ITシステム監視対応の費用は、委託範囲や対応時間帯、SLAの水準によって変わり、1台あたり月額数千円から月額30万円以上までの幅があります。また、経済産業省の「DXレポート」は、日本企業のIT関連費用の8割以上が既存システムの運用保守に充てられると指摘しています。
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ITシステム監視対応にかかる費用の全体像

監視対応の費用は、一次対応とエスカレーションを委託する月額料金と、自社当番の人件費や待機費用(当番手当)に分けて考えます。
委託する業務の範囲が広がるほど、月額費用は段階的に上がります。プレイブックに沿った一次切り分けと復旧の委託は、月額10万〜30万円程度が目安です。障害対応に加えて、OSやミドルウェアのパッチ適用、設定変更などの日常運用も任せるフルマネージドは、月額30万円以上が一般的です。
個別サービスでは、24時間365日の死活監視とアラート通知だけなら1台あたり月額5,000円程度です。手順書に沿う一次対応やプロセス再起動まで含む場合は、1台あたり月額10,000円程度が目安になります。
自社がどこまで外部に任せるかを決めることが、予算化の第一歩になります。
月額の一次対応・オンコール委託費用の相場
外部MSPに一次対応やオンコールを委託する費用は、どこまで任せるかによって区分が分かれます。
- 基本監視:サーバー1台あたり月額数千円〜数万円
- 一次対応込み:月額10万〜30万円程度
- フルマネージド:月額30万円以上
基本監視は、Ping監視などでサーバーやネットワーク機器の稼働を確かめる作業です。一次対応込みでは、アラートを切り分けたうえで、用意した手順書に沿って復旧します。フルマネージドは、これに加えて、パッチ適用や設定変更などの日常運用も含みます。
規模別に見ると、月額の目安は小規模で3万〜20万円、中規模で20万〜35万円、大規模で35万〜50万円以上です。運用・保守全体では、年間費用を初期開発費の15〜20%とする考え方もあります。ただし、金額だけで決めず、自社に残る一次対応力と夜間・休日の委託範囲も踏まえて選びます。
当番手当・深夜休日対応の費用感
自社で当番を回す場合は、待機の対価に加えて、負担の偏りや緊急対応時の割増費用も含めて考えます。
- 待機費:自社当番で待機時間に対して生じる費用
- 当番手当:金額は各社の給与規程により異なる
- 時間外対応:深夜・休日の緊急対応に伴う割増費用
自社当番では、夜間・休日に即応できるよう待機している時間に対して、オンコール費や待機費が発生します。一方で、外部委託では待機費が月額固定型の契約に含まれる場合が一般的です。
特に、深夜・休日の担当者に負荷が偏らないよう、誰がどの時間帯に当番へ入っているかを一覧にして、交代枠や手当を見直す必要があります。
夜間・休日に障害が起きて緊急対応すると、通常の人件費に割増費用が加わり、コストが大きく増える場合があります。また、オンコール勤務の精神的・肉体的な負担を数値で捉え、当番手当を持続可能な体制づくりに生かした企業事例もあります。
委託範囲・SLA別の費用内訳

一次対応・オンコール費用の月額に、どの作業が含まれるかを確かめることは、契約が妥当かを判断するうえで欠かせません。費用は、対応時間帯とSLA(応答時間・復旧時間目標)によって変わります。
対応時間帯(平日日中 vs 24時間365日)による費用差
必要な時間帯を絞ると、有人体制の費用を調整できます。
- 平日9時〜18時:日中の対応を委託
- 24時間365日:夜勤・休日シフトの人員確保が必要
- 時間帯指定:夜間や土日祝日のみ委託する選択肢
夜間(例えば21時〜9時)や土日祝日だけのオプションもあります。自社の勤務形態や公休日に合わせてタイムテーブルを組めば、その時間帯だけを外部に任せられます。
影響の小さい夜間・休日は、監視ツールの自動検知と当番者のオンコール(待機)対応に切り替えると、全時間帯を有人で持たずに済み、品質を保ちながら費用を抑えられます。
初動応答時間・復旧目標時間による費用差
SLAを一律に決めず、障害の深刻度に応じて段階を分けると、必要な対応水準と費用を調整できます。
- 最重度:15分以内に連絡、1時間以内に復旧
- 部門・特定業務の停止:30分以内に連絡、4時間以内に復旧
- 代替手段のある軽度異常:翌営業日に対応
SLAの制約が厳しいほど、待機する人員や技術者の水準が上がり、費用は大幅に増えます。そのため、深刻度別にエスカレーション先と応答時間を決め、提示されたSLAが必要な水準かを見極めると、必要以上に短い応答時間を求めることによる無駄な費用を避けられます。
費用を左右するその他の要因
対応時間帯やSLAに加えて、契約形態や隠れコストも実際のランニングコストを大きく左右します。そのため、契約前に確認しておくと、予算超過を防ぎやすくなります。
料金体系(固定制 vs 従量課金制)のリスク
料金体系は、予算の見通しや障害発生時の支払額に影響します。
- 月額固定制:毎月の支払額が一定
- 従量課金制:アラート件数や対応時間に応じて算定
従量課金制は平常時の費用を抑えやすい反面、大規模障害や長時間の対応では高額になるリスクがあります。また、障害が集中する時期や原因調査が複雑な月には、予算を大幅に超える請求となる可能性もあります。
従量課金では、契約時に上限(キャップ)を設定できます。一方、固定制は予算を見通しやすいものの、対応が少ない月も同額です。どちらにするかは、アラートの頻度や障害対応の実態に合わせて選びます。
スコープ外対応による「隠れコスト」
追加請求の条件と通知設計を確認しておくと、契約外の作業や不要な対応による費用を抑えられます。
- 時間外対応:平日日中のみの契約では追加費用になりうる
- 新規連携:事前定義のないシステム連携は対象外になりうる
- 通知代行:障害を切り分け、必要な通知だけを届ける仕組み
契約時には、時間外対応のルールと上限金額を取り決めます。あわせて、追加費用が生じる条件と見積もりの手順も委託先に確かめます。
通知先の設計が曖昧だと、誤検知や不要な通知への対応に追われ、費用がかかるわりに運用効果が得られない場合があります。通知代行が含まれるかどうかも、契約前に見ておきたいところです。
内製と外部委託のコスト比較

内製と外部委託では、コストの構造が根本的に異なります。そのため、TCO(総保有コスト)で比べることが、自社に合う体制を判断するうえで欠かせません。
内製の場合:莫大な固定費の発生
24時間365日を内製で回す場合は、複数の専門エンジニアを雇用し、教育する費用が継続して生じます。
- 採用・人件費:夜間・休日シフトを回す人員の確保
- 体制維持費:当番手当や交代要員の採用・教育
- 属人化リスク:担当者の退職で対応品質が下がる可能性
固定費の負担が続くため、予算や人員が限られた中堅・中小企業では現実的でない場合があります。担当者の離職や異動に伴う採用・教育費も、あわせて見込んでおく必要があります。障害対応のノウハウが特定の人に集中していると、その人が異動や退職をした後に、一次対応の質を保つのが難しくなります。
人件費の金額に加えて、体制を維持するための総コストで捉えることが必要です。
外部委託の場合:固定費の変動費化とスケールメリット
外部委託では、人を常時抱えずに済むため、支出を自社の状況に応じて組み立てやすくなります。
- 変動費化:自社の人件費をサービス利用料に転換
- スケールメリット:複数社をまとめて監視・一次対応
- 自動化:定型的な異常の一次処理の仕組み
専門業者はスケールメリットがあるため、自社でゼロから24時間体制を組むより、総費用を抑えられる可能性があります。また、AIOpsで一次対応を自動化すると、一次対応の負担や工数を減らせます。たとえば、Pingの疎通不可やプロセス停止を検知すると自動で再起動し、解消しない場合にだけエンジニアに通知できます。
内製と外部委託のどちらが適するかは、一概には言えません。そのため、システムの重要度や情シスのリソース、必要な応答時間を踏まえて判断します。
監視対応コストを最適化する方法
一次対応・当番体制のランニングコストは、運用の工夫によって抑えられます。品質を保ちながら費用対効果を高める方法を、アラートの削減と自動化の両面から見ていきます。
アラートノイズの削減による対応工数の圧縮
まずは、閾値や継続時間を調整して、不要な通知や過剰な呼び出しを減らします。
- 閾値・継続時間:短時間の変動では通知しない設定
- 対応時間帯:システムの重要度に応じた体制の使い分け
初期設定のままだと、一瞬のスパイクでも呼び出しが発生し、通知に追われる状態になりかねません。従量制なら対応費が増え、固定制でも、疲弊や残業といった隠れコストが膨らみます。
たとえば、「一瞬のスパイクは無視し、5分間継続したら通知する」と設定すれば、業務への影響がある通知だけに絞れます。さらに、重要度の低いシステムは翌営業日の対応とし、事業継続に直結するものだけを即時対応にする方法もあります。
業務への影響度に応じて対応時間帯やSLAを階層化すると、全システムに24時間365日の即時対応を求めずに済み、委託体制に差をつけられます。
自動対応の活用とTCOでの見直し
次に、AIOpsで一次対応を自動化します。TCOでの比較も組み合わせると、有人対応や契約費用の見直しにつながります。
- 定型対応の自動化:繰り返し起きる異常の処理
- TCOで比較:月額料金以外の採用・教育費も考慮
- 契約の定期見直し:長期の費用を抑える手段
Pingの疎通不可やプロセス停止は、当番者を呼ぶ前に自動で再起動し、解消しない場合だけエスカレーションできます。有人対応するアラートが減れば、当番手当や従量部分の委託費も抑えられます。
PagerDutyなどの監視SaaSと自社開発の自動対応システムをAPIで連携し、多くのアラートを自動処理した事例もあります。さらに、定型対応の自動化は、人件費と委託費の両面で削減効果が見込まれます。
情シスの人員が限られる企業では、採用・教育費や属人化リスクを抱えるより、外部MSPやSaaSで時間と安心を確保するほうが、総費用を抑えられる場合があります。
委託先を選んだあとも、監視対象やSLA要求の変化に応じて契約を見直し続けると、長期にわたるランニングコストを抑えられます。
まとめ
ここまで、一次対応・当番・オンコールの保守運用費を、委託相場から内製との比較まで見てきました。監視のみなら1台あたり月額数千円〜数万円、一次切り分け・復旧込みなら月額10万〜30万円程度、フルマネージドなら月額30万円以上が目安です。
対応時間帯と初動応答時間が費用を左右します。外部委託では待機費が月額固定型の契約に含まれる場合が一般的です。自社で当番を回す場合は、負担が特定の人に偏らない制度が必要です。
内製は固定費が続く一方、外部委託では変動費化やスケールメリットが期待できます。そのため、重要度と自社リソースに応じて体制を選ぶことが大切です。また、アラートノイズの削減と自動化を組み合わせると、品質を保ちながらコストを抑えられます。
次の一歩としては、複数のMSPや開発会社に、当番体制の課題と必要な応答時間を伝えて、見積もりを取る方法があります。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
