ICTシステムの導入/開発事例や活用/成功事例について

ICTシステムの導入・活用の成功事例は、大きく四つのパターンに分けられます。

どの事例も、構成と費用、得られた効果を数値とともに見ていきます。移行前後の工数やコストの変化、つまずきと乗り越え方も追います。全体の進め方や費用の全体像は、ICTシステムの完全ガイドで先に確認できます。

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オンプレからクラウド移行でコストを圧縮した事例

固定費から変動費への移行と、人件費が大きい移行費用を3枚のパネルで示した図解
支払い方の変化と移行作業の費用を分けて捉えられます。

ICTシステムの刷新でもっとも分かりやすい成果が出るのは、オンプレミス(自社所有のサーバー)からクラウドへの移行です。サーバーの購入・保守・データセンターといった固定費を、使った分だけ払う変動費へ置き換えるため、コスト構造そのものが変わります。また、従業員規模ごとの移行コストの目安と、移行後にインフラ費が下がった事例を続けて見ていきます。

従業員50〜100名規模の移行コストと内訳

従業員50〜100名のオンプレミス環境をクラウドへ移行する場合、設計・構築に100万〜400万円、データ移行に20万〜80万円がかかります。これらを合わせたトータルは、150万〜500万円前後が目安です(出典:ripla)。

この幅は、移行対象のシステム数、データ量、既存システムの作り込みの深さによって決まります。単純なファイルサーバーやメールなら下限に近づく一方で、業務システムや基幹に近い構成ほど上限に振れます。

移行コストの大半は、実は機材ではなく人件費で、クラウド開発・構築の費用はその約80%を人件費が占めます(出典:ripla)。そのため移行コストを見積もるには、サーバー料金の比較より、設計・構築・移行作業にどれだけの人月がかかるかを読むことが大切です。また、AWS認定を持つシニアアーキテクトの単価は月100万円を超えることもあり、誰がどの工程を担うかで総額は大きく変わります。

マネージドサービス活用でインフラ費を1/3に下げた事例

移行で効くのが、運用に手のかかる部分をクラウド事業者に任せる「マネージドサービス」の活用です。データベースやロードバランサー、監視といった機能を、自前のサーバーで運用する代わりにマネージドサービスへ置き換えると、運用工数とインフラ費の両方を圧縮できます。

実際に、マネージドサービスを徹底活用してインフラコストを従来の約1/3まで削減した事例があります(出典:ripla)。この削減は、サーバーの台数を減らし、運用担当者が手作業で行っていたバックアップやパッチ適用を事業者側に委ねた結果です。

移行後のインフラ月額の目安は、規模ごとに次のとおりです(出典:ripla)。

  • 小規模で数千円〜1万円
  • 中規模で3万〜10万円
  • 大規模エンタープライズで数十万〜100万円以上

オンプレミスのサーバー減価償却・電気代・保守契約と比べると、中規模でも月数万円台に収まるケースは珍しくありません。ただし、移行直後の構成をそのまま使わず、稼働状況を見て最適化し続けられるかで、効果は数年かけて大きく差が開きます。

ポイント

移行費用は、移行対象の数と作り込みの深さで変わり、大半は人件費です。見積もりは、サーバー料金より設計・構築の人月で比べると判断しやすくなります。

サーバーレス化でアイドルコストをゼロに近づけた事例

アクセス頻度と処理時間の観点からサーバーレスに向く負荷と向きにくい負荷を比べた図解
負荷の波と処理の長さが構成選びの分かれ目になります。

ICTシステムのコスト最適化で近年とくに効果が高いのが、サーバーレスアーキテクチャの採用です。常時起動のサーバーを持たず、処理が発生したときだけコンピューティング資源を使う構成にすると、アクセスのない時間帯のコスト(アイドルコスト)はほぼゼロになります。特に、アクセス量の波が大きい業務システムや、夜間・休日に動かないシステムでは、この効果が顕著に表れます。

Lambda構成で月数百円に収まった社内システム事例

サーバーレスAPIの代表的な構成は、AWS LambdaにAPI Gateway、DynamoDBを組み合わせたものです。アクセスが少なめから中程度なら、月数百円から、無料枠に収まることも多い特性があります(出典:ripla)。たとえば社内の申請ワークフローや部署の集計ツールのように、利用が業務時間帯に限られ、ピークも限定的なシステムでは、常時稼働のサーバーを立てるより圧倒的に安く済みます。

料金を具体的に見ると、API呼び出しはAWSとAzureで月100万回まで無料で、超過分は100万回あたり0.2ドルです。GCPは月200万回まで無料で、コンピューティングは100万GB秒あたりAWSが16.7ドル、Azureが16ドル、GCPが2.5ドルと、GCPが安価な傾向にあります(出典:ripla)。

社内システムのような小規模利用であれば、無料枠に収まり、実質的な負担がほぼ発生しないケースも現実にあります。これは、オンプレや常時起動サーバーでは得られない、サーバーレス特有のコスト優位性です。

サーバーレスが効いた領域・効かなかった領域

サーバーレスが抜群に効くのは、アクセスがまばらで、1回あたりの処理が短いワークロードです。一方で、常時高負荷で稼働し続けるシステムや、長時間の連続バッチ処理には向かない領域があります。常に一定の負荷がかかるなら、リザーブドインスタンスで常時起動サーバーを割安に確保したほうが、トータルコストは下がることもあります。ただし、サーバーレスはあらゆるICTシステムに万能ではありません。

成功している事例に共通するのは、ワークロードの特性ごとに構成を使い分けている点です。システム全体を一律にサーバーレスへ寄せず、波の大きいフロント部分はサーバーレス、常時稼働のコア部分はコンテナや仮想サーバーというハイブリッド構成にして、それぞれの強みを引き出しています。事例から学べるのは、「どの処理をどの構成に載せるか」の見極めが成否を分ける点です。

リザーブド活用で常時稼働コストを下げた事例

サーバーレスとは逆に、常時稼働が前提のシステムでコストを下げた事例もあります。その鍵になるのが、リザーブドインスタンス(長期利用を前提とした割引契約)の活用です。仮想サーバーを従量課金のまま使い続けると割高ですが、1〜3年の利用を約束して前払いすると、料金は大きく下がります。

実際に、Linux 2コア約8GBの仮想サーバーは、3年契約に切り替えるとAWSが月78.3ドルから40.4ドルへ、Azureがハイブリッド特典で29.9ドルへと、半額近くまで下がります(出典:ripla)。この事例で効いているのは、稼働が固まったコア部分をリザーブドで固定費にし、変動する部分だけを従量課金に残すという使い分けです。

すべてをリザーブドで固めると、不要になったときに前払い分が無駄になります。ただし、安定稼働が確実な範囲に限れば、コストを下げられます。サーバーレスで波を吸収しつつ、コアはリザーブドで割安に確保するこの二段構えが、常時稼働システムのコスト最適化事例の定番になっています。

ポイント

アクセスの波が大きく、利用が業務時間に限られるシステムは、サーバーレスでコストを抑えやすい領域です。常に一定の負荷が続くシステムは、リザーブドを組み合わせる構成も候補になります。

API連携で部門間の二重入力を自動化した事例

フロント側のシステムからAPIを通じて基幹システムへ受注データを自動連携する流れの図解
データが自動で渡ると、部門をまたぐ転記作業を挟まずに済みます。

ICTシステムの効果は、新しいシステムを単独で入れるより、既存システム同士をAPIでつなぎ、人手で行っていたデータの受け渡しを自動化することで生まれるケースが多くあります。部門ごとに別々のシステムを使い、同じデータを何度も入力し直す状態は、多くの企業で見られる典型的な非効率です。そこで、この非効率をAPI連携で解消した事例を見ていきます。

受注データを基幹へ自動連携し転記をなくした事例

典型的な成功パターンは、フロント側のシステムで受けたデータを、APIを介して基幹システムへ自動で流し込む構成です。これまで営業部門が受けた情報を、経理や生産管理が改めて手入力していた工程が、まるごとなくなります。二重入力がなくなると、転記ミスや入力漏れといったヒューマンエラーも構造的に減ります。

API連携の構築費用も、サーバーレス構成で組めばアクセス量次第で月数百円程度に収まることがあり、削減できる人件費と比べると投資回収は早いケースが多いです。逆に、ここを手作業のままにすると、痛い目を見ます。

実際に、連携のカスタマイズ費を削った結果、1日100件超のデータを担当者が基幹へ手入力し続け、労力が増えたうえにヒューマンエラーも多発した失敗事例があります(出典:ripla)。「連携は高いから後回し」という判断が、かえって運用現場を疲弊させるのです。事例を比較すると、API連携は初期費用だけでなく、長期の運用工数まで含めて費用対効果を判断すべき領域だと分かります。

複数SaaSをつないで業務を自動化した事例

近年は、すべてを自社開発するより、既存のSaaS同士をAPIでつなぐ構成も増えています。たとえば、フォームの問い合わせを自動でチャットツールへ通知し、同時に顧客管理システムへ登録する流れをAPI連携で自動化すれば、担当者の手作業を介さずに情報が回ります。

こうした連携基盤はサーバーレスで構築でき、CI/CDやコード管理を含むDevOps系SaaSの利用料も月数万円程度に収まります(出典:ripla)。また、SaaS連携型の事例で成果が出ている企業は、「自社で何を作り、何を既製品に任せるか」の線引きが明確です。

差別化に直結しない汎用機能はSaaSを使い、自社固有の業務ロジックだけをAPI連携の処理として開発します。この割り切りができると、開発費を抑えつつ、短期間で業務自動化を実現できます。ICTシステムの活用事例を見るうえでは、「全部作る」発想から「つないで自動化する」発想への転換が、コストと効果の両面に効いている点を押さえておきたいところです。

AI APIを取り込んで検品・読み取りを自動化した事例

API連携の発展形として、クラウド各社のAI APIを取り込み、目視や手作業に頼っていた業務を自動化する事例も増えています。たとえば、画像認識APIで製品の検品を自動化したり、帳票の読み取りをAIに任せてデータ入力をなくしたりといった活用です。

画像認識APIの無料枠は、事業者ごとに次のとおりです(出典:ripla)。

  • AWSは月5,000枚まで無料で、超過分は1,000枚あたり1.3ドル
  • Azureは月5,000件まで無料
  • GCPは月1,000ユニットまで無料

小規模なら無料枠で試せるため、低コストで導入を始められます。

こうした事例で成果を出す企業は、AIを内製せず、モデルの学習・運用を事業者に任せ、自社固有の業務ロジックに開発を集中させています。検品や読み取りといった汎用的な認識処理はAI APIに委ね、その結果を既存の業務フローへどうつなぐかに知恵を注いでいます。この「作るところと借りるところの見極め」が、短期間・低コストでの自動化を実現する共通の勝ちパターンになっています。

ポイント

二重入力や手作業の受け渡しが残る業務は、API連携の効果が出やすい領域です。初期費用だけでなく、長期の運用工数まで含めて費用対効果を見ると判断しやすくなります。

外部委託から内製化へ踏み出した事例

ICTシステムの事例では見落とされがちですが、長期的にもっとも効くのが「組織の内製化」への踏み出しです。構築は外部委託で進めつつ、その過程で自社にノウハウを引き継ぎ、運用・改善を自前でできる体制をつくります。

こうした設計ができた企業は、初期構築後の改修スピードと運用コストの両面で優位に立ちます。競合の解説は費用や構成(What)に偏りがちですが、組織をどう適応させるか(How)こそ、事例から学ぶべき核心です。

CCoEを立ち上げてクラウド運用を内製化した事例

クラウド活用が進んだ企業が次に取り組むのが、CCoE(Cloud Center of Excellence)の立ち上げです。CCoEは、クラウドの設計・運用・コスト管理・セキュリティのノウハウを社内に集約し、外部委託の知見を組織に残す専門チームです。CCoEを設けた事例では、各部門がばらばらにクラウドを使って統制が効かなくなるのを防ぎ、コストやセキュリティ基準の統一を全社で進められます。

内製化を成功させる事例は、外部委託の段階から「スキルトランスファー(技術移転)」を契約と作業に組み込んでいます。設計の意図や運用手順を自社メンバーが理解できる形で引き継ぎ、採用・育成・評価制度まで進めた企業は、改修を内製で回せるようになります。この組織側の仕込みは、外部発注の都度コストからの解放にもつながり、数年後の運用コストを大きく左右します。

運用文化そのものを変える事例もあり、すべての障害をゼロにしようとする「絶対止めない運用」から、許容できる停止範囲を決めて改善に資源を回すSRE型の運用へ移っています。SLO(サービスレベル目標)を定め、障害対応を自動化し、繰り返しの手作業を減らすことで、少人数でも安定運用を回せるようになります。ICT化の成果は、技術導入より運用を担う組織の成熟とともに伸び続けます。

事例から自社の投資判断へ落とし込む視点

ここまでの事例を自社に当てはめるときは、「数値をそのまま真似しない」ことが大切です。インフラ費1/3削減やサーバーレスで月数百円といった成果は、その企業のワークロード特性と運用体制があって初めて成り立っています。そのため、自社の業務のアクセスパターンや、人手の非効率が溜まる箇所を洗い出し、どの事例の打ち手が効くかを見極める必要があります。

事例を比べると、ICTシステムの成功は「最新技術を入れたか」より「自社の課題に合った構成を選び、組織で運用し続けられるか」で決まることが分かります。riplaは、フルスクラッチ受託とクラウド構築・運用の伴走の立場から、事例の数値を自社の前提に翻訳し、移行・自動化・内製化のどこから着手すべきかの優先順位付けを支援しています。

次の一歩としては、自社で実現したい効果に近い事例を起点に、要件定義へと具体化していくのがおすすめです。

ポイント

長期の効果は、外部委託の段階からスキルを引き継ぎ、自社で運用・改善できる体制を作れるかで決まります。運用文化の転換まで視野に入れると、効果は技術導入の後も伸び続けます。

まとめ

ICTシステムの導入・活用事例を整理すると、成果のパターンは大きく四つに集約されます。オンプレからクラウドへの移行でインフラ費を1/3まで圧縮した事例と、サーバーレス化でアイドルコストを抑え月数百円に収めた事例があります。

また、API連携で部門間の二重入力を自動化し転記とミスをなくした事例と、外部委託からCCoE立ち上げを経て内製化へ踏み出した事例もあります。いずれも、従業員50〜100名規模なら移行トータル150万〜500万円前後、費用の約80%が人件費という相場感を前提に、自社のワークロードに合った構成を選んでいます。

事例から学ぶべき本質は、最新技術の採用そのものより、自社の課題に合った構成を選び、組織として運用し続けられる体制まで含めて設計することにあります。数値だけを真似ても、ワークロードや運用体制が違えば同じ効果は出ません。

riplaは、自社の前提に合わせて事例を読み解き、移行・自動化・内製化の優先順位付けを支援しています。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。