OAuthのシステムを発注・外注するなら、認証基盤を作ることだけでなく、利用者、保護するAPI、権限、既存データの移行、運用体制までを一つの要件として整理することが成功の近道です。
「OAuth対応」と書かれたサービスや開発会社を見つけても、自社に必要なのが顧客ログインなのか、社内SSOなのか、外部API連携なのか、サービス間認証なのかによって適切な発注先と費用は変わります。この記事では、発注形態の選択、RFPと要件整理、契約形態、費用相場、委託先の選び方、見積比較、リリース後の運用まで、発注担当者がそのまま使える順番で解説します。
▼全体ガイドの記事
・OAuthのシステム開発の完全ガイド
OAuthのシステムを発注する前に全体像を整理します

OAuthは、利用者のパスワードを外部アプリへ渡さず、APIや業務データへのアクセス権限を委譲するための仕組みです。ログイン機能を提供する場合は、OAuth 2.0を土台に認証情報を扱うOpenID Connect(OIDC)を組み合わせます。発注時は「OAuthを作る」と一言で依頼するのではなく、認証、認可、API保護、ユーザー管理を分けて記載することが重要です。
認証と認可を分けて発注範囲を決めます
認証は「誰であるか」を確認する処理で、認可は「何を許可するか」を決める処理です。OAuthが中心に扱うのは認可であり、顧客や社員のログインを実現するならOIDC、企業の既存ディレクトリと連携するならOIDCまたはSAMLも候補になります。見積依頼書には、ログイン画面の有無、MFA、SSO、ユーザー登録、退会、パスワード再設定の担当範囲を明記します。
一方、APIを保護する範囲では、認可サーバー、クライアント、リソースサーバー、アクセストークン、scope、audience、issuerの設計が必要です。たとえば取引先ポータルから受注APIを呼び出す場合、会社単位のテナント境界と「参照のみ」「登録可」「承認可」の権限を分けます。ここが曖昧なまま開発を始めると、後から権限モデルを作り直すことになり、追加費用と納期遅延につながります。
B2B・B2C・社内・M2Mのどれかを先に確定します
B2Bでは、企業、部署、担当者の関係と契約終了時の権限剥奪が重要です。B2Cでは、大量の会員登録、ソーシャルログイン、退会、アカウント統合、問い合わせ対応が課題になります。社内用途では、Microsoft Entra IDやGoogle Workspaceなど既存のディレクトリとの境界を確認します。用途によって、必要な管理画面、監査ログ、データ保管場所、サポート窓口が変わります。
人が操作しないバッチやマイクロサービス間の連携は、Machine to Machine(M2M)として別枠で定義します。Client Credentialsを使う場合は、利用者の同意画面がないため、サービスごとの責任者、対象API、実行時間帯、失効条件、秘密情報の保管方法を決めます。ユーザー数だけでなく、トークン要求数やAPI呼び出し数が料金と性能に影響するため、月間だけでなくピーク時の数字も発注資料へ含めます。
OAuthのシステムはどの発注形態を選ぶべきですか?

結論として、認可サーバーの中核を自社で作ることを前提にせず、マネージドIdP、既存の認証パッケージ、個別開発を比較して決めます。自社独自の同意フローやデータ主権が競争力に直結する場合は個別開発が候補になりますが、一般的なログインやAPI認可であれば、標準機能を活用して周辺の業務要件へ予算を配分する方が安全です。
マネージドIdP導入は短納期と保守負担の軽さが強みです
Amazon Cognito、Auth0、Microsoft Entra External ID、Google Cloud Identity PlatformなどのマネージドIdPを使う方式です。認証画面やトークン発行、鍵のローテーション、可用性対策をサービス側へ寄せやすく、1〜2個のアプリへ早く導入したい場合に向いています。発注先には、IdPの初期設定だけでなく、既存会員DBとの連携、scopeとロール、管理者画面、監査ログ、CI/CD、テストまで依頼できるか確認します。
ただし、マネージドIdPを選んでも運用が不要になるわけではありません。料金改定、MAUの増加、MFAやSMSの従量課金、データ所在地、ログ保存期間、障害時の連絡経路、他サービスへの移行可能性を確認します。料金の無料枠だけで判断せず、3年程度の利用者数と認証方式を置いた総保有コストで比較することが大切です。
パッケージや既存SSO基盤は社内標準との整合性を確認します
すでに社内のIAM、ディレクトリ、SSO製品を利用している企業は、既存基盤へ接続する選択肢があります。新しいIdPを増やさずに済むため、運用窓口やアカウント管理を統一しやすい一方、顧客向けのB2C会員管理、細かなAPI権限、外部テナント管理まで標準で対応できるとは限りません。製品名ではなく、対象ユーザーと必要なフローを一覧にして適合性を確認します。
パッケージを発注する場合は、導入支援会社の役割と製品ベンダーの役割を分けて確認します。設定変更で対応できる範囲、追加開発の範囲、製品アップデートの影響、ソースコードや設定情報の引き渡し、契約終了時のデータ出力をRFPへ入れておくと、将来の乗り換えや障害対応で困りにくくなります。
個別開発は独自要件と責任分界を明確にしてから依頼します
独自の権限モデル、複数企業をまたぐ同意、特殊なデータ保管要件、高い監査性、既存システムに合わせた移行などがある場合は、個別開発が候補になります。とはいえ、OAuthのプロトコル実装そのものをゼロから自作すると、セキュリティレビュー、脆弱性対応、仕様変更への追随まで自社の責任になります。標準IdPを基盤に、管理画面や連携アダプターだけを作る構成も含めて比較します。
発注時は、認可サーバーを誰が管理するか、鍵を誰が保管・交換するか、トークン失効を誰が操作するか、緊急時に誰がクライアントを停止するかを責任分界表にします。ここを契約書と運用手順書の両方へ落とすと、障害や情報漏えいの疑いが生じたときに、判断が止まりにくくなります。
RFPと要件定義はどのように整理しますか?

RFPでは、技術用語を並べるより先に、業務上の目的と利用者の行動を書きます。「顧客が一つのアカウントで複数サービスを使う」「取引先ごとに注文データを分離する」「退職者のAPI権限を即時に止める」のように記載すると、開発会社が必要な構成と試験を提案しやすくなります。
利用者・システム・APIの対応表を作ります
まず、社員、顧客、取引先、管理者、バッチ、外部サービスを利用者の種類として並べます。次に、Web、SPA、スマートフォン、管理画面、APIクライアントをクライアントとして整理し、認可サーバーとリソースサーバーを区別します。各クライアントが呼ぶAPI、必要なscope、データの所有者、認証方式、ログイン後の遷移先を対応表にすると、見積もりの前提がそろいます。
既存会員DBやMicrosoft Entra ID、Google Workspaceと連携する場合は、ユーザーID、メールアドレス、所属会社、ロール、退会状態などの項目対応表も必要です。パスワードを移行できない場合は、初回ログイン時の本人確認やパスワード再設定を設けることになります。ユーザー数だけでなく、重複アカウント、休眠アカウント、契約終了済みアカウントの扱いまで書いておくと、移行費用の抜けを抑えられます。
セキュリティと非機能要件を数値で指定します
新規のWeb、SPA、モバイルアプリでは、Authorization Code + PKCEを基本とし、redirect URIの完全一致、stateやnonce、scopeの最小化、アクセストークンの短寿命化、リフレッシュトークンのローテーション、鍵のローテーションを要件に入れます。2025年1月公開のIETF RFC 9700は、PKCEや厳密なリダイレクトURI検証、トークン漏えい・リプレイ対策を現行のセキュリティ実践として整理しています(出典: IETF RFC 9700、2025年)。
ブラウザ上で動くアプリでは、トークンをブラウザへ直接置くのか、BFFでサーバー側に保持するのかも指定します。2026年7月公開のIETF RFC 10017は、ブラウザベースアプリの脅威と、BFF、トークン仲介バックエンド、ブラウザが直接OAuthを扱う構成を整理しています(出典: IETF RFC 10017、2026年7月)。同時ログイン数、認証レイテンシー、復旧時間、ログ保存期間、データ保管地域、脆弱性診断の実施条件も数値で示します。
成果物と受け入れ条件を先に定めます
成果物は、要件定義書、権限マトリクス、構成図、認可フロー図、API仕様、クライアント登録手順、テスト仕様書、移行計画、運用手順書、障害時の連絡網、監査ログの設計書まで分けて記載します。ソースコードだけ納品されても、クラウド設定や秘密情報の登録方法が分からなければ、自社で運用できません。設定値、鍵の管理方法、バックアップ、復旧手順も引き渡し対象に含めます。
受け入れ条件には、正常なログインだけでなく、scope不足、期限切れトークン、issuer違い、認可コードの再利用、redirect URIの不一致、ユーザー無効化、認証サーバー停止、通信遅延を含めます。たとえば「退職処理後に何分以内で全API権限を失効させるか」「監査ログを何日以内に検索できるか」のように判定可能な文にすると、納品時の認識違いを防げます。
契約形態と発注プロセスをどう設計しますか?

OAuthの発注では、要件が固まる前の調査・PoCと、仕様が固まった後の本開発を同じ契約に押し込まないことがポイントです。最初に短い準委任型の調査やPoCで既存IdP、会員DB、APIの接続可否を確かめ、その結果をもとに本開発の範囲と受け入れ条件を確定する流れが適しています。
準委任・請負・ライセンスの違いを確認します
準委任は、専門家の作業や支援に対して報酬を支払う形で、要件整理、PoC、アーキテクチャ設計、技術支援のように成果を一つに固定しにくい工程へ向いています。請負は、合意した成果物や機能の完成を目指す形で、仕様と検収条件が明確な本開発へ向いています。実際の契約条件や責任範囲は契約書で確認し、法務・調達部門の審査を受けます。
マネージドIdPやパッケージを使う場合は、開発契約とは別に利用規約やライセンス契約が関係します。MAU、M2M、SMS、ログ、MFA、サポート、SLA、データ出力に関する料金と制限を確認し、値上げや仕様変更時の通知、障害時の補償、契約終了後のデータ削除・移行も確認します。自社開発費とサービス利用料を同じ見積行にまとめず、分けて比較できる状態にします。
RFP配布から契約までを段階化します
発注プロセスは、社内の目的と予算を整理し、RFPを配布し、提案・質問を受け、必要ならPoCを行い、提案書と見積書を比較し、契約、要件定義、開発、試験、検収へ進めます。候補会社には同じ資料と質問期限を渡し、口頭説明だけでなく、前提条件、除外範囲、リスク、体制、スケジュールを文書で提出してもらいます。
見積もりが安い会社をすぐに選ばず、提案内容が自社の課題をどこまで理解しているかを確認します。OAuthでは、要件定義を削ると工数や追加費用が当初想定の1.3〜1.5倍に膨らむ可能性があります。これはOAuth専用の統計ではなく、業務システム開発の一般的な目安として扱い、安さの理由が標準機能の活用なのか、単にテストや移行を除外しているのかを分けて確認します。
責任分界と変更管理を契約書へ反映します
発注者が用意する情報、受託者が設計する範囲、IdPベンダーへ確認する範囲を責任分界表にします。特に、ユーザー情報の正確性、scopeの承認、秘密鍵の管理、ログの保管、脆弱性対応、障害時の一次切り分け、第三者サービス停止時の代替策は、担当が曖昧になりやすい項目です。
追加機能や仕様変更が発生したときは、変更要求、影響範囲、追加工数、納期、セキュリティ再評価の要否を記録します。認証・認可の変更は画面の修正だけでなく、API権限や監査ログにも影響します。口頭合意で進めず、変更管理の承認者と見積もりの再提出ルールを契約やプロジェクト計画に含めます。
OAuthのシステム開発費用相場とコスト内訳

OAuth専用の国内公的統計は確認できないため、ここで示す費用は、業務システムの開発相場、技術者単価、公開されている認証サービス料金、要件別の工数をもとにした概算です。固定価格ではなく、利用者数、アプリ数、既存システムの状態、セキュリティ要求、納期、運用体制によって上下するレンジとして見てください。
マネージドIdPの基本導入は100万〜500万円が目安です
1〜2個のアプリへOIDCログイン、基本ロール、CI/CD、受け入れテストを組み込む場合、初期費用は100万〜500万円程度が一つの目安です。標準のログイン画面を使えるか、デザインを作り込むか、MFA、既存会員移行、管理者画面、外部IdP連携を含むかで変わります。新規アプリで標準機能を使う案件は下限寄り、既存アプリの認証置き換えは上限寄りになりやすいです。
複数の業務システムへSSOとAPI認可を導入し、既存会員DB、複数テナント、監査ログ、APIゲートウェイ、MFA、ユーザー移行まで含める場合は、300万〜1,500万円程度が目安です。認可サーバーを個別に開発し、M2M、高可用性、独自管理画面、負荷試験、侵入テストまで行う場合は、1,000万〜3,000万円程度を見込むことがあります。
金融・大規模基幹向けは3,000万円〜1億円以上になる可能性があります
金融や大規模基幹システムで、FAPI相当の対策、強固な鍵管理、ディザスタリカバリ、24時間監視、複数リージョン、第三者診断、法令・監査対応まで求められる場合は、3,000万円〜1億円以上になる可能性があります。これはOAuthだけの価格ではなく、認証基盤と業務API、インフラ、監視、移行、試験を含む大規模案件のレンジです。要件が同じでなければ、別会社の見積金額だけを横並びにしないでください。
公開料金も開発費とは分けて考えます。Amazon Cognitoは直接ログインのMAUに無料枠があり、料金ページでは10,000 MAUまでの無料枠や、OIDC・SAMLフェデレーションの50 MAUまでの無料枠、超過分の単価が案内されています。Auth0は無料枠から月35ドル程度のプラン、月240ドル程度のプラン、M2Mや高度なセキュリティを含む個別見積もりまで段階があります(出典: Amazon Cognito公式料金表、Auth0公式料金表、2026年8月確認)。
運用費はIdP料金と保守費を分けて試算します
ランニングコストは、IdP利用料、MAUやM2Mの従量料金、SMS・メール、ログ保管、WAF、APIゲートウェイ、鍵管理、監視、脆弱性診断、問い合わせ対応、障害対応に分けます。一般的な業務システムの目安として、保守運用費を初期開発費の年15〜25%程度に仮置きする方法がありますが、これはOAuth固有の標準料金ではありません。夜間休日対応やSLAを求める場合は、別途の見積もりになります。
利用料は、ユーザー数が増えると比例するとは限りません。月間アクティブユーザー、認証方式、フェデレーション数、MFAの送信数、API呼び出し数、ログの保持期間によって変わるため、少ない月・通常月・ピーク月の3パターンで試算します。将来のユーザー移行や新しいサービス追加も想定し、1年目だけ安い料金ではなく、3年目までの費用を比較します。
委託先の選定と見積比較で確認すべきポイント

委託先は、OAuthの用語を知っているかだけでなく、発注者の業務要件を権限と運用へ変換できるかで選びます。認証基盤ベンダー、クラウド導入会社、受託開発会社、セキュリティ会社では得意領域が異なるため、1社ですべてを賄えるのか、複数社を組み合わせるのかも含めて比較します。
実績は製品名ではなく案件の条件まで確認します
実績を見るときは、「OAuth対応」「SSO導入」という言葉だけで判断しません。B2BかB2Cか、既存会員DBを移行したか、複数テナントを分離したか、MFAやM2Mを扱ったか、APIのscopeと監査ログを設計したか、リリース後の保守を担ったかを確認します。可能であれば、匿名化された構成図や工程、テスト項目、運用体制を説明してもらいます。
公開事例では、コニカミノルタのIoTプラットフォームで、AWSとACCESSの支援、Amazon Cognitoを活用したOAuthとSAMLのSSO、API開発が紹介されています。複数のマイクロサービスと事業部側サービスを連携した事例であり、単なるログイン画面の制作とは異なります(出典: AWS導入事例「コニカミノルタ株式会社」、2026年確認)。自社と似た規模や既存環境の事例かを見極めます。
見積書は工程・機能・除外範囲を同じ粒度で比べます
比較項目は、要件定義、アーキテクチャ設計、IdP設定、認証画面、API保護、scopeとロール、既存会員移行、外部IdP連携、MFA、管理画面、監査ログ、テスト、脆弱性診断、負荷試験、リリース、運用引き継ぎに分けます。各項目を一式でまとめた見積もりではなく、作業内容、前提、成果物、担当者、期間を確認します。
特に比較しやすいのは、含まれない作業です。既存ユーザーの重複整理、パスワード再設定、API仕様の変更、ログ基盤の費用、SMS送信、第三者診断、クラウド利用料、休日対応、製品ベンダーへの問い合わせが除外されていないかを見ます。安い見積もりほど除外範囲が広いことがあるため、総額だけでなく、必要な範囲をそろえた実質価格で比較します。
セキュリティとベンダーロックインのリスクを確認します
提案評価では、PKCE、厳密なredirect URI、最小権限、トークンの失効、秘密情報の保管、鍵のローテーション、監査ログ、レート制限、脆弱性対応を質問します。NIST SP 800-63-4は、認証、連携、プライバシー、機械間の識別を含むデジタルアイデンティティの指針を整理しています(出典: NIST SP 800-63-4、2025年7月)。自社のリスク評価と照らし、必要な試験を見積もりに含めます。
ベンダーロックインの確認では、ユーザー情報と属性を出力できるか、クライアント設定を移行できるか、独自SDKに依存しすぎないか、標準OIDCやOAuthで他のサービスと接続できるかを見ます。契約終了時のデータ返却、移行支援の費用、サポート終了時の通知期間も確認します。発注時に移行を考えることは、特定サービスを避けることではなく、将来の選択肢を残すことです。
開発後のテスト・移行・運用まで委託範囲に含めます

OAuthはログイン成功だけを確認しても、安全に運用できるとは限りません。権限不足や失効、異常な呼び出し、IdP障害、会員移行の不整合が起きたときに、利用者へどの画面を返し、管理者が何を確認し、どの権限を停止するかまでテストします。開発会社に委託する場合は、テスト環境、データ、実施者、証跡の保管先を決めます。
正常系と異常系を分けてテストします
正常系では、認可要求、同意、認可コード交換、アクセストークンの検証、API呼び出し、更新トークンの更新、ログアウトを確認します。異常系では、期限切れ、scope不足、audience違い、issuer違い、認可コードの再利用、PKCE不一致、redirect URI不一致、失効済みユーザー、認証サーバー停止、ネットワーク遅延を確認します。
ブラウザアプリではXSSやCSRF、トークンがブラウザ履歴やログへ残らないことも確認します。M2Mでは秘密鍵やクライアントシークレットがソースコードへ混入していないか、トークン要求が急増したときに検知できるか、サービス停止時に呼び出しを止められるかを確認します。テスト結果を証跡として残すと、監査や保守会社の引き継ぎにも使えます。
ユーザー移行は小さく試して段階的に切り替えます
既存ユーザーを移行する場合は、全件を一度に切り替えず、社内ユーザーやテスト顧客など少数の対象で検証します。メールアドレスの重複、外部IdPの識別子、所属会社、ロール、退会状態、パスワードの扱いを確認し、失敗時に旧システムへ戻す条件を決めます。パスワードハッシュを移せない場合は、初回ログイン時の再設定や本人確認の導線を事前に用意します。
本番切り替えでは、段階的なトラフィック移行、監視強化、問い合わせ窓口、切り戻し時間、利用者への案内を計画します。切り替え後は、ログイン率だけでなく、scope不足のエラー、トークン更新失敗、APIの4xx・5xx、認証レイテンシー、ユーザー登録や退会の失敗を観測します。移行作業を発注範囲から外すと、開発完了後に最も大きな作業が残るため注意が必要です。
失効・監査ログ・障害対応を運用へ引き継ぎます
運用では、クライアント登録、scope変更、ロール変更、ユーザーの追加・停止、退職・契約終了時の失効、鍵のローテーション、ログの検索、異常検知を定期作業として定義します。監査ログには、誰が、いつ、どのクライアントから、どのAPIへアクセスしたかを残し、保存期間、改ざん防止、閲覧権限、削除方法を決めます。個人情報を含むログは、保管場所と委託先のアクセス権も管理します。
障害対応では、認証サーバー、APIゲートウェイ、リソースサーバー、外部IdPのどこで失敗したかを切り分ける手順を作ります。トークン漏えいの疑いがある場合は、影響するクライアントやscopeを特定し、鍵やトークンを失効させ、関係者へ通知する流れが必要です。開発会社には、引き渡し後の問い合わせ窓口、対応時間、改修費用、脆弱性情報の通知方法を確認します。
OAuthのシステム発注に関するよくある質問

最後に、発注前に多く寄せられる疑問へ回答します。自社の状況に当てはめて、RFPへ追加する項目や、開発会社へ確認する質問を整理してください。
OAuthのシステムは自社開発と外注のどちらがよいですか?
標準的なログインやAPI認可であれば、マネージドIdPを利用し、設計・連携・移行・運用を外注する方法が現実的です。認可サーバーの中核を自社開発すると、プロトコルの安全性だけでなく、鍵管理、脆弱性対応、可用性、監査、将来の仕様変更まで継続して担う必要があります。独自要件がある場合も、標準基盤と個別開発を分けて発注できないか比較します。
OAuthのシステム発注費用はどのくらいですか?
1〜2アプリへのマネージドIdP導入は100万〜500万円程度、複数業務システムのSSO・API認可は300万〜1,500万円程度、個別認可サーバー開発は1,000万〜3,000万円程度が概算の目安です。これらはOAuth固有の公的相場ではなく、要件別に整理したレンジです。MAU課金、MFA、ログ、移行、セキュリティ試験、保守を含むかで変わるため、金額だけでなく見積もりの範囲を比較します。
RFPには最低限何を書けばよいですか?
目的、利用者の種類、対象アプリとAPI、認証と認可の方式、scopeとロール、既存会員DBや外部IdPとの連携、ユーザー移行、MFA、監査ログ、可用性、性能、データ保管地域、テスト、運用体制、希望納期、予算、成果物、除外範囲を記載します。特に、退職・契約終了時の権限剥奪、トークン失効、障害時の切り戻しを入れると、導入後の運用を見据えた提案になりやすいです。
OAuthに詳しい委託先はどう見分けますか?
OAuthの用語や製品名だけでなく、Authorization Code + PKCE、scope、issuer、audience、M2M、ユーザー移行、監査ログ、トークン失効、障害対応を具体的に説明できるかを確認します。自社と近いB2B・B2C・社内システムの実績、要件定義から保守までの体制、セキュリティ試験の方法、成果物と責任分界を聞き、複数社で同じ質問をします。提案が業務要件から始まっている会社は、実装だけを売る会社より比較しやすいです。
まとめ

OAuthのシステムを発注するときは、「OAuth対応の会社を探す」だけで終わらせず、まず認証、認可、API保護、ユーザー管理のどこまでが必要かを分けます。そのうえで、マネージドIdP、パッケージ、個別開発を比較し、B2B・B2C・社内・M2Mの利用者とデータ境界を明らかにします。
発注前はRFPと権限マトリクスを準備します
RFPには、利用者、アプリ、API、scope、ロール、既存データ、認証方式、非機能要件、セキュリティ要件、移行、テスト、成果物、運用、除外範囲を記載します。見積書は初期開発費、IdP利用料、保守費、診断費、メッセージ費用を分け、工程と前提をそろえて比較します。金額の安さではなく、必要な安全性と運用が含まれているかを判断します。
委託先には移行・試験・運用まで確認します
委託先は、製品名の知識だけでなく、権限設計、ユーザー移行、PKCEやトークン保護、監査ログ、M2M、障害対応まで説明できる会社を選びます。契約では準委任・請負・ライセンスの役割と責任分界を確認し、成果物と受け入れ条件を定めます。OAuthのシステムは公開して終わりではないため、失効、鍵の更新、監視、脆弱性対応、契約終了時の移行まで含めて発注することが重要です。
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・OAuthのシステム開発の完全ガイド
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
