ICTシステム開発の開発期間・スケジュール・納期について

ICTシステム開発の期間は、対象の範囲・規模・調達条件によって、3ヶ月程度から複数年まで変わります。部署・拠点・世代をまたぐ統合は、納期を見通しにくい案件です。

期間の見積もりには、対象範囲と工程、規模別の目安、遅延要因の把握が欠かせません。全体像は、ICTシステム開発の完全ガイドもご覧ください。

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ICTシステム開発(情報インフラ統合)の全体像と開発の進め方

ICTは「情報通信技術(Information and Communication Technology)」全般を指す広い概念です。単一アプリの開発とは異なり、部署・拠点・世代をまたぐシステムや基盤を束ねる案件が大半です。

期間を見積もるには、まず対象と工程をつかむ必要があります。対象範囲は教育機関・自治体・企業ごとに異なり、工程は要件定義からリリースまで段階を追って進みます。

ICTシステム開発が対象とする範囲(教育機関・自治体・企業)

対象範囲は、教育機関・自治体・企業で異なります。そのため、まず自組織の案件がどの範囲に当たるかを見極めます。

  • 教育機関:校務系システムや学事日程に沿った調整
  • 自治体:基幹業務システムの標準化と、クラウドへの統合
  • 企業:部門ごとのシステムやツールの洗い出しと統合

教育機関では、成績・出欠・教務事務・保護者連絡などの校務系システムを扱います。パッケージを導入する場合のほか、独自の学事日程や履修体系に合わせて個別に調整する場合も対象になります。

自治体では、住民記録・税務・福祉などの基幹業務を標準準拠システムへ移行します。複数のシステムをガバメントクラウドへまとめる、全庁的な案件もあります。

企業では、老朽化した部門別システムやシャドーIT化したツールを前提に、情報システム部門(情シス)が主導して社内インフラを統合・刷新します。

どのセクターにも共通して、既存の複数システムやネットワーク、サーバー環境を束ね直す視点が欠かせません。対象範囲を把握することが、現実的な納期を考える出発点になります。

開発工程の全体像(要件定義からリリースまで)

工程は、方針決定から稼働まで段階を追って進みます。各段階で何を決め、何を行うかを把握したうえで、期間を計画します。

  1. 計画立案・システム選定:既存システムの洗い出しと、パッケージ活用かフルスクラッチかの判断
  2. 契約・要件定義:機能要件と、可用性・セキュリティなどの非機能要件の確定
  3. 開発・移行:設計に基づくシステムの構築と、既存データの移行
  4. データ移行・テスト:データの整合性と機能の検証、利用者を交えた運用テスト
  5. 研修・周知:現場利用者への操作研修と、取引先・住民への周知
  6. 並行運用・本稼働:旧システムと新システムを一定期間並行稼働させ、段階的に移行

要件定義では、教育機関なら学事日程、自治体なら法令要件、企業なら部門横断の業務フローを仕様に反映します。

特に研修・周知は負荷の大きい工程です。ここを軽く見ると、本稼働後に教職員・自治体職員・従業員の混乱につながります。

ポイント

期間を見積もる前に、対象範囲と工程のどちらが曖昧かを確かめます。範囲と工程が定まらないまま日程を組むと、納期の見通しが外れる原因になります。

セクター別・規模別の開発期間の目安

小規模は3ヶ月程度、中規模は半年〜1年強、大規模は1年〜複数年の期間目安を並べた図。
規模が大きいほど、想定する期間の幅も広がります。

開発期間は、規模とセクターによって異なります。規模別の目安や調達事例を見ると、計画・要件定義に工数を厚く配分する理由も見えてきます。

教育機関・自治体・企業での期間感(規模別の具体的な数値)

規模ごとの期間は、導入範囲や移行対象によって幅があります。個別案件では、下に挙げる規模別の数値を参考に計画を立てます。

  • 小規模:基本機能のパッケージ導入で3ヶ月程度
  • 中規模:業務標準化やクラウド移行で半年〜1年強
  • 大規模:全庁統合や複数システムの移行で1年〜複数年

パッケージ型の校務支援システムを基本機能のまま導入する小規模案件は、3ヶ月程度で立ち上げられます。なお、自治体DXでは導入後3〜6ヶ月を定着のための伴走支援期間とするのが一般的です。

中規模では、1〜数業務にまたがる標準化やクラウド移行が対象になります。例として、吹田市の基幹業務移行の工数推計では、計画立案が6.3人月、選定が3.7人月、移行が15.0人月でした。

この推計は合計で約25人月にあたり、1業務あたり毎月約1人月の工数です。中規模案件では、半年〜1年強を見込みます。

大規模案件には、全庁的な基幹系統合や、複数システムのガバメントクラウド移行が含まれます。期間は1年から複数年に及びます。

えびの市の公共施設予約システムの調達では、契約日から翌年度末までの約1年〜1年半を構築期間としていました。また、全国の移行も、国の期限に沿う数年がかりの全庁案件です。

企業の情シス主導の統合も、対象の部門数や既存システムの複雑さによって、中規模から大規模の期間感になります。

計画立案・要件定義フェーズに工数を厚く配分すべき理由

後工程の手戻りと開発期間は、計画・選定にかける工数と、組織固有の業務ルールをどこまで把握しているかで左右されます。

  • 上流工程の工数:計画・選定の工数が、全体の中で大きな割合を占める
  • 現場固有のルール:把握漏れは、設計後や移行時の手戻りにつながる

吹田市の計画立案6.3人月と選定3.7人月を合わせると10人月で、全体25人月の約4割を占めます。「作る前に決めること」の多さが、数字の上でも表れています。

部署ごとの業務ルールや既存仕様を把握しないまま設計を進めると、移行の段階で業務フローへの未対応が判明することがあります。

教育機関なら学事日程や履修体系、自治体なら条例や法定様式、企業なら部門別の承認フローを洗い出します。これらを選定や設計に反映すれば、全体期間の短縮につながります。

ポイント

期間は規模とセクターで変わるため、まず規模別の目安を押さえ、自組織の移行対象の多さを当てはめます。上流の計画と要件定義に工数を厚く配分すると、手戻りを減らせます。

開発期間に影響するICTシステム特有の要因

期間は、一般的な開発の要因に加えて、情報インフラ統合に固有の事情によっても変わります。なかでも、現場を止められない制約と複数ベンダーの混在は、三つのセクターに共通する要因です。

現場業務と並行するテスト期間の長期化

学校の授業、自治体の窓口、企業の日常業務を止めずにテストするため、運用テストが長引くことがあります。期間の計画では、現場の事情と担当者の負担をあらかじめ見込んでおきます。

  • 繁閑期:現場の業務量を見て、テストの時期を設定
  • 担当者の工数:通常業務と両立できる確認量の見積もり

旭川市では運用テストを当初3ヶ月としていました。しかし、担当課が通常業務と膨大な確認を並行するには時間が足りず、他業務では6ヶ月を確保したいとの見直しがありました。

学校では、学期中に授業や成績処理を止められないため、テストや移行を長期休暇に集中させる場合があります。また、日程の自由度も限られます。

計画段階で現場の繁閑期を把握し、テスト期間に余裕を持たせます。さらに、担当者がテストに割ける工数を過大に見積もらないことも大切です。

マルチベンダー環境下での過渡期連携の調整

教育機関・自治体・企業では、長年の運用を経て、複数事業者のシステムが混在しがちです。新旧を並行稼働させる間には、各社の連携に関わる調整が生じます。

  • 横断管理:各社の連携要件を、発注者がまとめて管理
  • 期間の余裕:調整のためのバッファの確保

クラウド移行の時期は、ベンダーごとにずれることがあります。過渡期には、ファイル変換やAPI設定などのデータ連携が必要になるうえ、帳票印刷業者など外部委託先との仕様修正も出てきます。

単独ベンダーで完結する案件は見通しを立てやすい一方、複数社が関わると、改修日程や仕様変更が互いに影響し合い、一社の遅延が全体に波及します。

ポイント

期間の見込みでは、現場を止められない制約と、関わるベンダーの数を先に確かめます。現場の繁閑と複数社の調整は、一般的な開発の要因より日程を大きく左右します。

納期遅延の典型要因と対策

納期遅延を抑える準備として、要件整理、現状調査、資産とデータの洗い出し、段階的な移行を並べた図。
契約と移行の前段で、調査や調整の時間を組み込めます。

納期遅延の原因には、共通する型があります。教育機関・自治体の調達や予算執行、各組織の資産の洗い出しやデータ整備の見積もり不足は、事前の対策で軽減できます。

調達手続き・予算執行サイクルによるスケジュール制約

制度上の手続きは、着手時期を左右します。対策としては、契約後すぐに設計へ進めるための準備と、稼働日からの逆算が基本になります。

  • 契約前の準備:要件の整理と現状調査
  • 工程の共有:クリティカルパスと、意思決定が工程に与える影響を見える形にする

自治体や教育機関は、民間のように任意の時期に発注できません。議会の承認、予算編成、入札や調達の制度によって、着手の時期が決まります。

契約が遅れると、後続の工程も後ろ倒しになります。年度末や新学期の稼働日から逆算すると、作業期間が想定より短くなることもあります。

企業でも、全社統合の稟議や予算承認に、想定以上の時間がかかる場合があります。

レガシー資産の棚卸し・データクレンジングの見積もりの甘さ

洗い出しの漏れやデータ整備の軽視は、移行後の手戻りを招きます。そのため、初期段階で対象を把握し、作業の順番を定めておきます。

  • 初期調査:資産とデータの洗い出しに充てる専用期間
  • 段階的な移行:影響の大きい領域から順に進める

長年のシステムには、当初の設計にない独自の改修や、部門別のシャドーITが積み重なっていきます。実態を把握しないまま移行すると、データの不整合や連携漏れが後から判明し、大きな手戻りになります。

分散したデータの表記ゆれや重複、欠損を整えるには、数週間から数ヶ月かかる場合があります。工数を軽く見積もると、納期遅延に直結しやすくなります。

日程は、想定以上のクレンジング工数を前提に組みます。洗い出しのあとは、移行対象に優先順位を付けておきます。

ポイント

納期遅延を避けるには、契約前に要件整理と現状調査を進め、移行前に資産とデータの洗い出しへ時間を割くことが基本です。遅延の型を知っておくと、計画段階で見積もりの甘さに気づけます。

納期を守るための発注・体制づくりのポイント

段階的移行で先行導入し、運用上の課題を確かめてから全体展開へ進む流れを示す図。
先行導入で得た知見を、組織全体へ広げる展開に反映します。

納期は技術計画に加え、進め方と体制にも左右されます。複数のセクターやベンダーが関わる統合では、段階的な移行と、情シス・現場・外部パートナーの役割分担が欠かせません。

段階的移行(パイロット校・部署→全体展開)によるリスク低減

まず一校・一課・一部署で先行導入し、得た知見を全体展開に反映します。こうした段階移行は、納期遵守とリスク低減に有効です。

  • 先行検証:全体展開の前に、運用上の課題を確かめる
  • 段階展開:組織の規模に合わせた、運用範囲の広げ方

パイロットでは、想定外の業務フローやデータ移行の不整合、操作性への要望を洗い出せます。その結果、後続の段階での手戻りを減らせます。

また、自治体のガバメントクラウド移行やDXでは、導入後に定着期間を置き、伴走支援を行う進め方も広く採られています。

ビッグバン移行は、予定を立てやすく見えても、問題が起きた時点で全体が止まるリスクがあります。そのため、大規模な組織ほど段階展開が現実的です。

情シス部門と外部パートナーの役割分担・体制設計

予定どおりに進めるには、発注者側の体制づくりが欠かせません。具体的には、業務要件と技術作業の分担を決めておきます。

  • 発注者側:業務要件の整理と、現場との調整
  • 外部パートナー:技術設計・構築・移行作業

企業の情シス、自治体の情報政策担当課、教育機関の情報システム担当が、全体を横断して統括します。さらに、複数の外部パートナーが関わる場合は、連携の調整と進捗の管理を担います。

外部任せでは現場固有の知識が設計に反映されず、後工程の手戻りにつながります。一方、すべてを内製すると専門人材の確保が難しく、日程のボトルネックになり得ます。

技術作業は実績のあるパートナーに委ねます。そのうえで、定期的な進捗共有によって、発注者と各パートナーの認識のずれを早めに解消します。

ポイント

納期を守るには、段階的な移行と役割分担を最初に決めておくことが欠かせません。役割があいまいだと、現場固有の知識が設計に届かず、手戻りが生じやすくなります。

まとめ

情報インフラ統合の対象範囲と工程、期間の目安を、三つのセクターごとに整理しました。遅延要因と対策、発注・体制づくりも解説しました。

小規模なパッケージ導入は3ヶ月程度、中規模の業務標準化・クラウド移行は半年〜1年強が目安です。全庁的な統合や大規模なマルチアカウント基盤整備は、1年〜複数年を要します。

上流工程に全体工数の4割前後を配分することが、結果として最短の納期につながります。

計画には、業務を止められない制約や過渡期の連携を含めておきます。さらに、調達・予算の周期とレガシー資産の洗い出しも組み込む必要があります。そのうえで、段階展開と明確な役割分担が、三つのセクターでの成功につながります。

まず自組織のシステムを洗い出し、複数のパートナーに相談してみましょう。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。