漏水監視システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

漏水監視システムの開発は、目的とKPIを決めてから、現地調査とPoC、技術方式の選定を経て本番運用へ移ると、手戻りを減らせます。

機能、費用、見積もりの確認点も、この流れと合わせて見ておくと役立ちます。全体像は、下の完全ガイドでも確認できます。

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・漏水監視システム開発の完全ガイド

漏水監視システムの概要

漏水監視システムを構成するデータ取得、通信・蓄積、可視化・検知、通知・業務管理、外部連携の5機能を示した図。
取得した値が検知から現場業務、既存システムへつながります。

漏水監視システムは、水道管や弁、ポンプ、メーターなどの設備から、水圧や流量、音・振動、水位を継続して取得する業務システムです。その値をもとに、漏水や設備異常の兆候を早期に発見します。

水道管路は高度経済成長期に整備された施設の老朽化が進んでおり、法定耐用年数40年を超えた管路の経年化率は約23.6%です。

現在の更新ペースが続けば、今後20年で約69%まで上昇すると試算されています(出典: 国土交通省水管理・国土保全局、2024年度全国水道主管課長会議資料)。

年間2万件を超える漏水・破損事故も報告されています(出典: 国土交通省水管理・国土保全局、2024年度全国水道主管課長会議資料)。

システムは、センサー値を表示するだけでなく、地図で監視地点と管路を確認し、異常度を判定して担当者へ通知します。

限られた予算と人員で、優先度の高い管路から導入する進め方が求められています。

さらに、現場調査や修繕の記録まで一連の業務につなぐ設計も大切です。なお、継続的に見つける「監視」と、現場で特定する「調査」は分けて考えます。

漏水を検知する方式の組み合わせ

監視範囲や地点の特性に応じて方式を組み合わせると、検知と設置場所の絞り込みの両方に役立ちます。

  • 広域監視:配水区域の流量と水圧から、広い範囲の異常をつかみます。
  • 管路の継続監視:音響・振動センサーで、対象の区間を常時見守ります。
  • 設置地点の選定:衛星画像や地盤データ、管路年齢、漏水履歴から候補を絞り込みます。

たとえば、総務省の実証事業では、八代市水道局管区でIoT振動センサーによる多地点同期計測を行いました。この実証では、検知率90%で128件の漏水箇所を発見し、人手による従来の検知件数約70件を大きく上回る成果が報告されています(出典: 総務省「令和6年度地域デジタル基盤活用推進事業(実証事業)」)。

同じケースでは、年間209,714立方メートルの無効水を抑え、有収率が5.42%改善する見込みです。このように、複数の方式を組み合わせる設計の有効性が示されています。

システムに求められる主要機能

必要な機能は、データの取得から既存システムとの連携まで、業務の流れに沿って次のように整理できます。

  • データ取得:水圧・流量・音響・振動・水位のセンサーやスマートメーターと連携します。
  • 通信・蓄積:LTEやLPWAなどの回線で送り、ゲートウェイ経由でクラウドに蓄積します。
  • 可視化・検知:監視値やしきい値、トレンド、夜間最小流量を表示し、異常や予兆を検知します。
  • 通知・業務管理:メールやアプリで担当者へ知らせ、調査から修繕完了までの進み具合を追えるようにします。
  • 外部連携:水道管路GIS、SCADA、料金システム、資産台帳と接続します。

異常検知では、固定しきい値や平常時との差分、AIによる正常範囲の推定を組み合わせます。

通信が途切れた場合に備えて、一時保存と再送も要件に含めます。

AIの判定は漏水の確定ではなく、調査の優先度を示すものとして扱います。最終判断には、現場確認を組み合わせます。

ポイント

監視範囲や地点の特性に合わせて検知方式を組み合わせられるか、データの取得から外部連携までの機能をどこまで求めるかが、判断の目安になります。

漏水監視システム開発の進め方

漏水監視システム開発を、目的とKPIの設定、現地調査とPoC、技術方式の選定、本番運用への移行の順に示した4段階の図。
前段階で決めた条件を次の工程へ引き継ぐ構成です。

開発は4段階で進みます。まず目的とKPIを決め、調査とPoCを行ったうえで、方式を選んで本番運用へ移ります。3つのフェーズに当てはめると、目的とKPIの設定とPoCは要件定義・企画フェーズに、方式の選定は設計・開発フェーズに含まれます。

全管路を一度に対象とせず、事故の影響や漏水リスクが高い区域から始めます。段階的に対象を広げれば、限られた予算でも効果を出しやすくなります。

要件定義・企画フェーズでの目的とKPIの設定

はじめに、漏水監視で改善したい業務と、その効果を測るKPIを一つ以上決めておきます。

  • 漏水率:漏水の割合を下げる。
  • 被害:破裂や断水による被害を小さくする。
  • 調査負担:巡回の手間を減らす。
  • 施設保護:工場や施設の水損を防ぐ。

対象の管路と監視地点、検知から通知までの許容時間を決めます。

対応部署や既存データの有無も、あわせて整理します。

発注側は、管路の材質と口径、埋設環境に加え、弁室やマンホールの電源・通信の状況も、現地担当者と確かめます。

騒音や凍結、浸水の条件も調べておくと、後工程での手戻りを防げます。

過去の漏水履歴や修繕履歴は、流量・水圧の実績やGISデータとあわせて集めておきます。また、数地点で1〜3か月程度の実証を行う計画も、要件定義と並行して立てます。

設計・開発フェーズでの技術方式の選定

導入の速さや拡張性、既存システムとの連携要件を比べて、技術方式を選びます。

  • パッケージ・SaaS:標準機能で、早期導入を目指します。
  • クラウドIoT:センサーの増設や遠隔監視のしやすさを重視します。
  • スクラッチ開発:GIS・SCADA・料金資産管理との連携や、独自の判定を重視する方式です。
  • ハイブリッド:標準監視SaaSと個別開発を組み合わせます。

パッケージ・SaaSでは、業務を製品に合わせる必要があり、データ移行やAPIにも制約があります。一方で、スクラッチ開発では、要件定義やAI学習データ、運用保守の責任が重くなります。

費用と拡張性を両立させたい場合は、センサーと標準監視SaaSを使う構成も選択肢になります。なかでも、通知と作業管理、既存基幹との連携だけを個別に開発するハイブリッド構成が現実的です。

運用フローでは、まず異常を一次判定し、担当者が確認したうえで、現地調査と修繕につなげます。モデルへのフィードバックも、この流れに組み込んでおきます。

AIの結果を受けても、止水や掘削は現場の確認を経てから判断する仕組みにします。

テスト・リリースフェーズでの本番運用への移行

本番移行を判断するには、検知性能と現場対応の両方を評価します。

  • 検知:検知率と誤報率を評価します。
  • 通知:通知が届くまでの遅れを確かめます。
  • 現場対応:現地確認にかかる時間と、漏水1件あたりの調査コストを測ります。

保守契約には、センサーの校正や電池の交換を含めます。加えて、通信の監視とアラートの見直しも対象にします。

年次の訓練とセキュリティ点検も契約に含め、本番稼働後も精度を保てる体制を整えます。

水道は、停止や機能低下が住民の生活に影響する重要インフラです。そのため、国土交通省の「水道分野における情報セキュリティ確保に係る安全ガイドライン」を踏まえます。

あわせて、2026年5月に予定される第二版への改定内容も押さえます。さらに、法務・情報セキュリティ部門と所管官庁への確認を前提に進めます(出典: 国土交通省「上下水道:水道分野におけるサイバーセキュリティ対策」、2026年)。

ポイント

全体の流れは、目的とKPI、現地調査とPoC、技術方式の選定、本番移行の順です。各段階で決めた条件を次の段階へ引き継ぐことが、手戻りを減らす目安になります。

費用相場とコストの内訳

漏水監視システムの年間運用費の目安を、小規模200万〜500万円程度、中規模300万〜1,200万円程度、大規模8,000万〜2億円超の3区分で示した図。
大規模では広域基盤や複数拠点が費用幅に影響します。

漏水監視専用の公開見積は多くありません。そのため、公開実績や類似する業務システムの規模から、2025〜2026年時点の目安を整理できます。

たとえば、四日市市上下水道局のクラウド型IoT遠隔漏水監視業務は、2024年度の落札価格が230万円(1年間)でした。また、同種委託では、債務負担限度額を340万円とする情報が公開されています(出典: 四日市市上下水道局「令和6年度入札結果(業務委託)」、2024年度)。10〜20地点程度の小規模な公共導入では、この実績が一つの参考になります。

人件費と工数

初期費用は、作業と導入規模ごとに工数を分けて見積もります。

  • 小規模PoC・先行導入:5〜20地点で、100万〜500万円程度です。
  • 中規模クラウド導入:20〜100地点で、500万〜1,500万円程度です。
  • 個別連携を含む開発:1,000万〜3,000万円程度で、期間は3〜6か月が目安です。
  • AI・音響解析などを含む本格開発:3,000万〜8,000万円程度が目安です。

見積もりの工数には、要件定義・現地調査、センサーやゲートウェイの選定を含めます。

また、通信・クラウド基盤と、画面・通知ワークフローの開発も対象です。既存GIS・SCADA・資産管理との連携も、開発に含めます。AIモデルの学習と受入テストも、工数に含めます。

AI・音響解析・複数事業体対応まで含む本格開発では、6〜12か月程度を見込みます。センサーを数百基設置し、24時間運用や冗長化を含む大規模案件では、12〜24か月程度になる可能性があります。

初期費用以外のランニングコスト

運用費の幅は、導入規模や稼働条件、見積もりに含める項目で変わります。

  • 小規模:年間運用費は200万〜500万円程度です。
  • 中規模:年間運用費は300万〜1,200万円程度です。
  • 大規模:広域基盤や複数拠点などを含むと、8,000万〜2億円超となる可能性があります。

費用には、センサーの保守と電池交換、通信SIMと回線の費用、クラウドの利用料と監視が含まれます。加えて、AIモデルの再調整、既存システム連携の維持、セキュリティ診断と運用訓練も対象になります。

見積書では、センサーの購入とレンタル、通信回線を分けて書きます。現地設置や防水対策、クラウド利用料も、それぞれ別の項目にします。

AIモデルの学習と再調整、既存システム連携は個別の項目として書きます。さらに、セキュリティ診断や運用訓練、保守と交換も、別に分けておきます。

ポイント

費用は導入規模と開発内容で幅が大きく変わるので、初期費用と運用費を分けて、同程度の規模の案件と比べることが判断の目安になります。

見積もりを取る際のポイント

見積もりの精度は、発注側が業務の要件をどこまで言葉にできるかで決まります。

「漏水を見つけたい」という要望のままでは、対象規模や検知方式、通知の許容時間が各社で異なり、提案を比べにくくなります。

要件明確化と仕様書の準備

仕様書では、対象、検知後の対応、既存システムとの連携範囲を具体化します。

  • 対象:管路と監視地点の数。
  • 検知:水圧・流量・音響・振動のどれを中心にするか。
  • 対応時間:通知から現地対応までの許容時間。
  • 既存連携:GIS・SCADA・スマートメーター・料金管理との範囲。
  • AIの役割:調査優先度の提示にとどめるか、自動判定まで求めるか。

パッケージ・SaaSにするか、既存業務に合わせたスクラッチ開発にするかも、早めに決めておきます。また、公共調達や複数年度契約への対応も決めておくと、各社の提案を比べやすくなります。

複数社比較と発注先の選び方

候補となる企業は、案件に必要な実績と現場対応力を、同じ条件で比べます。

  • 監視・検知:広域水インフラや基幹管路の音響検知実績。
  • 導入・解析:通信・自治体実証の進め方やAI音響解析の精度検証。
  • 現場連携:現地調査との連携体制。

各社に同じ質問をしたうえで、センサー数や対応管径、GIS・APIとの連携可否を確かめます。

あわせて、各社の検知実績と誤報時の運用、保守の内容も確かめます。さらに、データの所有権や災害時の体制も確認します。

可能であれば、実際の管路データで短期のPoCを行い、検知率だけでなく誤報率も評価してください。さらに、現地調査へ引き継ぎやすいかも、発注先を選ぶ際の評価対象になります。

注意すべきリスクと対策

RFPでは、資産や通信、データの管理から障害対応までを確認項目にします。

  • 資産・通信管理:資産、経路、データの流れを台帳にまとめ、監視系とインターネット・業務系を分けます。
  • アクセス・暗号化:端末・センサー・利用者を認証し、最小権限を適用するとともに、通信と保存データを暗号化します。
  • 監視・更新:操作や設定変更のログとアラートを追います。脆弱性やパッチ、証明書、秘密情報は管理します。
  • 障害・復旧:バックアップを取り、通信断・停電時はローカルで継続します。インシデント報告や復旧訓練、連絡体制も決めます。
  • 契約・供給網:供給者を含めた管理と、契約終了時のデータの返却・消去を確かめます。

また、監視システムから制御系へ指令を返さない構成にすると、リスクを下げやすくなります。ただし、分離の方法は、施設の既存構成と業務継続の要件に合わせて設計します。

ポイント

見積もりを比べる前に、対象の管路と監視地点、検知方式、通知の許容時間、AIの役割を仕様書にまとめておくと、各社の提案を同じ条件で比べられます。

よくある質問(FAQ)

発注前には、センサーの設置場所や台数、AIの精度、費用について質問されることが多くあります。

導入の検討時に多い疑問に、順に答えます。

センサーは何個、どの場所に付ければ効果が出ますか?

重要管路から優先して進めるのが現実的です。全管路への一括設置は、必ずしも必要ありません。

過去の漏水履歴や管路年齢、事故時の影響度から候補地点を絞ります。そのうえで、衛星や地盤のデータ、履歴解析を使って地点を選びます。

たとえば、四日市市の2025年度案件は重要管路10箇所・センサー17基で、小規模導入の参考になります。

AIで漏水を確定できますか?誤検知の責任分界はどこにありますか?

AIは漏水を確定せず、調査の優先度を示すものとして扱うのが安全です。

固定しきい値や流量収支、音響解析などの複数のデータと、AIの推定値を組み合わせます。

止水や掘削は、現場確認を経てから判断します。さらに、誤検知や見逃しが起きた際の連絡と、しきい値の見直し手順も、あらかじめ運用マニュアルに定めておきます。

開発から本番運用まで何か月かかりますか?

導入規模や開発内容ごとの期間を比べ、設置や工事に必要な時間も見込んで計画します。

  • 小規模PoC・先行導入:数か月程度。
  • 個別開発:3〜6か月程度。
  • AI・音響解析・複数事業体対応を含む本格開発:6〜12か月程度。
  • 広域基盤・大規模案件:12〜24か月程度。

開発期間とは別に、センサー設置や電源・通信工事、受入テストの期間も確保します。

ポイント

導入の判断では、センサーの数や費用、期間、AIの扱いを段階ごとに分けて考えると、各社の回答を比べやすくなります。

まとめ

漏水監視システムの開発は4段階で進みます。まず目的とKPIを定めたうえで、調査とPoCを行い、方式を選んで本番運用へ移ります。

重要管路やリスクの高い区域から始め、検知率に加えて誤報率や現場対応時間も評価します。

段階導入とハイブリッド構成によるリスクの抑制

センサーと標準監視SaaSを組み合わせ、通知と作業管理、既存基幹との連携を個別に開発する方法は、費用と拡張性のバランスを取りやすい進め方です。

衛星や履歴データで候補地点を絞り、IoTセンサーで継続監視し、現地調査で確定する三段階モデルであれば、限られたセンサー投資でも成果を出しやすくなります。

セキュリティと運用体制を含めた計画

発注先は、費用やセンサー精度だけでなく、通信断・停電・サイバー攻撃時の代替手順も含めて選びます。

さらに、データの保管場所と契約終了時の扱いも確認します。誰がアラートを確認し、何分以内にどの現場対応を行うかを事前に固めておくと、効果を高める近道になります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。