「1on1ツールを自社開発したいが、いったいいくらかかるのだろう」と頭を抱えている担当者は少なくありません。既存のSaaSを契約するだけでは自社の人事制度や評価フローに合わず、かといってゼロからシステムを開発するとなると費用感がまったく見えない、というのが多くの企業の実情です。実際、1on1ツールの開発費用は数十万円から数千万円まで幅が広く、要件の整理が不十分なまま発注してしまうと、後から追加費用が発生して想定予算を大幅に超えてしまうケースが後を絶ちません。
本記事では、1on1ツール開発にかかる費用の相場と内訳を徹底的に解説し、既存SaaS導入との費用比較から、費用を抑えるための具体的な戦略まで網羅します。「この記事を読めば費用の全体像をつかめる」と自信を持ってお届けします。発注前の情報収集として、ぜひ最後までお読みください。
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・1on1ツール開発の完全ガイド
1on1ツール開発の費用相場

規模別・機能別の費用目安
1on1ツールの開発費用は、搭載する機能の数と複雑さによって大きく変動します。最もシンプルな構成として、1on1のスケジュール管理・アジェンダ共有・面談記録の3機能に絞った小規模ツールであれば、開発費用は100万円〜300万円程度が目安です。エンジニア2〜3名が2〜3か月稼働するイメージで、社員数が100名以下の中小企業が自社の運用フローに合わせた専用ツールを作りたいときに選ばれることが多い規模感です。
一方、目標管理(OKR・MBO)との連携・フィードバック機能・AI分析によるアジェンダ提案・マネジメントダッシュボードなどを備えた中規模の1on1ツールになると、開発費用は500万円〜1,500万円程度に跳ね上がります。エンジニア4〜6名で4〜8か月の開発期間を要し、既存の人事評価システムや勤怠管理システムとのAPI連携も視野に入るため、設計・テスト工程に多くの工数が発生します。数百名規模の従業員を抱え、タレントマネジメントの基盤として1on1ツールを活用したい企業が検討する規模です。
さらに、グループ全社への展開を前提とした大規模な1on1プラットフォームの場合、2,000万円〜5,000万円以上の開発費用がかかるケースもあります。マルチテナント対応・セキュリティ強化・複数言語対応・高度なデータ分析基盤の構築など、エンタープライズ向けの要件が重なることで、開発工数が一気に膨らむからです。上場企業や外資系企業が自社グループ専用のHRプラットフォームとして構築するケースが該当します。
既存SaaS導入とスクラッチ開発の費用比較
1on1ツールに関しては、スクラッチ開発の前にまず既存SaaSの導入コストと比較することが欠かせません。市場には多数の1on1SaaSが存在しており、TeamUpの場合は従業員20名以下で月額2万円、51〜100名規模で月額5.5万円と、初期費用ゼロで比較的手軽に始められます。Wistantや1on1特化型のHRツールは1ユーザーあたり月額400円〜1,500円が相場であり、従業員100名の企業なら月額4万円〜15万円、年間にして50万円〜180万円程度のランニングコストとなります。
SaaSはカスタマイズの自由度が低い半面、初期費用を大幅に抑えられる点が最大のメリットです。スクラッチ開発の場合、初期開発費として最低でも100万円以上の投資が必要となるため、少なくとも3〜5年以上の利用を見込んでいる場合でなければ費用対効果が合わないことが多いです。例えば、スクラッチで500万円のシステムを作り、年間の保守費用が75万円かかるとすると、5年間の総コストは500万円+75万円×5年=875万円となります。同じ期間にSaaSを利用した場合の総費用(年間100万円×5年=500万円)と比較すると、スクラッチのほうが高くつく計算です。自社の業務フローに高度にフィットしたシステムが必要であるか、長期的な視点でのコスト分析が判断の鍵になります。
費用の内訳

設計・開発費用の内訳
1on1ツールの開発費用全体のうち、約80%は人件費が占めます。残り20%がサーバー・ライセンス・外部サービス利用料などの諸経費です。人件費は「人月単価 × 人数 × 開発期間」で算出されますが、2025年時点における日本国内のシステムエンジニアの人月単価は、経験年数や専門性によって異なり、中堅エンジニアで50万円〜70万円、シニアエンジニアやアーキテクトクラスになると80万円〜120万円が相場です。
工程別の費用割合としては、要件定義が全体の10〜15%、基本設計・詳細設計が20〜30%、プログラミング(実装)が30〜40%、テストが15〜25%、プロジェクト管理が10〜15%を占めるのが一般的です。例えば、総開発費500万円のプロジェクトでは、要件定義に50万〜75万円、設計フェーズに100万〜150万円、実装に150万〜200万円、テストに75万〜125万円が配分される計算になります。要件定義の費用を惜しんで後から仕様変更が多発すると、実装フェーズでの手戻りコストがその何倍にも膨らむため、上流工程への投資は決して省いてはなりません。
また、1on1ツール特有の開発コストとして、UI/UXデザインへの投資も見落とせません。1on1は上司と部下が自発的に活用してこそ意味があるツールであるため、使いやすいインターフェースの設計が定着率を大きく左右します。専任のUIデザイナーをプロジェクトに加えると人月30万円〜60万円の追加コストが発生しますが、ツール導入後の活用率と定着率を考えれば十分に回収できる投資です。
インフラ・保守・運用コスト
初期開発費とは別に、リリース後のインフラ費用と保守・運用コストを必ず試算しておく必要があります。インフラについては、AWSやGCPなどのクラウドサービスを利用するのが現在の主流です。従業員数100〜300名程度の規模を想定した1on1ツールの場合、月額のインフラ費用は3万円〜10万円程度が目安です。大量の動画や音声データを扱う機能を追加した場合や、リアルタイム通知・高頻度のバッチ処理が必要な場合は、ストレージとコンピューティングコストが膨らみ、月額20万円以上になるケースもあります。
保守・運用費用の相場は、一般的に初期開発費の年間15%程度が目安とされています。500万円でシステムを開発した場合、年間75万円(月額6〜7万円)の保守費用が発生する計算です。保守費用の内訳としては、バグ修正・セキュリティパッチの適用・OSやフレームワークのアップデート対応などの定常的な維持管理業務が中心となります。加えて、1on1ツールは人事データや面談内容という機密性の高い情報を扱うため、セキュリティ監査や脆弱性診断を年1回実施する費用として、別途30万円〜100万円が必要になることも少なくありません。運用保守契約には定額制と従量制の2種類があり、変更頻度が低い安定したシステムであれば定額制、機能追加要望が多い場合は従量制のほうがコスト効率が高くなります。
費用を左右する主な要因

機能の複雑さと連携システムの数
1on1ツールの開発費用を最も大きく左右するのは、搭載する機能の複雑さと既存システムとの連携数です。シンプルなスケジュール管理と記録機能だけであれば比較的安価に構築できますが、AI技術を活用したアジェンダ自動提案機能や、発言内容の感情分析・エンゲージメントスコアリング機能を加えると、機械学習モデルの構築・学習データの準備・精度検証などに多大な工数が発生し、開発費が一気に跳ね上がります。目安として、AI機能を1つ追加するだけで開発費が100万円〜300万円増加するケースが珍しくありません。
既存システムとの連携数も費用に直結します。1on1ツールをSlackやMicrosoft Teamsと連携させてリマインド通知を送る程度であれば追加費用は数十万円で済みますが、人事評価システム・目標管理ツール(OKRシステム)・勤怠管理システム・給与システムの4つと連携させる場合、各システムのAPI仕様の調査・連携設計・テストに合計100万円〜200万円以上の追加費用がかかることが多いです。特に連携先が古いレガシーシステムの場合、APIが整備されていないためデータ連携のためのアダプター開発が必要となり、さらにコストが膨らみます。また、SSOシステムとの認証連携やSAML・OAuth対応も、セキュリティ要件が厳しい企業では必須となることが多く、50万円〜100万円程度の追加費用として見込んでおくべきです。
開発会社の規模・エリアによる違い
同じ要件でも、どの開発会社に発注するかによって費用は大きく異なります。東京都内の大手SIerや著名なWeb系開発会社に依頼する場合、エンジニアの人月単価は80万円〜120万円と高くなる傾向があります。一方、地方の中堅開発会社では50万円〜70万円程度が相場で、同じ機能を実現する場合でも20〜30%程度コストを抑えられることがあります。ただし、地方会社であっても現在はリモート開発が普及しているため、コミュニケーション品質が低下するとは限りません。
オフショア開発(海外の開発会社に発注)を活用すれば、さらに大幅なコスト削減が可能です。2025年時点のベトナムやインドのオフショア開発会社の人月単価は、30万円〜50万円程度が相場であり、国内開発と比較して半額以下になるケースもあります。ただし、コミュニケーションコスト・品質管理の手間・時差によるレスポンスの遅れ・プロジェクトマネジメントの難易度上昇など、見えないコストが発生することも事実です。オフショア開発は実績のある橋渡し会社(ブリッジSE)を通じて発注するか、過去のオフショア経験が豊富な開発パートナーを選ぶことが成功の前提となります。また、フリーランスエンジニアへの直接発注も費用を抑える手段ですが、複数人のチームを自社でマネジメントする工数が発生するため、プロジェクト管理リソースが社内にない場合には向きません。
費用を抑えるためのポイント

優先機能を絞ったMVP開発
開発費用を大幅に削減する最も効果的な方法が、MVP(Minimum Viable Product)という考え方に基づいた開発です。MVPとは「製品として成立する最小限の機能を持ったバージョン」を指し、まず必要最低限の機能だけを開発してリリースし、実際の利用状況やユーザーの声をもとに機能を追加・改善していくアプローチです。ノーコードツールを活用したMVP開発であれば10万円〜80万円程度、外注によるスクラッチMVP開発でも100万円〜300万円程度に抑えられるケースが多く、いきなりフル機能のシステムを開発するよりも初期投資を大幅に圧縮できます。
1on1ツールのMVPとして最低限必要な機能は、面談スケジュール登録・アジェンダ共有・面談記録の3点に絞ることが多いです。この3機能だけに絞ることで、エンジニア2名×2か月程度(人月単価60万円として約240万円)での開発が現実的になります。一方、AI機能・高度な分析ダッシュボード・他システムとのAPI連携などは「将来のフェーズで追加する機能」として切り出し、MVP開発には含めないと決断することが重要です。「すべての機能が揃ってからリリースしよう」という発想はコスト増大の元凶であり、まずリリースして現場のフィードバックを集めるほうが、長期的には無駄な機能開発を防ぎ、コストを最適化できます。
フェーズ分割で段階的に開発する
MVP開発と密接に関連する費用削減の方法として、フェーズ分割による段階的開発があります。これは、開発するシステムをフェーズ1・フェーズ2・フェーズ3に分割し、それぞれのフェーズで別途の発注・予算承認を行う方法です。例えば、1on1ツールの開発を「フェーズ1:基本的なスケジュール管理と記録機能(150万円・2か月)」「フェーズ2:目標管理と評価連携(300万円・3か月)」「フェーズ3:AI分析機能とダッシュボード(400万円・4か月)」と3段階に分割することで、1回あたりの発注金額を抑えつつ、予算の期中執行管理もしやすくなります。
フェーズ分割には費用管理のしやすさ以外にも大きなメリットがあります。フェーズ1をリリースして実際に現場で使用することで、フェーズ2以降の機能要件を精緻化できるため、不要な機能への投資を未然に防ぐことができます。当初はフェーズ2に予定していた機能が、フェーズ1のフィードバックを踏まえると「実は不要だった」と判明するケースは珍しくなく、その分の開発費をフェーズ3の充実に充てることができます。また、段階的な開発は開発会社との関係構築にも有利で、フェーズを重ねるごとに開発会社がシステムへの理解を深め、コミュニケーションコストが下がることで、後のフェーズほど開発効率が上がる傾向があります。
見積もりを取る際のポイント

要件を明確にして比較しやすい条件を揃える
複数の開発会社から見積もりを取る際に最も重要なのは、各社に同じ条件で見積もりを依頼することです。要件があいまいなまま「1on1ツールを作りたい」とだけ伝えると、各社がそれぞれ異なる機能セットを前提に見積もりを作成するため、金額を並べても正しい比較ができません。見積もり依頼前に、少なくとも「対象ユーザー数」「必須機能のリスト」「連携が必要なシステム名」「希望納期」「セキュリティ要件(個人情報の取り扱い方針)」の5点を明文化したRFP(提案依頼書)を用意することが、比較精度を高める上で不可欠です。
見積もりは3社以上に依頼することが推奨されます。1社だけでは費用の妥当性を判断できず、2社では偏りが生じる可能性があるからです。なお、見積もりの金額だけを比較して最安値の会社を選ぶのは危険です。見積もりが安い理由として「要件の解釈が浅い」「品質保証のテスト工程が省略されている」「保守対応が別途有償になっている」といったケースが少なくありません。見積もり書を受け取ったら、工程ごとの費用内訳・人員体制・開発実績・品質保証の取り組みについてヒアリングし、総合的に判断することが重要です。また、見積もり依頼から回答までに2〜3週間かかることも多いため、スケジュールに余裕を持って動き始めることが大切です。
初期費用とランニングコストを分けて確認する
見積もり比較の際に多くの企業が陥る失敗が、初期開発費しか比較せずにランニングコストを見落とすことです。システムは開発して終わりではなく、リリース後の保守・運用・インフラ費用が継続的にかかり続けます。開発費用が300万円で安く見えても、月額の保守費用が30万円(年間360万円)では、3年間の総コストは300万円+360万円×3年=1,380万円に達します。同じ条件で開発費500万円・月額保守10万円(年間120万円)の会社に依頼した場合、3年間の総コストは500万円+120万円×3年=860万円となり、初期費用が安い前者のほうがかえって高くつく結果になります。
見積もり書を受け取ったら、必ず「初期開発費」「月額または年額の保守費用」「インフラ費用(クラウド利用料)」「機能追加時の費用算定方法(人月単価)」の4項目を個別に確認してください。保守費用の契約形態についても確認が必要です。定額の月額保守契約であればバグ修正・セキュリティ対応が含まれているのか、それとも作業が発生するたびに別途費用が発生する従量制なのかによって、総コストの予測精度が大きく変わります。さらに、将来的な機能追加を見込んでいる場合は、追加開発時の人月単価を事前に確認し、契約書に明記しておくことで、後々の費用トラブルを防ぐことができます。
まとめ

本記事では、1on1ツール開発の費用相場から内訳・費用を左右する要因・コスト削減の方法・見積もりのポイントまでを体系的に解説しました。改めて要点を整理すると、1on1ツールの開発費用は小規模(100万円〜300万円)・中規模(500万円〜1,500万円)・大規模(2,000万円〜5,000万円以上)の3つのレンジで捉えることができます。既存のSaaSを活用する場合は1ユーザーあたり月額400円〜1,500円程度が相場で、3〜5年単位の総コスト比較で自社開発との優劣を判断することが重要です。
費用を抑えるには、MVP開発で必要最低限の機能に絞って始め、フェーズ分割で段階的に機能を拡充するアプローチが有効です。見積もり取得時には同条件での複数社比較、初期費用とランニングコストの分離確認、工程別の費用内訳の精査が欠かせません。1on1ツールは人事管理の中核を担う重要なシステムであるため、費用の安さだけで開発会社を選ぶのではなく、開発実績・コミュニケーション品質・長期的なパートナーシップを含めた総合的な判断が、プロジェクト成功の鍵となります。本記事が、1on1ツール開発の発注を検討している方々の意思決定に役立てば幸いです。
本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
