ICTシステムの導入/開発事例や活用/成功事例について

ICTシステムの導入を検討するとき、もっとも参考になるのは、自社と似た規模・課題を抱えた企業が「どんな構成で、いくらかけて、何を得たのか」という具体的な事例です。ICT(情報通信技術)システムは、業務システムからクラウド基盤、API連携による業務自動化まで対象が広く、抽象的な説明だけでは自社にどう効くのかがイメージしづらい領域です。逆に言えば、移行前後でコストや工数がどう変わったのか、どこでつまずきどう乗り越えたのかという「生のBefore/After」を知ることで、自社の投資判断は一気に具体的になります。

本記事は、ICTシステムの導入・開発事例と活用・成功事例を「事例特化」で深掘りする記事です。オンプレミスからクラウドへ移行してインフラコストを圧縮した事例、サーバーレス化でアイドルコストをゼロに近づけた事例、API連携で部門間の二重入力を自動化した事例、そして外部委託からスキルを引き継いで内製化に踏み出した事例まで、実際の費用感や効果を数値とともに整理します。ICTシステム全体の進め方や費用の全体像をまだ把握していない方は、まずICTシステムの完全ガイドから読むと、本記事の事例がより立体的に理解できます。

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オンプレからクラウド移行でコストを圧縮した事例

オンプレからクラウドへICTシステムを移行しコストを圧縮した事例のイメージ

ICTシステム刷新でもっとも分かりやすい成果が出るのが、オンプレミス(自社所有のサーバー)からクラウドへの移行です。サーバーの購入・保守・データセンター費用といった固定費を、使った分だけ払う変動費へ置き換えることで、コスト構造そのものが変わります。ここでは、従業員規模ごとの移行コストの目安と、移行後にインフラ費が下がった事例を見ていきます。

従業員50〜100名規模の移行コストと内訳

従業員50〜100名のオンプレミス環境をクラウドへ移行する場合、設計・構築で100万〜400万円、これにデータ移行で20万〜80万円が加わり、トータルでは150万〜500万円前後が目安になります(出典:ripla)。この幅は、移行対象のシステム数、データ量、既存システムの作り込みの深さによって決まります。単純なファイルサーバーやメールなら下限に近づき、業務システムや基幹に近い構成ほど上限に振れます。

移行コストの大半は、実は機材ではなく人件費です。クラウド開発・構築の費用は、その約80%が人件費で占められます(出典:ripla)。つまりICTシステムの移行コストを正しく見積もるには、サーバー料金の比較よりも、設計・構築・移行作業にどれだけの人月がかかるかを読むことが重要になります。AWS認定を持つシニアアーキテクトの単価は月100万円を超えることもあり、誰がどの工程を担うかで総額は大きく変わります。

マネージドサービス活用でインフラ費を1/3に下げた事例

移行で効くのが、運用に手のかかる部分をクラウド事業者に任せる「マネージドサービス」の活用です。データベースやロードバランサー、監視といった機能を自前のサーバーで運用する代わりにマネージドサービスへ置き換えることで、運用工数とインフラ費の両方を圧縮できます。実際に、マネージドサービスを徹底活用してインフラコストを従来の約1/3まで削減した事例があります(出典:ripla)。サーバーの台数を減らし、運用担当者が手作業で行っていたバックアップやパッチ適用を事業者側に委ねた結果です。

移行後のインフラ月額は、規模によって小規模が数千円〜1万円、中規模が3万〜10万円、大規模エンタープライズで数十万〜100万円以上が目安です(出典:ripla)。オンプレミスのサーバー減価償却・電気代・保守契約と比べると、中規模でも月数万円台で収まるケースは珍しくありません。重要なのは、移行直後の構成をそのまま使い続けるのではなく、稼働状況を見ながらインスタンスサイズを最適化し続けることです。この「使いながら下げる」運用ができるかどうかで、移行効果は数年かけて大きく差が開きます。

サーバーレス化でアイドルコストをゼロに近づけた事例

サーバーレス化でICTシステムのアイドルコストを削減した事例のイメージ

ICTシステムのコスト最適化で近年とくに効果が高いのが、サーバーレスアーキテクチャの採用です。常時起動のサーバーを持たず、処理が発生したときだけコンピューティング資源を使う構成にすると、アクセスのない時間帯のコスト(アイドルコスト)がほぼゼロになります。アクセス量の波が大きい業務システムや、夜間・休日に動かないシステムでは、この効果が顕著に表れます。

Lambda構成で月数百円に収まった社内システム事例

サーバーレスAPIの代表的な構成は、AWS LambdaにAPI Gateway、DynamoDBを組み合わせたものです。この構成は、アクセスが少ない〜中程度であれば月数百円〜、無料枠の範囲内で収まることも多いという特性を持ちます(出典:ripla)。たとえば社内の申請ワークフローや、特定部署だけが使う集計ツールのように、利用が業務時間帯に限られ、ピークも限定的なシステムでは、常時稼働のサーバーを立てるより圧倒的に安く済みます。

料金体系を具体的に見ると、API呼び出しはAWS・Azureで月100万回まで無料、超過分は100万回あたり0.2ドル。GCPは月200万回まで無料です(出典:ripla)。コンピューティングは100万GB秒あたりAWS 16.7ドル、Azure 16ドル、GCP 2.5ドルと、GCPが安価な傾向にあります。社内システムのような小規模利用であれば、無料枠に収まり実質負担がほぼ発生しないケースが現実に存在します。これがオンプレや常時起動サーバーでは決して得られない、サーバーレス特有のコスト優位性です。

サーバーレスが効いた領域・効かなかった領域

ただし、サーバーレスはあらゆるICTシステムに万能なわけではありません。アクセスがまばらで、1回あたりの処理が短いワークロードでは抜群に効きますが、常時高負荷で稼働し続けるシステムや、長時間の連続バッチ処理には不向きな領域があります。常に一定の負荷がかかるなら、リザーブドインスタンスで常時起動サーバーを割安に確保した方が、トータルコストは下がることもあります。

成功している事例に共通するのは、システム全体を一律にサーバーレスへ寄せるのではなく、ワークロードの特性ごとに構成を使い分けている点です。波の大きいフロント部分はサーバーレス、常時稼働のコア部分はコンテナや仮想サーバー、というハイブリッド構成にすることで、それぞれの強みを引き出しています。事例から学ぶべきは「サーバーレスにすれば安くなる」という単純な話ではなく、「どの処理をどの構成に載せるか」の見極めが成否を分ける、という点です。

リザーブド活用で常時稼働コストを下げた事例

サーバーレスとは逆に、常時稼働が前提のシステムでコストを下げた事例もあります。鍵になるのが、リザーブドインスタンス(長期利用を前提とした割引契約)の活用です。仮想サーバーを従量課金のまま使い続けると割高ですが、1〜3年の利用を約束して前払いすると、料金が大きく下がります。実際、Linux 2コア約8GBの仮想サーバーは、3年契約に切り替えるとAWSが月78.3ドルから40.4ドルへ、Azureがハイブリッド特典で29.9ドルへと半額近くまで下がります(出典:ripla)。

この事例で効いているのは、稼働が固まったコア部分をリザーブドで固定費化し、変動する部分だけを従量課金に残すという使い分けです。すべてをリザーブドで固めると、不要になったときに前払い分が無駄になりますが、安定稼働が確実な範囲に限れば、確実にコストを下げられます。サーバーレスで波を吸収しつつ、コアはリザーブドで割安に確保する。この二段構えの構成が、常時稼働システムのコスト最適化事例の定番になっています。

API連携で部門間の二重入力を自動化した事例

API連携でICTシステムの部門間二重入力を自動化した事例のイメージ

ICTシステムの効果は、新しいシステムを単独で導入することよりも、既存システム同士をAPIでつなぎ、人手で行っていたデータの受け渡しを自動化することで生まれるケースが多くあります。部門ごとに別々のシステムを使い、同じデータを何度も入力し直している状態は、多くの企業で発生している典型的な非効率です。ここをAPI連携で解消した事例を見ていきます。

受注データを基幹へ自動連携し転記をなくした事例

典型的な成功パターンが、フロント側のシステムで受けたデータを、APIを介して基幹システムへ自動的に流し込む構成です。これまで営業部門が受けた情報を経理や生産管理が改めて手入力していた工程が、まるごと消えます。二重入力がなくなれば、転記ミスや入力漏れといったヒューマンエラーも構造的に減ります。API連携の構築費用は、サーバーレス構成で組めばアクセス量次第で月数百円程度に収まることもあり、削減できる人件費と比べれば投資回収は早いケースが多いです。

逆に、ここをケチって手作業のままにすると痛い目を見ます。実際に、連携のカスタマイズ費を削った結果、1日100件超のデータを担当者が基幹へ手入力し続け、労力が増えたうえにヒューマンエラーも多発した失敗事例があります(出典:ripla)。「連携は高いから後回し」という判断が、かえって運用現場を疲弊させるのです。事例を比較すると、API連携は初期費用だけでなく、長期の運用工数まで含めて費用対効果を判断すべき領域だと分かります。

複数SaaSをつないで業務を自動化した事例

近年のICTシステムは、すべてを自社開発するのではなく、既存のSaaS同士をAPIでつなぐ構成も増えています。たとえば、フォームから入った問い合わせを自動でチャットツールへ通知し、同時に顧客管理システムへ登録する、といった一連の流れをAPI連携で自動化すれば、担当者の手作業を介さずに情報が回ります。こうした連携基盤はサーバーレスで構築でき、CI/CDやコード管理を含むDevOps系SaaSの利用料も月数万円程度に収まります(出典:ripla)。

SaaS連携型の事例で成果が出ている企業は、「自社で何を作り、何を既製品に任せるか」の線引きが明確です。差別化に直結しない汎用機能はSaaSを使い、自社固有の業務ロジックだけをAPI連携の処理として開発する。この割り切りができると、開発費を抑えつつ短期間で業務自動化を実現できます。ICTシステムの活用事例を見るうえでは、「全部作る」発想から「つないで自動化する」発想への転換が、コストと効果の両面で効いていることを押さえておきたいところです。

AI APIを取り込んで検品・読み取りを自動化した事例

API連携の発展形として、クラウド各社のAI APIを取り込み、目視や手作業に頼っていた業務を自動化する事例も増えています。たとえば、画像認識APIを使って製品の検品を自動化したり、帳票の読み取りをAIに任せてデータ入力をなくしたりといった活用です。画像認識APIは、AWSが月5,000枚まで無料・超過1,000枚あたり1.3ドル、Azureが月5,000件まで無料、GCPが月1,000ユニットまで無料と、小規模なら無料枠で試せるため(出典:ripla)、低コストで導入を始められます。

こうした事例で成果を出している企業は、AIを内製せずAPIとして取り込むことで、モデルの学習・運用を事業者に任せ、自社固有の業務ロジックだけに開発を集中させています。検品や読み取りといった汎用的な認識処理はAI APIに委ね、その結果を既存の業務フローへどうつなぐかという部分に知恵を注ぐ。この「作るところと借りるところの見極め」が、短期間・低コストでの自動化を実現する共通の勝ちパターンになっています。

外部委託から内製化へ踏み出した事例

ICTシステムを外部委託から内製化へ移行した事例のイメージ

ICTシステムの事例で見落とされがちですが、長期的にもっとも効くのが「組織の内製化」への踏み出しです。構築は外部委託で進めつつ、その過程で自社にノウハウを引き継ぎ、運用・改善を自前でできる体制をつくる。ここまで含めて設計できた企業は、初期構築後の改修スピードと運用コストの両面で優位に立ちます。競合の解説では費用や構成(What)に偏りがちですが、組織をどう適応させるか(How)こそ、事例から学ぶべき核心です。

CCoEを立ち上げてクラウド運用を内製化した事例

クラウド活用が進んだ企業が次に取り組むのが、CCoE(Cloud Center of Excellence)の立ち上げです。これは、クラウドの設計・運用・コスト管理・セキュリティのノウハウを社内に集約する専門チームを置く取り組みで、外部委託で得た知見を組織の資産として残す役割を担います。CCoEを設けた事例では、各部門がばらばらにクラウドを使って統制が効かなくなる事態を防ぎ、コスト最適化やセキュリティ基準の統一を全社で進められるようになります。

内製化を成功させる事例に共通するのは、外部委託の段階から「スキルトランスファー(技術移転)」を契約と作業に組み込んでいる点です。単に成果物だけを受け取るのではなく、設計の意図や運用手順を自社メンバーが理解できる形で引き継ぐ。クラウド人材の採用・育成・評価制度の設計までセットで進めた企業は、構築後の改修を内製で回せるようになり、外部発注の都度コストから解放されます。事例として見たとき、この組織側の仕込みが数年後の運用コストを大きく左右します。

内製化が進んだ企業では、運用文化そのものの転換も起きています。すべての障害をゼロにしようとする「絶対止めない運用」から、許容できる停止範囲を決めて改善に資源を回すSRE型の運用へ移行する事例です。SLO(サービスレベル目標)を定め、障害対応を自動化し、繰り返しの手作業を減らすことで、少人数でも安定運用を回せるようになります。事例から見えるのは、ICT化の成果は技術導入の瞬間ではなく、運用を担う組織の成熟とともに伸び続けるという点です。

事例から自社の投資判断へ落とし込む視点

ここまでの事例を自社に当てはめるとき、大切なのは「数値をそのまま真似ない」ことです。インフラ費1/3削減やサーバーレスで月数百円といった成果は、その企業のワークロード特性と運用体制があって初めて成立しています。自社の業務がどんなアクセスパターンを持ち、どこに人手の非効率が溜まっているかを棚卸ししたうえで、どの事例の打ち手が効くのかを見極める作業が欠かせません。

事例の比較から見えてくるのは、ICTシステムの成功は「最新技術を入れたか」ではなく「自社の課題に合った構成を選び、組織で運用し続けられるか」で決まるという点です。riplaはフルスクラッチ受託とクラウド構築・運用の伴走の立場から、事例の数値を自社の前提に翻訳し、移行・自動化・内製化のどこから着手すべきかの優先順位付けを支援しています。次の一歩としては、自社で実現したい効果に近い事例を起点に、要件定義へと具体化していくのがおすすめです。

まとめ

ICTシステム導入事例のまとめイメージ

ICTシステムの導入・活用事例を整理すると、成果のパターンは大きく四つに集約されます。オンプレからクラウドへの移行でインフラ費を1/3まで圧縮した事例、サーバーレス化でアイドルコストを抑え月数百円に収めた事例、API連携で部門間の二重入力を自動化し転記とミスをなくした事例、そして外部委託からCCoE立ち上げを経て内製化へ踏み出した事例です。いずれも、従業員50〜100名規模なら移行トータル150万〜500万円前後、費用の約80%が人件費という相場感を前提に、自社のワークロードに合った構成を選んでいます。

事例から学ぶべき本質は、最新技術の採用そのものではなく、自社の課題に合った構成を選び、組織として運用し続けられる体制まで含めて設計することにあります。数値だけを真似ても、ワークロードや運用体制が違えば同じ効果は出ません。riplaはフルスクラッチ受託とクラウド構築・運用の伴走を組み合わせ、事例の数値を自社の前提に翻訳しながら、移行・自動化・内製化の優先順位付けを支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。