スクラッチ開発の見積相場や費用/コスト/値段について

スクラッチ開発の費用は、開発規模、機能の複雑さ、開発体制によって、200万円〜5,000万円以上まで変わります。たとえば、小規模なら200万円程度から、大規模な基幹システムでは3,000万円を超えることもあります。費用の幅がどこから生じるかを知っておくと、見積もりの金額を正しく比べられます。

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スクラッチ開発の費用相場

小規模・中規模・大規模のシステムについて、本文の費用目安を3枚のパネルで示した図。
規模の区分ごとに、費用帯が一段ずつ上がります。

規模別の費用目安

規模別の費用は、開発範囲だけでなく期間と体制によっても変わります。比べる区分は次の3つです。

  • 小規模:機能数も利用者も限られた構成
  • 中規模:複数部門での利用や外部利用を含む構成
  • 大規模:複雑な業務ロジックを扱う構成

小規模なシステムの相場は、200万円〜500万円程度です。機能数とユーザー数が限られ、社内向けの簡単な申請フォームや特定業務の管理ツールが該当します。また、開発期間は1〜3ヶ月程度で、エンジニア1〜2名の体制が多くなります。

中規模のシステムは、500万円〜2,000万円程度が目安です。複数部門をまたぐ業務管理、ECサイトのバックエンド、予約管理などが含まれます。

開発期間は3〜6ヶ月が一般的で、4〜8名規模のチームが標準的です。プロジェクトマネージャーのほか、フロントエンドやバックエンド、デザイナーなどで構成します。

大規模な開発は、2,000万円〜5,000万円、またはそれ以上になることがあります。なかでも基幹システムでは、3,000万円を超えることもあります。対象は、基幹システムの刷新や、金融・物流系の複雑な業務ロジックです。

開発期間は6ヶ月〜1年超に及び、10名以上のチームが必要になる場合もあります。代表例は、大手製造業の生産管理や、流通業界の在庫・受発注の一元管理です。こうした開発は、数千万円規模の開発費を要することが一般的です。

費用に影響する要因

スクラッチ開発の見積もりは、機能、体制、進め方の組み合わせで決まります。費用を左右する要因は次の3つです。

  • 機能数と複雑性:実装と連携の範囲が工数を左右する
  • 開発会社の拠点:単価と連携コストが変わる
  • 開発手法:変更への柔軟性と見積もり精度に関わる

機能数が多いほど、設計・実装・テストの工数が増え、費用も上がります。さらに、外部APIとの連携(決済サービス、物流システム、会計ソフトとのデータ連携など)がある場合は、追加工数も発生します。

東京・大阪など都市部の開発会社は、人件費が高くなりやすい傾向があります。なお、エンジニア1名あたりの月単価は、80万円〜120万円が平均的とされています。

地方の開発会社やオフショア開発を使えば、同じ工数でも30〜50%削減できる場合があります。オフショア開発の対象地域には、ベトナム、インド、フィリピンなどがあります。ただし、コミュニケーションコストと品質管理のリスクも考慮が必要です。

ウォーターフォール型は、初期に仕様を固めるため見積もり精度が高い方式です。一方で、仕様変更が発生すると、追加費用が膨らみがちです。

アジャイル開発は変化に柔軟ですが、総費用を読みづらい特徴があります。こうした違いを踏まえて、プロジェクトの性質に合う開発手法を選ぶことが、コストを抑えることにつながります。

ポイント

同じ規模でも、機能の複雑さや開発体制、拠点によって費用は動きます。見積もりの金額差は、規模の区分と要因を重ねて読むと理由が見えてきます。

スクラッチ開発のコスト内訳

中央の人月計算式に、人件費の比率と人月計算のラベルを注釈線で結んだ図。
単価・人数・期間の掛け合わせが人件費の見積もりを形作ります。

人件費と工数の考え方

人件費と工数を確認すると、開発費の骨格と、見積もりの妥当性を判断できます。見る項目は次の3つです。

  • 人件費の比率:開発費の大半を占める
  • 人月計算:単価、人数、期間を掛け合わせる
  • 工程配分:設計・実装・テストなどへ工数を割り振る

人件費は全体費用の70〜80%を占めるとされています。その計算の基本式は、「エンジニアの月単価 × 人数 × 開発期間(月数)」です。

この計算単位を「人月(にんげつ)」と呼びます。たとえば、月単価100万円のエンジニア3名が4ヶ月開発すると、人件費は100万円 × 3名 × 4ヶ月 = 1,200万円です。

月単価はスキルレベルや役割で変わります。プロジェクトマネージャーやアーキテクト(技術設計者)は120万円〜200万円程度で、バックエンド・フロントエンドの一般エンジニアは70万円〜120万円程度です。

テスト担当者やドキュメント整備担当者は50万円〜80万円程度です。役割ごとに単価が違うため、チーム構成と各人材の単価を確認することが、妥当性判断の第一歩です。

要件定義・基本設計は全体工数の15〜20%が一般的です。詳細設計・実装は50〜60%、テスト・検収は20〜25%が目安です。また、移行・リリース作業には5〜10%が充てられます。

要件定義や設計、テストにも費用がかかるため、実装だけで予算を組むと、費用の見落としにつながります。

インフラ・ツール費用

インフラ費用は、初期費用だけで判断せず、運用中の支払いまで含めて見積もります。確認する項目は次の3つです。

  • インフラ:サーバー・ネットワーク・クラウドの利用料
  • 外部サービス:SaaS・API・開発ツールの利用料
  • 安全対策:脆弱性診断・SSL・WAFの費用

インフラ費用は全体の10〜15%程度を占めます。AWS、Google Cloud、Azureなどのクラウドが主流です。物理サーバーの初期購入費を抑えられる一方、月額利用料は継続します。

中規模Webシステムのクラウドインフラは、月額3万円〜30万円程度が目安です。なお、費用はシステム規模や処理量で変わります。

データベースのライセンス料も積み上がります。さらに、特定の機能を実現するために使う外部サービスには、メール配信やSMS認証、地図APIや決済処理があります。

たとえば、JiraやBacklogなどのプロジェクト管理、GitHub・GitLabのコード管理、Slackなどのコミュニケーションツールが対象になります。

個人情報を扱う場合は、脆弱性診断に50万円〜200万円程度が別途必要になることがあります。加えて、SSL証明書の取得・更新やWAF導入の費用も計上が必要です。

保守・運用コスト

運用後の費用は、保守の範囲と追加改修の有無で変わります。長期の費用は次の3点で見積もります。

  • 保守費:開発費に対する年間比率
  • 運用対応:障害・更新・バックアップへの対応範囲
  • 機能追加:成長に伴う改修費とTCO

年間保守費用は、開発費用の15〜25%程度が目安です。たとえば1,000万円で構築した場合、年間150万円〜250万円が継続的に発生し、月額では10万円〜20万円強に相当します。

保守・運用には、バグ修正、障害対応、セキュリティパッチの適用が含まれます。OSやミドルウェアの更新、定期的なデータバックアップも対象です。これらは予防保守と呼ばれ、安定稼働に欠かせません。

24時間365日対応にすると、月額30万円〜100万円以上になることがあります。なお、費用は対応内容と範囲で変わります。

成長に伴う機能追加や改修も、保守予算に含めて考えます。小規模改修は50万円〜200万円、中規模追加は200万円〜500万円程度が一般的です。初期費用だけでなく、5年・10年のTCO(総保有コスト)で全体を見ることが大切です。

ポイント

人件費、インフラ、保守の費用を分けて見ると、見積もりの妥当性を判断できます。特に保守費は、5年・10年のTCOで比べると長期の負担が見えてきます。

費用を抑えるためのポイント

必須機能・将来対応・既存活用を、説明付きの3枚のチェックカードで整理した図。
最初に作る範囲と後から足す範囲を分けて考えられます。

要件定義での無駄削減

要件定義で初期リリースの範囲と将来対応を分けると、費用の削減につながります。分ける際の観点は次の3つです。

  • 必須機能:初期リリースに欠かせない機能
  • 将来対応:後から追加できる機能
  • 既存活用:OSSやクラウドで実装を減らす方法

要件定義で「あれもこれも」と仕様に加えると、開発工数は膨れ上がります。そこで、必須機能と、あったら便利な機能を明確に分けることが第一歩です。実際に、機能を絞るだけで、開発費用を20〜30%削減できたケースもあります。

初期リリースは、最低限の機能に集中します。その機能をMVP(Minimum Viable Product)と呼びます。

次に、ユーザーのフィードバックをもとに、機能を段階的に追加します。この進め方は、費用を抑えることと品質を高めることの両方に有効です。

既存のOSSライブラリやクラウドサービスを使うと、ゼロからの実装を減らせます。その際は、OSSで代替できる機能や、設計でコストを下げられる要件を、開発会社と一緒に確認します。また、開発会社に早期から参画してもらうと、技術面の助言を得られます。

要件定義段階のコンサルティング費用に数十万円を投じても、開発費を数百万円削減できることがあります。そのため、要件定義への投資は費用対効果が高いといえます。

開発会社の選び方と相見積もり

相見積もりは、価格だけでなく、実績や保守体制まで比べるために使います。選ぶ際に見る観点は次の3つです。

  • 見積もり比較:複数社の金額と内訳を並べて見る
  • 開発実績:自社業界での経験の有無
  • 保守体制:長期の支援と引き継ぎの体制

同じ要件でも、開発会社によって見積もりが2倍以上異なることがあります。そのため、3〜5社から取ると、市場相場と費用の妥当性を把握できます。

ただし、価格だけで選ぶのは危険です。最安値でも品質が低く、バグ修正に追加の費用と時間がかかることがあります。

自社の業界・業種での開発実績を重視すると、落とし穴を避けやすくなります。また、同様のシステムの経験があれば、効率的な開発も期待できます。

開発後の保守・運用まで対応できるかも、確認が必要です。開発と保守を別の会社に分けると、引き継ぎでトラブルが起きることがあります。そのため、長期的なパートナーシップを築ける会社を選ぶことが望ましいです。

オフショア開発は、コスト削減の選択肢の一つです。ベトナムやインドでは、国内開発より40〜60%削減できる場合があります。

一方で、言語、時差、文化の違いから、コミュニケーションコストが増える課題もあります。品質管理の難しさもあるため、国内ブリッジSE(架け橋役)を置く体制が有効です。

ポイント

初期リリースの範囲を絞り、既存のOSSやクラウドを活用します。そのうえで、相見積もりで相場と実績を比べると、費用を抑える余地が見えてきます。

見積もりの取り方と注意点

仕様書の準備方法

仕様書は、各社が同じ前提で見積もるための資料です。見積もりの精度に関わる項目は次の3つです。

  • 目的と機能:背景・優先度・必要機能
  • 非機能と連携:ユーザー数・セキュリティ・既存システム
  • 計画と納品:開発日程・予算・納品物

精度の高い見積もりには、発注前に仕様書(RFP:Request for Proposal)を用意することが大切です。

同時接続数などの非機能要件も必要です。法令対応の要件も、あわせて含めます。

希望する開発スケジュールと予算感も明記します。納品物については、ソースコード、ドキュメント、テスト仕様書などの範囲を決めておきます。

仕様書の完成度が高いほど、見積もり精度は上がります。要件が曖昧だと、開発会社がリスクのバッファを設けるため、費用が高くなりやすいです。

同じ仕様書を複数社に渡すと、回答を公平に比較できます。作成が難しい場合は、開発会社へ要件定義支援を有償で依頼できます。その費用は10万円〜50万円程度が目安です。

機能が固まらない段階では、必須機能と将来検討する機能を分けて記載します。画面遷移図、ワイヤーフレーム、業務フロー図を添付すると、精度が高まります。

資料が揃っていなくても、まず概算見積もりを依頼できます。また、複数社と対話しながら要件を深める方法も有効です。

見積書のチェックポイント

見積書は、金額の合計だけでなく、追加費用が発生する条件まで確認します。確認する項目は次の3つです。

  • 内訳:工程・機能ごとの費用
  • 前提条件:見積もり外と仕様変更の扱い
  • 支払い条件:成果物と支払い時期の対応

まず、見積書は内訳が十分に細分化されているかを確認します。「システム開発一式:1,000万円」のような一括表示は、判断しにくい形式です。要件定義からリリース対応までの工程ごとに分かれているものが望ましいです。

機能ごとの費用も明確なら、高額項目の根拠を確認できます。その結果、コスト削減の交渉もしやすくなります。

前提条件では、仕様変更時の別途費用、インフラ費用、テストデータ準備の担当を確認します。見積もりの前提が想定と違うと、追加費用が発生するリスクがあります。

そのため、追加1人日あたり5万円など、仕様変更時の算出基準も確認します。また、バグ修正の保証期間も、契約前に明確にしておく必要があります。

支払いは、着手金・中間払い・完了時払いに分けるのが一般的です。割合は会社によって異なり、着手金50%・完了時50%の条件もあれば、着手金30%・中間払い40%・完了時30%の3段階の条件もあります。破綻時のリスクを抑えるため、成果物の完成度と支払いを連動させる必要があります。

見積書の有効期限は、通常30〜90日です。

ポイント

見積書は、内訳、前提条件、支払い条件を合わせて読むことが大切です。仕様書で前提をそろえてから相見積もりを取ると、金額を公平に比べられます。

まとめ

スクラッチ開発の相場は、規模によって200万円〜5,000万円以上まで変わります。小規模は200万円〜500万円、中規模は500万円〜2,000万円、大規模は2,000万円〜5,000万円以上です。

費用の70〜80%は人件費で、月単価80万円〜120万円と工数(人月)が開発費の骨格です。コストを管理するには、要件定義で優先順位を決め、初期リリースの範囲を絞ることが大切です。

3〜5社から相見積もりを取り、価格のほか、実績、体制、保守対応力を総合的に評価します。見積書の内訳、前提条件、支払い条件も、契約前に確認します。

スクラッチ開発は初期費用が高くなりがちですが、自社業務に合うシステムを構築できます。さらに、年間15〜25%の保守・運用費を含め、長期のTCO(総保有コスト)を試算します。

パッケージ開発やノーコード開発とも比較し、適切なパートナー企業を選びます。そのうえで、透明性のある見積もりで進めれば、競争力強化への投資につなげられます。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。