IT人材不足への対策を比較検討するとき、「人を増やす」以外にどんな打ち手があるのかを、機能や役割のレベルで整理したいと考える担当者は多いはずです。IT人材不足は、経済産業省の推計で2030年に最大約79万人とされる業界全体の構造問題であり(出典:経済産業省)、自社単独の採用努力だけで埋められるものではありません。だからこそ、不足を解消する各アプローチが「どんな機能・役割を提供してくれるのか」を理解しておくと、自社に欠けているピースを補う打ち手を選びやすくなります。
本記事は、IT人材不足を解消する手段が果たす「機能・役割」を一覧として整理する解説です。具体的には、外部開発チームによる即時のリソース補強、デジタルスキル標準に沿った人材アサイン、ナレッジ移管、既存社員向けの育成プログラム、生成AIなどによる定型業務の省力化という5つの観点から、それぞれが何を担い、どんな効果を生むのかを掘り下げます。単なるツールの機能比較ではなく、「不足という穴を、どの役割で埋めるか」という視点で読み解くことで、自社の対策の全体像が見えてくるはずです。なお、IT人材不足対策の全体像をまだ把握していない方は、まずIT人材不足開発の完全ガイドから読むことをおすすめします。
外部チームによる即時リソース補強の機能

IT人材不足の解消策のなかで、もっとも即効性があるのが、外部の開発チームによるリソース補強です。採用には募集から入社まで数か月かかり、育成にはさらに年単位の時間が必要ですが、外部チームは契約すればすぐにプロジェクトに加わり、足りない開発力を補ってくれます。この「待たずに増強できる」という機能こそ、外部活用が人材不足対策の中心に据えられる理由です。
採用を待たずに開発力を増強する機能
外部チーム活用の核心は、必要なスキルセットを持つエンジニアを、必要な期間だけ確保できることです。新規プロジェクトの立ち上げ期に開発力を一気に増やし、運用フェーズに入ったら規模を絞る、といった柔軟な増減ができます。自社で正社員を抱える場合、繁忙期に合わせて採用すると閑散期に余剰となりますが、外部リソースなら需要の波に合わせて調整できます。この機能は、人材不足の企業が固定費を膨らませずに開発を進めるうえで大きな意味を持ちます。
さらに、外部チームは複数のプロジェクトを経験しているため、自社にないノウハウや最新の技術知見を持ち込んでくれます。社内のエンジニアだけでは試行錯誤に時間がかかる課題も、経験豊富な外部リソースなら短期間で解決できることがあります。即時のリソース補強は単なる頭数の増強ではなく、「足りないスキルそのものを補う」機能を兼ねている点が重要です。採用市場で奪い合いになっている希少なスキルほど、外部活用で補う価値が高まります。
需要の波に合わせて体制を伸縮させる機能
IT開発の需要は一定ではなく、新サービスの立ち上げや業務システムの刷新といった大きな山場では一時的に大量の開発力が必要になります。外部チームのリソース補強機能は、こうした需要の山を吸収し、平時は少人数で運用する、という体制の伸縮を可能にします。これにより、ピークに合わせて正社員を増やしすぎて閑散期に持て余す、という人材配置の非効率を避けられます。
この伸縮機能を活かすには、外部チームとの関係を一過性の発注ではなく、継続的なパートナーシップとして築くことが効果的です。自社の事業や業務を理解した外部チームであれば、需要が高まったときに素早く体制を立ち上げ、落ち着いたら縮小する、という調整がスムーズになります。人材不足の解消は、人を抱え込むことではなく、必要なときに必要な開発力を呼び出せる体制を持つこと、と捉え直すと、外部活用の機能的な価値が見えてきます。具体的にどの役割を外部に求めるべきかを整理するには、関連記事の『IT人材不足のRFP/要件定義書/提案依頼書について』もあわせてご覧ください。
スキル標準に沿った人材アサインの機能

「IT人材が足りない」と言うとき、実は何のスキルを持つ人材が、どの役割で足りないのかが曖昧なまま語られていることがあります。不足を埋める前に、必要な人材像を言語化しておくと、外部活用も内部育成も無駄打ちになりません。ここで物差しになるのが、経済産業省が整備したデジタルスキル標準です。標準に沿って役割を定義する機能を持てば、人材アサインの精度が一段上がります。
DX推進人材5類型で役割を見極める機能
経済産業省とIPAが整備したデジタルスキル標準では、DXを推進する人材を5つの類型に分けています。具体的には、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティの5類型です(出典:経済産業省)。この枠組みを使うと、自社が「企画を業務とITの橋渡しに落とし込む人材が足りない」のか、「実装するエンジニアが足りない」のか、「セキュリティを見る人がいない」のかを、漠然とした不足感ではなく具体的な役割の欠如として特定できます。
この役割を見極める機能が重要なのは、不足している役割によって最適な打ち手が変わるからです。ビジネスアーキテクトのような上流の役割は、自社の事業を深く理解する必要があるため内部育成が向き、専門性の高いセキュリティやデータサイエンスは外部活用や専門ベンダーへの委託が向く、といった判断ができます。標準という共通言語を持つことで、外部パートナーとの会話も「うちにはこの類型が足りないので、ここを補ってほしい」と具体的になり、ミスマッチを防げます。
足りない役割だけを的確に補う配置機能
スキル標準に沿って役割を整理する機能の利点は、過不足のない人材配置ができることです。すべての類型をフルにそろえようとすれば、人材不足の企業には負担が大きすぎます。自社のフェーズや事業に照らして、いま本当に必要な役割だけを優先して補えば、限られたリソースを有効に使えます。たとえば立ち上げ期はソフトウェアエンジニアの外部補強を厚くし、運用が安定したらサイバーセキュリティの専門性を加える、といった段階的な配置が可能になります。
この的確な配置機能は、デジタルスキル標準のうち、全ビジネスパーソンが身につけるべきリテラシーを示すDSS-Lと、専門人材向けのDSS-Pという2つの層を意識すると、さらに精緻になります(出典:経済産業省)。現場の社員には全社共通のリテラシーを底上げし、専門人材は外部活用や育成で補う、という二段構えで考えると、限られたリソースで不足を埋める道筋が描けます。役割を見極め、足りないところだけを的確に補う。この配置機能こそ、人材不足を効率よく解消する基盤になります。
ナレッジ移管と内部育成プログラムの機能

外部リソースで一時的に開発を回せても、ノウハウが外部に留まったままでは、契約が終われば自社に何も残りません。これを防ぐのが、ナレッジ移管と内部育成プログラムの機能です。外部チームの知見を社内に移し、既存社員を育てることで、不足を一時しのぎでなく構造的に和らげられます。外部活用と内部育成は対立する選択肢ではなく、組み合わせてこそ効く機能です。
外部の知見を社内に残すナレッジ移管機能
ナレッジ移管の機能とは、外部チームが開発した内容を、設計の意図や運用の勘所まで含めて社内に引き継ぐ仕組みのことです。具体的には、ドキュメントの整備、ペアでの開発、定例での技術共有、運用引き継ぎといった形をとります。これがあると、外部との契約が終わった後も、自社の担当者が小さな改修やトラブル対応を自走できるようになり、再び外部に頼り切る依存状態を避けられます。
このナレッジ移管機能が働くかどうかは、外部パートナーの姿勢に大きく左右されます。ブラックボックス化して継続発注を狙うパートナーもいれば、積極的に手の内を明かして自走を支援するパートナーもいます。人材不足の企業にとって望ましいのは後者です。riplaはフルスクラッチ受託と国内伴走の立場から、外部の即戦力で開発を進めながら、設計の意図や運用ノウハウを社内に残すナレッジ移管を重視しています。外部活用の真価は、開発が終わった後に自社に何が残るかで決まります。
既存社員を即戦力化する育成プログラム機能
内部育成プログラムの機能は、すでに自社の業務を理解している社員に、IT・デジタルのスキルを身につけてもらい、内製力を底上げするものです。新規採用が難しい人材不足の状況では、業務知識とITスキルを兼ね備えた人材を社内で育てることが、長期的にもっとも安定した解になります。経済産業省は学び直しを支援する仕組みとして、デジタル人材育成のためのポータルなども整備しており(出典:経済産業省)、こうした公的な支援を活用すれば、育成のコストと負担を抑えられます。
育成プログラム機能を効果的にするには、座学に終わらせず、自社の実課題を題材に手を動かす実践型にすることが鍵です。外部パートナーが講師や伴走役を担い、社員がつまずいたときに支援する体制を組み合わせれば、育成が空回りせず即戦力化につながります。注意したいのは、育てた社員が転職してしまうリスクです。スキルに見合った役割と処遇を用意し、活躍の場を明確にする定着の設計まで含めて、育成プログラムは初めて機能します。育成と外部活用を並走させ、ナレッジを社内に蓄積する。この組み合わせが、不足を構造的に和らげる役割を果たします。
生成AI・ノーコードによる省力化の機能

人材不足を解消する第三の系統が、そもそもの仕事量を減らす省力化の機能です。生成AIやノーコードツールを使って定型業務を自動化すれば、限られた人手を高付加価値な仕事に集中させられます。人を増やせないなら、一人あたりの生産性を高める。この発想は、構造的な不足が続くなかで、現実的かつ持続可能なアプローチです。
定型業務を自動化して人手を空ける機能
生成AIやノーコードツールの省力化機能は、これまでエンジニアの手を必要としていた作業の一部を、専門家でなくても扱える形に変えます。たとえば、定型的な文書作成、データの集計や整形、簡単な業務アプリの構築といった作業は、ノーコードや生成AIの支援で、現場の担当者自身が対応できるようになります。これにより、貴重なエンジニアのリソースを、より難易度の高い設計や開発に振り向けられます。
この省力化機能の本質は、人を置き換えることではなく、人の手が空くことです。経済産業省は生成AIが定型業務の自動化を通じて生産性向上に寄与すると指摘しており(出典:経済産業省)、人材不足の企業にとって、一人あたりが生み出す価値を引き上げる手段になります。ただし、現場の担当者がツールを使いこなせるよう、前述のリテラシー教育とセットで導入することが前提です。ツールだけ入れても使われなければ、省力化の機能は発揮されません。
生成AIの二面性に備えるガバナンス機能
生成AIによる省力化には二面性があります。定型業務を自動化して生産性を高める一方で、若手が経験を積む機会を奪い、長期的な人材育成を妨げかねないという「教育パラドックス」が指摘されています(出典:経済産業省)。省力化の機能を正しく使うには、何を自動化し、何を人の経験として残すかを意識的に切り分ける必要があります。すべてを自動化すれば、数年後に育つべき人材がいなくなる、という落とし穴を避けなければなりません。
もう一つ備えるべきが、ガバナンスの機能です。現場が自由にツールを使い始めると、会社が把握していないシステムやデータの利用(シャドーIT)が広がり、情報漏えいやインシデントのリスクが高まります。省力化を進めるなら、利用ルールの整備、データの取り扱い基準、承認の仕組みといったガバナンス機能を同時に用意することが欠かせません。省力化は便利さとリスクが背中合わせであり、便利さだけを取り入れると思わぬ事故につながります。こうしたリスクの詳細は、関連記事の失敗・リスク編もあわせてご覧ください。
まとめ

IT人材不足を解消する機能・役割を振り返ると、それは「足りないリソースを即座に補う外部活用」「足りない役割を見極めるスキル標準に沿ったアサイン」「外部の知見を社内に残すナレッジ移管」「既存社員を育てる内部育成プログラム」「そもそもの仕事量を減らす省力化」という5つに整理できます。これらは単独で使うより、組み合わせてこそ効果を発揮します。外部の即戦力で開発を止めず、その過程でノウハウを社内に残し、育成と省力化で構造的に負担を軽くする。これが、2030年に最大約79万人という不足を前提とした現実的な打ち手です(出典:経済産業省)。
機能を選ぶときに大切なのは、「何の役割が、いつまでに、どの程度足りないのか」を具体的に特定することです。デジタルスキル標準を物差しに役割を言語化し、即時性の高いものは外部で、育てられるものは内部で補い、定型業務は省力化する。この役割ごとの最適な機能の当てはめが、不足の解消を前に進めます。riplaはフルスクラッチ受託と国内伴走を組み合わせ、即時のリソース補強と役割整理、ナレッジ移管を一体で支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。
株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
