機械学習基盤開発の発注/外注/依頼/委託方法について

機械学習基盤の発注・外注は、GPUやAIモデルだけを調達することではなく、データ収集から学習、評価、デプロイ、監視、再学習までを継続できる仕組みを外部パートナーと設計・構築することです。成功のポイントは、最初から大規模な基盤を買うことではなく、目的・データ・運用責任・費用上限を整理し、PoCから本番へ段階的に広げられる発注形態を選ぶことです。

機械学習基盤を委託したい企業が迷いやすいのは、RFPに何を書くか、請負と準委任のどちらを選ぶか、見積書の金額をどう比較するかが分かりにくいためです。この記事では、発注形態の選択、要件整理、契約、費用相場、委託先選定、見積比較、運用開始後の注意点まで、システムSI・システム開発として発注するための実務的な進め方を解説します。

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機械学習基盤の発注・外注とは何ですか?

機械学習基盤の発注と外注の全体像

機械学習基盤は、データを使ってモデルを作るための開発環境と、作ったモデルを業務で安全に使い続けるための運用環境を合わせたものです。発注の範囲を「モデル開発だけ」と定義すると、データ連携、モデルのバージョン管理、推論API、監視、障害時の切り戻しが抜けやすくなります。

AIモデル単体ではなくデータから運用までを発注する

AIモデルは、学習用データを加工し、アルゴリズムを選び、評価指標を確認して作成します。しかし本番業務では、毎日または毎月届く新しいデータを取り込み、同じ条件で特徴量を作り、承認済みのモデルをデプロイし、予測精度や入力データの変化を確認しなければなりません。したがって発注書やRFPでは、モデルの精度目標だけでなく、データパイプライン、実験管理、モデルレジストリ、推論方式、監視、ログ、再学習の手順までを成果物として定義します。

たとえば教育・スクール事業で離脱予測を行う場合、成績、出欠、学習履歴、教材利用状況を連携し、月次でモデルを更新する設計が必要です。自動採点や学習者への推薦では、誤判定が生徒の評価や学習機会に影響するため、教師や管理者が確認・訂正できるHuman-in-the-Loopも要件に含めます。

外注するメリットは専門性と本番運用の経験を借りられること

機械学習基盤の外注では、データエンジニア、機械学習エンジニア、クラウドアーキテクト、セキュリティ担当、プロジェクトマネージャーなど、複数職種の知見を必要な期間だけ組み合わせられます。特に、モデルを作った経験はあっても、権限管理、監査ログ、CI/CD、データドリフトの監視、障害対応まで経験した社内人材は限られます。

一方で、丸投げすると社内にノウハウが残らず、契約終了後に再学習や障害対応ができなくなるリスクがあります。委託先には設計書、データ辞書、運用手順、テスト結果、ソースコード、モデルの版管理情報を納品してもらい、社内担当者への引き継ぎと研修を契約範囲に含めます。

発注形態はどれを選ぶとよいですか?

機械学習基盤の発注形態を選ぶ場面

発注形態は、業務要件が固まっているか、社内に技術責任者がいるか、委託先にどこまで任せたいかで決めます。初回から全機能を一括発注するより、調査・PoC・本番化を分け、各段階の成果を確認して次へ進む方式が機械学習基盤には適しています。

構想から開発・運用まで一括で外注する

一括外注は、自社に機械学習やクラウドの専門人材が少なく、要件整理から任せたい場合に向きます。委託先がデータ棚卸し、ユースケース選定、クラウド設計、モデル開発、業務画面、監視、保守までをまとめて管理するため、社内の調整負担を抑えられます。大手SIerや機械学習基盤の構築経験を持つ開発会社を選ぶ場合に使いやすい形態です。

ただし、契約時点で不確実なデータ品質やモデル精度まで固定価格で確約させると、後から変更費用が増えます。一括契約にする場合も、要件定義、PoC、本番構築、運用移行のマイルストーンを分け、各段階で受入条件と中止条件を置きます。

クラウドやMLOpsを活用し、専門部分だけ委託する

AWS SageMaker、Azure Machine Learning、Google CloudのVertex AIなどのマネージドサービスを使い、データや業務アプリは自社で管理し、基盤設計・パイプライン・監視だけを外注する方法もあります。既にクラウド標準やデータウェアハウスが決まっている企業では、構築期間を短くしやすい方式です。

Google Cloudの公式ドキュメントでは、Vertex AIに学習、パイプライン、Model Registry、Feature Store、モデル監視が用意されています。AWSの公式料金ページでも、Processing、Feature Store、Training、リアルタイム推論、バッチ変換などが個別の利用量に応じて課金される構成です。便利な反面、どのサービスを常時稼働させるかで料金と責任分界が変わるため、委託先に構成図と月次費用の試算を作成してもらいます。

内製と外注を分ける共同開発にする

社内にプロダクト責任者やデータ担当がいる場合は、業務要件とデータ定義を自社で持ち、基盤の設計・実装や難しいモデル開発を委託する共同開発が現実的です。自社側が意思決定を担い、委託先が専門領域を補うため、将来の内製化やベンダー切り替えにも対応しやすくなります。

共同開発では、ソースコードの管理場所、レビュー方法、課題管理ツール、週次の意思決定者、仕様変更の承認者を先に決めます。担当者同士が直接やり取りするだけでは、設計判断が記録されないまま進むため、議事録と決定事項を納品物の一部として扱うことが重要です。

RFPと要件整理には何を書けばよいですか?

機械学習基盤のRFPと要件を整理する場面

RFPは、技術用語を並べた資料ではなく、委託先が同じ前提で提案・見積できるようにする発注条件書です。目的、対象業務、データの状態、利用者、セキュリティ要件、希望スケジュール、予算の考え方、納品物、保守体制を分けて記載し、未確定の事項は未確定と明示します。

目的とKPIを精度以外も含めて決める

まず「何のモデルを作るか」ではなく、「どの業務をどう変えるか」を書きます。離脱予測なら離脱率やフォロー対象の発見数、答案採点なら講師の採点時間、教材推薦なら利用率や継続率など、導入前後で測れるKPIにします。精度だけを成功条件にすると、現場で確認しにくい、予測が遅い、誤判定の訂正に時間がかかるといった問題を見落とします。

PoCでは、目標値だけでなく「どの数値を下回ったら本番化を見送るか」も書きます。たとえばモデル評価指標、現場利用率、1件あたりの処理時間、担当者の確認時間、月額クラウド費用、誤判定時の修正時間を組み合わせます。機械学習ではデータを確認して初めて実現可能性が分かるため、事前に測定方法まで決めると提案の比較が安定します。

データの所在・品質・個人情報を明らかにする

データ要件では、システム名、形式、件数、更新頻度、保管場所、保有者、欠損や重複の状況、ラベルの作成者を整理します。LMS、学籍・成績、出欠、CRM、教材、答案、講師記録が別々に管理されている場合は、連携方式と名寄せルールがモデル開発より先に必要です。紙やPDFが残る場合は、OCR、目視確認、匿名化、ラベル付けの範囲も見積対象にします。

生徒情報や成績を扱う教育案件では、保存地域、暗号化、アクセス権限、監査ログ、バックアップ、委託先の再委託、学習データへの二次利用を確認します。文部科学省は令和7年3月の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」で、教育現場の特性を踏まえたセキュリティ対策を示しています。RFPには「準拠すること」だけでなく、どの環境に誰がアクセスでき、どの操作を何年間記録するかまで具体化します。

成果物と責任分界を一覧にする

成果物には、要件定義書、データフロー図、データ辞書、クラウド構成図、IaCや設定ファイル、学習・推論パイプライン、実験ログ、モデルレジストリ、API仕様書、監視ダッシュボード、テスト計画・結果、運用手順書、障害時の復旧手順、研修資料を含めます。モデルの重みだけを受け取っても、再現性や保守性は確保できません。

責任分界では、データ提供、アノテーション、クラウドアカウント、脆弱性対応、モデル承認、リリース判断、監視アラートへの一次対応、障害復旧、再学習の実行者を決めます。特に「精度が落ちた場合に誰が原因を調査し、いつ再学習し、誰が本番反映を承認するか」は、開発完了後に揉めやすいため、RFPの段階で明示します。

機械学習基盤の発注・外注はどの順番で進めますか?

機械学習基盤の開発を段階的に進める場面

実務では、現状分析、要件定義、限定的なPoC、本番基盤の構築、運用移行の順に進めます。最初の契約で全工程を固定するのではなく、前工程で得たデータ品質と業務評価を次工程の条件に反映させると、過剰な投資と手戻りを抑えられます。

現状分析と要件定義で発注条件を固める

最初に、業務責任者、現場利用者、情報システム、セキュリティ、法務、データ管理者を集め、目的と制約を確認します。既存システムのAPI、CSV出力、データ更新、権限、ネットワーク、契約中のクラウドサービスを棚卸しします。ここで「使えるデータが何か」「ラベルを誰が作るか」「業務で許容できる誤りは何か」を確認できると、後の見積精度が上がります。

要件定義の成果は、機能一覧だけではありません。対象ユースケース、KPI、データ項目、セキュリティ分類、非機能要件、運用体制、受入基準、未決事項、リスク一覧までを文書化します。委託先に作成を任せる場合でも、社内の意思決定者が内容を承認し、優先順位を決めることが重要です。

小さなPoCでデータと業務効果を検証する

PoCは、1校、1学年、1教科、1業務などに対象を限定し、モデルの実現可能性と現場の使いやすさを確認します。必要な成果は、精度の数値だけではありません。データ取り込みから推論結果の表示までの時間、担当者が結果を確認・修正する時間、予測の説明に必要な情報、再現可能な学習手順、1か月分を処理する費用も測定します。

NotebookLMのリサーチでは、教育現場では現状分析から限定的なPoCを経て本導入へ進む順番が有効と整理されています。Classiの自動作問では制作時間24%削減、制作費38%削減という事例が示されていますが、個別事例の効果をそのまま自社へ当てはめるのではなく、自社の導入前指標を測って比較します。

本番化と運用移行で仕組みを定着させる

本番化では、データ取り込みの自動化、学習パイプライン、モデルの承認フロー、段階リリース、APIまたはバッチ推論、権限管理、バックアップ、監視、アラート、ロールバックを整備します。開発環境で動くコードを本番へ移すだけでは、データの分布が変わったときや、推論結果が業務システムへ届かないときに対応できません。

運用移行では、マニュアルを渡すだけでなく、実際のアラートを使った訓練を行います。モデルの精度低下、入力欠損、推論遅延、クラウド費用の急増、権限エラーを想定し、誰が何分以内にどの画面を確認し、どこへ連絡し、どの条件で旧モデルへ戻すかを確認します。運用保守を外注する場合は、受付時間、SLA、月次レポート、再学習の回数と追加費用も決めます。

機械学習基盤の契約形態は請負と準委任のどちらですか?

機械学習基盤の契約形態を検討する場面

契約形態は、成果物と完成条件が明確な工程は請負、不確実性が高く専門家の作業や検討を依頼する工程は準委任を基本に分けて考えます。機械学習では、データを調べるまで精度や工数を確定しにくいため、全工程を一つの契約に押し込めないことがリスク管理になります。

請負契約は成果物と受入条件を固められる工程に使う

請負契約は、委託先が合意した成果物を完成させ、発注者が検査・受入する形に向いています。確定したデータ連携、画面、API、権限設定、テスト、ドキュメントなど、仕様と受入基準を具体化できる工程で使いやすい契約です。納期、検査期間、修補、知的財産権、第三者ライセンス、再委託、秘密保持を契約書と個別仕様書に落とし込みます。

「高精度モデルを完成させる」とだけ書くと、学習データや評価指標の違いで完成の定義がぶれます。モデルを請負の対象にする場合は、対象データ、評価用データ、指標、測定手順、許容範囲、再現条件を明記し、精度が基準に届かない場合の追加検証や中止の扱いも決めます。

準委任契約は調査・検討・専門人材の支援に使う

準委任契約は、委託先が専門家として調査、設計、分析、開発支援を行い、作業内容と稼働に対して報酬を受ける形に向いています。データ品質の確認、クラウド方式の比較、モデルの実現可能性調査、PoCの仮説検証など、結果を事前に確約しにくい工程で使いやすくなります。

準委任では、作業時間を使えばよいという運用にしないことが大切です。月次の作業計画、成果報告、判断待ち事項、次月の仮説、作成した設計資料やコードの一覧を確認します。発注者が委託先の担当者へ直接指揮命令するのではなく、契約上の責任者を通じて依頼・承認する点にも注意します。

調査は準委任、本番構築は請負のように分ける

現実的には、調査・要件定義・PoCを準委任で行い、確定した本番構築を請負で契約し、運用保守を月額の準委任または保守契約にする組み合わせが多くなります。契約を分けると、PoCの結果を踏まえて本番範囲を見直せますが、工程間の責任が切れないように、次工程へ引き継ぐ資料と意思決定の期限を定めます。

契約前には、モデルやコードの権利、学習データの利用範囲、生成物の再利用、オープンソースのライセンス、クラウドアカウントの所有者、契約終了時のデータ削除とエクスポート方法も確認します。経済産業省のAI事業者ガイドライン第1.2版は2026年3月31日に公表されているため、AIを扱う委託契約では最新のガバナンス方針との整合も確認します。

機械学習基盤の外注費用相場はいくらですか?

機械学習基盤の費用相場を確認する場面

国内の機械学習基盤受託開発には、システム規模とデータ状態を横断した統一価格表がほとんどありません。以下は、教育向けAIアプリ、データ分析基盤、MLOps導入などの類似案件から作成した、予算取り用の推定レンジです。正式な金額ではなく、モデル数、連携システム数、データクレンジング、閉域ネットワーク、GPU、業務画面、保守時間で変動する前提で利用します。

フェーズ別の初期費用は300万円台から1億円超まで幅がある

調査・データ棚卸し・小規模PoCは、1ユースケースで評価画面までを作る場合、300万〜800万円程度が一つの推定レンジです。MVPやパイロットで1〜2モデル、データ連携、簡易API、監視の初版まで含める場合は800万〜2,000万円程度、本番基盤で複数モデル、モデルレジストリ、CI/CD、権限・監査、業務画面まで含める場合は2,000万〜5,000万円程度が予算取りの目安になります。

複数校・複数拠点に展開し、閉域接続、冗長化、移行、24時間運用まで含める場合は5,000万円〜1.5億円超となる可能性があります。これらは機械学習基盤の類似案件からの推定値であり、公開された一律相場ではありません。特に、紙・PDFの電子化、データの名寄せ、ラベル付け、既存学務システムとの連携がある案件では、モデル開発より前工程の費用と期間が大きくなることがあります。

クラウド・GPU・保守のランニング費用を別に見る

運用費は、クラウドの計算資源、GPU、ストレージ、データ転送、データベース、ログ・監視、バックアップ、API、保守人員を分けて見ます。小規模なクラウド構成では月50万〜300万円程度が予算取りの推定レンジですが、開発保守を含むか、GPUを常時確保するか、推論をリアルタイムにするかで大きく変わります。開発費とクラウド利用料を一つの月額にまとめず、利用量に応じた変動部分を示してもらいます。

公式価格の読み方も重要です。Azure Machine Learningはサービスの追加料金がなく、コンピューティングに加えてBlob Storage、Key Vault、Container Registry、Application Insightsなどの利用料が発生します(出典:Microsoft「価格 – Azure Machine Learning」、2026年確認)。同ページの例では、10台のVMを100時間使う学習で1,196米ドル、10台を30日間終日稼働させる推論で8,611.20米ドルと試算されています。これは米国西部2の例であり、契約、リージョン、為替、割引で変わるため、自社の料金計算ツールで再計算します。

見積書は作業項目と前提条件に分解して確認する

見積書は、(1)要件定義、(2)データクレンジング・OCR、(3)クラウド・ネットワーク、(4)モデル開発、(5)アプリ・API、(6)MLOps・監視、(7)セキュリティ審査、(8)移行・研修、(9)保守運用に分けてもらいます。各項目に、担当者、工数、期間、成果物、前提、含まれない作業、追加料金の条件があると比較しやすくなります。

安い見積でも、データ整備、テストデータ作成、クラウド初期設定、監視、障害対応、ドキュメント、利用者研修が別料金なら、総額で高くなることがあります。反対に高い見積では、不要な常時稼働GPU、過剰な冗長化、利用しないリアルタイムAPIが含まれていないか確認します。見積金額そのものではなく、同じ前提にそろえた総保有コストで判断します。

機械学習基盤の委託先選定と見積比較のポイントは何ですか?

機械学習基盤の委託先と見積を比較する場面

委託先は、AIの実績だけでなく、データ連携、クラウド、セキュリティ、業務アプリ、運用保守をどこまで担当できるかで比較します。クラウドサービスを提供する会社と、設計・開発・運用を請け負うSIerは役割が違うため、同じ「機械学習基盤に対応」と書かれていても、提案範囲を確認する必要があります。

実装力は構成図とデモで確認する

提案時には、データ取り込み、学習、モデル承認、デプロイ、推論、監視、再学習の流れを構成図で示してもらいます。モデルレジストリや実験管理がどこにあり、どの版を本番へ出すのか、入力データの欠損や分布変化をどの画面で検知するのかを質問します。実績の紹介だけでなく、匿名化したサンプル設計やPoCのデモで、業務要件を技術へ落とす力を確認します。

AWS、Azure、Google Cloudのどれを選ぶかは、単純な性能比較だけでは決まりません。既存のMicrosoft 365やEntra ID、Google WorkspaceやBigQuery、AWSのデータ基盤、校務系ネットワーク、閉域接続、社内の運用人材との親和性を見ます。OSSを組み合わせる提案では、KubernetesやMLflowなどのアップデート、脆弱性対応、障害時の担当者まで確認します。

教育データや機微情報を扱える体制を確認する

教育・スクール向けでは、生徒や保護者の情報、成績、出欠、答案、学習履歴を扱う可能性があります。委託先が個人情報をどの環境で処理し、開発者が本番データへアクセスする場合にどの承認と記録を残すかを確認します。匿名化した開発データ、最小権限、分離された開発・検証・本番環境、監査ログ、保存期間、削除手順が提案に含まれているかを見ます。

加えて、誤判定の説明と人による修正が可能かを評価します。生徒への推薦や自動採点では、モデルの出力を最終判断に直結させず、教師が確認できる画面、判断理由の記録、訂正データを次回学習へ利用するルールを設けます。委託先の説明が「精度が高い」だけで終わる場合は、運用時の責任分界を追加質問します。

同じRFPで複数社の見積を比較する

複数社へ依頼するときは、同じRFP、同じデータ概要、同じ納期条件、同じ前提で提案を求めます。比較表には、要件の対応可否、初期費用、クラウド費用、保守費用、開発期間、社内工数、成果物、除外項目、リスク、追加費用の条件を並べます。価格だけで順位を付けず、提案の前提が現実的か、未確定事項を正直に示しているかも評価します。

面談では、実装担当者や運用担当者にも参加してもらいます。営業担当者が説明できても、実際の担当者がデータ品質、監視、障害対応、引き継ぎに答えられない場合は注意が必要です。見積の差が大きいときは、機能の優劣よりも、データ整備、セキュリティ審査、テスト、保守、クラウドの常時稼働が含まれているかを突き合わせます。

機械学習基盤の外注で起きやすい失敗と対策は何ですか?

機械学習基盤の外注リスクを確認する場面

機械学習基盤の失敗は、モデルのアルゴリズムよりも、目的の曖昧さ、データ品質、責任分界、運用設計の不足から起きやすくなります。発注前に失敗条件を言語化し、契約とプロジェクト計画に反映させることが重要です。

データが足りずモデル評価だけで終わる

過去データが少ない、ラベルの定義が人によって違う、欠損や重複が多い、業務システムの項目が途中で変更されている場合、モデルの精度を正しく測れません。対策として、発注前にサンプルデータを使ったデータプロファイリングを行い、欠損率、重複率、期間、対象者数、ラベルの一致率を確認します。問題が残る場合は、PoCの目的をモデル完成ではなくデータ整備と評価設計に置き換えます。

PoCのコードを本番へそのまま持ち込む

ノートブック上で動いたモデルを本番へ移すだけでは、権限、再現性、テスト、監視、ロールバックが不足します。PoCの開始時点から、コードとデータのバージョン管理、評価用データの分離、モデル登録、APIまたはバッチの実行条件、ログの出力を設計します。本番化しないPoCであっても、将来の判断に必要な実験記録を残します。

運用担当と再学習の責任者が決まっていない

本番稼働後に精度が落ちたとき、委託先は「開発完了」、社内は「保守範囲」と考えて対応が止まることがあります。誰がデータドリフトを確認し、どの閾値で調査し、再学習用データを承認し、モデルをリリースするかを運用設計書へ記載します。月次の利用状況、精度、遅延、費用、インシデントを確認する場も設定します。

クラウドの公式情報からも、機械学習基盤は学習だけでなく、ストレージ、推論、監視、モデル管理を含む複数の課金・運用要素で構成されると分かります。AWSはSavings Plansによる最大64%の削減可能性を掲載していますが、利用量を確約する契約であるため、ワークロードが安定しているかを確認してから選びます(出典:AWS「SageMaker料金」、2026年確認)。安さだけでなく、停止できるGPU、バッチ化できる推論、ログ保存期間などを含めて管理します。

よくある質問(FAQ)

機械学習基盤の発注に関するよくある質問

機械学習基盤の発注では、費用や技術だけでなく、社内の体制や契約後の運用についても質問が多くなります。ここでは、発注前に特に確認しておきたい質問へ直接回答します。

機械学習基盤の外注は最低いくらから相談できますか?

一律の最低金額はありませんが、調査・データ棚卸し・小規模PoCで300万〜800万円程度が予算取り用の推定レンジです。データの状態や連携数が不明なまま金額を断定することはできないため、まず有償の現状分析を依頼し、その結果をもとに本番構築の見積を取り直す方法が安全です。

クラウドとオンプレミスはどちらを選ぶべきですか?

短期PoCや利用量が変動する案件では、SageMaker、Azure Machine Learning、Vertex AIなどのマネージドサービスが始めやすくなります。閉域接続、データの保存地域、既存ネットワーク、常時稼働するGPU、社内運用人材を考慮し、外部に出しにくい機微情報や固定負荷が大きい場合は専用環境やオンプレミスを比較します。

機械学習の専門家が社内にいなくても発注できますか?

発注できます。ただし、社内に業務責任者と意思決定者は必要です。機械学習の技術を委託先に任せても、業務の目的、許容できる誤判定、データ利用の可否、モデル出力の最終承認者は発注者側で決めなければなりません。将来の運用に備え、設計書と研修を納品範囲に含めます。

見積比較で一番重視すべき項目は何ですか?

初期費用の安さより、同じ範囲を比較できているかを重視します。データ整備、セキュリティ審査、テスト、監視、障害対応、引き継ぎ、クラウド利用料、保守の含有範囲をそろえ、成果物と責任分界を確認します。担当者の実績や技術力だけでなく、業務担当者と運用担当者が提案に参加しているかも判断材料です。

まとめ

機械学習基盤の発注方法をまとめる場面

機械学習基盤の発注・外注では、モデルの開発費だけでなく、データ整備、クラウド、MLOps、監視、セキュリティ、保守運用までを一つの仕組みとして考えます。発注形態は、調査やPoCを準委任、本番構築を請負、運用を保守契約に分けると、不確実性と責任範囲を整理しやすくなります。

RFPには、目的とKPI、データの所在と品質、個人情報・権限・監査ログ、成果物、受入条件、契約終了後の引き継ぎ、クラウド費用、再学習と障害対応の責任者を記載します。複数社から同じ前提で見積を取り、価格だけでなく、現場で継続利用できる設計と運用体制まで比較することが、機械学習基盤を事業成果につなげる近道です。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。