IT人材不足開発/導入の失敗/課題/注意点/リスクについて

IT人材不足の対策では、内製化の急ぎすぎによる炎上や頓挫、リスキリングで育てた社員の離職、現場による無断のツール利用から生じる情報漏えいなど、思わぬ失敗が起こります。どの企業にも起こり得ます。だからこそ、失敗を事前に知っておくことは、何よりの保険になります。全体像をまだ把握していない方は、まずIT人材不足開発の完全ガイドからご覧ください。

内製化を急いで炎上・頓挫する失敗

IT人材不足への対策として、自社でエンジニアを抱えて内製化を進める方針は、長期的には正しい方向です。ただし、人材も体制も整わないまま急ぐと、プロジェクトが炎上し、頓挫するリスクがあります。外部への依存から早く抜け出したい焦りから、足元の準備を飛ばして走り出すことが、この失敗の根本にあります。

一人の担当に依存して属人化する失敗

内製化でよくある失敗が、一人のIT担当者に過度に依存してしまうことです。社内で唯一ITに詳しい人に開発も運用もトラブル対応も集中させると、その人がボトルネックになり、疲弊してしまいます。

さらに、その人が休んだり辞めたりした途端、誰も対応できなくなり、システムが立ち行かなくなります。属人化は、人材不足の企業が内製化を急ぐときに陥りやすい、典型的な落とし穴です。

この失敗を避けるには、知識やノウハウを一人に抱え込ませず、ドキュメントにして共有することが欠かせません。複数名で対応できる体制を意識し、少人数の場合でも業務が一人に張り付かないようにします。

外部パートナーと協働して進めれば、社内のIT担当が孤立せず、相談相手を持てます。内製化を、一人のスーパーマンに頼る形から組織で支える形へ捉え直すことが、属人化による頓挫を防ぐ鍵です。

どの打ち手をどう組み合わせるかは、関連記事の『IT人材不足開発/導入のメリット/デメリット/効果と判断基準について』もあわせてご覧ください。

  • 担当の偏り:開発、運用、トラブル対応が特定の一人に集まっていないか
  • 引き継ぎの備え:その人が不在でも、他の人が作業を追えるドキュメントがあるか

外部活用と並走し段階的に移行する回避策

内製化の炎上を避ける最も確実な回避策は、いきなり全面内製を目指さず、外部活用と並走しながら段階的に移行することです。

まず外部の即戦力で開発を止めずに進め、その過程で自社のメンバーがノウハウを吸収して、自分たちでできる範囲を少しずつ広げていきます。準備不足のまま走り出して破綻するリスクは、この段階的な移行で避けられます。内製化はゴールであって、出発点で完成している必要はありません。

この回避策の鍵は、外部パートナーがナレッジ移管に協力的であることです。ブラックボックス化して継続発注を狙うパートナーでは、いつまでも内製化は進みません。設計の意図や運用の勘所を積極的に引き継いでくれるパートナーと組めば、外部に頼りながらも内製力が着実に育ちます。

riplaはフルスクラッチ受託と国内伴走の立場から、外部の即戦力で開発を止めず、段階的に社内へノウハウを移す進め方を重視しています。焦らず、止めず、移していく。これが内製化の頓挫を避ける王道です。

  • 任せる範囲の広がり:自社で対応できる作業が、段階を追って増えているか
  • パートナーの姿勢:設計の意図や運用の勘所を、説明しながら引き継いでくれるか

ポイント

内製化は長期的に目指す方向として正しくても、人材と体制が整う前に急ぐと炎上や頓挫につながります。担当の偏りを避け、外部活用と並走して段階的に移せているかが判断の目安です。

リスキリングが徒労に終わる離職リスク

育成からスキルの発揮、成果の評価、人材の定着へつながる循環図。
学びを職場で活かす場が、育成投資を実らせます。

既存社員のリスキリング(学び直し)は、人材不足の有力な解消策ですが、進め方を誤ると徒労に終わります。たとえば、時間とコストをかけて育てた社員が、新たに得たスキルを武器に他社へ転職してしまいます。

また、学んだスキルを活かす場がなく、身につけた知識が使われないまま色あせていくこともあります。こうした失敗は、育成だけに目を向けて、その後の活躍と定着を設計しなかったことから生じます。

育てた人材が流出する離職の構造

リスキリングで育てた人材が流出する構造は、ある意味で必然です。IT人材は労働市場で奪い合いになっており、スキルを身につけた社員には、より良い条件のオファーが舞い込みます。

会社が育成に投資したのに、本人にとって社内に留まる理由が処遇に反映されていなければ、転職の誘惑には勝てません。「育てれば育てるほど、他社のための人材を輩出している」という皮肉な状況に陥ります。

もう一つの離職の引き金が、学んだスキルを活かす場がないことです。研修でスキルを得ても、戻った職場で従来どおりの仕事しか与えられなければ、本人は成長を実感できず、やりがいを失います。

スキルを発揮できる仕事と、それに見合う評価がなければ、せっかくの育成は本人のモチベーションにも、会社の戦力にもつながりません。離職は給与だけでなく、活躍の場や成長実感の欠如からも生じます。この構造を理解することが、回避の出発点です。

  • 処遇と評価:育てた人材に、スキルに見合う役割と待遇が用意されているか
  • 活かす場:研修で得たスキルを、戻った職場で発揮できる仕事があるか

リテンションを設計して定着させる回避策

リスキリングを徒労に終わらせない回避策は、育成とリテンション(定着)を設計することです。

学んだことを実際の業務で発揮し、その成果が正当に評価される。この循環があってこそ、人は社内に残り、育成投資が報われます。育てて終わりではなく、活躍と評価の場まで用意することが、定着の必須条件です。

もう一つの回避策が、育てた人材を孤立させない工夫です。一人だけITに詳しい人をつくると、相談相手もなく負担が集中し、疲弊して離れてしまいます。そのため、社内のIT人材が孤立しない環境を整えることが大切です。

経済産業省は学び直しを支援する仕組みを整備しています(出典:経済産業省)。制度を使って育てるだけでなく、育てた後に活躍し定着できる環境をつくることが、リスキリングを成功に変えます。育成と定着は、必ずセットで設計しなければなりません。

  • 役割と処遇:学んだスキルに見合う役割と待遇を、育てた人に用意しているか
  • 技術交流の場:複数名で学び合う体制や、外部パートナーとの交流の機会があるか

ポイント

リスキリングは、育てた後に活躍の場と見合う評価があって初めて定着につながります。学んだスキルを発揮できる仕事と処遇を用意しているかが判断の目安です。

シャドーIT・生成AIインシデントのリスク

業務データを中心に、承認された安全なツールや利用ルールなどの防御要素を配置した図。
使うツールと入力情報の両方に基準を設けます。

IT人材が不足していると、現場が会社の目の届かないところで独自にツールやサービスを使い始めることがあります。これがシャドーITです。

情報システム部門が把握していないツールやクラウドサービスが業務に入り込むと、情報漏えいやセキュリティ事故のリスクが一気に高まります。とくに生成AIの普及により、このリスクは新たな段階に入っています。

把握できないツール利用が招くリスクの実態

シャドーITのリスクは悪意から生まれるとは限らず、善意の効率化から生じる点に注意が必要です。現場の担当者は、目の前の仕事を早く片付けたい一心で、便利なクラウドサービスや生成AIを使い始めます。その結果、会社が把握していないツールで情報漏えいが起きても気づけず、発覚したときには手遅れになりかねません。

とくに生成AIには固有のリスクがあります。社外秘の情報や個人情報を安易に入力すると、外部に流出したり、サービス側で利用されたりする恐れがあります。経済産業省は、生成AIが生産性向上に寄与する一方で、適切なガバナンスが必要だと指摘しています(出典:経済産業省)。

便利だからと無秩序に使えば、生産性向上の恩恵より、インシデントによる損失のほうが大きくなりかねません。シャドーITと生成AIのリスクは、人材不足で現場任せが進むほど深刻になります。

情報の取り扱いを誤らないための要件整理の進め方は、関連記事の要件定義・RFP編もあわせてご覧ください。

  • データの行き先:業務データや顧客情報を入れたツールで、保存先と扱いを把握しているか
  • 早期の気づき:情報漏えいが起きたときに、すぐ気づける仕組みがあるか

便利さとリスクを両立させるガバナンスの実践

利用を一律に禁止すると、現場はかえって隠れて使うようになり、リスクが見えなくなります。だからこそ、シャドーITや生成AIインシデントの回避策は、便利さを活かしながらリスクを抑える仕組みづくりになります。

大切なのは、便利さを活かしつつリスクを抑えるガバナンスを敷くことです。ルールが明確なら、現場は安心してツールを活用できます。

ガバナンスを実効性のあるものにするには、ルールを押し付けるだけでなく、なぜそのルールが必要かを現場に理解してもらうことが欠かせません。情報漏えいが起きたときに会社と現場の双方がどんな損害を被るかを共有すれば、ルールは納得とともに守られます。

また、承認された安全なツールを会社が用意すれば、現場が危険なツールに手を出す動機も減ります。便利さとリスクは背中合わせであり、便利さだけを取り入れると思わぬ事故につながります。ガバナンスは、現場の効率化を安心して進めるための土台だと位置づけることが、実践のコツです。

  • ツールの線引き:使ってよいツールと使ってはいけないツールが、現場にも分かる形で示されているか
  • 入力情報の基準:入力してよい情報の基準が決まり、機密情報の扱いが周知されているか

ポイント

現場の効率化を認めつつ、会社が把握していないツールに業務データや顧客情報を入れていないかが判断の目安です。使ってよいツールと入力してよい情報の基準を示すことで、利用を安全な範囲に収められます。

外部丸投げと依存が招く課題

ドキュメント、設計の意図、運用の勘所、自走を並べたナレッジ移管のパネル図。
引き継ぐ知識を契約と進め方に組み込みます。

外部活用はIT人材不足の有力な解消策ですが、使い方を誤ると新たな課題を生みます。社内にIT人材がいないからと開発を丸投げすると、ノウハウが社内に残らず、外部への依存がどこまでも深まります。一見すると問題なく回っているように見えても、その裏で自社のコントロールが効かなくなっていく、静かなリスクが進行します。

ブラックボックス化で身動きが取れなくなる課題

外部丸投げの最大の課題は、システムがブラックボックス化することです。開発を任せきりにすると、中身も設計の意図も自社には分からず、小さな改修やトラブル対応のたびに外部へ頼らざるを得なくなります。

そうなると、見積もりが妥当かどうかも判断できず、言い値で発注し続けることになります。さらに、パートナーの都合や事情に振り回され、乗り換えたくても他社では引き継げない、身動きの取れない状態に陥ります。

この依存が深刻なのは、表面上は動いているため、危機感を持ちにくいことです。日々の業務が回っているうちは、ノウハウが残っていないことの怖さに気づけません。

しかし、パートナーの事情で支援が止まったり、料金が大幅に上がったりすると、自社に何も残っていない事実が露呈します。外部活用そのものは正しい選択ですが、丸投げによる依存は、いつか必ず代償を払う課題だと理解しておくべきです。

外部活用と内製のバランスをどう取るかは、関連記事のメリデメ・判断基準編もあわせてご覧ください。

  • 見積もりの妥当性:発注額が妥当かどうかを、自社で判断できる材料があるか
  • 乗り換えの可否:今のパートナーから他社へ、システムを引き継げる状態になっているか

ナレッジ移管で依存を防ぐ回避策

外部依存の課題を防ぐ回避策は、ナレッジ移管を契約と進め方に組み込むことです。開発の過程でドキュメントを整え、設計の意図や運用の勘所を社内に引き継いでもらえば、契約後も自社で対応できる範囲が広がります。

こうしておけば、ブラックボックス化を防ぎ、いざというときに他社へ乗り換えられる自由度も保てます。外部活用を選ぶなら、開発を任せる時点で、自社に何が残るかを最初から設計することが不可欠です。

この回避策の成否は、パートナー選びにかかっています。継続発注を狙ってブラックボックス化するパートナーを避け、積極的に手の内を明かし、自走を支援するパートナーを選ぶことです。

選ぶ際は、提案の段階でその姿勢を確かめられます。ドキュメントや引き継ぎがどこまで含まれるかと、導入後に自社で対応できる範囲をどう広げてくれるかを尋ねると、姿勢は見えてきます。

riplaはフルスクラッチ受託と国内伴走の立場から、外部の即戦力で開発を進めながら、ノウハウを社内に残し、依存を深めない進め方を一貫して重視しています。

  • 引き継ぎの範囲:ドキュメントや引き継ぎが、契約のどこまでに含まれているか
  • 自走への道筋:導入後に、自社で対応できる範囲をどう広げるかが示されているか

ポイント

外部に任せる範囲を広げるほど、自社で中身を説明できるかが問われます。見積もりを判断できる材料と、乗り換えに備えたナレッジ移管の取り決めがあるかが、依存を防ぐ目安です。

まとめ

IT人材不足対策の失敗を振り返ると、内製化の炎上は焦りと属人化から、リスキリングの徒労は定着設計の欠如から生じています。また、シャドーITや生成AIインシデントはガバナンスの綻びから、外部依存はナレッジ移管の不在から起きています。

これらに共通するのは、技術の問題より、人と仕組みの設計不足だという点です。逆に言えば、焦らず段階的に進め、定着とガバナンスとナレッジ移管を最初から設計に組み込めば、これらの失敗はほとんど避けられます。

失敗を避ける最大の鍵は、「焦らない」ことです。外部活用で開発を止めずに進めながら、育てた人材の定着とツール利用のガバナンスを敷き、ナレッジを社内に残しつつ段階的に内製力を育てることが大切です。

この堅実な歩みが、人材不足の構造のなかでも対策を成功に導きます。2030年に最大約79万人が不足するという現実は変えられませんが(出典:経済産業省)、失敗を知り、備えることは誰にでもできます。

riplaはフルスクラッチ受託と国内伴走を組み合わせ、外部の即戦力で開発を止めず、社内にノウハウを残す進め方を支援します。全体像の確認には、あらためて完全ガイドをご活用ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。