労務管理システムは、パッケージ型とクラウド型のどちらを選ぶかに加え、電子申請や従業員向けの手続き、既存システムとの連携を比べると、自社の課題に合う製品を絞れます。
まずパッケージ型とクラウド型の違いを押さえ、主要6製品、課題別の選び方、料金・契約、デモとPoCの順に見ていきます。
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パッケージ型とクラウド型労務管理システムの違い
パッケージ型は、自社環境への導入や個別構築を含む広い意味で使われる言葉です。それに対して、クラウド型は、ベンダーが運用するサービスをインターネット経由で利用する方式です。
現在、具体的な労務管理製品として比べやすい製品は、クラウド型が中心です。そのため、対象は確認できるSaaSに絞っています。
パッケージ型の論点は自社運用と法改正への追従体制
従来型のパッケージは、ソフトウェアを買い切り、自社サーバーに導入する形態が一般的です。また、自社のセキュリティ基準や基幹システムとの密結合に対応しやすい場合があります。
- 自社運用:サーバー・監視・バックアップ・バージョンアップを担う範囲が大きくなります。
- 法改正への対応:継続的な改修体制と費用の見極めが必要です。
社会保険料率や年末調整様式の改定に、継続して追随する必要があります。そのため、導入時の自由度だけでなく、改修を続けられる体制と費用も見ておくことが欠かせません。
一方で、近年は労務管理の領域で単体販売されるオンプレミス製品が限られており、多くのベンダーがクラウド型を主力にしています。買い切り型を検討する企業でも、クラウド型の機能範囲と料金を先に把握しておく必要があります。そのうえで、クラウド型で満たせない要件だけを個別開発で補う順序にすると、比較を進めやすくなります。
クラウド型が向いている場面は短期導入と法改正への追随
クラウド型は、サーバーを調達しなくても利用を始めやすく、社会保険料率や年末調整様式の更新もベンダーから受けられます。
ただし、SaaSを導入しても法令遵守や届出の正確性は自動では保たれないため、雇用形態や事業所構成、承認ルールを整理し、ワークフローに落とし込む必要があります。
製品を比較するときの共通の確認項目

自社の手続きに合うかは、機能一覧を見ただけでは判断しにくいものです。そこで、候補を同じ条件で比べられるよう、確認項目をそろえておきます。
電子申請から年末調整までのカバー範囲の比較
まず、自社が使う手続きが標準機能で対応できるかを確認します。そのうえで、実際の事業所数や雇用形態を使って試すと、判断しやすくなります。
- 電子申請:資格取得・喪失、算定基礎、月額変更への対応範囲を見ます。
- 従業員手続き:年末調整と雇用契約の電子化に対応しているかが要点です。
- その他の届出:労基署への提出など、自社が使う様式を照合します。
「e-Gov対応」と書かれていても、全届出が対象なのか一部の様式だけなのかで、担当者の作業量は異なります。
対応帳票数も、そのまま信用せず、自社が実際に提出する届出の種類と照らし合わせてください。帳票数が多くても、必要な様式が対象外であれば適合しません。反対に、帳票数が少なくても、自社の手続きを網羅できれば十分な場合もあります。
連携・権限・従業員側画面の確認
管理画面が使いやすくても、従業員の申告や情報提出が難しいと、問い合わせが増えて定着しにくくなります。このため、従業員側の操作性も同じ基準で比べます。
- 従業員画面:スマートフォン対応、入力ガイド、差し戻し理由の有無を見ます。
- 外部連携:給与・勤怠・人事システムとのAPI・CSVによる接続方式を比べます。
- 管理とデータ:権限、操作ログ、出力に加え、契約終了時の返却・削除条件も確かめておきます。
評価の手順は、労務管理システムの選定ポイント・選び方・種類で詳しく整理しています。
労務管理システムの主要クラウド製品6選
2026年7月時点で公式ページと対象業務を確認できた6製品を取り上げます。掲載順はランキングではありません。得意な手続きや料金体系は製品ごとに異なるため、自社の課題と利用条件をそろえて比べてください。
SmartHR
SmartHRは、入社手続きや雇用契約の管理から給与計算までを、一つの基盤で扱いたい企業向けの製品です。勤怠管理、年末調整、文書配付も同じ範囲に含まれます。
公式サイトによると、登録社数は80,000社を超え、ARR(年間経常収益)は2026年7月時点で300億円を突破したと発表されています。
- 機能範囲:労務以外に使う部分と、既存の給与・勤怠システムとの重なりを洗い出します。
- 料金確認:対象人数と利用機能を伝え、料金ページから見積もりを取ります。
jinjer人事労務(社保手続きオプション)
社保手続きオプションは、社会保険・労働保険の帳票を自動で作成でき、e-Gov・マイナポータルでの電子申請に強みを持つ製品です。公式サイトには、複数事業所や一括電子申請にも対応すると掲載されています。
2026年7月時点の公式案内では月額300円〜ですが、利用製品によって変動し、初期費用もかかります。料金表の取得や問い合わせが必要なため、最新の条件は見積もりの際に確かめてください。
freee人事労務
freee人事労務は、勤怠管理、給与計算・明細に加え、入社書類の自動作成や電子申請を扱います。また、LINEで情報を集める年末調整にも対応しています。
freee会計など同社の製品を使っている場合は、連携範囲から二重入力の削減効果を確認できます。
2026年7月時点の公式案内では、基本料金0円に1名ごとの課金を加えた月額400円〜です。人数や追加機能で変動するため、最新の料金は公式サイトで確認しておきます。
オフィスステーション労務
入退社、有期雇用契約の更新、社会保険・労働保険手続きの電子化を中心にした製品です。128帳票とe-Gov完全対応をうたっています。
2026年2月末時点の利用社数は55,000社を超えています。2026年7月時点の料金は、登録料11万円(初回契約時のみ)、従業員1名あたり月額440円(税込)、バージョンアップ無料です。
- 外部連携:公式サイトによると、他社の給与・勤怠ソフトなどとAPIで接続できます。
- 料金確認:事業所数や届出頻度を踏まえ、費用の条件を見ておく必要があります。
One人事
One人事は、入社手続きと台帳管理から、電子申請や年末調整までを途切れなくつないで管理したい企業向けです。公式サイトには、情報管理とワークフローの機能が掲載されています。
- 情報管理:雇用契約・マイナンバー・扶養情報・人事履歴をまとめて扱います。
- ワークフロー:入退社・異動の手続きと連動します。
料金は、初期費用や導入支援費、アカウント数で変わる月額費用、ライセンス費用などで構成されています。金額は見積もりで案内されます。人事マスタも一体で管理したい場合は、その機能範囲まで比べてください。
マネーフォワード クラウド人事管理
入退社や異動の管理、従業員情報をまとめて扱う機能を中心に、クラウド社会保険やクラウド年末調整などと連携して使う製品です。
2026年7月時点の公式案内では、個人向けは年払いで月額900円〜、法人向け50名以下は年払いで月額2,480円〜です。51名以上は問い合わせとなっています。
複数のサービスを組み合わせて使う前提のため、必要な労務機能がどのプランに含まれるかは、見積もりの際に確かめる必要があります。
自社の課題別に候補を絞る方法
6製品を一度に細かく比べるより、最も大きな課題を決め、必須要件で候補を減らすほうが効率的です。
電子申請の漏れ、年末調整・入社手続きの負荷、給与・勤怠との一体運用のどれを重視するかで、適した製品のタイプが変わります。また、事業所数や雇用形態も、重視する機能に影響します。
電子申請・届出の効率化を最優先したい場合
複数の事業所があり、社会保険・労働保険の届出が多い企業は、電子申請の一連の流れで候補を比べます。
- 候補製品:e-Gov連携に強いjinjer人事労務とオフィスステーション労務が該当します。
- 連携要件:給与・勤怠ソフトとのAPI接続が必要かどうかを見ます。
- 実機確認:入社登録から電子申請までをデモで再現します。
年末調整・入社手続きの負荷軽減や一体運用を重視したい場合
従業員のセルフサービス化を重視する場合は、申告画面を実際に見て確かめる必要があります。また、給与・勤怠を含めて一体で運用するなら、既存システムと重なる範囲も比べておきます。
- 年末調整・入社:freee人事労務やOne人事を候補にします。
- 一体運用:SmartHRやマネーフォワード クラウド人事管理も、比較の対象に入ります。
複数の課題があるなら、業務への影響が最も大きい課題を優先します。そのうえで、他の課題を将来の連携や機能追加で補えるかも確かめると、段階的に展開しやすくなります。
料金・契約前に確認すべきこと

公開価格だけで選ぶと、人数増加や外部連携、サポートで想定外の費用が生じる場合があります。そのため、月額費用だけでなく総保有コストで判断します。
導入準備や移行、教育にかかる費用も考えに入れます。さらに、日常運用や将来の解約、データ移行の費用も加えます。
課金の対象と単位
クラウド製品は、製品によって課金単位が異なる場合があります。まず、現在と将来の人数を各社に伝え、同じ条件で見積もりを取ります。
- 課金単位:従業員数・事業所数・届出件数・利用機能のどれに連動するかを確かめます。
- 契約・追加費用:初期費用や最低利用期間、従量課金の扱いに加え、APIや導入支援、サポートの金額も見ます。
1年後や3年後の想定人数も、見積もりに反映します。料金が非公開の製品や問い合わせが必要な製品は、確認できていない金額を推測で比較表に入れないようにします。
たとえば、登録料は契約時だけの費用で、月額利用料は継続的な費用です。両者は分けて記録しておき、退職者や休職者が課金対象になるかも、あらかじめ確かめておく必要があります。
契約書で確認するデータ保持・法改正対応・解約条件
クラウドサービスでは、雇用契約書やマイナンバー、扶養情報などの個人情報を扱います。そのため、契約前に確認する項目を先にそろえておきます。
- 安全管理:権限、操作ログ、通信・保存時の保護、障害復旧、委託先、保管場所を見ます。
- 契約終了:データを受け取る形式と削除条件を確かめます。
- 法改正:社会保険料率や年末調整様式の改定に、いつ対応するかを見極める必要があります。
製品が担う機能と、自社が行う法的判断や運用を分け、どこまでを誰が受け持つかを整理しておきます。
デモとPoCで絞る製品一覧の最終候補

資料で候補を絞ったら、実際の手続き条件を使ってデモまたはPoCを行います。参加するのは、労務や人事、経理の担当者です。加えて情報システムの担当者も入り、可能であれば従業員本人にも参加してもらいます。
入社から電子申請までを通した試験
実在に近い一つのケースで、入社登録から公文書取得までを試します。正常な処理に加えて、雇用形態の変更や退職時の喪失届も確かめます。
- 入社情報を登録します。
- 雇用契約書を電子締結します。
- 資格取得届をe-Govで電子申請し、公文書を取得します。
従業員側は数名の協力を得ます。契約の確認から情報提出まで、説明なしで操作できるかを見ておくと、マニュアルや問い合わせ窓口の準備が見えてきます。
導入効果の実測と稟議への活用
PoCの前後で作業時間や問い合わせ件数、手続き日数を比べ、自社の削減見込みを算出します。
- 届出書類:作成時間を記録します。
- 年末調整:問い合わせの件数を数えます。
- 入社手続き:完了までの日数を測ります。
他社の公開効果をそのまま当てはめず、自社の件数と人件費で計算します。そのうえで、アカウント管理や仕様変更、問い合わせの一次切り分けに残る工数も差し引きます。
労務管理システムの製品比較で押さえておきたいポイント
買い切り型の有無やおすすめ順位だけでなく、事業所構成と利用規模をそろえて比べます。選定時に判断が分かれやすい点も、あわせて見ておきます。
買い切り型が必要な場合の個別開発という選択肢
機能や料金を確認しやすい労務管理システムは、現在クラウド型が中心です。一方、オンプレミスや買い切りが必須なら、業務要件を整理して比べます。
- 個別開発:買い切り要件に合わせて構築する方法です。
- ハイブリッド構成:クラウドと基幹システムの組み合わせを検討します。
おすすめ製品の判断基準となる最優先課題
全社共通で1位になる製品はありません。電子申請、年末調整・入社の負荷軽減、給与・勤怠との一体運用など、最優先課題に合う製品が候補になります。
まず必須要件で候補を絞り、同じシナリオのデモまたはPoCで比べてください。
3年間の総保有コストによる料金比較
各社に同じ従業員数と事業所数を示します。届出件数や連携条件も同じ条件にそろえ、3年程度の総保有コストで比べます。
初期・月額費用に加え、データ移行やAPI、サポートの費用も含めます。さらに、社内運用や解約時のデータ出力費用も入れておきます。
まとめ
買い切り型を無理に探すより、継続的に更新されるクラウド型を自社の課題と運用に合わせて比べるほうが現実的です。
紹介した製品は、SmartHR、jinjer人事労務、freee人事労務、オフィスステーション労務、One人事、マネーフォワード クラウド人事管理です。各製品の特徴は、電子申請や年末調整、統合運用などで異なります。
課題診断から候補への絞り込み
電子申請の漏れや年末調整・入社の負荷、既存システムとの一体運用のうち、どれが最も大きい課題かを決めます。評価の観点の詳しい中身は、労務管理システムの選定ポイント・選び方・種類もご覧ください。
業務範囲や連携、従業員画面に加えて、法改正、セキュリティ、料金も同じ質問で比べます。そうすれば、広告上の順位に左右されず候補を絞れます。
実手続きのPoCによる最終確認
資料に並ぶ機能数より、自社の入社、電子申請、年末調整を途切れなく処理できるかが決め手になります。そのうえで、関係者と例外処理も試し、削減時間と残る運用工数を測ります。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
