IT人材不足の必要機能や標準機能の一覧について

IT人材不足の解消には、採用だけでなく、外部チームや社内育成、省力化といった手段を組み合わせます。対策を選ぶときは、発注側が、不足している役割と必要な期間を見極めます。

各手段が担う役割はそれぞれ異なるため、機能ごとに整理すると、自社で補うべき範囲が見えてきます。

  • 即時のリソース補強:外部開発チームで不足する開発力を補う
  • 人材アサイン:デジタルスキル標準を参考に、必要な役割を見極める
  • ナレッジ移管:外部の知見を社内に残す
  • 社内育成:既存社員向けの育成プログラムによるスキルの底上げ
  • 定型業務の省力化:生成AIやノーコードで人手を空ける

対策全体を確認したい方は、IT人材不足対策の完全ガイドもご覧ください。

外部チームによる即時リソース補強の機能

外部チームによるリソース補強の機能を、開発力の増強、体制の伸縮、スキルの補完、技術知見の持ち込みに分けた図。
必要な期間に限った補強が、開発力と専門知見の両方を支えます。

IT人材不足の解消策のなかで、もっとも即効性があるのが、外部の開発チームによるリソース補強です。採用には募集から入社まで数か月かかり、育成にはさらに年単位の時間が必要になります。

一方で、外部チームは契約すればすぐにプロジェクトに加わり、足りない開発力を補ってくれます。「待たずに増強できる」というこの機能こそ、外部活用が人材不足対策の中心に据えられる理由です。

採用を待たずに開発力を増強する機能

外部チーム活用の核心は、必要なスキルセットを持つエンジニアを、必要な期間だけ確保できることです。新規プロジェクトの立ち上げ期に開発力を一気に増やし、運用に入ったら規模を絞る、といった柔軟な増減ができます。

自社で正社員を抱える場合、繁忙期に合わせて採用すると閑散期に余剰となりますが、外部リソースなら需要の変動に合わせて調整できます。この機能は、人材不足の企業が固定費を膨らませずに開発を進めるうえで、大きな意味を持ちます。

さらに、外部チームは複数のプロジェクトを経験しているため、自社にないノウハウや最新の技術知見を持ち込めます。社内では試行錯誤に時間がかかる課題も、経験豊富な外部リソースなら短期間で解決できることがあります。即時のリソース補強は頭数だけでなく、「足りないスキルそのもの」を補う機能も兼ねており、採用市場で奪い合いになっている希少なスキルほど、外部活用で補う価値が高まります。

需要の変動に応じて体制を伸縮させる機能

IT開発の需要は時期によって大きく変わります。新サービスの立ち上げや業務システムの刷新といった節目では、一時的に大量の開発力が必要になります。そこで、外部チームのリソース補強は、こうした需要の増減を吸収し、平時は少人数で運用するという体制の伸縮を可能にします。

これにより、ピークに合わせて正社員を増やしすぎて閑散期に持て余すといった、人材配置の非効率を避けられます。この伸縮機能を活かすには、外部チームとの関係を、一過性の発注ではなく継続的なパートナーシップとして築くことが効果的です。

自社の事業を理解した外部チームなら、需要が高まったときに素早く体制を立ち上げ、落ち着いたら縮小する調整もスムーズです。人材不足の解消は、人を抱え込むことではなく、必要なときに開発力を呼び出せる体制を持つことだと捉えると、外部活用の価値が見えてきます。具体的にどの役割を外部に求めるべきかを整理するには、関連記事の『IT人材不足のRFP/要件定義書/提案依頼書について』もあわせてご覧ください。

ポイント

採用や育成では間に合わないときは、外部チームで開発力を補うかを先に検討します。ただし、外部に頼り切らないよう、契約後に社内へ何が残るかも確認しておくことが大切です。

スキル標準に沿った人材アサインの機能

デジタルスキル標準を中央に置き、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティの5類型を周囲に示す図。
役割を類型で捉えると、不足している人材像を具体化できます。

「IT人材が足りない」と言うとき、実は何のスキルを持つ人材が、どの役割で足りないのかが曖昧なまま語られていることがあります。不足を埋める前に、必要な人材像を言語化しておけば、外部活用も内部育成も無駄打ちになりません。

ここで物差しになるのが、経済産業省が整備したデジタルスキル標準です。そのうえで、標準に沿って役割を定義する機能を持てば、人材アサインの精度が一段上がります。

DX推進人材5類型で役割を見極める機能

経済産業省とIPAが整備したデジタルスキル標準では、DXを推進する人材を5つの類型に分けています。ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティストなどに加え、ソフトウェアエンジニアとサイバーセキュリティの計5類型です(出典:経済産業省)。

この枠組みを使えば、自社に足りないのが、業務とITの橋渡しを担う人材か、実装するエンジニアか、セキュリティを見る人かを、具体的な役割として特定できます。この役割を見極める機能が重要なのは、不足している役割によって最適な打ち手が変わるからです。

たとえば、ビジネスアーキテクトのような上流の役割は、自社の事業を深く理解する必要があるため内部育成が向き、専門性の高いセキュリティやデータサイエンスは、外部活用や専門ベンダーへの委託が向く、といった判断ができます。標準という共通言語を持つことで、外部パートナーとの会話も「うちにはこの類型が足りないので、ここを補ってほしい」と具体的になり、ミスマッチを防げます。

足りない役割だけを的確に補う配置機能

スキル標準に沿って役割を整理する利点は、過不足のない人材配置ができることです。すべての類型をフルにそろえようとすれば、人材不足の企業には負担が大きすぎます。そこで、自社のフェーズや事業に照らして、いま本当に必要な役割を優先して補えば、限られたリソースを有効に使えます。

たとえば、立ち上げ期はソフトウェアエンジニアの外部補強を厚くし、運用が安定したらサイバーセキュリティの専門性を加える、といった段階的な配置が可能になります。デジタルスキル標準には、全ビジネスパーソンが身につけるべきリテラシーを示すDSS-Lと、専門人材向けのDSS-Pという2つの層があります(出典:経済産業省)。この2つを意識すると、配置機能はさらに精緻になります。

現場の社員には全社共通のリテラシーを底上げし、専門人材は外部活用や育成で補うと考えれば、限られたリソースで不足を埋める道筋が描けます。役割を見極めたうえで、足りない部分だけを的確に補うわけです。この配置機能こそ、人材不足を効率よく解消する基盤になります。

ポイント

不足している役割を、デジタルスキル標準の類型に照らして特定してから、外部と内部のどちらで補うかを決めます。役割が見えていれば、外部パートナーにも補ってほしい類型を具体的に伝えられます。

ナレッジ移管と内部育成プログラムの機能

外部リソースで一時的に開発を回せても、ノウハウが外部に留まったままでは、契約が終わった後に自社へ何も残りません。これを防ぐのが、ナレッジ移管と内部育成プログラムの機能です。

外部チームの知見を社内に移し、既存社員を育てることで、不足を一時しのぎではなく構造的に和らげられます。外部活用と内部育成は、組み合わせてこそ効く機能です。

外部の知見を社内に残すナレッジ移管機能

ナレッジ移管の機能とは、外部チームが開発した内容を、設計の意図や運用の勘所まで含めて社内に引き継ぐ仕組みのことです。具体的には、ドキュメントの整備やペアでの開発、定例での技術共有や運用引き継ぎといった形で進めます。

これがあると、契約が終わった後も、自社の担当者が小さな改修やトラブル対応を自走でき、再び外部に頼り切る依存状態を避けられます。このナレッジ移管機能が働くかどうかは、外部パートナーの姿勢に大きく左右されます。ブラックボックス化して継続発注を狙うパートナーもいる一方で、積極的に手の内を明かして自走を支援するパートナーもいます。

人材不足の企業にとって望ましいのは後者です。riplaはフルスクラッチ受託と国内伴走の立場から、外部の即戦力で開発を進めながら、設計の意図や運用ノウハウを社内に残すナレッジ移管を重視しています。外部活用の真価は、開発が終わった後に自社に何が残るかで決まります。

既存社員を即戦力化する育成プログラム機能

内部育成プログラムの機能は、自社の業務を知る社員にIT・デジタルのスキルを身につけてもらい、内製力を底上げするものです。新規採用が難しいなかで、業務知識とITスキルを兼ね備えた人材を社内で育てることが、長期的にもっとも安定した解になります。また、経済産業省は学び直しの仕組みとして、デジタル人材育成のポータルなども整備しており(出典:経済産業省)、公的な支援を活用すれば育成の負担を抑えられます。

育成プログラムの効果を高めるには、座学に終わらせず、自社の実課題を題材に手を動かす実践型にすることが鍵です。外部パートナーが講師や伴走役を担い、社員がつまずいたときに支援する体制を組み合わせれば、育成が空回りせず即戦力化につながります。ただし、育てた社員が転職してしまうリスクもあります。

スキルに見合った役割と処遇を用意し、活躍の場を明確にする定着の設計まで含めて、育成プログラムは初めて機能します。そのうえで、発注側は育成と外部活用を並走させ、ナレッジを社内に蓄積する必要があります。この組み合わせが、不足を構造的に和らげる役割を果たします。

ポイント

外部活用は、契約後に社内へ何が残るかで評価するのが目安です。ナレッジ移管と内部育成を組み合わせ、育てた社員が定着する処遇まで考えると、不足を一時しのぎで終わらせずに済みます。

生成AI・ノーコードによる省力化の機能

情報漏えいやインシデントのリスクを中央に置き、利用ルール、データの取り扱い基準、承認の仕組みで囲む図。
ルール・基準・承認を整え、ツールの利用を支えます。

人材不足を解消する第三の系統は、そもそもの仕事量を減らす省力化の機能です。生成AIやノーコードツールで定型業務を自動化すれば、限られた人手を付加価値の高い仕事に集中させられます。

人を増やせないのであれば、一人あたりの生産性を高める、という発想が必要になります。この発想は、構造的な不足が続くなかで、現実的かつ持続可能なアプローチです。

定型業務を自動化して人手を空ける機能

生成AIやノーコードツールは、エンジニアの手が要った作業の一部を、専門家でなくても扱える形に変えます。たとえば、定型的な文書作成やデータの集計、簡単な業務アプリの構築といった作業は、ノーコードや生成AIの支援で、現場の担当者自身が対応できるようになります。これにより、貴重なエンジニアのリソースを、より難易度の高い設計や開発に振り向けられます。

この省力化の本質は、人を置き換えることではなく、人の手が空くことです。また、経済産業省は生成AIが定型業務の自動化を通じて生産性向上に寄与すると指摘しており(出典:経済産業省)、人材不足の企業にとって、一人あたりが生み出す価値を引き上げる手段になります。

ただし、現場の担当者がツールを使いこなせるよう、前述のリテラシー教育とセットで導入することが前提です。ツールだけ入れても使われなければ、省力化の機能は発揮されません。

生成AIの二面性に備えるガバナンス機能

生成AIによる省力化には二面性があり、定型業務を自動化して生産性を高める一方で、若手が経験を積む機会を奪い、長期的な人材育成を妨げかねないという「教育パラドックス」が指摘されています(出典:経済産業省)。省力化の機能を正しく使うには、何を自動化し、何を人の経験として残すかを意識的に切り分ける必要があります。

すべてを自動化すれば、数年後に育つべき人材がいなくなる、という落とし穴を避けなければなりません。もう一つ備えるべきは、ガバナンスの機能です。現場が自由にツールを使い始めると、会社が把握していないシステムやデータの利用(シャドーIT)が広がり、情報漏えいやインシデントのリスクが高まります。

省力化を進めるなら、利用ルールの整備、データの取り扱い基準、承認の仕組みといったガバナンス機能を同時に用意することが欠かせません。便利さとリスクは背中合わせで、便利さだけを取り入れると思わぬ事故につながります。こうしたリスクの詳細は、関連記事の失敗・リスク編もあわせてご覧ください。

ポイント

省力化は、人の手を空けるために進めるのが目安です。便利さだけで導入すると、若手の経験機会が減ったり、シャドーITが広がったりするため、ルールと育成を先に用意します。

まとめ

IT人材不足を解消する機能や役割は、冒頭で挙げた5つに整理できます。具体的には、足りないリソースを即座に補う外部活用、足りない役割を見極めるスキル標準に沿ったアサイン、外部の知見を社内に残すナレッジ移管があります。加えて、既存社員を育てる内部育成プログラムと、そもそもの仕事量を減らす省力化もあります。

これらは単独で使うより、組み合わせてこそ効果を発揮します。外部の即戦力で開発を止めず、その過程でノウハウを社内に残し、育成と省力化で構造的に負担を軽くする、という組み合わせです。これが、2030年に最大約79万人という不足を前提とした現実的な打ち手です(出典:経済産業省)。

機能を選ぶときに大切なのは、「何の役割が、いつまでに、どの程度足りないのか」を具体的に特定することです。デジタルスキル標準を物差しに役割を言語化し、即時性の高いものは外部で、育てられるものは内部で補い、定型業務は省力化します。役割ごとに最適な機能を当てはめることで、不足の解消が前に進みます。

riplaはフルスクラッチ受託と国内伴走を組み合わせ、即時のリソース補強と役割整理、ナレッジ移管を一体で支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。