ITシステム障害復旧は、平常時は効果が見えにくいものの、停止時の損失を抑えられます。一方で継続コストもかかります。内製か外部委託か、契約形態、SLAのレベルをどう選ぶかが判断の要になります。
全体像をまだ把握していない方は、まずITシステム障害復旧の完全ガイドから読むことをおすすめします。
▼全体ガイドの記事
・ITシステム障害復旧の完全ガイド
・業務システム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「業務システム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
・スクラッチシステム開発を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「スクラッチシステム開発の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
障害復旧体制を整えるメリットとデメリット
まずは、障害復旧体制を整えること自体のメリットとデメリットを見ます。投資として妥当かを判断するには、得られる効果とかかる負担の両方を正しく見積もる必要があります。
メリットは機会損失の防止と事業継続性の確保
最大のメリットは、停止時の機会損失を防げる点です。平常時には使われない保険のように見えても、障害復旧は、止まったときに発生する具体的な損失を防ぐ投資と捉えられます。
もう一つのメリットは、事業継続性と顧客信頼の確保です。障害が頻発し、復旧も遅い企業は、顧客や取引先からの信頼を失います。一方、障害が起きても速やかに復旧し、状況を適切に報告できる企業は、むしろ信頼を高められます。
さらに、復旧体制を整える過程で監視やログの基盤が充実すれば、障害の予兆を早く捉えて、大障害に至らせない予防効果も得られます。これらは数値化しにくいものの、長期的な事業価値に直結するメリットです。
効果は、数字で示せるものと示しにくいものに分けて捉えます。
- 数値で示せる効果:停止による機会損失の圧縮
- 数値化しにくい効果:顧客信頼と事業継続性の確保
一次データでは、総務省2025年版で、金融・医療・EC系の5分以上の停止が1回あたり平均1,200万円の機会損失になるとされています。また、Gartner 2024では、ダウンタイム1分あたり5,600米ドルの損失とされています。
デメリットは継続コストと待機費の負担感
障害が起きない月も、いつでも対応できる体制を保つための待機費がかかります。これが、「障害ゼロの月は無駄に感じる」という負担感につながります。
このデメリットを和らげる考え方が、保守費の「投資化」です。障害対応の余剰工数を、新機能開発や改善作業へ振り替える契約モデル(充填型保守)を採れば、待機費は保険料にとどまらず、システムを育てる投資に変わります。
riplaは、フルスクラッチ受託と国内運用保守の立場から、障害ゼロの月の余剰工数を改善開発に充てる伴走型を重視しています。
コスト負担は、契約設計を工夫すればシステムの継続的な価値向上へ転換できます。判断では、この視点を持つことが大切です。
この負担は、継続費用と待機費の二つに分けて見ます。
- 継続費用:運用・監視や緊急障害対応に毎月かかる費用
- 待機費:障害が起きない月にも体制を保つためにかかる費用
一次データでは、監視は月額5万〜20万円、24時間の緊急時の対応は月額10万〜20万円が相場です。
内製と外部委託の判断基準

体制を整えると決めたら、次は「自社で抱えるか、外部に委託するか」を判断します。24時間365日の復旧体制を内製するか、MSP(マネージドサービスプロバイダ)やSOCに委託するかが、その分かれ目です。それぞれの損得を、順に見ていきます。
人件費から見た内製のメリットとデメリット
最大のデメリットは人件費とシフト維持の負担です。24時間365日の体制を内製で組むには、複数人のシフト勤務が必要になり、人月単価は監視オペレーターで60万〜80万円です。
運用設計やインシデント分析は80万〜120万円、運用管理者は120万円以上が目安です。夜間や休日もカバーできる人数をそろえると、相当な固定費になります。
さらに、内製には属人化のリスクも伴います。少人数で回している場合、キーパーソンが退職や休職をすると、復旧力が一気に低下します。
自社が止められない重要システムを多数抱え、24時間体制を維持できるだけの人員と予算がある大企業であれば、内製も選択肢になります。一方で、人員に余裕のない中小企業では、内製の固定費と属人化リスクが委託のコストを上回りやすいと見られます。
内製の強みと弱みは、こう整理できます。
- 強み:自社システムへの深い理解と、迅速な判断
- 弱み:人件費とシフト維持の負担、属人化のリスク
外部委託のメリットとROIの考え方
IT系BPO市場は2024年度に3兆1,220億円(矢野経済研究所)に達しており、外部委託は一般的な選択肢として定着しています。
委託すれば、シフト勤務の人件費や採用・育成の手間を負わずに、専門の体制を得られます。
判断では、ROIを具体的に計算することが大切です。内製で24時間体制を組んだ場合の年間人件費(複数人分)と、委託した場合の年間費用を並べて比べます。
多くの中小企業では、委託のほうが安くつき、属人化リスクも避けられます。一方で、委託のデメリットとしては、自社システムへの理解が委託先に依存する点や、対応範囲外の作業で追加費用が発生する点が挙げられます。
これらは、手順書の共有と対応範囲の明確化で軽減できます。
判断の基準は、自社の人員と予算で内製の固定費と属人化リスクを許容できるか、それとも委託で変動費化するほうが合理的かです。この点を、ROIの数字で見極めます。
外部委託は、強みと注意点を分けて捉えます。
- 強み:24時間365日の体制を、人を雇うより低コストで確保できる
- 注意点:自社システムへの理解が委託先に依存し、対応範囲外で追加費用が生じる
一次データでは、MSP的なフルマネージドが20,000円/台(月額)です。SOCでは、SHIFTのSOC運用支援が月9万円〜、CEC SOCが月30万円〜(1,000台規模)という料金です。
月額固定型と従量課金型の判断基準

委託を選ぶなら、次に契約形態を決める必要があります。月額固定型で払うか、実働・従量課金型にするかです。この選択は、自社の障害発生パターンと予算管理の考え方によって変わります。それぞれの向き不向きを見ていきます。
月額固定型が向くケースと待機費の考え方
月額固定型は、毎月決まった額を払い、その範囲で監視と障害対応を受ける形です。
常に対応できる体制を保つための待機費が含まれるため、障害が起きない月は割高に感じることがあります。これがデメリットです。
向くのは、止められない重要システムを抱える企業です。
待機費の負担感をどう捉えるかが、固定型を選ぶかどうかの分かれ目です。前述のとおり、障害ゼロの月の余剰工数を改善開発に振り替える充填型保守を採れば、固定費を投資に転換できます。
一方、そうした振り替えの仕組みがなく、純粋に待機しているだけの固定費であれば、障害頻度の低い企業には割高になります。
固定型を選ぶなら、待機費が無駄にならない契約設計になっているかを確かめることが、判断の質を高めます。
月額固定型で押さえたい点は、二つあります。
- 強み:予算が読みやすく、障害時も追加費用を気にせず即応を頼める
- 注意点:障害が起きない月にも、待機費が割高に感じられる
従量課金型が向くケースと注意点
従量課金型は、実際に発生した障害対応の分だけ払う形です。一次データでは、スポット対応は1件3万〜10万円といった料金です。
稼働量にばらつきがある企業にも、この形は向きます。
障害が起きなければ監視費は最小限で済み、起きたときだけ対応費を払えばよい、という合理性があります。
注意点は、障害が多発した月に費用が膨らみ、予算を読みにくいことです。重大障害が立て続けに起きれば、固定型を上回る出費になることもあります。
また、従量型では即応性が固定型に劣る場合があり、契約によっては、対応を依頼してから稼働まで時間がかかることもあります。判断の基準は、自社システムの安定度と障害発生頻度です。
障害が稀なら従量型、障害リスクが高く即応が必須なら固定型と、障害の頻度で選び分けるのが基本の見極めです。
両者を組み合わせ、監視は固定、スポット対応は従量とするハイブリッドも、有効な選択肢です。
従量課金型は、向く場面と注意点に分けて見ます。
- 向く場面:障害が少ない月の費用を抑えたい中小企業や、安定したシステムを運用する企業
- 注意点:障害が多発した月に費用が膨らみ、即応性も固定型に劣る場合がある
努力目標型SLAと保証型SLAの判断基準

最後の判断軸は、SLAをどのレベルで結ぶかです。努力目標型で足りるのか、ペナルティを伴う保証型まで求めるのかを決める必要があります。この選択は、復旧の確実性と費用のトレードオフを左右します。それぞれの特徴を見ていきます。
努力目標型のメリットとリスク
努力目標型SLAは、「できる限り早く対応します」という形で、復旧時間や応答時間を目標として掲げる契約です。未達でもペナルティはありません。
価格を低くできるのは、ベンダー側もリスクを負わない分です。障害時に多少の遅れを許容できるなら、この形が選択肢になります。
リスクは、重大障害が起きて復旧が遅れても、契約上の責任を問えないことです。未達でも補償がないため、長時間のダウンタイムを受け入れざるを得ない可能性があります。
重要度の低いシステムにまで保証型を求めると、過剰投資になります。
努力目標型は、費用面の強みと契約上のリスクに分けて見ます。
- 強み:費用を抑えられ、影響の小さいシステムなら十分な場合が多い
- リスク:未達でも補償がなく、長時間のダウンタイムを受け入れる可能性がある
止まれば1,200万円規模の損失が出る基幹系には、努力目標型では不十分です。
保証型を選ぶべきケースと法的リスクの確認
保証型SLAは、復旧時間や応答時間を保証し、未達時にはサービスクレジット(利用料の返金)などのペナルティを伴う契約です。
Cloud Naviの重大issue 15分以内一次対応保証のように、時間を明確に約束する形です。
止められない基幹系や、停止が顧客や売上に直結するシステムには、保証型を選ぶべきです。費用は努力目標型より高くなりますが、その分の安心は事業継続の保険になります。
保証型を選ぶ際に必ず確認したいのは、補償の上限と免責条項です。サービスクレジットの上限は利用料の数パーセント程度にとどまることが多く、損害賠償にも上限が設定されています。
間接損害(停止による逸失利益など)は、免責されるのが一般的です。そのため、保証型でも実際の損失額をすべて補填してもらえるとは限りません。
この限界を理解したうえで、契約の保証は、あくまで「ベンダーに本気で対応させる仕組み」と位置づけます。また、本当に止められないシステムは、冗長化などの自衛策と組み合わせることが賢明です。
SLAのレベル選びは、システムの事業影響度と、許容できるリスクの大きさから逆算するのが原則です。
保証型は、確実性と契約上の限界の二つで見ます。
- 強み:復旧時間や応答時間が契約で担保される
- 注意点:補償には上限や免責があり、損失をすべて補えるわけではない
まとめ
ITシステム障害復旧の判断は、四つの軸で整理できます。体制を整えるメリットは機会損失の防止と事業継続性、デメリットは継続コストです。ただし、このコストは充填型保守によって投資に転換できます。
内製と委託は人件費とROIで比べ、中小企業では委託による変動費化と属人化の回避が合理的です。月額固定型と従量課金型は障害頻度と予算管理の考え方で選び、努力目標型と保証型のSLAは事業影響度から逆算します。
正解は、「とにかく手厚く」にも「とにかく安く」にも寄せず、システムごとの重要度に応じてメリハリをつけることです。
判断で大切なのは、停止1回あたり1,200万円・1分あたり5,600ドルといった損失統計を自社のシステムに当てはめ、復旧体制にかける費用と防げる損失を天秤にかけることです。
この数値の比較こそが、過剰でも過少でもない適正な投資判断を導きます。
riplaは、フルスクラッチ受託と国内運用保守の立場から、障害復旧を「コスト」ではなく「事業継続の投資」として捉えています。また、各システムの重要度に合った方式選びを支援しています。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・業務システム開発の完全ガイドブック
・スクラッチシステム開発の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>


株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
