ITシステム原因調査の保守・運用費用・ランニングコストについて

ITシステム原因調査の費用は、対応方式、調査体制、SLA水準によって月額3万〜30万円程度の幅で変わり、予算の決め方も契約の形によって異なります。

まず全体像を押さえ、内訳、委託形態、SLA、隠れコストの順に見ていきます。全体の流れは、完全ガイドもあわせてご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・ITシステム原因調査の完全ガイド

ITシステム原因調査の費用の全体像

ITシステム原因調査は、障害や不具合が起きたときにログやメトリクスを分析し、根本原因(RCA:Root Cause Analysis)を突き止めて、再発防止策まで策定する実務です。なぜなぜ分析やポストモーテムも、原因調査で用いられる手法です。

原因調査には、平時の監視業務とは異なる独自のコスト構造があります。そのため費用は、スポット調査、月額保守、24時間365日対応、SOCやMSPへの委託といった契約の形によって分かれます。

経済産業省の「DXレポート」では、IT関連費用の8割以上が既存システムの運用保守に充てられると指摘されています。そのうえで、障害対応や原因調査の費用も、保守費用全体の一定割合を占めるとされています。

限られたIT予算のなかでは、自社対応と外部委託の境目を先に決めておくことが大切です。

原因調査の費用は、月額保守契約に含める方式と、障害ごとに課金する方式に分かれます。営業時間内の対応を含む月額保守費用は、3万〜8万円程度が目安です。

さらに、24時間体制の緊急対応を含める場合は、月額10万〜20万円程度が目安です。一方、都度対応で原因調査や障害対応を依頼する場合は、1件あたり3万〜10万円程度です。

月額保守費用のうち、障害対応が占める割合は15〜25%程度とされています。その障害対応には、原因調査や緊急復旧、バグ修正などが含まれます。

原因調査の費用は、システムの規模や複雑さに加えて、求める対応スピード(SLA)や委託範囲によっても大きく変わります。

月額固定費と時間単価の従量課金の組み合わせ

原因調査の契約では、定常的な監視と追加の対応を分けて考えることが欠かせません。

  • 月額固定費:定常的な監視業務にかかる契約分
  • 時間単価:対応枠を超えた分を精算する単価

平時の費用は月額の固定費として予算化でき、障害対応が増えた分だけ、時間単価による費用が加わる形になります。

障害発生時の追加費用について、単価と計算根拠を契約時に明確にしておきます。

大規模なシステム調達では、稼働初期の一定期間を無償とする契約もあります。無償期間は最長1年間程度で、対象は原因調査、障害復旧、障害報告です。

ここでいう障害報告には、原因報告、処置内容、改善提案などが含まれます。

原因が天災や発注者側にある場合は、瑕疵による場合を除いて費用が発生します。その費用は、復旧に要した工数に応じて請求されるのが一般的です。

契約方式と無償範囲を事前に確かめておけば、想定外の請求を防ぐ助けになります。

費用を左右する要因

原因調査の見積もりでは、月額費用以外の負担も判断材料に入れておきます。

  • ブラックボックス化・属人化:切り分けの遅れを招く状態
  • ベンダー移行:体制立ち上げの初期費用が発生する場面

長年の運用でシステム構造が複雑になると、原因の切り分け速度が落ちます。原因の特定に時間がかかるほど、時間単価で精算する調査工数も増えていきます。

保守ベンダーを乗り換える場合は、システムの把握や体制の立ち上げに移行コストがかかります。その移行コストは、300万〜500万円程度になるケースもあります。

月額費用だけで比べると、想定外の初期コストに直面する可能性があります。そのため、月額費用、スポット費用、ベンダー変更時の移行費用を合算して捉えます。

ポイント

月額固定費と従量課金のどちらで予算を組むかで、年間の負担の見え方が変わります。平時の費用と障害時の追加分を分けて見込むと、想定外の請求を減らせます。

費用の内訳(人件費・ツール費用)

運用エンジニア、監視オペレーター、クラウド・SRE案件の月額人月単価を並べた図。
役割によって単価の幅が異なります。

原因調査費用の中心は、分析を担うエンジニアの人件費です。これに加えて、ログ分析や監視を支えるツールのライセンス費用もかかります。

調査・分析エンジニアの人月単価・時間単価

人月単価は、運用範囲、稼働日数、求める専門性によって変わります。

  • 運用エンジニア:月額80万〜120万円程度
  • 監視オペレーター:月額60万〜80万円程度
  • クラウド・SRE案件:月額40万〜90万円程度

ログ分析やインシデント分析まで担うエンジニアは、前述の運用エンジニアと同じ水準が目安です。さらに、根本原因の分析やなぜなぜ分析を主導する人材は、上限に近い水準を見込みます。

求人データには、週5日のクラウド基盤構築・運用保守で月額70万〜90万円の例があります。また、SREを含むインフラ設計・運用では、0.5人月、週2〜3日で月額40万〜60万円の例があります。

IT戦略や高度な問題解決をスポットで依頼する場合の時間単価は、1.5万〜5万円です。外部の専門家に頼むときは、この時間単価に調査時間を掛けて費用を見積もります。

監視・ログ管理ツールのライセンス費用

専用ツールは、ログ分析と原因究明の作業を効率化します。

  • 料金の決まり方:ホスト数やメトリクス量に応じた変動
  • 投資判断:人件費とライセンス費用を並べた比較

たとえば、DatadogやNew Relicなどのクラウド型サービスは従量課金制で、中規模システムでは月額数万円から数十万円の費用が一般的です。

ツールを使えばログを横断して検索でき、時系列でイベントの関係も確認できます。その結果、手作業でログを確認するより、原因調査にかかる時間を大幅に短縮できます。

ライセンス費用は、人件費を減らす効果も含めて判断するとよいでしょう。

ポイント

社内で対応できる人材がいるかどうかで、外部に任せる範囲が決まります。ログ分析まで任せるのか、監視だけを委託するのかを分けて、役割ごとに見積もりを比べます。

委託形態別の費用相場

SOCのセキュリティインシデント対応と、MSPのシステム運用全般を左右に比べた図。
委託形態で対応するシステム領域が分かれます。

原因調査は、自社のエンジニアが担うこともできれば、専門の外部サービスへ委託することもできます。ただし、SOCとMSPでは、対応する領域と料金の考え方が異なります。

SOC(セキュリティ・オペレーション・センター)への委託

SOCは、セキュリティインシデントを含む高度な原因調査に適しています。

  • CEC SOC:1,000台あたり月額30万円〜の例
  • SHIFT SOC運用支援:営業日9〜17時で月額9万円〜の例

SOCでは、ログの収集や分析から脅威の検知、原因究明までを専門チームに任せます。料金は監視対象の規模や監視時間帯で大きく変わり、特に24時間365日体制で高度な脅威分析を求める場合は、相場より上振れします。

MSP(マネージドサービスプロバイダ)への委託

MSPは、原因分析や改善策のレポーティングを含む運用代行サービスです。

  • 通知対応込み:月間50通知で月額15万円〜の例
  • 専用サーバー:フルマネージド・スタンダードで月額5.5万円の例

MSPは、SOCと違ってシステム運用全般を対象とし、原因調査や障害対応まで幅広くカバーします。

自社で専門人材を抱える費用と、MSPの月額委託費用を並べて比べます。全体の費用としてどちらが合理的かが、委託を決める判断の基準です。

ポイント

セキュリティの脅威分析を求めるならSOC、システム運用全般の原因調査を求めるならMSPが候補になります。自社で専門人材を抱える場合の人件費と並べると、どちらが合うかの見当がつきます。

SLA水準による費用変動

SLAは、原因調査や復旧に求める即応性を示す基準です。そのため、対応スピードと予算のバランスを見極めることが、費用対効果につながります。

対応時間帯(5×8か24×7か)による差

対応時間帯は、障害の影響範囲と必要な可用性に合わせて選びます。

  • 5×8:平日日中の5営業日×8時間で対応
  • 24×7:夜間と休日を含む24時間365日で対応

24×7では、シフト要員を確保する必要があるため、費用が2〜3倍になることもあります。

業務で必要な可用性を見極めないまま高いSLAを一律に求めると、過剰な負担になります。

たとえば、24時間止められない基幹業務システムには高いSLAを設定し、影響が限定的な社内システムには標準的なSLAを設定します。

システムの重要度に応じてSLAを段階的に設定することが、費用を抑える基本です。

高可用性要求(RTO/RPO)によるコスト増

高可用性の要求は、復旧目標とデータ復旧目標を基準に設定します。

  • RTO:障害発生から復旧までの目標時間
  • RPO:データ復旧の目標
  • 稼働率99.99%:99.9%の構成より月額運用費が約1.3倍

RTOやRPOを厳しく設定するほど、費用は増える傾向にあります。

要求水準が高いシステムほど、原因特定と復旧のスピードも厳しく求められます。そのため、24時間体制の有人監視や高度な自動化ツールが必要になります。

可用性は、事業インパクトに見合う水準を見極めて決めます。

見落とされがちな隠れコスト

原因調査に伴う緊急対応費、時間外割増、再発インシデント、機会損失、事後対応を示す図。
月額費用以外にも複数の負担が広がります。

原因調査には、月額費用の外側に隠れコストが潜んでいます。事前に洗い出しておくと、想定外の予算超過を防げます。

夜間・休日の緊急対応に伴う割増費用

障害が発生すると、復旧に必要な人件費や外部依頼費用が増えます。

  • 緊急対応費:エンジニアや外部ベンダーへの追加費用
  • 時間外割増:夜間・休日対応に適用される割増率

月額固定費の対応枠を超えたインシデントが、夜間や休日に集中する場合があります。その場合、時間単価の従量課金に加えて割増費用が発生します。

契約時に確かめておきたいのは、夜間・休日の割増率と月間対応件数の上限です。

再発防止策を怠った場合の「再発コスト」

根本原因を調査しない場合、暫定対応を繰り返す再発コストが生じます。

  • 再発インシデント:同じトラブルのたびに発生する対応費用
  • 機会損失:停止による売上や商談機会の喪失
  • 事後対応:漏えい時の賠償や追加の対応費用

障害時にインシデント管理だけで済ませると、同じトラブルが繰り返されます。そこで、「再発インシデントの削減=ITコスト削減」という視点で捉えることが大切です。

問題管理で根本原因を解消することが、中長期的なコスト削減につながります。

サービスが止まれば、商談の機会も逃してしまいます。

情報漏えいに発展すると、損害賠償、費用損害、逸失利益が発生します。さらに、コールセンターの設置やプレスリリース対応などの追加コストも必要です。

事後対応の費用は、事前のインシデント対策費を大幅に上回ることがあります。そのため、原因調査への投資は、将来の大きな損失を防ぐ保険として捉えられます。

ツール導入や自動化で初期対応時間を10分の1に短縮した事例もあれば、AIを使ったカオスエンジニアリングで平均復旧時間(MTTR)を65%削減した事例もあります。

ポイント

判断の目安は、夜間や休日の障害がどのくらいの頻度で起こりそうかです。割増率と月間対応件数の上限を照らし合わせて年間の上乗せ額を試算しておくと、見積もりの比べ方が明確になります。

まとめ

ITシステム原因調査には、保守・運用費用とランニングコストがかかります。

月額保守費用の目安は3万〜20万円程度で、そのうち障害対応は全体の15〜25%程度です。

専門エンジニアの人月単価は40万〜120万円程度が相場感です。一方、SOCやMSPへの委託費用は、月額5.5万〜30万円程度として挙げられています。

対応時間帯が5×8から24×7になると、費用が2〜3倍になることがあります。また、高可用性を求める場合は、99.9%の構成より約1.3倍の運用費になる例があります。

夜間・休日の割増費用や、調査を怠った場合の再発コストも見落とせません。事後対応の機会損失も含め、原因調査は将来の損失を防ぐ予防投資として捉えます。

企業規模や要件で費用は変わるため、複数社へ見積もりを依頼します。そのとき、システム構成と求める対応スピードを提示することが大切です。

▼全体ガイドの記事
・ITシステム原因調査の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。