1on1ツール開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

「1on1ミーティングを導入したが、記録がバラバラで継続できない」「市販のツールでは自社の運用に合わない」──こうした悩みを抱える人事・IT担当者が増えています。ギャラップの調査によれば、日本の従業員エンゲージメントは世界139カ国中137位でわずか6%と、世界平均23%を大きく下回っており、1on1ミーティングの質を上げることは企業の喫緊の課題です。さらに独自調査では、1on1を適切に実施したグループとそうでないグループの間では、8ヶ月後に売上で19%、離職率で20%もの差が生じたというデータも出ています。こうした背景から、自社の業務フローや評価制度に完全フィットした1on1ツールをゼロから開発、あるいは既存SaaSをカスタム開発する企業が急増しています。

本記事では、1on1ツールの開発を検討している企業の担当者に向けて、必要な機能の整理から要件定義・設計・テスト・リリースまでの具体的な工程、費用の相場と内訳、そして発注先を選ぶ際に押さえておくべきポイントまでを一冊で解説します。「何から手をつけるべきかわからない」という段階から「見積もりを依頼する前の最終チェックをしたい」という段階まで、幅広いフェーズの読者に役立てるよう構成しました。ツール導入と自社開発のどちらが自社に合っているかを判断する材料としても、ぜひ最後までお読みください。

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1on1ツール開発の全体像

1on1ツール開発の全体像

1on1ツールの主な機能と特徴

1on1ツールとは、上司と部下の定期的な1対1ミーティングを継続・効率化・高度化するためのシステムです。単なるスケジューラーに留まらず、議題の事前共有からフィードバックの蓄積、目標管理との連携まで、幅広い機能を備えています。現在市場に出回っている主要ツールを分析すると、機能は大きく5つのカテゴリに整理できます。まず「スケジューリング・通知機能」は、GoogleカレンダーやOutlookと連携して面談予定を自動調整し、当日リマインダーを送信する機能です。次に「アジェンダ・議題管理機能」は、部下が事前に話したいトピックをリクエストし、上司がそれを確認・補足した上でアジェンダとして共有できる仕組みで、「あの話どこに書いたっけ」という属人化を防ぎます。

3つ目が「議事録・記録管理機能」で、1on1で話した内容をテキストで残し、過去の履歴を時系列で確認できます。記録の積み重ねが部下の成長の可視化につながるため、継続率の高いチームほどこの機能を積極的に活用しています。4つ目が「フィードバック・評価連携機能」で、半期評価やOKRとのデータ連携により、普段の1on1でのコメントを評価材料として活用できます。5つ目は近年急速に普及している「AI支援機能」で、過去の記録や人材サーベイのデータを分析し、次回の1on1における推奨議題や改善アクションをAIが自動提案します。ミキワメAI マネジメントのように、社員の性格・心身状態・目標進捗を組み合わせてマネージャーに最適な声がけを示すサービスも登場しており、2025年以降はAI機能が1on1ツールの差別化ポイントになりつつあります。

既存ツールとカスタム開発の比較

1on1ツールを持つ方法は大きく3つに分かれます。第一の選択肢は「既存SaaSをそのまま導入する」方法で、TeamUpやHiManager、Wistantのような月額課金サービスを使うケースです。導入は最短数日で完了し、初期費用は数万円程度に抑えられますが、機能や画面デザインはベンダーの仕様に依存するため、自社独自の評価制度や承認フローとの整合性に課題が生じることがあります。第二の選択肢は「SaaSにカスタマイズを加える」方法です。APIやWebhookを通じて既存の人事システムや社内ポータルと連携させたり、ベンダーと交渉して機能追加を依頼したりするパターンで、開発費用は50万円〜300万円程度が目安です。

第三の選択肢が「スクラッチでゼロから開発する」方法です。自社の評価制度・組織構造・権限設計に完全に合わせた仕組みを構築でき、他社には真似できない競争優位性にもなり得ます。一方で開発期間は3〜12ヶ月、費用は300万円から数千万円規模になることも珍しくありません。また保守・運用コストも継続的に発生するため、長期的な視点でのROI試算が欠かせません。どの選択肢が自社に合うかは、「現在の1on1の実施率と課題」「他システムとの連携要件の深さ」「IT予算とリソース」の3軸で判断すると整理しやすくなります。従業員数が300名以下で独自要件が少ない場合はSaaSの活用が効率的ですが、1000名超・複雑な権限体系・多言語対応が必要なグローバル企業ではスクラッチ開発を検討する価値があります。

1on1ツール開発の進め方

1on1ツール開発の進め方

要件定義・企画フェーズ

1on1ツール開発の成否は、要件定義フェーズの質で8割方決まると言っても過言ではありません。このフェーズで最初に行うべきは「現状の課題の棚卸し」です。具体的には、「1on1の実施率が50%を下回っている」「上司によって議事録の書き方がバラバラで人事が活用できていない」「評価時期になると急に1on1が増え、普段の信頼関係が薄い」といった課題を現場インタビューや社内アンケートで拾い上げます。課題を数値で捉えることが重要で、たとえば「月に1回の1on1実施率を現状の40%から90%に引き上げる」という具体的なKPIを設定することで、後の機能設計に明確な優先度をつけられます。

次に「必要な機能のMoSCoW分析」を行います。MoSCoWとは、Must have(必須)・Should have(あるべき)・Could have(あれば望ましい)・Won’t have(今回は不要)の4段階で機能を仕分けるフレームワークです。たとえばスケジューリング機能はMust have、AIによる議題提案はCould haveに分類することで、開発スコープを現実的に絞り込めます。さらに、既存の人事システム(HRMS)や目標管理ツール(OKRツール)との連携要件も早期に洗い出す必要があります。後から「実は評価データのAPIが公開されていなかった」と判明すると、設計をゼロからやり直すことになりかねないためです。企画フェーズの最終成果物として「ユーザーストーリーマップ」と「システム連携図」を作成し、開発会社との認識合わせに使うことを強くお勧めします。

設計・開発フェーズ

要件定義を終えたら、設計フェーズに入ります。設計は大きく「基本設計(外部設計)」と「詳細設計(内部設計)」に分かれます。基本設計では、ユーザーが実際に触れる画面構成・画面遷移・データ項目を決定します。1on1ツールの場合、管理者ビュー・マネージャービュー・メンバービューの3種類の権限設計が典型的で、それぞれ閲覧・編集・承認できる情報の範囲が異なります。「部下の1on1の記録をそのメンバーの上長だけが閲覧できる」「人事部は全社の実施率と感情サーベイのサマリーを見られるが、個別の議事録は見られない」といった細かいアクセス制御の設計は、現場の信頼を保つ上で欠かせないポイントです。

詳細設計ではデータベース構造・API仕様・外部システムとの連携インターフェースを定めます。たとえばSlackやMicrosoft Teamsとの通知連携を実装する場合、各サービスのWebhook URLをどのテーブルで管理し、どのイベント(1on1実施3日前、アジェンダ追加時など)をトリガーにするかを詳細に仕様化します。開発フェーズはアジャイル型で進めると効果的で、2週間を1スプリントとして「まず基本的なスケジューリングと議事録記録機能を動かせる状態にする」→「フィードバック機能を追加する」→「外部システム連携を実装する」という順序でインクリメンタルに開発します。アジャイル開発のメリットは、スプリントごとに発注側がプロダクトを触れるため、「思っていたのと違う」という手戻りを早期に検知できることです。3〜6ヶ月の開発期間中に2〜3回の中間デモを実施し、現場マネージャーからのフィードバックを反映しながら進めることが、プロジェクト成功の鍵となります。

テスト・リリースフェーズ

開発が一通り完了したら、体系的なテスト工程に移ります。テストは単体テスト(UT)→結合テスト(IT)→システムテスト(ST)→受け入れテスト(UAT)の4段階で実施するのが標準的なV字モデルです。単体テストと結合テストは開発会社が主体的に行いますが、システムテスト以降は発注側も積極的に関与することが重要です。特にUAT(ユーザー受け入れテスト)では、実際にツールを日常的に使うマネージャーと人事担当者が本番に近い環境でシナリオテストを実施します。「新入社員の初回1on1をスケジュールし、アジェンダを作成・共有し、実施後に議事録を登録して人事ダッシュボードに集計されるまで」という一連の業務フローをエンドツーエンドで動作確認します。

リリースは本番環境への一括切り替えではなく、段階的なロールアウトを推奨します。たとえば「まず特定の部署20名で2週間のパイロット運用を行い、問題がなければ全社展開する」という手順を踏むことで、万が一の障害や操作ミスの影響を最小化できます。リリース直後の2〜4週間は専任のサポート担当を設け、マニュアル・FAQの整備や操作研修を実施することが定着率を左右します。特に1on1ツールは現場マネージャーが毎日触れるものではなく、月に数回だけ操作するという特性上、「使い方がわからない」という摩擦を取り除くための丁寧なオンボーディング設計が不可欠です。リリース後3ヶ月以内に実施率・記録入力率・ユーザー満足度の3指標を計測し、必要に応じてUI改善や機能追加の優先度を再評価するサイクルを回しましょう。

費用相場とコストの内訳

1on1ツール開発の費用相場とコスト内訳

人件費と工数

1on1ツールのカスタム開発において、費用の約80%は人件費が占めます。システム開発における人件費の計算式は「人月単価 × 人数 × 開発期間(月数)」が基本で、国内の中堅開発会社のエンジニア単価は70万円〜120万円/月が相場です。たとえば、プロジェクトマネージャー1名・バックエンドエンジニア2名・フロントエンドエンジニア1名・QAエンジニア1名の5名体制で4ヶ月開発した場合、人月単価を平均90万円とすると、総人件費は「90万円 × 5名 × 4ヶ月 = 1,800万円」となります。これに諸経費(サーバー構築費・外部API利用料・ライセンス費など)が加わり、トータルで2,000万円前後になるケースが典型的です。

開発規模別の目安としては、基本的なスケジューリング・議事録機能のみのシンプルな1on1ツールであれば300万円〜600万円程度、外部システム連携・分析ダッシュボード・通知自動化まで含めた中規模開発では800万円〜2,000万円、さらにAI機能・多言語対応・モバイルアプリまで含めた本格開発では2,000万円〜5,000万円以上になります。これらの数字はあくまで目安であり、要件の複雑さや発注先の規模によって大きく変動します。なお、オフショア開発(インドやベトナムのエンジニアを活用)を選択すると、同等のスペックで費用を30〜50%削減できる場合がありますが、コミュニケーションコストや品質管理の負担が増すという側面もあります。

初期費用以外のランニングコスト

スクラッチ開発した1on1ツールを運用するには、初期開発費用とは別に継続的なランニングコストが発生します。主なコスト項目はクラウドインフラ費用・保守費用・機能改善費用の3つです。クラウドインフラ費用は、AWS・GCP・Azureなどのクラウドサービスを利用する場合に月次で発生し、ユーザー数500〜1000名規模のシステムであれば月額5万円〜20万円程度が相場です。サーバーレスアーキテクチャや従量課金型のサービスを積極的に活用することでコストを最適化できますが、設計段階からランニングコストを意識したアーキテクチャ選定が重要です。

保守費用は、バグ修正・セキュリティアップデート・OSやミドルウェアのバージョンアップ対応などが含まれ、初期開発費用の15〜20%/年が業界標準です。たとえば初期費用が1,000万円の場合、年間150万円〜200万円の保守費用が継続的にかかることになります。機能改善費用は、リリース後にユーザーから挙がった改善要望や、法改正・セキュリティ要件の変化に対応するための追加開発費用です。SaaSと比較した場合の最大のデメリットがこのランニングコストの高さであり、5年間の総保有コスト(TCO)で比較すると、SaaSのほうがトータルで安くなるケースも少なくありません。社内に継続的な開発・運用を担えるエンジニアがいない場合は、SaaSのカスタマイズで対応できないか再検討することをお勧めします。

見積もりを取る際のポイント

1on1ツール開発の見積もりポイント

要件明確化と仕様書の準備

開発会社に見積もりを依頼する前に、自社で用意しておくべき資料があります。最も重要なのは「機能要件書」と「非機能要件書」の2点です。機能要件書には、実装してほしい機能の一覧を、「誰が・何を・どのように」という形式で記載します。たとえば「マネージャーが1on1実施3日前にSlackで通知を受け取れる」「部下がアジェンダを追加すると、マネージャーにメール通知が飛ぶ」といった具体的なユーザーシナリオ形式で書くと、開発会社が工数を見積もりやすくなります。ここが曖昧なまま見積もりを取ると、会社によって仮定条件が異なり、見積金額に数倍の差が生じることがあります。

非機能要件書には、性能・可用性・セキュリティ・拡張性に関する要件を記載します。「ピーク時に1,000ユーザーが同時接続しても3秒以内にレスポンスを返すこと」「月次メンテナンスを除き99.9%の稼働率を確保すること」「個人情報はAES-256で暗号化して保存すること」といった要件を数値で明示することで、インフラ設計や品質保証の範囲が明確になります。また、「現在利用している人事システムのAPI仕様書」や「現行業務の1on1運用フローチャート」があれば一緒に提供すると、見積もりの精度が格段に上がります。仕様書の準備には社内工数がかかりますが、この投資が後のトラブルを防ぐ最も確実な手段です。

複数社比較と発注先の選び方

見積もりは必ず3社以上から取ることが鉄則です。1社だけでは価格の妥当性が判断できませんし、提案内容の質も比較できません。発注先を選ぶ際に重視すべき観点は「HRシステムや社内向けツールの開発実績」「プロジェクト管理手法の透明性」「リリース後の保守体制」の3点です。HRシステムの開発経験がある会社は、個人情報の取り扱い・アクセス権限設計・監査ログの実装といった、1on1ツール特有の要件をよく理解しています。逆にECサイトや予約システムしか手がけたことのない会社では、HRデータのプライバシー設計が後回しになるリスクがあります。

プロジェクト管理の透明性については、「週次の進捗報告はどのような形式で行うか」「課題管理はどのツールを使うか」「仕様変更が発生した場合の変更管理プロセスは何か」を確認しましょう。優良な開発会社は、JiraやNotionなどのプロジェクト管理ツールを使った透明なコミュニケーションを標準提供しています。リリース後の保守体制については、「バグ発生時のSLA(対応時間の保証)」「機能追加時の単価と対応可否」「保守担当の引き継ぎ体制(担当者が退職した場合のリスク)」を必ず契約前に確認しておく必要があります。なお、最安値の会社が最善の選択肢とは限らず、見積金額の差異がどこから来ているのかを開発会社にヒアリングし、品質・リスク・サポートとのバランスで総合判断することが重要です。

注意すべきリスクと対策

1on1ツール開発において特に注意が必要なリスクは「スコープクリープ」「個人情報漏洩」「現場定着の失敗」の3つです。スコープクリープとは、開発途中に要件が際限なく追加・変更されてコストと納期が膨らむ現象です。防止策としては、契約前に「変更管理手順書」を取り交わし、仕様変更が発生した場合には必ず書面で影響工数を確認した上で発注する運用ルールを徹底します。また、アジャイル開発であってもスプリント開始前に「このスプリントで対応する機能の範囲」を合意文書化しておくことが、後のトラブル防止になります。

個人情報漏洩リスクについては、1on1ツールが取り扱うデータ(面談の記録・心理状態のサーベイ結果・個人の評価コメントなど)は、個人情報保護法の観点から厳重な管理が求められます。開発契約に「個人情報の取り扱いに関する覚書(DPA)」を盛り込み、データの保管場所・アクセス権限・暗号化方式・第三者提供の禁止を明文化しておくことが不可欠です。また、プライバシー設計については、個人情報保護委員会のガイドラインや、自社が属する業界の規制(金融・医療・教育など)への準拠もチェックが必要です。現場定着の失敗リスクについては、前述のオンボーディング設計に加え、「ツールを使うことで上司・部下の双方にメリットがある」という状態を作ることが最大の対策です。特に「記録が人事評価に直結する」と感じると部下が本音を書かなくなるため、記録の利用目的と閲覧範囲を明確に社内周知した上でツールを導入することが、長期的な定着には不可欠です。

まとめ

1on1ツール開発まとめ

1on1ツール開発を成功させるためには、「なぜ既存のSaaSでは不十分なのか」という問いから始め、自社固有の課題と要件を丁寧に言語化することが出発点です。開発の全体工程は要件定義→設計→開発→テスト→リリースの5フェーズで構成され、各フェーズの成果物を丁寧に積み上げることで、後の手戻りと余分なコストを防げます。費用は開発規模によって300万円〜5,000万円以上と幅広く、初期費用に加えて年間15〜20%の保守費用が継続的にかかることも念頭に置いておく必要があります。見積もりを取る際は3社以上を比較し、HR領域の開発実績・プロジェクト管理の透明性・リリース後の保守体制を総合的に評価して発注先を決定してください。

1on1は単なる面談ではなく、チームのエンゲージメントを70%規定すると言われるマネジメントの核心です。適切なツールが整備されることで、1on1の実施率・質・継続性が劇的に改善し、離職率の低下や組織力の向上につながります。本記事を参考に、自社の状況に最適な開発アプローチを選択し、1on1文化を組織の競争力として定着させてください。開発パートナー選びや要件整理でお困りの際は、専門のシステム開発会社への相談から始めることをお勧めします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。