ICTシステムの必要機能や標準機能の一覧について

ICTシステムの必要機能は、基盤・実行基盤・連携・運用の4領域に分けて整理できます。役割を先に分けると、「あれば便利」と「ないと業務が回らない」の切り分けがしやすくなります。

  • 基盤機能:可用性・スケーラビリティの確保
  • 実行基盤機能:サーバーレスやコンテナによる処理の実行
  • 連携機能:API連携やデータ統合によるシステム同士のつなぎ込み
  • 運用機能:CI/CD・監視・IaCによる継続的な運用

ICTシステム全体の進め方や費用感を把握したい方は、先にICTシステムの完全ガイドを読むと、各機能の位置づけをつかみやすくなります。

▼全体ガイドの記事
・ICTシステムの完全ガイド

可用性・スケーラビリティを支える基盤機能

ICTシステムの可用性・スケーラビリティを支える基盤機能のイメージ

基盤機能でまず押さえたいのは、止まらず、落ちにくいシステムを支える可用性とスケーラビリティの機能です。

オンプレミスのサーバーでは、処理能力を上げるには機材を増設するしかなく、1台が壊れるとサービスが止まっていました。一方で、クラウド基盤が提供する自動スケーリングと高可用性の機能は、この制約を構造的に解消します。

負荷に応じてサーバーを増減する自動スケーリング機能

自動スケーリングは、アクセスや処理負荷の増減に合わせて、サーバーの台数や能力を自動で調整する機能です。キャンペーンや月末処理でアクセスが集中する時間帯だけサーバーを増やし、落ち着いたら減らすことで、ピークに耐えつつ無駄なコストを払わない運用ができます。

オンプレでピークに合わせてサーバーを常備していた時代と比べ、平常時のインフラ費を大きく抑えられるのが、この機能の価値です。自動スケーリングを最大限に活かす構成が、サーバーレスです。AWS LambdaやAPI Gatewayを使った構成では、リクエストが来たときだけ実行され、来なければコストが発生しません。

料金体系を見ても、API呼び出しはAWS・Azureで月100万回まで無料、GCPは月200万回まで無料で、超過分も100万回あたり0.2〜0.4ドルと小さく抑えられています(出典:ripla)。負荷の波が大きい業務システムほど、自動スケーリングとサーバーレスの組み合わせが、機能面でもコスト面でも効いてきます。

マルチAZ構成による高可用性・冗長化機能

高可用性を支えるのが、マルチAZ(アベイラビリティゾーン)構成です。これは、地理的に離れた複数のデータセンターにシステムを分散配置し、片方に障害が起きてももう片方で稼働を続ける冗長化の機能です。

中規模以上の業務システムでは、EC2とRDSを各2台用意し、WAFとロードバランサーを組み合わせた構成が標準的で、構築相場は50万〜60万円が目安です(出典:ripla)。冗長化をどこまで進めるかでコストが変わるため、発注側は業務の停止許容度を見て範囲を決めます。可用性機能は、全部を最高水準にするより、システムの重要度で段階を分けるのが定石です。

止められない基幹に近いシステムは、より拡張した高可用性構成(EFSやElastiCacheの活用)で70万円以上かかり、エンタープライズの基幹では250万〜3,000万円以上に達します(出典:ripla)。一方で、止まっても短時間なら許容できる社内ツールは、シングル構成(EC2 1台+RDS 1台+Route53)で20万〜30万円に抑えられます。

ポイント

基盤機能は、システムの重要度に応じて段階を分けて選ぶのが基本です。止められない基幹は冗長化を厚くし、止まっても許容できる社内ツールは構成を抑えることで、費用の膨らみを防げます。

サーバーレス・コンテナの実行基盤機能

ICTシステムのサーバーレス・コンテナ実行基盤機能のイメージ

実行基盤の機能は、ICTシステムを「どこで動かすか」を担います。代表的な選択肢はサーバーレスとコンテナの二つで、それぞれ得意とする領域が異なります。

実行基盤の選択は、システムの拡張性・運用負荷・コストを大きく左右します。そのため、サーバーレスとコンテナの機能特性を理解しておくことが欠かせません。

サーバーレス(FaaS)が提供する実行機能

サーバーレスは、処理(関数)が呼ばれたときだけ実行環境が立ち上がり、終わると消える実行機能です。サーバーの起動・パッチ適用・スケーリングは事業者側が管理します。そのため、開発者はビジネスロジックの実装に集中できます。

イベント駆動の処理や、波の大きいAPIに最適な実行基盤です。コンピューティング料金は100万GB秒あたりAWS 16.7ドル、Azure 16ドル、GCP 2.5ドルと小さく、アクセスがない時間帯はコストがほぼ発生しません(出典:ripla)。この機能の真価は運用工数の削減にあります。

サーバーの面倒を見る必要がないため、少人数のチームでも本番システムを運用できます。人件費の比重が高いICTシステム開発(費用の約80%が人件費)では、運用フェーズの人的負担を構造的に減らせます(出典:ripla)。ただし、常時高負荷のワークロードや長時間の連続処理には不向きで、そうした領域はコンテナや仮想サーバーが担います。

コンテナが提供する可搬性・実行機能

コンテナは、アプリケーションと実行環境を1つのパッケージにまとめて動かす機能で、ECS FargateやKubernetesで起動・配置・スケーリングを管理できます。最大の価値は「可搬性(ポータビリティ)」で、開発・検証・本番のどこでも同じように動き、クラウド事業者をまたいでも動かせます。

同じコンテナイメージを開発・検証・本番で動かせるため、「開発環境では動いたのに本番で動かない」というトラブルを防げます。マルチクラウド構成の前提にもなり、特定クラウドへの依存(ベンダーロックイン)を避けられるため、将来の乗り換えの障壁も下げられます。

  • AWS(t3.large):Linux 2コア・約8GBの従量課金で月78.3ドル、3年契約で40.4ドル
  • Azure(B2ms):同じ構成の従量課金で月79.6ドル、3年契約(ハイブリッド特典)で29.9ドル
  • GCP(n1-standard-2):同じ構成の従量課金で月62.3ドル、3年契約で40ドル

仮想サーバーの料金は、3年契約に切り替えると大きく下がります(出典:ripla)。常時稼働のコア部分はコンテナや仮想サーバーで割安に確保し、波の大きい部分はサーバーレスに載せます。この使い分けが、ICTシステムの実行基盤設計の要諦です。

実行基盤の機能を選ぶときは、目先のコストだけでなく、こうした可搬性まで含めて評価することが、長期的な自由度を確保する鍵になります。

ポイント

実行基盤は、波の大きい処理をサーバーレスに、常時稼働の処理をコンテナや仮想サーバーに分けて選ぶと、拡張性とコストを両立しやすくなります。

API連携・データ統合の機能

ICTシステムのAPI連携・データ統合機能のイメージ

ICTシステムの価値は、単体で完結する機能よりも、複数のシステムをつないで業務全体を自動化する連携機能によって大きく高まります。

API Gatewayによる外部連携、SaaS同士の統合、データの集約といった機能は、部門をまたいだ業務の流れを滑らかにします。この部分が、ICTシステムの「情報通信」を実装する中核です。

API Gateway連携で外部システムをつなぐ機能

API Gatewayは、外部からのリクエストを受け付け、認証・流量制御・ルーティングを行ったうえで、裏側の処理へつなぐ窓口の機能です。これを使うと、社内システムと外部SaaS、あるいは取引先システムとの間で、安全にデータをやり取りできます。

API連携の効果は、人手による二重入力をなくすことに直結します。あるシステムで入力したデータがAPIを介して別のシステムへ自動的に流れれば、転記作業とそれに伴うミスがまるごと消えます。

Lambda・API Gateway・DynamoDBを組み合わせたサーバーレスAPI構成なら、アクセスが少〜中程度のうちは月数百円〜で、無料枠内も多く、低コストで連携基盤を構築できます(出典:ripla)。連携を省いて手作業に頼った結果、1日100件超のデータ手入力で現場が疲弊した失敗事例もあります(出典:ripla)。API連携は、投資効果の高い必須機能として位置づけられます。

AI APIで認識・分析を取り込む機能

画像認識や音声認識といったAI機能は、自前で開発せずAI APIとして取り込むのが一般的で、検品の自動化や帳票の読み取りも低コストで素早く組み込めます。クラウド各社の画像認識APIは、AWSが月5,000枚まで無料・超過1,000枚あたり1.3ドル、Azureが月5,000件まで無料・超過1,000件あたり1ドルです(出典:ripla)。

GCPは月1,000ユニットまで無料・超過1,000ユニットあたり1.5ドルで、小規模なら無料枠で試せます。内製には高度な人材と継続的な運用が必要ですが、APIなら、モデルの学習・運用を事業者に任せ、自社固有の業務ロジックの開発に集中できます。差別化に直結しない汎用の認識・分析はAI APIに任せ、競争力になる処理だけを作り込む割り切りが、機能を効率的に拡張する鍵です。

データ統合も、ICTシステムの「情報通信」を支える重要な役割です。複数のシステムやSaaSに散らばったデータを一か所に集め、横断的に分析できる機能です。受注・在庫・顧客のデータが分断されたままでは、全社的な意思決定に生かせません。API連携で集約すれば、レポートやダッシュボードで経営判断の数字をリアルタイムに把握できます。連携・統合は、データを経営資源として使える土台になります。

ポイント

API連携は、転記ミスや二重入力を減らす効果が大きい機能です。部門をまたぐ業務の流れに沿って連携の範囲を先に決めておくと、後の手戻りを減らせます。

CI/CD・監視・IaCの運用自動化機能

ICTシステムのCI/CD・監視・IaC運用自動化機能のイメージ

ICTシステムは作って終わりではなく、継続的に改善し、安定して動かし続ける運用機能があって初めて価値を発揮します。その土台となるのが、CI/CDによるリリースの自動化、監視による異常の早期検知、IaCによる環境構築の自動化で、運用フェーズの品質と効率を支えます。

これらが整っているかどうかで、リリースの速さと障害対応の質が大きく変わります。

CI/CDとIaCでリリース・構築を自動化する機能

CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)は、コードの変更を自動でテストし、本番環境へ安全に反映する機能です。GitHub Actionsなどのパイプラインを組めば、リリース作業のミスを減らして改善のサイクルを速められ、リリース頻度の高いシステムほど投資対効果が大きくなります。

これと対になるのが、IaC(Infrastructure as Code)で、サーバーやネットワークの構成をコードで記述し、ボタン一つで同じ環境を再現します。環境構築のばらつきや手作業ミスを排除し、検証と本番を同一構成で用意できるため、災害時の復旧も迅速になります。CI/CDとIaCをセットで導入すれば、リリースから環境構築までの一連の運用を自動化でき、少人数でも品質を保って回せます。

  • DevOps系SaaS:CI/CDやコード管理、セキュリティスキャンを含む利用料は、月数万円程度が目安です(出典:ripla)。
  • 開発後の保守運用:開発費の約80%は人件費で、保守運用には年で開発費の10〜20%が継続的にかかります(出典:ripla)。

これらの機能は、ICT開発の費用構造とも深く結びついています。CI/CD・IaC・監視で、リリースや環境構築、障害検知に割く人手を減らせば、この人件費を構造的に圧縮できます。運用機能は「導入コスト」ではなく「人件費の削減装置」として捉えると、投資判断がしやすくなります。

監視・アラートで障害を早期検知する機能

監視機能は、システムの稼働状況・性能・エラーをリアルタイムで把握し、異常があれば自動で通知する機能です。代表的な監視ツールDatadogは、ホストあたり月15〜23ドルで利用でき(出典:ripla)、サーバーの負荷やAPI応答時間、エラー率などを一元的に可視化します。監視があれば、ユーザーから問い合わせが来る前に異常を検知し、障害が大きくなる前に手を打てます。

監視で大切なのは、アラートを出すだけでなく、何を異常とみなすかの基準(しきい値)を業務に合わせて設計することです。基準が緩すぎれば障害を見逃し、厳しすぎればアラートが鳴りすぎて誰も見なくなります。さらに、運用機能も含めて機能一覧を網羅し、自社にとっての必須・優先・将来追加に切り分けることが重要です。

どの機能を要件に盛り込むかは、自社の業務フローや運用体制に照らして判断すべきです。機能の検討は、要件定義のプロセスと一体で進めるのが実務的です。

認証・アクセス制御などのセキュリティ機能

運用機能と並んで欠かせないのが、システムを守るセキュリティ機能です。アクセス管理は誰がどのデータにアクセスできるかを制御し、多要素認証は本人確認を強化します。通信やデータの暗号化、不正アクセスを遮断するWAF(Webアプリケーションファイアウォール)と合わせて、ICTシステムの安全性を担保します。

セキュリティ機能を考えるうえで前提になるのが、クラウドの責任共有モデルです。クラウド事業者が基盤の安全を守り、データ・アプリケーション・アクセス権限の保護は利用者側が担います。つまり、認証・アクセス制御・暗号化は、自社と開発会社が要件として設計・実装すべき範囲です。

中規模の高可用性構成では、WAFを組み込んだ構築相場が50万〜60万円で、セキュリティ機能も構成コストの一部として織り込まれます(出典:ripla)。近年は、すべてのアクセスを都度検証する「ゼロトラスト」の考え方を機能に組み込むケースも増えています。社内ネットワークだから安全という前提を置かない設計が、標準になりつつあります。

ポイント

運用機能は、人件費を抑える投資として捉えると判断の軸が定まります。CI/CDや監視、IaCは、業務の重要度に合わせて範囲を決めます。

まとめ

ICTシステムの機能のまとめイメージ

ICTシステムの機能は、基盤・実行基盤・連携・運用の4層で整理すると漏れがありません。自動スケーリングとマルチAZで止まらない基盤をつくり、波の大きい処理はサーバーレス、常時稼働の処理はコンテナで使い分けます。そのうえで、API GatewayやAI APIでシステムをつなぎ、CI/CD・監視・IaCで運用を自動化します。

これらの機能は、シングル構成20万〜30万円から高可用性構成50万〜60万円といった相場感とともに、自社の重要度に応じて段階的に選ぶことが要点です。機能は網羅するだけで終わらせず、自社の業務にとって「ないと回らない必須機能」と「あれば便利な機能」を切り分けることが、予算を守りつつ効果を出す鍵になります。

この切り分けは、機能一覧を眺めるだけでは決まらず、自社の業務フロー・運用体制・停止許容度に照らして見極める必要があります。riplaは、フルスクラッチ受託とクラウド構築・運用の伴走の立場から、機能の網羅的な洗い出しと、必須・優先・将来追加の三段階での取捨選択を支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。