ITシステム維持運用の費用は、月額20万円から90万円程度まで幅があります。その幅を生むのは、システム規模、対応範囲、契約形態の違いです。
費用相場の目安、費用の内訳、契約形態による違い、見積もりで確認する点を、順に見ていきます。
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ITシステム維持運用の費用相場の全体像

月額の保守費用は、一般に20万円から90万円程度が目安です。金額は規模や対応範囲で変わるため、小規模なシステムなら月額10万円前後で収まることもあります。
全体像は、開発費に対する割合と、規模別の月額目安の両方から確認できます。
開発費に対する割合
開発費に対する割合から見ると、年間の費用の目安と、その前提になる条件が分かります。
- 標準的な目安:開発費を基準にした年間の保守費用
- 最小限の運用:対応範囲を絞った場合に必要な割合
維持運用費は、初期開発費に対する割合で算出する方法が広く使われています。年間の保守費用は、開発費の15〜20%が一つの目安です。
たとえば、開発費が3,000万円なら、年間保守費用は450〜600万円が相場です。月額に換算すると、37〜50万円程度が見込まれます。
一方で、対応範囲を最小限に絞る場合は、開発費の5%程度を目安とすることもあります。300万円で開発したシステムなら、年間で約15万円という計算です。
割合の幅は、24時間監視の有無や、障害対応の即応性で決まります。そのため、自社が求めるサービスレベルを明確にしておくと、適正な割合を見極めやすくなります。
規模別の月額費用の目安
規模別の月額費用を見ると、監視やメンテナンスの負荷の違いを比べられます。
- システム規模:小・中・大で分けた、監視と保守の負荷
- 運用体制:専任担当者を置く場合と、外部委託する場合の比較
運用監視を中心とした保守費用は、システム規模によって月額の相場が変わります。小規模は月額10〜20万円、中規模は20〜35万円、大規模は35〜50万円程度が目安です。
サーバー台数、ユーザー数、トランザクション量が増えるほど、監視やメンテナンスの負荷は高まり、その分費用も上がります。
専任担当者が継続して支援するサービス委託では、月額20〜50万円が相場です。年額にすると、240〜600万円が相場とされています。
自社で要員を確保するか外部に委託するかで、費用の構造は異なります。そのため、総保有コストの観点で比べることが大切です。
維持運用費用の内訳と項目

見積もりを評価するには、それぞれの金額がどの作業に対応しているかを確かめる必要があります。費用は大きく、安定稼働を支える運用と、不具合や変更に対応する保守に分けられます。代表的な費用項目を、順に見ていきます。
運用・監視にかかる費用
運用・監視費用は、システムを止めずに稼働させ続けるための費用です。
- 監視対象:サーバーやリソース、ログの確認範囲
- 保守頻度:バックアップやメンテナンスの実施頻度
運用監視費用は、月額5〜20万円程度が一般的な相場です。金額は、監視の対象範囲や頻度によって変動します。
具体例では、24時間365日のサーバー監視が3万円、月次メンテナンス4時間が2万円という内訳です。
監視を自動化ツールに任せるか、有人監視を求めるかでも、費用は変わります。ビジネスへの影響度が高いシステムほど手厚い監視体制が必要になり、そのぶん費用も上がる傾向があります。
障害対応・改修にかかる費用
対応時間帯と即応性は、障害対応費用を左右します。
- 対応時間帯:障害対応の時間帯と即応性
- 改修上限:定額に含まれる軽微な改修の工数
障害対応は、不具合発生時の調査と復旧にかかる費用です。平日9時から18時で月5回までの場合は、月額3万円程度が目安です。
24時間体制の即時対応を求める場合は、費用が上乗せされます。また、軽微な改修には、法改正への対応や画面の文言修正が含まれ、項目の追加も該当します。
たとえば、月5時間までの改修を月額2.5万円で見積もる例があります。監視・メンテナンスと合わせると、月額10.5万円程度で保守をカバーする構成もあります。
改修をどこまで定額に含めるかは、契約時に確かめておく必要があります。
インフラ・ライセンス費用
インフラ費用は、保守作業の人件費とは別に継続して発生します。
- インフラ:サーバーやネットワークの利用費を分けた金額
- ライセンス:データベースやミドルウェアの費用
- 負担区分:発注者と委託先のどちらが何を負担するか
セキュリティ製品の利用料も、インフラ費用に含まれます。費用は稼働量によって変動する場合があり、アクセスが急増する繁忙期には、費用が膨らむこともあります。
見積もりでは、インフラ費用が保守費用に含まれるかを確かめておく必要があります。別途請求される場合は、月額の保守費用と総額が変わります。総保有コストで判断すると、後からの予算超過を防げます。
官公庁の維持管理業務委託仕様書には、受託者が負担する例があります。たとえば、システムの電力料や通信費を、受託者の負担と明記するケースです。
民間契約では、費用の負担者が契約ごとに異なります。サーバーの電気代、ネットワーク回線費、ラック利用料が対象で、これらを発注者と委託先のどちらが負担するかを確かめる必要があります。
負担区分を曖昧にしたままだと、想定外の請求が発生することがあります。委託先が負担分を見込んで、月額単価に上乗せする場合もあります。そのため、契約段階で費用の内訳と前提条件まで確かめておくことが大切です。
契約形態による費用の違い
維持運用費は、契約形態によってコストの見通しやすさが変わります。定額制と従量制では、費用の発生条件もリスクも異なります。さらに、SLAの有無も、費用と安心感を左右する要素です。
定額制と従量制の比較
定額制と従量制は、費用の安定性と作業量との連動で比べます。
- 予算の安定性:毎月の費用の見通しやすさ
- 作業量との連動:対応が少ない月と多い月の費用の差
定額制は、毎月決まった金額を支払う契約形態です。予算を立てやすく、突発的な障害が起きても追加費用がかからない安心感があります。
対応が少ない月も同じ金額を支払うため、割高に感じることがあります。特に、稼働の少ないシステムでは、定額制の負担感に注意が必要です。一方で、安定稼働を最優先する基幹システムには、定額制が向いています。
従量制は、実際に発生した作業量に応じて支払う形態です。対応が少ない月は、費用を抑えられます。ただし、大きな障害が重なった月は、費用が膨らむリスクがあります。
トラブル頻度が読みにくいシステムでは、従量制が経済的なこともあります。また、稼働が比較的安定しているシステムでも、従量制が経済的な場合があります。そのため、システムの特性とリスク許容度に合わせて選ぶことが大切です。
SLAと費用の関係
SLAは、保証する品質と費用のバランスを契約に反映する基準です。
- 稼働率:保証する稼働率の水準
- 復旧時間:障害時の復旧目標時間
- 応答時間:問い合わせへの応答時間
SLA(サービスレベルアグリーメント)は、サービス品質を定量的に定義し、発注者と委託先の間で水準を合意する文書です。SLAを締結しておくと、求める品質と実際のサービスのズレを防げます。
保証する稼働率を高めるほど、運用体制を手厚くする必要があります。復旧までの時間を短く設定する場合も、費用は上昇します。
停止を許容できる社内向けシステムは、SLAを緩めてコストを抑えられます。費用と品質はトレードオフの関係にあるため、必要なサービスレベルを見極めて、契約に落とし込むことが重要です。
官公庁の維持管理業務委託仕様書は、水準を考える際の参考になります。自治体案件では、厳格な数値が明記されることもあります。
たとえば、障害発生時に1時間以内の現地到着・対処開始を求める例があります。また、対応開始から1時間以内に、内容と予想作業時間を報告する例もあります。さらに、原則4時間以内の完全復旧を求める例もあります。
SLAの水準を上げるほど、待機要員や監視体制の上乗せが必要になります。そのため、単価も比例して高くなります。一方で、翌営業日対応で足りるシステムなら、同じ作業範囲でも月額単価を抑えられます。
復旧時間の水準ごとに単価が変わると、見積もりを判断しやすくなります。
見積もりを取る際のチェックポイント

維持運用の見積もりは、総額だけでなく、対応範囲と品質保証を比べて判断します。同じ月額20万円でも、対応範囲や品質保証が違えば、妥当性は変わります。
見積もりで確かめたい点を、3つの観点に分けて説明します。
対応範囲の確認
見積もりの妥当性は、月額費用に含まれる作業の範囲を見て初めて判断できます。
- 監視・保守:定期メンテナンスを含むかどうか
- 障害・改修:不具合対応や軽微な改修の範囲
- 上限条件:時間帯、回数、工数の上限
範囲が曖昧な契約では、トラブル時に追加費用が発生しかねません。そのため、監視や保守、障害対応、改修のどこまでが対象かを、見積もりの段階で文書にしてもらいます。さらに、対応時間帯、障害対応の回数上限、改修工数の上限も明記してもらいます。
含む作業と含まない作業を一覧にすると、複数社を公平に比較できます。安さだけでなく、必要な対応がカバーされているかで判断します。
複数社での比較
相見積もりでは、金額と対応品質を同じ条件で比べることが大切です。
- 金額:条件をそろえた各社の総額
- 知見:開発会社のシステム理解の深さ
- 支援品質:文書の整備状況と担当者の対応
複数社の相見積もりを取ると、費用の適正さを判断しやすくなります。1社だけでは、金額の高低を比べる基準がありません。
最低でも2〜3社から見積もりを取り、対応範囲と金額を並べて見ます。比べると、維持運用費の相場感が見えてきます。
開発担当会社の知見が活かせるかも、評価軸に加えます。
極端に安い見積もりは、対応範囲が狭い場合があります。また、品質保証が不十分な場合もあるため、注意が必要です。
長く付き合えるパートナーを総合的に選ぶと、コストの効率化につながります。
追加費用の条件
追加費用の発生条件を把握しておくと、契約後の予算の見通しが立ちます。
- 追加作業:大規模な機能追加や再構築の扱い
- 単価と線引き:追加扱いになる作業と単価
- 更新条件:契約更新時の費用改定
契約範囲を超える改修は、別途見積もりになることがあります。利用状況や物価の変動、契約更新時の見直しによって、保守費用が改定される場合もあります。長期契約では、数年単位の総コストを試算してから契約します。
ライフサイクルコスト(LCC)とは、システムが寿命を迎えるまでの総コストのことで、初期開発費に加えて、稼働中の運用・保守費も含みます。ハードウェアやライセンスの更新費、最終的な廃棄・移行費も含まれます。
月額の安さだけで委託先を選ぶと、数年後に割高になることがあります。ハード更新やOSのサポート終了によって、大規模改修が発生するためです。
一般に運用・保守期間は、システム寿命の大半を占めます。特に、累計の維持運用費が、初期開発費を上回ることもあります。
見積もりは、5年程度のLCC総額で比べます。長期の総額で見ると、コストを本当に抑えられる選択が見えてきます。
発注の手順や運用の進め方は、関連記事でも確認できます。
・ITシステム維持運用の進め方
・ITシステム維持運用の発注・外注のポイント
・ITシステム維持運用のおすすめ会社もご覧ください。
維持運用コストを抑える方法
維持運用コストは、必要なサービスレベルを保ちながら抑えることが大切です。一方で、単純な削減は、システムの安定性やセキュリティを損なうリスクがあります。そのため、品質を保ちながら費用を抑える方法を見ていきます。
対応範囲の見直し
システムごとの重要度を見直すと、保守契約の過不足を判断できます。
- 低利用システム:監視や即応体制が過剰かどうか
- 重要システム:停止損失を踏まえたサービスレベルの維持
まず、現在の保守契約の対応範囲が実態に合っているかを見直します。
利用頻度の低いシステムに24時間監視を付けている場合があります。ほとんど発生しない障害に手厚い即応体制を置く場合もあります。その場合、過剰な費用を払っている可能性があります。
そのうえで、システムの重要度に応じて、必要なサービスレベルを再設定します。
一方で、ビジネスの根幹を支えるシステムは、安易にサービスレベルを下げません。停止による損失が、保守費用を大きく上回るケースもあります。
そのため、コスト削減は、システムごとの優先度を踏まえて判断します。重要度に応じてメリハリをつけることが、賢いコスト管理につながります。
クラウド活用と自動化
クラウドと自動化は、インフラ費用と運用の人的コストを見直す方法です。
- クラウド移行:負荷に応じたリソースの増減と、物理管理の削減
- 監視自動化:異常検知と定型作業の自動化による、有人対応の削減
オンプレミスのサーバーを保有すると、ハード保守や更新が続きます。さらに、設置場所の費用も継続的に発生します。
クラウドへ移行すれば、使った分だけ支払う料金体系になります。そのため、無駄なコストを抑えられます。さらに、サーバーの物理的な管理から解放される点も特徴です。
監視や障害検知を自動化すると、異常を自動で検知して通知できるため、有人監視の負荷を減らせます。定型作業もスクリプトやツールに任せれば、限られた要員でも運用できます。初期導入には投資が必要ですが、長期的にはコスト削減につながります。
▼全体ガイドの記事
・ITシステム維持運用の完全ガイド
まとめ
ITシステム維持運用費は、月額20万円から90万円程度が一般的な相場です。年間では、初期開発費の15〜20%が一つの目安となります。
費用は、運用・監視、障害対応・改修、インフラ・ライセンスに分かれ、金額は各項目の対応範囲によって変動します。
さらに、定額制か従量制か、SLAをどう設定するかも、費用と安心感を左右します。見積もりでは、総額だけでなく対応範囲を確かめることが大切です。
複数社で比べ、追加費用の条件も確かめておきます。対応範囲の見直し、クラウド活用、自動化を組み合わせれば、品質を保ちながら費用を抑えられます。
相場感とチェックポイントを参考に、自社に合った維持運用の体制づくりを進めましょう。
維持運用の全体像をさらに詳しく知りたい方は、ITシステム維持運用の完全ガイドをご覧ください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
