金型製造業向け生産管理システムの発注は、業務の整理、要件定義、委託先の選定、段階導入の順に進めます。その際は、金型番号を共通のキーにして、受注から納品までの情報をつなげて考えることが出発点になります。
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発注前に押さえておく全体像
金型製造は、同じ製品を繰り返し作る量産型とは異なり、個別受注生産です。案件ごとに、図面や材料、工程が変わります。納期や外注先も、案件ごとに変わります。そのため、一般的な販売管理や在庫管理だけを導入しても、納期遅延や赤字案件の原因が見えにくい場合があります。そこで、発注の起点では、機能の多さより先に「何を金型番号または製番にひも付けるか」を決める必要があります。
個別受注生産に合わせた管理単位
金型番号を軸に、部品の進み方と設計変更の経緯を追えるよう、記録の中身を決めておきます。
- 管理単位:案件番号、金型番号、部品番号、図面版、工程、実績、材料ロット、外注費、検査記録を結び付けます。
- 部品の進捗:加工・放電・研磨・組立の進み方を、部品ごとに追える形にします。
- 変更履歴:設計変更、試作、手直し、修理、改造を、新規案件と分けて記録します。
- 変更記録:図面版、承認者、理由、追加工数を残し、納期や原価の経緯を追えるようにします。
1つの金型に複数の部品がある場合、金型単位だけでは実際の遅れが見えません。
顧客支給品や外注品も、同じ案件に結び付けておきます。変更の前後が記録されていれば、納期や原価が変わった理由を営業と製造で共有できます。発注先に対しては、金型番号での検索や履歴帳票の出力ができるかを確かめます。
経営・営業・現場の目的のすり合わせ
部門ごとに優先することを確かめたうえで、導入後に測るKPIを決めておきます。
- 経営:案件別の粗利と、設備投資の判断材料を重視します。
- 営業:正確な納期回答と見積原価を求めます。
- 現場:入力のしやすさと最新図面を重視します。
受注から図面情報まで、工程・実績・原価を一貫して管理すれば、各部門が同じデータを使えます。また、部門の困りごととKPIを提案依頼の前にまとめておくと、機能の一覧よりも成果で提案を比べられます。
代表的なKPIには、納期遵守率、予定工数と実績工数の差、見積粗利と実績粗利の差があります。ほかにも、特急外注の件数、在庫差異、手直し率を挙げられます。図面の誤使用件数と進捗会議の時間も、測定項目に加えられます。
例として、株式会社シー・アイ・エム総合研究所が公開する導入事例では、導入1年後に労働生産性が導入前の1.5倍になったと紹介されています。進捗会議が1時間から20分になった事例もあります(出典: 株式会社シー・アイ・エム総合研究所「Dr.工程」導入事例)。ただし、自社で同じ効果が出ると断定はできないため、測定項目の例として使います。
発注形態の選択肢:クラウド、パッケージ、追加開発、スクラッチ

発注形態は、金型業務のどこまでを標準機能に合わせられるかで選びます。図面や設備との連携範囲と、導入後に自社で運用を続けられるかも判断材料になります。
比べるときは、初期費用だけでなく5年程度の総保有コストで見ます。特に、従業員数10〜200名程度の会社では、工程・実績・原価から段階的に導入する方法が現実的です。
小さく始めたい会社に向くクラウド・SaaS
クラウドを検討するときは、開始しやすさ、継続費用、金型業務への適合を合わせて見ます。
- 利用開始:自社サーバーの負担を抑え、拠点間で共有でき、初期設定後に短期間で始められ、工程実績や進捗共有に向きます。
- 継続費用:月額費用、ユーザー数課金、データ容量、API利用料、バックアップ保持期間
- 金型業務との適合:図面・3Dデータ・検査記録の容量、顧客のアクセス制限、通信障害時の入力、設備接続を確かめます。
- 独自要件:図面版やショット数を、標準機能、外部保存、追加開発のどれで扱うかを決めます。
導入前に、これらの条件をRFPへ記しておきます。短期の導入費だけで方式を決めないためです。
個別受注の標準機能を生かせる業種パッケージ
業種パッケージは、標準機能と金型固有の例外処理を分けて評価します。
- 基本管理:受注・製番、工程、購買、在庫、外注、原価を扱います。
- 金型向け機能:自動スケジューリング、機械・担当者の負荷、見積から完成までの原価、ショット数、保全履歴。
- デモの例外:設計変更、外注遅延、支給材未着、不合格後の再加工を再現します。
標準機能を生かせる範囲が広いほど、要件定義の負担と開発期間を抑えやすくなります。ただし、工程と管理項目は、プレス、射出成形、ダイカスト金型で異なります。治具や試作部品でも違いがあるため、自社の業務に当てはめてデモを確かめます。
株式会社シー・アイ・エム総合研究所は、金型や試作品など個別受注向けの「Dr.工程PRO」を紹介しています。公式サイトには、20年以上の導入実績と、500以上の導入実績が掲載されています(出典: 株式会社シー・アイ・エム総合研究所「Dr.工程PRO」)。なお、画面が整っていても、例外処理が合わなければ、導入後にExcelへ戻る可能性があります。
独自工程が競争力になる場合の追加開発とスクラッチ
独自性の出し方は、パッケージへの追加開発とフルスクラッチで異なります。
- 追加開発:CAD/CAM、会計、販売、設備IoT、EDI、帳票をAPIやCSVで連携します。
- スクラッチ:複数拠点の特殊工程、顧客ごとの高度なポータル、独自原価、設備とのリアルタイム連携が必要な場合に検討します。
工程設計や見積ロジックなど、自社の強みになる部分に追加開発を絞れます。また、ユーザー管理とマスタ、バックアップと権限は、標準機能に合わせておくと保守が複雑になる事態を防げます。
フルスクラッチでは、要件定義を担う社内人材と、受入テストの時間が必要です。さらに、開発会社が撤退した場合の引き継ぎや将来改修の予算も見込み、設計書とデータ定義の納品を契約に含めます。
金型の実際の流れから作るRFPと要件整理

RFPは、要件をそろえて開発会社に示し、同じ条件で提案を受けるための資料です。RFPには、現状の業務、解決したい課題、対象範囲を書きます。加えて、制約と希望時期、予算の考え方を示します。提案してほしい内容も書き、複数社が同じ前提で提案できるようにします。
RFPは、開発会社に「何か良いシステムを提案してください」と頼むための文書ではありません。社内で完璧な仕様書を用意するより、現場の言葉を具体的な業務シナリオへ変えておくことが重要です。
案件の開始から納品後までの現状業務の棚卸し
ヒアリングでは、案件の開始から納品後までの工程を時系列で並べます。各工程で、担当者と帳票、判断条件を記録します。さらに、受け渡す情報と例外時の対応も残します。
- 営業の引き合い
- 見積と受注
- 設計と部品表
- 材料手配
- 機械加工
- ワイヤー放電と型彫り放電
- 研削と仕上げ
- 組立と試作
- 検査と納品
- 修理・改造
実際の案件を2〜3件追うと、設計変更や外注戻りの抜けを見つけられます。
同時に、Excel、紙、ホワイトボードに散らばった情報を集めます。CAD/CAMや会計ソフトも対象です。購買台帳と販売管理、外注先の納期表も集めます。
ファイル名やシート名だけでなく、どの情報が正本か、誰が更新しているかも確かめます。古いデータをどこまで移行するかは、併せて決めておきます。
移行対象を増やしすぎると、データの重複や誤りを新システムへ持ち込むことになります。そのため、過去何年分を残すかは経営判断で決めます。
金型番号と例外処理を中心にした機能要件
機能要件には、受注・見積・製番、図面や技術文書の版管理、部品表を記載します。工程・負荷・スケジュールも含めます。作業実績と材料・在庫も対象です。購買・外注と、品質・検査も含めます。
金型の保管・貸出と、ショット数・保全も含めます。原価と帳票、権限と検索も対象です。要件は、「工程管理に対応」のような書き方より、設計変更時に未着手工程を再計画できるか、旧図面の指示を無効化できるかなど、具体的に書きます。
また、RFPには、デモで確かめる業務シナリオも含めます。
- 急な納期変更で機械負荷を組み替える。
- 材料の入荷遅れで外注へ切り替える。
- 図面の第2版で加工指示を出す。
- 不良品を再加工し、原価へ加算する。
- 顧客支給金型の貸出・返却と修理履歴を記録する。
このため、シナリオを再現できない提案は、機能表の評価を下げます。
非機能要件と導入条件の明示
RFPには、利用環境と継続運用の条件を明記します。データ保護と連携の条件も含めます。
- 利用環境:拠点、同時利用者数、表示速度、稼働時間、端末を定めます。
- 継続運用:バックアップ、復旧目標、通信障害時の運用、データ保持期間を確認します。
- アクセス管理:認証、権限、操作ログ、版の差し替え権限、承認履歴を確認します。
- データと連携:図面・検査データの容量と形式、API、CSV、ダウンロードログを定めます。
工場と事務所をつなぐ場合は、設備側への不要なアクセスを防ぎ、保守業者のリモート接続も管理します。経済産業省は2025年4月、工場セキュリティ資料を公開し、サプライチェーン経由の攻撃への備えを呼びかけました(出典: 経済産業省「工場セキュリティの重要性と始め方」2025年)。
MFAと最小権限、パッチの適用は確認しておきます。復旧訓練と委託先の接続も確かめます。
要件の確かさと変更の多さで選ぶ契約形態
システム開発では、準委任と請負を中心に、複数の契約を組み合わせます。ライセンスや保守の契約も、同じ考え方で組み合わせます。契約名よりも、成果物ごとの責任者と期限を確かめることが大切です。責任の基準も明確にしておきます。
金型製造では、現場ヒアリングの中で要件が変わりやすい傾向があります。そこで、要件整理と開発を分けると、全工程を固定価格の請負にするより、リスクを管理しやすい場合があります。
要件整理や伴走支援に向く準委任契約
準委任は、要件や成果物の範囲を最初に固定しにくい工程で使えます。
- 対象業務:業務分析、要件定義、進行管理、技術支援を依頼できます。
- 金型案件の作業:番号設計、現場ヒアリング、Excel整理、RFP精緻化に使えます。
- 契約時の確認:作業時間、担当者、月次報告、検討課題、意思決定者を決めます。
作業範囲や完了条件が曖昧なままだと、何をもって作業完了とするかが分からなくなります。そこで、要件整理のあとに開発を請負へ切り替える方法もあります。その場合は、社内で毎週判断し、優先順位を変えられる体制が必要です。
業務責任者と現場代表の役割を決め、経理・購買、情報システム担当の役割も決めておきます。ベンダー任せにしないためです。
成果物と受入基準を具体化した請負契約
請負では、納品物と受入条件を契約の前に具体化しておきます。
- 設計資料:要件定義書、画面・帳票仕様、データモデル、API仕様を含めます。
- 開発・運用資料:プログラム、テスト仕様、操作マニュアル、移行手順書を列挙します。
- 受入基準:正常系と設計変更、外注遅延、再加工、在庫不足、権限違反、通信断、復元を確認します。
- 不具合対応:重大度、修正期限、再テスト、本番稼働の条件を定めます。
納品物を「動くシステム一式」で済ませず、設計書の形式、ソースコードの扱い、第三者ライブラリのライセンスも確かめます。特に、検収を急ぐと、実務で使えない機能まで納品済みになるおそれがあります。
利用・保守契約での稼働後の責任範囲
利用・保守契約では、稼働後に誰がどこまで対応するかを確かめておきます。
- サービス条件:受付時間、復旧目標、問い合わせ方法、更新範囲、追加改修費
- データ管理:返却形式と、契約終了時の削除方法を決めます。
- オンプレミス運用:サーバー更新、OS・DB期限、媒体、ウイルス対策、パッチ担当
- 保守範囲:マスタ登録、帳票変更、教育、運用相談のうち、月額内と都度請求を分けます。
契約前に作業範囲を一覧にしておけば、導入後に「操作方法や帳票変更はサポート外だった」と分かる事態を防げます。
金型製造業向け生産管理システムの費用相場と内訳
金型専用の生産管理システムは、一律の公開価格が少ないのが実情です。そのため、ここで示すのは、受注生産向けシステムの公開相場と、金型固有の追加要件を踏まえた目安です。
金額は、会社規模、ユーザー数、拠点数で大きく変わります。図面・CAD/CAM連携、設備IoT、データ移行も金額に響きます。教育やカスタマイズも、金額を左右する要因です。予算を一つの金額で固定するより、同じ要件を渡した複数社の見積で幅を確かめるのが現実的です。
提供形態別の公開相場の幅
受注生産向けに公開されている2026年版の目安は、提供形態ごとに次のような幅があります。
- クラウド:初期費用は無料から50万円程度、月額が3万円から10万円程度、導入期間が1〜3か月です。
- 業種パッケージ:100万円から1,000万円程度、年間保守は導入費の5〜15%程度、導入期間は3〜6か月です。
- フルスクラッチ:1,000万円から数億円、期間は6か月から数年とされます。
- 金型向けの推定:パッケージは300万円から1,500万円程度、個別開発は1,000万円から5,000万円以上も検討レンジになり得ます。
クラウド、パッケージ、スクラッチの公開目安は、受注生産全般の情報です(出典: 株式会社インプローブ「生産管理システムの導入費用・期間の目安 2026年版」)。金型専用システムの確定見積とは、性質が異なります。
金型向けの推定では、図面版管理、ショット数、保全を想定しています。外注貸出、CAD/CAM・設備連携、顧客支給品の追跡も想定に入れています。これは公開相場を参考にした幅で、会社や要件によって変わります。
工程別に分けた見積の内訳
見積では、工程と運用の費用を分けてもらいます。機能一式の金額だけで済ませないためです。
- 設計・開発:要件定義、業務設計、画面・帳票設計、開発、連携、テストを分けます。
- 導入・運用:データ移行、教育、稼働支援、保守の費用を分けます。
- 環境・利用:サーバー、端末、ライセンスの費用を示してもらいます。
- 機能別の範囲:金型番号、工程、原価、外注、図面、保全ごとに標準・設定・追加開発・対象外を記します。
範囲が分かれていれば、後から加わった要件が、どの費用の範囲に当たるかを判断できます。
株式会社INFORCEは、BS Factoryのフルパッケージを税抜300万円で掲載しています。5人分のライセンスに加え、追加ライセンス12万円、月3万円からの保守も案内されています。
同社のカスタマイズ事例では、生産計画・工程管理・原価計算などを含む総額1,930万円が紹介されています(出典: 株式会社INFORCE「BS Factory料金一覧・導入事例」)。これは個別案件の公開例であり、金型製造会社にそのまま当てはまる価格ではありません。また、標準導入と追加開発で、総額が大きく変わる例でもあります。
見えにくい運用費を含む5年TCO
5年間の総保有コストには、導入時だけでなく、運用中に続く費用も含めます。
- システム費:月額・年間保守、利用者追加、サーバー、バックアップ、更新を含めます。
- 利用環境:端末、通信、API、データ容量、旧環境との並行稼働を計上します。
- 社内運用:教育、入力・マスタ整備、障害時の復旧訓練も見込みます。
クラウドは長期の利用料が続きます。一方で、オンプレミスはサーバー更新やパッチ対応の負担が社内に残ります。
5年TCOを作るときは、通常運用と追加開発を分けます。導入初年度、2年目、3年目、4年目、5年目の支出を年ごとに並べ、ユーザー数や拠点が増えたときの単価も確かめます。
導入効果は、自社の実績から試算します。削減できる会議・転記時間、外注費、手直しを挙げられます。納期遅延、在庫差異、見積の赤字も対象になります。ただし、公開事例の効果を自社の効果として見込まず、検証できる仮説として扱います。
委託先の選定と見積比較:機能・実績・体制の評価
委託先には、開発会社や業種パッケージベンダーがあります。導入支援会社や、設備・CAD/CAMに強い会社も含まれます。ただし、金型製造の業務理解が深い会社でも、会計や既存基幹との連携が弱い場合があります。
反対に、大規模な基幹開発会社でも、現場の実績入力や金型保全の経験が乏しい場合があります。そのため、候補を絞る際は、製造業の実績だけでなく、金型または個別受注生産との接点を確かめます。
金型適合性と現場定着性を軸にした選定
金型への適合性と現場での使いやすさを、同じ評価表で確かめます。
- 業務適合:金型番号・部品・図面版、工程負荷、実績、見積・実績原価を確認します。
- 周辺業務:外注、支給品、ショット数、貸出・保全、品質記録
- 連携・統制:CAD/CAM・会計、権限、ログを確認し、標準・設定・追加・対象外に分けます。
- 現場定着:操作数、タブレット・バーコード、通信、作業者ごとの権限、教育、問い合わせ窓口を評価します。
実績入力が1件増えるだけで、現場が使わなくなることもあります。だからこそ、デモでは担当者自身が操作し、開始・中断・完了の登録を試します。不良や再加工も入れて、確かめます。
導入事例で見る課題と効果の対応
導入実績は、自社の課題や規模に近い事例かどうかを、次の観点で確かめます。
- 会社と業務:従業員数、金型の種類、拠点数、導入範囲を比べます。
- 導入条件:旧運用、移行期間、現場教育の内容を確認します。
- 導入後の変化:KPIと課題・効果の対応を見ます。
株式会社シー・アンド・ジー・システムズの公式事例では、髙木金型製作がExcel管理からAIQへ移行しました。オーダー、工程、実績を管理し、基幹システムと連携した内容です(出典: 株式会社シー・アンド・ジー・システムズ「髙木金型製作導入事例」)。そのうえで、自社と似た課題を解消した事例かを見極めます。
可能であれば、導入先に入力内容や稼働準備を質問します。追加開発や保守窓口についても聞いておきます。紹介を依頼するときは、公開許可と守秘義務に配慮します。効果の数値は、対象期間と測定方法を確認し、自社の基準値と比べます。
前提条件をそろえた見積比較
同じ条件を渡し、金額だけでなく、前提と含まれる作業を横並びで比べます。
- 共通条件:RFP、業務シナリオ、利用者数、拠点数、移行範囲をそろえます。
- 比較項目:金額と期間、体制とリスク、前提と対象外、追加単価を並べます。
- 作業範囲:要件定義、移行、教育、受入テスト、稼働後支援の有無を見ます。
要件定義と総合テストの工数、責任者の稼働を確かめます。移行の試行回数と教育日数も見ておきます。追加変更単価と障害対応時間も、比べる項目に入れます。
「別途協議」などと書かれている条件は、追加費用が発生する要件を質問します。値引きを求めるより、不要な機能を削り、優先度の低い連携を次期へ回すほうが、品質を保つうえで現実的です。
発注後の段階導入と効果の検証

発注後は、開発会社に任せきりにせず、自社が業務とデータの意思決定を続けることが大切です。受注生産向けシステムの公開情報では、検討開始から本格稼働まで3〜6か月程度が一般的な目安とされています。ただし、金型専用の連携やデータ移行が多い場合は、期間が長くなります(出典: 株式会社インプローブ「生産管理システムの導入費用・期間の目安 2026年版」)。
1工場または1工程でのパイロット導入
効果を測れる範囲から始め、運用結果を見て次の対象を決めます。
- 工程・実績収集、または受注・見積・原価から対象を選びます。
- マシニングから検査までの1製品群などに絞り、金型番号、図面版、予定・実績工数、外注、手直しを登録します。
- 2〜3か月運用し、入力時間、欠損、計画変更、見積との差を確かめます。
成功条件は、実績入力率、集計・会議・納期回答の時間、図面版の誤使用件数などで数値化します。効果が出ない場合は、機能不足のほか、入力項目や責任者を確認します。マスタと導入意図の伝え方も確かめます。
移行リハーサルと旧運用の並行期間
移行対象を整理し、切替のリハーサル手順を決めておきます。
- 移行対象の整理:得意先、品目、材料、設備、工程の情報を、担当者、外注先、単価、金型番号とあわせて整理します。
- データの点検:重複、表記揺れ、廃番を点検し、単位や日付形式、図面版、責任者も確かめます。
- 過去分の扱い:過去分は参照用に残し、進行中案件と有効マスタを優先します。
- 試行と切替日:移行を複数回試し、件数・合計値を照合して、並行期間と切替日を決めます。
- 復旧手順:設備停止や通信断に備え、紙・オフライン記録から復旧する手順を用意します。
切替日にすべてを完全に移すことより、業務を止めない復旧手順を整えることが大切です。
稼働後の運用チームと改善の継続
担当と改善のサイクルを決めて、稼働後も運用を更新していきます。
- 担当者:業務責任者、現場リーダー、マスタ管理者、ベンダー窓口を決めます。
- 問い合わせ:質問を記録し、同じミスの原因を画面や手順に反映します。
- 定期改善:月次または四半期ごとに、KPI、入力、帳票、マスタ、権限を見直します。
- 変更管理:追加開発の優先順位を話し合い、標準機能・運用・帳票設定も検討します。
設備や人員、外注先が変わると、導入時の要件も変わります。顧客仕様の変化も、要件を見直すきっかけになります。現場の入力データを経営や営業で使い、その改善結果を現場へ返す循環が、定着につながります。
金型製造業向け生産管理システムの発注でよくある質問
発注を検討すると、費用や期間について疑問が出てきます。既存業務との違いや、現場の負担も気になるところです。問い合わせの多い質問に、金型製造の事情を踏まえて答えます。
金型製造の生産管理システムはパッケージとスクラッチのどちらが良いですか?
まずは、個別受注や図面版に対応する業種パッケージを比べます。実績や原価に加え、外注や金型保全への対応も確かめます。そのうえで、足りない部分だけを追加開発するのが現実的です。
独自工程や設備連携が事業の競争力に直結していて、標準機能では業務を大きく変えなければならない場合に、スクラッチを検討します。
自社の要件をRFPと業務シナリオで整理してから判断すると、方式選びの失敗を抑えられます。
システム開発の見積が会社によって大きく違うのはなぜですか?
見積の差は、標準機能で対応する範囲や追加開発の量が会社ごとに違うためです。データ移行や教育の含め方、CAD/CAMや設備との連携も異なります。テストや保守の範囲も、会社によって違います。
見積金額だけでなく、対象範囲、前提条件、対象外を同じ表で比べます。成果物や体制、追加単価も並べて見ます。要件定義や総合テストが極端に少ない見積は、後から追加費用や品質リスクが発生しないかを確かめます。
Excelのデータはすべて新システムへ移行するべきですか?
移行対象は、必要なものに絞って決めます。進行中の案件を優先し、有効な得意先・材料と、工程・設備のマスタ、参照頻度の高い履歴も移します。古い重複データと廃番情報は、整理してから判断します。
移行前には、件数や金額を照合し、日付、単位、金型番号も確かめます。少なくとも1回は、本番に近いデータでリハーサルを行います。
小規模な金型工場でも生産管理システムを外注できますか?
はい、外注できます。従業員数が少ない会社では、専任の情報システム担当者を置くより、受注・工程・実績など効果を測りやすい範囲から始めます。導入支援と教育を含む委託先を選ぶことも大切です。
成功の条件は、クラウドや段階導入を活用して入力を複雑にしすぎないことです。さらに、社内の意思決定者を一人決め、稼働後の問い合わせ先を契約で明確にしておきます。
まとめ
発注時は、機能数や初期費用だけでなく、個別受注の情報を金型番号でつなげられるかを確かめます。部品、工程、図面版を管理できるかが判断材料です。実績原価、外注、保全まで対象にできるかも、判断材料に加えます。
クラウド、パッケージ、追加開発、スクラッチは、いずれも5年TCOで比べます。RFPには通常業務のほか、例外も含めます。たとえば、設計変更や特急品、外注遅延があります。さらに、再加工、支給品、通信障害も対象です。
発注前にそろえるべき三つの資料
発注前には、業務フロー、データ一覧、業務シナリオの三つをそろえます。業務フローは案件の開始から納品後まで、データ一覧には金型番号や図面版などを含めます。業務シナリオは、正常系と例外系の両方をそろえます。
RFPには、導入対象工程、利用者数、拠点を記載します。既存システムや移行対象も書き、希望時期と測定したいKPIを加えます。これにより、複数社から同じ条件の提案を受けられます。
安定稼働までを含めた委託先の選定
委託先の選定から対象拡大までを、次の観点で進めます。
- 金型・個別受注の実績、現場入力、連携・セキュリティ、導入体制、保守を比べます。
- 成果物、受入基準、変更手続き、データ・ソース、障害対応、保守範囲を契約で定めます。
- 1工場または1工程で試し、入力率、納期、原価精度などのKPIを確認します。
- 検証後に在庫、購買、金型保全へ範囲を広げます。
この順で確かめると、導入後の安定稼働まで見通して委託先を選べます。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
