認、決済から、クラウド型で始めるのが一つの方法です。必要に応じて、清掃や鍵を追加します。

クラウドPMSとオンプレミスPMSはどちらが安いですか?

サーバーの初期費用や保守担当者の負担を含めると、クラウドは安く始めやすい傾向です。

月額、施設追加、連携、端末、決済、サポートの費用を5年間で計算します。そこに、通信障害対策や設備更新費も加えます。

ただし、独自業務や館内ネットワークの制約が大きい場合は、オンプレミスやハイブリッドが合うこともあります。

PMSは既製サービスとスクラッチ開発のどちらがよいですか?

標準業務を短期間で始めるなら、既製クラウドサービスやパッケージが候補です。

独自の料金、複数事業の精算、本部統合が競争力に直結し、標準機能では業務を変えられない場合は、スクラッチ開発を検討します。

既製品に不足する部分は、APIや追加開発で補えるかを先に確かめると、過剰な開発を防げます。

既存PMSからのデータ移行で注意することは何ですか?

移行では、移行項目と期間、重複、文字コードを整理します。日付と税、顧客の名寄せも整えたうえで、件数と金額を照合します。

元のシステムへ戻す条件、並行期間、予約受付を止める時間、障害連絡先を決めておきます。移行は、現場が新しいデータを確かめる受入テストとして進めます。

まとめ

ホテル向けPMSは、予約だけでなく、客室、宿泊者、フロント、清掃、決済、売上をつなぐ基幹システムです。規模や業態に合う構成を選び、周辺システムとの役割を分けて捉えることが出発点になります。

導入前に押さえるべきポイント

押さえておきたいのは、現場観察とKPI、正本データ、OTA・決済連携です。名簿・個人情報、障害時の手順、移行・並行稼働も欠かせません。

費用は月額だけでなく、初期設定、移行、連携、端末を含めて考えます。決済、保守、教育も加えた5年間の総額で比べます。

現場に定着するPMSの選び方

デモだけでなく、自施設の実データと例外処理を試して、現場で毎日使えるかを判断します。

チェックイン時間、予約入力、清掃連絡、締め、キャンセル料回収を測り、改善を続けます。PMSは、省人化に加えて、接客品質と経営判断を支える基盤にもなります。

▼関連記事一覧
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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。