1on1ツール開発は、企画・要件定義、設計・開発、テスト・リリースの3段階で進みます。
開発に入る前に、記録、権限、評価連携、利用者、運用体制を整理しておくと、その後の要件定義と設計の前提になります。
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1on1ツール開発の全体像
1on1ツールは、上司と部下の定期的な1対1ミーティングを継続、効率化、高度化するためのシステムです。必要な機能と運用条件は、組織の課題や評価制度によって変わります。
- 記録:議題、議事録、フィードバック、履歴の残し方
- 権限:本人、上司、人事がそれぞれ閲覧・編集できる範囲
- 連携:評価、目標、通知、既存の人事システムとのつながり
1on1ツールの主な機能と特徴
1on1ツールは、上司と部下の定期的な1対1ミーティングを継続、効率化、高度化するためのシステムです。主要ツールは、議題の事前共有から目標管理との連携まで幅広い機能を備え、大きく5つのカテゴリに整理できます。
- スケジューリング・通知機能:GoogleカレンダーやOutlookと連携して面談予定を自動調整し、当日はリマインダーを送ります。
- アジェンダ・議題管理機能:部下が事前に話したい議題を上司が確認・補足してアジェンダとして共有でき、「あの話どこに書いたっけ」という属人化を防ぎます。
- 議事録・記録管理機能:1on1で話した内容をテキストで残し、過去の履歴を時系列で確認できます。
- フィードバック・評価連携機能:半期評価やOKRとのデータ連携により、普段の1on1でのコメントを評価材料として活用できます。
- AI支援機能:近年急速に普及しており、過去の記録や人材サーベイのデータを分析して、次回の1on1における推奨議題や改善アクションを自動で提案します。
記録の積み重ねが部下の成長の可視化につながるため、継続率の高いチームほど議事録・記録管理機能を積極的に活用しています。AI支援機能では、ミキワメAI マネジメントのように、社員の性格・心身状態・目標進捗を組み合わせて、マネージャーに最適な声がけを示すサービスも登場しています。2025年以降は、AI機能が1on1ツールの差別化ポイントになりつつあります。
既存ツールとカスタム開発の比較
1on1ツールを持つ方法は大きく3つあります。
- 既存SaaSをそのまま導入する:TeamUpやHiManager、Wistantのような月額課金サービスを使うケースです。
- SaaSにカスタマイズを加える:APIやWebhookで既存の人事システムや社内ポータルと連携させたり、ベンダーに機能追加を依頼したりします。
- スクラッチでゼロから開発する:自社の評価制度・組織構造・権限設計に合わせた仕組みを一から構築します。
既存SaaSは最短数日で導入でき、初期費用も数万円程度に抑えられます。ただし、機能や画面デザインはベンダーの仕様に依存するため、自社独自の評価制度や承認フローとの整合性に課題が生じることがあります。カスタマイズの開発費用は50万円〜300万円程度が目安です。
スクラッチは、他社には真似できない競争優位性にもなり得ます。ただし、開発期間は3〜12ヶ月、費用は300万円から数千万円規模に及ぶこともあり、保守・運用も続くため、長期的な視点でのROI試算が欠かせません。
自社に合う選択肢は、「1on1の実施率と課題」「他システムとの連携要件の深さ」「IT予算とリソース」の3つの観点で判断できます。従業員300名以下で独自要件が少なければSaaSが効率的で、1000名超で権限体系や多言語対応が複雑なグローバル企業はスクラッチ開発を検討する価値があります。
1on1ツール開発の進め方

要件定義・企画フェーズ
1on1ツール開発の成否は、要件定義の質で8割方決まります。最初に行うのは、現場インタビューや社内アンケートで現状の課題を拾い上げることです。たとえば「1on1の実施率が50%を下回っている」「議事録の書き方が上司によってバラバラで、人事が活用できていない」「評価時期になると急に1on1が増え、普段の信頼関係が薄い」といった課題が挙がります。
課題は数値で捉えることが大切で、たとえば「月に1回の1on1実施率を現状の40%から90%に引き上げる」といったKPIを置くと、後の機能設計で明確な優先度をつけられます。次に「必要な機能のMoSCoW分析」を行い、機能を仕分けます。MoSCoWは、次の4段階で機能を分けるフレームワークです。
- Must have:必須
- Should have:あるべき
- Could have:あれば望ましい
- Won’t have:今回は不要
スケジューリング機能はMust have、AIによる議題提案はCould haveに分類すると、開発スコープを現実的に絞り込めます。
既存の人事システム(HRMS)や目標管理ツール(OKRツール)との連携要件も、早期に洗い出します。後から「実は評価データのAPIが公開されていなかった」と判明すると、設計をやり直すことになりかねないからです。
企画フェーズの最終成果物として「ユーザーストーリーマップ」と「システム連携図」を作成し、開発会社との認識合わせに使うことを強くお勧めします。
設計・開発フェーズ
要件定義を終えたら設計フェーズに入ります。設計は次の3つに分けて進めます。
- 基本設計(外部設計):ユーザーが実際に触れる画面構成・画面遷移・データ項目を決めます。
- 詳細設計(内部設計):データベース構造・API仕様・外部システムとの連携インターフェースを定めます。
- 権限設計:管理者ビュー・マネージャービュー・メンバービューの3種類が典型的で、それぞれ閲覧・編集・承認できる情報の範囲が異なります。
細かいアクセス制御の設計は、現場の信頼を保つうえで欠かせません。たとえば「部下の1on1の記録をそのメンバーの上長だけが閲覧できる」「人事部は全社の実施率と感情サーベイのサマリーを見られるが、個別の議事録は見られない」といった形で決めます。
SlackやMicrosoft Teamsとの通知連携では、各サービスのWebhook URLをどのテーブルで管理するかを決めます。どのイベント(1on1実施3日前、アジェンダ追加時など)をトリガーにするかも、詳細に仕様化します。
開発はアジャイル型が効果的で、2週間を1スプリントとして進めます。次の順で実装します。
- 最初:基本的なスケジューリングと議事録記録が動く状態
- 次:フィードバック機能
- 最後:外部システム連携
アジャイル開発では、スプリントごとに発注側がプロダクトを触れるため、「思っていたのと違う」という手戻りを早期に検知できます。さらに、3〜6ヶ月の開発期間中に2〜3回の中間デモを実施し、現場マネージャーからのフィードバックを取り入れながら進めることが、プロジェクト成功を左右します。
テスト・リリースフェーズ
開発が一通り完了したら、標準的なV字モデルに沿ってテストを進めます。テストは次の4段階です。
- 単体テスト(UT):開発会社が主体
- 結合テスト(IT):開発会社が主体
- システムテスト(ST):ここから発注側も積極的に関わる
- 受け入れテスト(UAT):日常的にツールを使うマネージャーと人事担当者が、本番に近い環境でシナリオテストを行う
動作確認は、一連の業務フローをエンドツーエンドで行います。たとえば「新入社員の初回1on1をスケジュールし、アジェンダを作成・共有し、実施後に議事録を登録して人事ダッシュボードに集計されるまで」が、その一例です。
テストを終えたら、本番環境への一括切り替えは避け、段階的に広げることを推奨します。進め方は次の2段階です。
- パイロット運用:特定の部署20名で2週間の運用を行う
- 全社展開:パイロットで問題がなければ、全社に展開する
この手順を踏むと、万が一の障害や操作ミスの影響を最小化できます。リリース直後の2〜4週間は専任のサポート担当を設け、マニュアル・FAQの整備や操作研修を行うことが定着率を左右します。
1on1ツールは、現場マネージャーが月に数回しか操作しないため、「使い方がわからない」という摩擦を取り除く丁寧なオンボーディング設計が不可欠です。
リリース後3ヶ月以内に実施率・記録入力率・ユーザー満足度の3指標を計測し、必要に応じてUI改善や機能追加の優先度を再評価します。
費用相場とコストの内訳

人件費と工数
1on1ツールのカスタム開発では、費用の約80%を人件費が占めます。人件費は「人月単価 × 人数 × 開発期間(月数)」が基本の計算式で、国内の中堅開発会社のエンジニア単価は70万円〜120万円/月が相場です。
たとえば、プロジェクトマネージャー1名・バックエンドエンジニア2名・フロントエンドエンジニア1名・QAエンジニア1名の5名体制で、4ヶ月開発するとします。人月単価を平均90万円とすると、総人件費は「90万円 × 5名 × 4ヶ月 = 1,800万円」となります。そこに諸経費(サーバー構築費・外部API利用料・ライセンス費など)が加わり、2,000万円前後になるケースが典型的です。
開発規模別の目安は次のとおりです。あくまで目安で、要件の複雑さや発注先の規模によって大きく変動します。
- シンプルな1on1ツール:基本的なスケジューリング・議事録機能のみで、300万円〜600万円程度
- 中規模開発:外部システム連携・分析ダッシュボード・通知自動化まで含み、800万円〜2,000万円
- 本格開発:AI機能・多言語対応・モバイルアプリまで含み、2,000万円〜5,000万円以上
オフショア開発(インドやベトナムのエンジニアを活用)を選ぶと、同等のスペックで費用を30〜50%削減できる場合があります。ただし、コミュニケーションコストや品質管理の負担が増すという側面もあります。
初期費用以外のランニングコスト
スクラッチ開発した1on1ツールは、初期開発費用とは別に継続的なランニングコストがかかります。主なコストは次の3つです。
- クラウドインフラ費用:AWS・GCP・Azureなどのクラウドサービスの利用料で、月次で発生する費用
- 保守費用:バグ修正・セキュリティアップデート・OSやミドルウェアのバージョンアップ対応などにかかる費用
- 機能改善費用:リリース後の改善要望や、法改正・セキュリティ要件の変化に対応するための追加開発費用
クラウドインフラ費用は、ユーザー数500〜1000名規模のシステムであれば月額5万円〜20万円程度が相場です。サーバーレスアーキテクチャや従量課金型のサービスを積極的に活用するとコストを最適化できますが、そのためには設計段階からランニングコストを意識したアーキテクチャ選定が重要です。
保守費用は、初期開発費用の15〜20%/年が業界標準です。たとえば初期費用が1,000万円の場合、年間150万円〜200万円の保守費用が継続的にかかることになります。
SaaSと比較した場合の最大のデメリットはこのランニングコストの高さで、5年間の総保有コスト(TCO)で比べると、SaaSのほうがトータルで安くなるケースも少なくありません。なお、社内に継続的な開発・運用を担えるエンジニアがいない場合は、SaaSのカスタマイズで対応できないか再検討することをお勧めします。
見積もりを取る際のポイント

要件明確化と仕様書の準備
開発会社に見積もりを依頼する前に、自社で用意しておくべき資料があります。なかでも最も重要なのは、次の2点です。
- 機能要件書:実装してほしい機能を「誰が・何を・どのように」の形式で一覧にしたもの
- 非機能要件書:性能・可用性・セキュリティ・拡張性に関する要件
機能要件は、具体的なユーザーシナリオ形式で書くと、開発会社が工数を見積もりやすくなります。たとえば「マネージャーが1on1実施3日前にSlackで通知を受け取れる」「部下がアジェンダを追加すると、マネージャーにメール通知が飛ぶ」といった例があります。
機能要件が曖昧なまま見積もりを取ると、会社によって仮定条件が異なり、見積金額に数倍の差が生じることがあります。
非機能要件は、次のように数値で明示すると、インフラ設計や品質保証の範囲が明確になります。
- 「ピーク時に1,000ユーザーが同時接続しても3秒以内にレスポンスを返すこと」
- 「月次メンテナンスを除き99.9%の稼働率を確保すること」
- 「個人情報はAES-256で暗号化して保存すること」
また、現在利用している人事システムのAPI仕様書や現行業務の1on1運用フローチャートがあれば一緒に提供すると、見積もりの精度が格段に上がります。仕様書の準備には社内工数がかかりますが、この投資が後のトラブルを防ぐ最も確実な手段です。
複数社比較と発注先の選び方
見積もりは必ず3社以上から取るのが鉄則です。1社だけでは価格の妥当性が判断できず、提案内容の質も比較できません。
発注先を選ぶ際に重視すべき観点は、次の3点です。
- 開発実績:HRシステムや社内向けツールの開発経験があるか
- プロジェクト管理の透明性:進捗や課題、仕様変更の扱いが見える状態か
- リリース後の保守体制:保守の対応と引き継ぎの体制
HRシステムの開発経験がある会社は、個人情報の取り扱い・アクセス権限設計・監査ログの実装といった、1on1ツール特有の要件をよく理解しています。逆に、ECサイトや予約システムしか手がけたことのない会社では、HRデータのプライバシー設計が後回しになるリスクがあります。
プロジェクト管理の透明性は、「週次の進捗報告の形式」「課題管理に使うツール」「仕様変更時の変更管理プロセス」を確認して見極めます。優良な開発会社は、JiraやNotionなどのプロジェクト管理ツールを使った透明なコミュニケーションを標準で提供しています。
リリース後の保守体制は、契約前に必ず確認しておく必要があります。確認するのは次の3点です。
- バグ発生時のSLA:対応時間の保証
- 機能追加:単価と対応可否
- 保守担当の引き継ぎ体制:担当者が退職した場合のリスク
最安値の会社が最善とは限りません。見積金額の差異がどこから来ているのかを開発会社にヒアリングし、品質・リスク・サポートのバランスで総合判断することが大切です。
注意すべきリスクと対策
1on1ツール開発で特に注意が必要なリスクは、次の3つです。
- スコープクリープ:開発途中に要件が際限なく追加・変更され、コストと納期が膨らむ現象
- 個人情報漏洩:面談の記録、心理状態のサーベイ結果、個人の評価コメントなどの取り扱い
- 現場定着の失敗:利用が根づかず、ツールが使われなくなること
防止策は、契約前に「変更管理手順書」を取り交わすことです。仕様変更が発生した場合には、必ず書面で影響工数を確認してから発注する運用ルールを徹底します。アジャイル開発であっても、スプリント開始前に「このスプリントで対応する機能の範囲」を合意文書にしておくと、後のトラブルを防げます。
こうしたデータは、個人情報保護法の観点から厳重な管理が求められます。そのため、開発契約に「個人情報の取り扱いに関する覚書(DPA)」を盛り込み、保管場所・アクセス権限・暗号化方式・第三者提供の禁止を明文化しておくことが不可欠です。プライバシー設計では、個人情報保護委員会のガイドラインや、自社が属する業界の規制(金融・医療・教育など)への準拠も確認が必要です。
現場定着の失敗リスクには、前述のオンボーディング設計に加えて、「ツールを使うことで上司・部下の双方にメリットがある」という状態を作ることが最大の対策です。「記録が人事評価に直結する」と感じると、部下が本音を書かなくなります。このため、記録の利用目的と閲覧範囲を社内に明確に周知したうえで導入することが、長期的な定着には欠かせません。
まとめ
1on1ツール開発は、「なぜ既存のSaaSでは不十分なのか」という問いから始め、自社固有の課題と要件を丁寧に言語化することが出発点です。全体の工程は、要件定義→設計→開発→テスト→リリースの5フェーズで構成されます。各フェーズの成果物を積み上げることで、後の手戻りと余分なコストを防げます。
費用は開発規模によって300万円〜5,000万円以上と幅広く、初期費用に加えて年間15〜20%の保守費用が継続的にかかることも念頭に置く必要があります。見積もりは3社以上を比較し、HR領域の開発実績・プロジェクト管理の透明性・リリース後の保守体制を総合的に評価して、発注先を決めてください。
1on1は、チームのエンゲージメントを70%規定すると言われるマネジメントの核心です。適切なツールが整備されると、1on1の実施率・質・継続性が劇的に改善し、離職率の低下や組織力の向上につながります。
この記事を参考に、自社の状況に合う開発アプローチを選び、1on1文化を組織の競争力として定着させてください。開発パートナー選びや要件整理で困ったときは、専門のシステム開発会社への相談から始めることをお勧めします。
▼全体ガイドの記事
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
