金型製造業向け生産管理システム開発の完全ガイド

金型製造業向け生産管理システムは、個別受注の情報連携、工程と原価の可視化、現場で続く入力運用によって、納期・原価・品質の判断に役立つシステムです。

選ぶときは機能の数より、金型番号を中心に情報が途切れないかを見るのが出発点です。各テーマの詳細は関連記事で扱っています。

▼関連記事一覧
・金型製造業向け生産管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順
・金型製造業向け生産管理システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方
・金型製造業向け生産管理システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について
・金型製造業向け生産管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

金型製造業向け生産管理システムの概要

このシステムは、案件や金型番号、製番を中心に、個別受注の情報を一元管理します。また、在庫や数量だけでなく、設計やCAMのデータから、機械加工、放電、研磨の記録まで追えます。組立、試作、検査の記録も加わり、納品を経て修理・改造に至るまで、製造の履歴を一つにつないで追えます。

個別受注生産に合わせた情報のつなぎ方

金型の仕様は、顧客の要求や形状、材質、精度、納期などによって変わります。さらに、同じ品番を繰り返す量産品とは違い、受注の時点で部品表や工程が未確定の場合もあります。

  • 案件情報:受注情報を設計データ、図面版、部品構成、工程、設備、作業実績へ順に結び付け、案件単位で追えるようにします。
  • 製造履歴:加工や外注の記録を、納品後の修理まで一つの履歴にまとめます。

製番ごとに履歴がそろうと、予定と実績の差も後から追えます。たとえば、見積時の加工時間が120時間、実績が155時間だった場合は、差の原因を設計変更、段取り、手直しに分けて確かめられます。製番ごとの比較からは、案件別の粗利や遅延の原因、改善すべき工程も把握できます。

導入で解決できる現場の課題

課題の中心は、案件情報が分散していること、遅延の発見が遅れること、見積原価と実績原価の差です。図面変更の伝達漏れも課題で、外注の進捗や金型の貸出・保全履歴が分からない場合もあります。

  • 情報の分散:担当者の記憶や複数のExcelに頼ると、確認に時間がかかります。
  • 進捗と原価の把握:工程実績を製番に結び付け、遅延や原価差を見える形にします。
  • 履歴の欠落:図面変更や外注などの記録が抜けると、後から経緯をたどれなくなります。

課題の改善は、導入後の運用次第です。経営は投資対効果、現場は入力の負担、営業と購買は納期と在庫、品質はトレーサビリティを重視します。

見る側によって求めるものが違うため、入力しやすい画面と運用ルールを整え、導入前に部門の目的をそろえておくことが成功の条件です。

金型業務の成果を判断する指標

効果を測るときは、「業務が効率化した」という感覚だけで判断せず、導入前の数値を記録しておきます。月末の原価集計日数や納期遅延件数などが候補になります。

  • 原価・工数:集計にかかる日数と、予定対実績の工数差を比べます。
  • 納期・在庫:遅延件数や、材料の差異を追う指標です。
  • 品質・保全:手直し率と、メンテナンス期限超過件数を記録します。

最初から全指標を追うと、入力項目が増えて使われないシステムになりがちです。そこで、まずは一案件で受注から工程実績、原価までを追い、3か月程度運用します。

その後、購買、在庫、金型保全、設備稼働の順に広げていくと、成果と負荷のバランスを確かめやすくなります。

金型製造業に必要な機能と管理項目の全体像

金型番号を軸に、受注・見積・図面版、工程・負荷・実績原価、金型・購買・品質の履歴を並べた図解
案件から製造後の履歴まで、管理機能の範囲が見渡せます。

機能は、金型番号を中心に受注から保全までの情報が途切れないかで比べます。受注や設計、加工の情報が別々の台帳にあると、検索や転記の手間が増えてしまいます。外注や検査、出荷、保全も、台帳が分かれていれば同じように手間が重なります。最低限確認したい機能は、業務の流れに沿って三つの分野に分けられます。

受注・見積・図面版の一案件への紐付け

受注登録では、案件番号と金型番号を中心に、顧客や納期、受注金額を管理します。要求精度や品名、担当者も記録します。

見積では、鋼材や標準部品の材料費と、設計・加工の予定工数を分けておきます。外注費や試作費も別に持つと、見積粗利を算出しやすくなります。

  • 見積と予算:見積内容を受注後の実行予算へ引き継ぎ、実績との差を見ます。
  • 図面版の管理:版数、変更理由、承認者、適用日を残し、変更前後の差分も見られるようにします。
  • 変更の影響確認:未着手工程や仕掛品、外注先、検査帳票に出る影響を一覧にします。

図面や3Dデータは、保存して終わりにせず、加工現場が最新の承認済みデータを見られるようにしておきます。そうすれば、古い図面による加工も防げます。

工程・負荷・実績原価の把握

工程マスタには、マシニングやワイヤー放電、型彫り放電、研削、仕上げ、組立、試作、検査などの工程を登録します。各工程には設備や担当者、標準時間を設定します。段取り時間と前後関係も入れると、納期から逆算した計画と負荷を確かめられます。

  • 工程計画:特急品や設計変更のときに、順番の入れ替えや内作・外作の切り替えを行います。
  • 実績収集:PC、タブレット、バーコード、QRコード、簡単な日報から、続けやすい方法を選びます。
  • 原価集計:工数や材料、消耗品、不良、手直し、外注費を製番ごとに集めます。

入力項目を増やすほど精度は上がります。ただ、まずは「誰が、どの工程で、何時間使ったか」を記録し、運用が定着してから詳細項目を増やします。

金型・購買・品質の履歴管理

金型台帳には、所有者と保管場所、貸出先を記録します。ショット数や耐用回数、メンテナンス予定、修理・改造履歴も、同じ台帳に含めます。顧客支給品や外注先へ貸し出す場合は、受け渡し日と状態、返却予定を押さえ、現物確認も記録します。

  • 購買・在庫:鋼材や電極、標準部品、消耗品の所要量から、発注、入荷、支給品、ロットまで管理します。
  • 品質履歴:材料ロットや図面版、設備、作業者、検査値を結び付け、不良理由から再加工、出荷まで追います。

重量、本数、個数など単位が混在するため、単位換算と在庫評価のルールを先に決めておきます。

ポイント

受注、工程、保全の三つの分野を比べるときは、機能の数より、金型番号ひとつで履歴をたどれるかを見るのが判断の目安です。転記が必要な場所が残ると、その分野では検索や転記の手間が続きます。

金型製造業向け生産管理システムの種類の選び方

従業員10〜200名程度の個別受注工場では、金型・加工業務に近いパッケージを土台にして、必要な連携を加える方法から検討すると進めやすくなります。

複数拠点の運用や独自の原価計算、設備連携が競争力に直結する場合は、追加開発やスクラッチも候補に入ります。

初期費用だけでなく、5年の運用費と社内の負担を比べます。そのうえで、業務要件と将来の利用規模に合う方式を選ぶことが大切です。

小さく始めたい会社に向くクラウド・SaaS型

クラウド型は、サーバーを自社で用意せず、月額料金で利用する方式です。初期費用を抑えやすいうえ、拠点や外出先から同じ情報を見られ、バックアップや更新の負担も減らせます。

  • 導入範囲:受注、工程、実績、原価から始め、購買や在庫へ段階的に広げられます。
  • 事前確認:図面容量、オフライン入力、アカウント数、API利用料、データ出力を確かめます。

月額4万円と安くても、50ユーザーで5年利用すると、単純計算で240万円になります。料金は、ユーザー数やオプション、保守を含めた総額で比べます。移行や通信環境の費用も、同じ総額に入れます。

標準化と長期利用に向く業種向けパッケージ・オンプレミス型

業種向けパッケージは、受注生産の共通機能をあらかじめ備えています。工程や部品表、在庫、原価などが含まれます。金型や金属加工向けなら、工程負荷や内作・外作、ショット数、保全を標準機能で扱える可能性があります。

  • 導入負担:ゼロから要件を定義するより、導入期間と初期費用を抑えやすい方式です。
  • 運用環境:オンプレミスは、図面フォルダや既存設備との接続を設計しやすい傾向があります。

オンプレミスは長期の費用を見通しやすい一方で、サーバー更新やバックアップ、脆弱性対応、復旧を担う体制が必要です。そのため、保守の範囲と、担当者が不在のときの手順も確かめておきます。

独自性を残したい会社向けのパッケージ追加開発・スクラッチ

パッケージ追加開発は、標準機能に独自帳票や特殊な原価計算、設備連携などを足す方法です。CAD・CAMとの連携や顧客ポータルも、追加開発の対象になります。共通業務は標準化しつつ、金型製造の強みを残せます。

  • 追加開発:バージョンアップ時の改修負担を抑えるため、競争力に直結する機能に絞ります。
  • スクラッチ:既存製品で要件を満たせないときに、全工程と保守を計画して検討します。

スクラッチは自由度が高い一方で、要件定義から開発、テストまでに加え、移行や教育、保守も必要です。仕様を判断する責任者がいない場合は、先に業務を整理しておきます。

ポイント

種類は、業務の広がりや拠点数、独自の原価計算や設備連携の要否で絞ります。初期費用だけでなく、5年の運用費と社内の負担まで含めて比べることが大切です。

金型製造業向け生産管理システムの進め方

生産管理システム導入の要件定義から設計・データ移行、テスト・教育・リリースへ進む流れ図
各段階で整える内容を追いながら、導入準備を進められます。

導入は、製品を選ぶことだけでなく、業務とデータを整えて現場に定着させるプロジェクトです。参加者は、経営や営業、設計、加工の各部門から選び、購買や品質、情報システムの担当も加えます。意思決定者は一人決めておきます。

標準導入でも、データ登録と現場教育には時間がかかります。そのため、通常業務の片手間にせず、担当者の稼働を確保しておきます。

▶ 詳細はこちら:金型製造業向け生産管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

要件定義での業務とデータの洗い出し

見積から受注、設計、部品表までの流れを図にします。工程計画と加工、外注を経て、検査、出荷、修理・改造へ至る流れも、同じ図に入れます。そのうえで、各工程の入力担当と、次の担当者へ渡す情報を整理します。

  • キー項目:金型番号、案件番号、図面版、部品番号、工程番号を決めます。
  • 要件の優先度:必須、できれば必要、将来検討の3段階に分けます。
  • 操作確認:図面変更や特急品を現場担当者に操作してもらい、入力時間を測ります。

必須要件には、図面版の承認や製番別の予定・実績原価を含めます。加えて、工程負荷や外注納期、金型の所在と保全履歴も必須にします。

設計・設定・データ移行の段階的な進め方

要件が確定したら、画面や権限、帳票、連携方式を設計します。マスタについては、顧客や材料、工程などの登録ルールと責任者を決めておきます。

  • データ整備:古いExcelの重複や廃止工程、表記ゆれ、空欄を整理し、変換します。
  • 移行対象:過去12か月分の受注や進行中案件、頻用材料・部品、保有金型を優先します。
  • 移行後の確認:案件番号や図面版、工程、原価、在庫、保管場所を現場が確かめます。

CAD・CAMや会計、設備IoTなどとの連携は、インターフェースごとにテストします。また、過去データは一度に全件を移行しないほうが安全です。

実際の案件を使うテスト・教育・リリース

テストでは、画面表示に加えて、実際の業務シナリオを再現します。見積から受注まで、図面の第2版への変更や材料不足、外注遅延、手直しを確かめ、金型の貸出と返却も見ます。

  • 整合性:予定・実績原価、在庫、納期、帳票の数字を照合します。
  • 役割別教育:設計や現場、購買、品質、管理者に必要な操作を説明します。
  • 切替:旧Excelとの並行確認は1〜2か月とし、終了の条件を決めます。

二重入力が長引かないよう、切り替えの日を明確にします。リリース直後は、現場でデータと操作を確かめます。

ポイント

導入は製品選びで終わらず、業務とデータを整えて現場に定着させるまでの計画です。意思決定者を一人決め、担当者の稼働を確保しておくことが大切です。

金型製造業向け生産管理システムの費用相場と5年TCO

2026年時点の公開情報では、SaaSは初期費用が0〜50万円程度、月額が3万〜10万円程度です。一方、業種向けパッケージは100万〜1,000万円程度、フルスクラッチは1,000万〜数億円程度とされています(出典: 受注生産向け生産管理システムの導入費用・期間の目安、2026年)。

金額は、金型専用機能や図面・設備連携、移行件数、拠点数によって変わります。公開価格の幅をそのまま自社の価格と見なさず、自社の条件を伝えて、個別に見積もってもらいます。

▶ 詳細はこちら:金型製造業向け生産管理システム開発の見積相場や費用/コスト/値段について

導入作業で決まる初期費用

初期費用には、ライセンス料のほかに、要件定義から移行、連携、教育までの導入作業が含まれます。端末やネットワーク、サーバーの費用も、初期費用に入ります。

  • 料金例:公開例では税抜300万円のフルパッケージに、5人分のライセンスが含まれます。
  • 追加料金:追加ライセンスや月額保守は、別に示されています。
  • 見積の確認:標準機能や設定、個別開発、移行、教育、保守を分けて見ます。

この公開料金は、金型専用の価格ではありません(出典: 生産管理ソフトの公式料金ページ、2026年確認)。そのため、金型特有の図面版管理や、CAD・CAM、設備、外注との連携、タブレットは、追加費用になり得ます。

ランニングコストと5年TCOの比較

5年TCOは、初期費用に利用料や保守、サーバー更新、端末、通信などを加え、社内工数まで含めて合計します。月額8万円なら5年で480万円、月額4万円なら240万円です。

  • パッケージ型:初期投資が大きくても、長期の利用料が一定の場合があります。
  • クラウド型:始めやすい反面、月額費用が積み上がります。
  • スクラッチ型:開発費に加えて、保守要員や仕様変更、引き継ぎの扱いも評価します。

利用者数で料金が変わる場合があるため、5年後の拠点数と現場の利用者数も仮に置いておきます。そのうえで、最安値ではなく、遅延や転記、手直し、在庫差異を減らす効果で判断します。

標準機能でも数か月かかる導入期間

2026年の公開目安では、方式によって導入期間が変わります。

  • クラウド型:導入期間は1〜3か月です。
  • パッケージ型:導入期間は3〜6か月が目安です。
  • 標準導入:受注生産向けでは約6か月の案内があります(出典: 受注生産向け生産管理システムの公式導入案内、2026年確認)。
  • カスタマイズあり:受注生産向けでは7か月以上の案内もあります。
  • スクラッチ開発:6か月から数年かかる場合があります。

過去データや図面を大量に移行する場合は、さらに余裕を見込みます。補助金や税制優遇を使える可能性もありますが、公募期間や対象経費、申請要件、採択後の報告を確かめます。

制度の利用を前提に導入時期を決めず、最新の公募要領を確かめておきます。移行や教育、端末など対象外の費用も含めて、自己負担額を計算します。

ポイント

費用は、公開価格の幅をそのまま自社の価格と見なさず、金型特有の機能や移行件数、拠点数を含めた個別の見積で比べます。判断は5年TCOの総額で行います。

金型製造業向け生産管理システムの開発会社・ベンダーの選び方

製品の機能だけでなく、金型の個別受注への理解や現場での使いやすさ、データ連携と安全性も見ます。そのうえで、実業務のデモと導入後の体制を比べます。

個別受注と金型固有機能への適合度

金型製造や個別受注、金属加工の導入経験があるかを確かめます。工程負荷や図面版、原価などを、どこまで扱えるかで適合度が変わります。外注やショット数、貸出、保全も、同じ基準で見ます。

  • 導入実績:対象範囲、利用人数、拠点数、期間、移行方法、定着後のKPIを尋ねます。
  • 実務デモ:図面改版、工程遅延、外注変更、金型貸出、試作不良を操作してもらいます。

一つの製番で履歴を追えないと、別の台帳や追加開発が必要になる可能性があります。そのため、事例に出てくる業種名だけで適合を判断しないよう注意します。

要件定義とプロジェクト管理の体制

見積では、要件定義、設計、開発に加えて、連携や移行、テストも工程ごとに分けてもらいます。教育、稼働支援、保守も含めて内訳を示してもらいます。担当者や納品物、納期、検収条件、仕様変更時の追加費用の計算方法も、明確にしてもらいます。

  • 標準機能の範囲:「標準対応」が、画面変更や設定、個別開発のどれにあたるかを確かめます。
  • 稼働後の支援:問い合わせや障害切り分け、更新、バックアップ、接続、追加教育にかかる費用の範囲です。
  • 納品物:設定書やデータ項目、権限表、復旧手順を含めます。

業務改善まで伴走してくれるのか、ソフトの問い合わせだけを受けるのかは、契約前に区別しておきます。担当者が退職しても運用が続くよう、資料を残してもらうことも大切です。

RFPに盛り込む連携・セキュリティ・将来性

CAD・CAMや会計、設備IoTなどとの連携方式を定めます。API、CSV、DB接続の別、頻度、エラー時の再送、データの正本も決めておきます。

  • 機密データ:図面や加工条件を見たり取ったりできる利用者と端末を制限します。
  • 契約終了時:データの返却形式と削除証明を確かめます。
  • 安全対策:認証、権限、ログ、バックアップ、脆弱性対応、復旧目標をRFPに含めます。

経済産業省は2025年4月、工場セキュリティの重要性と始め方をまとめた資料を公表しました。工場の規模を問わず対策が必要だとしています(出典: 経済産業省「工場セキュリティの重要性と始め方」、2025年)。

▶ 詳細はこちら:金型製造業向け生産管理システム開発でおすすめの開発会社/ベンダー6選と選び方

▶ 詳細はこちら:金型製造業向け生産管理システム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

ポイント

開発会社は、金型の個別受注への理解、現場での使いやすさ、データ連携と安全性で比べます。デモは実業務で行い、導入後の体制まで確認すると、契約後の食い違いを減らせます。

導入後に定着させる運用・KPI・セキュリティ対策

導入後に確認するKPIとして、納期遵守率、予定対実績工数差、材料在庫差異、手直し率を並べたチェックリスト
納期、工数、在庫、品質をそれぞれの指標で確かめられます。

稼働後は、実績の入力が止まると情報が古くなります。そのため、工程ごとに入力の責任者を決め、毎週の会議でデータの欠落や遅れを確かめます。

会議を、システムへの入力を監視する場ではなく、データで納期・原価・品質を判断する場に変えることが、定着につながります。

少数から始める納期・原価・品質のKPI

初期のKPIには、経営と現場の行動につながる指標を選びます。工程の遅れを日次か週次で見つけられる粒度にしておきます。

  • 納期:遵守率と、外注の遅延件数を追います。
  • 原価:予定対実績工数差や、案件別の見積粗利と実績粗利を比べます。
  • 品質・在庫:材料と在庫の差異、手直し率、金型保全の期限超過件数を見ます。

納期遵守率が下がったときは、受注予測や設計変更、設備負荷、材料待ち、外注遅れを順に調べます。検査の手直しも、同じ流れで確かめます。

ただ、KPIを人事評価に直結させると、不自然な入力が起きる場合があります。そのため、改善会議で原因を探る指標として使い、入力ミスを責めない運用にします。

工場と事務所の境界を意識した運用

生産管理システムは、顧客図面や加工条件に加えて、材料や取引先、原価も扱います。事務所のシステムと工場の設備は、無制限につながないようにします。認証や権限、ログ、バックアップ、復旧訓練を組み合わせて守ります。

  • 共用端末:誰が入力したかを追跡できる方法を決めます。
  • クラウド:データの所在地や暗号化、バックアップ頻度、復旧目標、停止時の連絡、保守権限を確かめます。
  • オンプレミス:更新やウイルス対策、パッチ、媒体保管、災害時の代替運用を定めます。

セキュリティは、初期設定のあとも続けて見直すものです。退職者のアカウント停止や委託先の接続見直しを、継続して行います。

一括導入より段階導入での改善サイクル

まずは受注や製番、工程、実績、原価などから始め、1工場か1製品群で試します。準備を1〜2か月、試行を3か月程度とし、評価後に範囲を広げます。

  • 試行中の記録:入力時間や欠落データ、会議で使えた情報、見積差異の把握状況を残します。
  • 優先機能:遅延課題なら工程・負荷、赤字課題なら見積・実績原価から整えます。
  • 保全課題:金型の保管や修理が課題なら、台帳、ショット数、貸出から始めます。

標準機能に業務を合わせる部分と、自社の強みとして残す処理を分けて考えます。追加開発を小さく抑えると、長期の運用を続けやすくなります。

よくある質問(FAQ)

費用や機能のほか、現場の入力や既存のExcel、図面データ、導入時期についてよくある質問に答えます。

Excelで管理していますが、生産管理システムは必要ですか?

Excelは、すぐに全廃しなくても構いません。情報の重複や転記ミス、手配漏れ、納期遅延、月末の原価集計の負担がある場合は、移行を検討します。

入力はシステムに集約し、分析や帳票の加工にはExcelを使う併用も可能です。そのうえで、どの情報を正本にするかを決めます。

従業員が少ない金型工場でも導入できますか?

導入できます。全機能を一度に使うのではなく、受注や工程、実績、原価など効果が見えやすい範囲から始めます。

情報システムの担当者がいない場合は、業務の責任者と現場の推進担当者を決めておきます。導入後の問い合わせやマスタ更新の役割も、あらかじめ明確にします。

金型製造業向けの費用はどのくらいかかりますか?

2026年の一般的な目安は、SaaSが初期0〜50万円程度、月額3万〜10万円程度です。一方、パッケージは100万〜1,000万円程度、フルスクラッチは1,000万〜数億円程度です。

費用は、どこまで対応させるかで変わります。金型番号や図面版、ショット数の扱いに加えて、CAD・CAMや設備、外注との連携も影響します。移行や教育の範囲も含めて、同じ要件で3社程度から見積を取り、5年TCOと導入効果を比べます。

特注工程や独自帳票が多い場合はスクラッチ開発が必要ですか?

必ずしも必要ではありません。個別受注向けパッケージの標準機能や設定、帳票の追加、API連携で対応できる場合があります。

独自の処理が競争力に直結するか、標準機能に合わせられるか、追加開発後の更新費用がいくらかを比べます。そこで、差別化に必要な処理を残します。

過去の図面やExcelデータはすべて移行するべきですか?

移行は、導入後に参照する情報を優先して進めれば足ります。進行中の案件や過去12か月程度の受注、保有金型、頻用材料・標準部品などが対象になります。

古いデータは、検索用にファイルとして保管する方法もあります。その場合も、移行対象や保管場所、参照権限、廃棄時期を決め、不要な重複データを持ち込まないようにします。

まとめ

金型番号を中心に、個別受注の流れをつなげられるかが選定の基本です。図面版や工程、実績原価の履歴を、受注から一貫して追えるかを見ます。外注、購買・在庫、品質、保全の履歴も、同じ流れでつながるかを見ます。

自社の課題と5年TCOを基準にした方式の選び方

クラウドや業種向けパッケージ、追加開発、スクラッチの適合度と費用を比べます。初期費用に月額や保守を加えて、5年TCOで判断します。移行や教育、端末、連携、社内工数も、この総額に含めます。

将来の拠点や利用者、データ量、会計・CAD・設備連携も確かめておくと、後から移行し直すリスクを抑えやすくなります。

現場が使い続けられる導入計画の作成

導入前には、業務の洗い出しや必須要件、実案件デモを先に行います。そのうえで、同じ条件で取る見積の比較やデータ移行、テスト、教育、セキュリティ、KPIを決めておきます。

稼働後は、納期遵守率や工数差、原価差異、手直し率、保全期限超過を確かめながら、機能を段階的に広げます。目的は、金型製造の判断を早く正確にすることです。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。