IT人材不足のRFP/要件定義書/提案依頼書について

社内にIT人材がいない企業は、外部に開発を頼みたくても、何をどう頼めばよいか分からず、入り口でつまずきやすくなります。業務課題を要件に翻訳し、RFP(提案依頼書)にまとめてベンダーを比べる流れが、外部活用の成否を分けます。

全体像をまだ把握していない方は、まずIT人材不足開発の完全ガイドから読むことをおすすめします。

業務課題を要件に翻訳する非IT人材のフレーム

AsIs(現状)とToBe(理想)を整理し、要件を必須・優先・将来に分ける流れの図解
手段を決める前に、現状と理想から優先順位を整えます。

IT人材がいない企業が要件定義に向き合うとき、最初の壁になるのは「自分には技術が分からない」という思い込みです。

しかし、要件定義の本質は技術仕様を書くことではなく、業務の困りごとと、こうありたいという姿を明確にすることにあります。

技術への翻訳は外部の専門家が担えるため、発注側がやるべきは、業務を最もよく知る立場として課題を正確に言語化することです。

現状と理想を書き出すAsIs・ToBeのフレーム

非IT人材でも使える、もっとも基本的なフレームが、現状(AsIs)と理想(ToBe)を書き出す方法です。

まず、いまの業務を具体的な場面に分けて書き出します。

次に、その業務のどこに時間がかかり、どこでミスが起き、何に困っているかを洗い出します。

最後に、これがどうなれば理想かというToBeの姿を描きます。この三つを書き出すだけで、外部パートナーに伝えるべき要件の骨格ができます。

大切なのは、ここで解決策(どんなシステムを作るか)を急いで決めないことです。「在庫管理システムが欲しい」と手段から入ると、本当に解くべき課題を見失います。一方で、「在庫の食い違いで月に何度も発注ミスが起きている」という課題から書き出せば、外部の専門家がそれに合う手段を提案できます。

手段ではなく課題を言語化することが、人材不足の企業が要件定義で外さない第一歩です。各打ち手の役割をつかんでおけば、要件整理の見通しが立ちます。

関連記事の『IT人材不足の必要機能や標準機能の一覧について』もあわせてご覧ください。

  • AsIs(現状):誰が、いつ、何を使い、どんな手順で業務を回しているか
  • ToBe(理想):どうなれば理想といえるか、その姿

要件を必須・優先・将来で分類する考え方

業務課題を洗い出すと、やりたいことが次々に出てきます。

しかし、すべてを一度に実現しようとすると、費用も期間も膨らみ、人材不足の企業には手に負えなくなります。

そこで有効なのが、要件を「必須」「優先」「将来」の三段階に分類することです。必須は、それがないと業務が回らないもの。優先は、あると効果が大きいもの。将来は、今回は見送って次フェーズで検討するものです。

この分類があれば、限られた予算のなかで何を優先するかを決められ、ベンダーとの話も明確になります。すべてを必須にすると見積もりが膨らみ、何を削れるか分からなくなります。一方、優先度がついていれば、「予算内に収めるため、この優先要件は次フェーズに回す」といった調整が可能です。

人材不足の企業は、最初から完璧を目指すより、必須要件で小さく始め、効果を見ながら優先・将来の要件を段階的に加えていくのが堅実です。要件に優先順位をつけることは、限られたリソースを最大限に活かす知恵だと言えます。

  • 必須:業務が回るために欠かせない要件から決める
  • 将来:今回は見送り、次フェーズで検討する要件を別に残す

ポイント

業務の困りごとを技術仕様に書き換える必要はなく、AsIsとToBe、必須・優先・将来の分類を業務の言葉で整えれば十分です。技術への翻訳は外部の専門家に任せられます。

RFPに必ず盛り込むべき項目と書き方

非機能要件として利用人数、繁忙期の業務量、停止の許容、セキュリティを並べた図解
利用規模と停止時の影響も、提案の前提になります。

RFP(提案依頼書)とは、発注側が「こういう課題を解決したいので、提案してください」とベンダーに渡す文書です。RFPがあると、複数のベンダーを同じ前提で比べ、各社の提案力や相性を見極められます。

逆にRFPなしで口頭だけで頼むと、各社がばらばらの前提で見積もりを出すため、比較も交渉もできません。人材不足の企業こそ、このRFPで前提をそろえることが、外部活用を成功させる要になります。

背景・目的から評価基準までの必須項目

RFPに必ず盛り込む項目を、一つずつ見ていきます。

  • RFPに最低限盛り込むべき項目は、おおむね決まっています。
  • 1. 背景・目的:なぜこのプロジェクトを行うのか、事業上の狙い

2. 現状の課題:いま何に困っているか(AsIsと困りごと)

3. 実現したいこと:どうなりたいか(ToBeと必須・優先・将来の要件)

4. 予算・納期:おおよその予算感と希望スケジュール

5. 体制・役割分担:発注側と受注側で誰が何を担うか

6. 評価基準:どんな観点で提案を評価し、何を重視するか

これらを埋めれば、専門知識がなくても、ベンダーが提案に必要な情報がそろいます。

とくに見落とされがちなのが、予算感の明示です。「いくらかかるか分からない」と空欄にすると、ベンダーは見当違いの規模で提案してしまいます。正確な金額が分からなくても、「この範囲で実現したい」という予算のレンジを示せば、提案の精度は上がります。

また、評価基準を明記すると、ベンダーは何を訴求すればよいかが分かり、提案の質が高まります。RFPは完璧な技術文書である必要はなく、業務の言葉で課題と狙いを伝えられれば十分です。

見落としやすい非機能要件の書き方

RFPで初心者がもっとも見落とすのが、非機能要件です。これは「どんな機能を作るか」ではなく、「どれくらいの速さで動くか」「何人が使うか」「障害時にどこまで止まってよいか」「セキュリティはどの水準か」といった、品質や性能に関わる要件です。機能要件ばかりに気を取られて非機能要件を書き忘れると、リリース後に「遅くて使えない」「アクセスが集中すると落ちる」といった問題が噴出します。

非機能要件は専門的に見えますが、非IT人材でも業務の言葉で書けます。

また、業務上の制約や前提を書けば、外部の専門家がそれを技術的な非機能要件に翻訳してくれます。ここでも発注側がやるべきは、技術の翻訳よりも、業務の実態を正確に伝えることです。非機能要件を業務の言葉で伝えておけば、後の大きなトラブルを未然に防げます。

  • 利用の規模:利用人数と、繁忙期に集中する業務量
  • 停止の許容:夜間などにシステムが止まると、翌日の業務にどう響くか

たとえば「繁忙期には50人が使う」「顧客の個人情報を扱うので情報漏えいは絶対に避けたい」といった書き方があります。

ポイント

RFPは、背景や予算感、評価基準まで業務の言葉で書けていれば、ベンダーが同じ前提で提案できます。非機能要件を書き漏らさないことも、導入後のトラブルを防ぐうえで欠かせません。

ベンダーを見極める目利きの基準

ベンダー選定で確認する課題の理解、ヒアリングの深さ、引き継ぎ、導入後の支援を示す図解
提案時の対話から、自社に残る知識や支援の範囲まで見渡せます。

RFPに対して複数のベンダーから提案が返ってきたら、次は目利きの番です。

社内にIT人材がいないと技術の巧拙を評価するのは難しく感じますが、見るべきポイントは技術の細部より、提案の姿勢と相性です。

人材不足の企業にとって、つくって終わりではなく、自走を支援してくれるパートナーを選べるかが、その後を左右します。

課題を理解しているかで提案を評価する基準

提案の良し悪しは、RFPに書いた課題を正しく理解し、それに対する解決策を自分の言葉で語れているかに表れます。逆に注意すべきは、課題の理解に踏み込まず、自社の製品や技術の説明に終始する提案です。

こちらの業務を十分に聞かずに「うちのパッケージで解決できます」と言ってくるベンダーは、要件のミスマッチを起こしやすく、人材不足の企業には不向きです。

提案書を読むときは、技術用語の多さよりも、自社の困りごとをどれだけ自分ごととして捉えているかを見てください。

もう一つの目利きの基準が、ヒアリングの質です。提案前の打ち合わせで業務を深く掘り下げてくるかどうかを見ておくとよいでしょう。

「その作業は何のためにやっているのか」「例外的なケースはどう処理しているのか」といった質問は、現場の実態を理解しようとしている証拠です。

質問が浅く、すぐに見積もりを出してくるベンダーは、後で「聞いていなかった」という手戻りを生みがちです。ヒアリングの深さは、そのベンダーが要件定義をどれだけ重視しているかの表れだと言えます。

  • 課題の理解:RFPの課題を、提案者が自分の言葉で言い直せているか
  • ヒアリングの深さ:業務の理由や例外の処理まで聞いてくるか

ナレッジ移管と伴走の姿勢を確認する基準

人材不足の企業にとって決定的に重要なのが、ベンダーがナレッジ移管と導入後の伴走にどう向き合うかです。

開発をブラックボックス化し、運用も改修もすべて自社に発注させ続けようとするベンダーもいます。

一方で、自社が自走できるよう支援してくれるベンダーもいます。社内にIT人材がいない企業ほど、後者を選ばないと、外部への依存が際限なく深まってしまいます。

この姿勢は、提案の段階で具体的に質問すれば見えてきます。曖昧にしか答えないベンダーは要注意です。

riplaは、フルスクラッチ受託と国内伴走の立場から、業務課題のヒアリングから要件への翻訳、導入後のナレッジ移管までを発注側と二人三脚で進めることを重視しています。目利きの本質は、技術力の評価以上に、「自社に何を残してくれるか」を見極めることにあります。

  • 引き継ぎ:ドキュメントや運用の勘所を、自社に残す範囲
  • 導入後の支援:運用や保守をどこまで支援してくれるか

ポイント

ベンダーは技術の細部より、RFPの課題を自分の言葉で捉えているか、ヒアリングで業務を深く聞いているかで選びます。導入後に自社へ何を残すかまで確かめると、外部への依存を防げます。

生成AIを要件整理の壁打ちに使う方法

IT人材がいない企業にとって心強い味方になるのが、生成AIです。

要件整理の壁打ち相手として使えば、専門知識の不足を補い、要件の抜け漏れを減らせます。

専門家がそばにいなくても、生成AIに問いかけながら考えを整理することで、RFPや要件定義書の質を一段高められます。

論点の洗い出しと抜け漏れチェックに使う方法

生成AIの壁打ちでまず効果的なのが、論点の洗い出しです。たとえば「在庫管理の業務をデジタル化したいが、要件定義で考えるべき論点を整理してほしい」と問いかければ、検討すべき観点が一覧で返ってきます。

自分では思いつかなかった「在庫の単位はどう扱うか」「複数拠点の在庫をどう統合するか」といった論点に気づけます。これにより、要件の抜け漏れを減らせます。

さらに、書きかけのRFPや要件のメモを生成AIに読ませたうえで、「この内容で抜けている観点や、ベンダーが疑問に思いそうな点を指摘してほしい」と依頼すると、第三者の視点でチェックしてくれます。

非機能要件の漏れや、予算と要件のバランスの矛盾など、専門家なら気づく点を補えます。

生成AIを「自分の考えを壁打ちし、抜け漏れを潰す相手」として使うことで、人材不足の企業でも要件定義の精度を専門家に近づけられます。各打ち手の役割を整理した関連記事の機能編とあわせて使うと、論点の洗い出しがさらに具体的になります。

  • 論点の洗い出し:要件定義で考えるべき観点を一覧にしてもらう
  • 抜け漏れの指摘:書きかけのRFPに対し、疑問が出そうな点を挙げてもらう

生成AIに頼り切らないための注意点

生成AIは強力な壁打ち相手ですが、頼り切るのは危険です。生成AIは自社の業務の細かな事情や、社内の人間関係、過去の経緯までは知りません。

AIが出した一般論を、そのまま自社の要件として鵜呑みにすると、現場の実態とずれたものになります。

AIの提案はあくまで「論点を広げ、抜け漏れを気づかせる」ためのものであり、最終的に何を要件とするかは、業務を知る人間が判断する必要があります。

もう一つ注意すべきは、情報の取り扱いです。要件整理の過程で、社外秘の業務情報や顧客情報を安易に生成AIに入力すると、情報漏えいのリスクがあります。

利用するサービスのデータの取り扱いを確認し、機密情報は入力しないか、安全性が担保された環境で使うことが前提です。

生成AIは、論点整理という上流の思考を助ける道具として使い、最終判断と機密管理は人が握る。この線引きを守れば、人材不足の企業にとって生成AIは要件定義を支える頼れる道具になります。情報の取り扱いを誤った際のリスクは、関連記事の失敗・リスク編もあわせてご覧ください。

  • 一般論の鵜呑み:AIの回答を、自社の業務の実態に照らして確かめる
  • 機密情報:社外秘の業務情報や顧客情報は、入力の前に扱いを確かめる

ポイント

生成AIは論点の洗い出しや抜け漏れのチェックに使い、最終的な要件の判断と機密情報の管理は人が行います。AIの回答を業務の実態に照らして確かめれば、壁打ちの効果を高められます。

まとめ

IT人材がいない企業の要件定義とRFPで成功の鍵になるのは、技術仕様を自分で書こうとせず、業務課題とToBeの姿を言語化し、それをRFPにまとめて複数のベンダーを同じ前提で比べることです。

要件は必須・優先・将来で分類して小さく始め、非機能要件も業務の言葉で伝えます。ベンダーは技術の細部より課題理解とナレッジ移管の姿勢で選び、生成AIは論点整理の壁打ちに使います。この一連の流れを踏めば、専門知識がなくても外部活用を成功に導けます。

要件定義で大切なのは、「分からないから丸投げする」のではなく、「分からない部分は外部と協働しながら、業務課題の言語化と最終判断だけは自社で握る」という姿勢です。

2030年に最大約79万人が不足するなか(出典:経済産業省)、人材がいない企業ほど、この上流工程を丁寧に進めることが、デジタル化の成否を分けます。riplaはフルスクラッチ受託と国内伴走を組み合わせ、業務課題のヒアリングから要件への翻訳までを二人三脚で支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。