本記事では、スクラッチ開発の見積相場や費用・コスト・値段について、要点を整理して解説します。結論として、スクラッチ開発の費用相場は、小規模システムで200万円〜500万円、中規模システムで500万円〜2,000万円、大規模システムでは2,000万円〜5,000万円以上と、開発規模によって大きく異なります。費用の70〜80%は人件費が占めており、エンジニアの月単価80万円〜120万円を基準に、工数(人月)を掛け合わせた金額が開発費の骨格を形成します。
- スクラッチ開発の費用相場
- スクラッチ開発のコスト内訳
- 費用を抑えるためのポイント
- 見積もりの取り方と注意点
スクラッチ開発とは、既存のパッケージソフトやフレームワークに依存せず、ゼロから独自のシステムやアプリケーションを構築する開発手法です。自社業務にぴったりと合わせたシステムを作れる反面、開発費用が高額になりやすく、「実際いくらかかるのか」と不安を感じる担当者の方は少なくありません。本記事では、スクラッチ開発の費用相場から内訳、コストを抑えるポイント、見積もりの取り方まで、具体的な数字を交えながら詳しく解説します。
スクラッチ開発の費用は、小規模なWebアプリケーションで200万円程度から、大規模な基幹システムでは3,000万円を超えることもあります。この幅の大きさは、開発規模・機能数・開発期間・利用するエンジニアのスキルレベルなど、さまざまな要因が複合的に影響するためです。費用を正しく把握するためには、まず相場感を理解したうえで、自社の要件と照らし合わせることが重要です。
本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。
▼全体ガイドの記事
・スクラッチ開発の完全ガイド
スクラッチ開発の費用相場

規模別の費用目安
スクラッチ開発の費用は、システムの規模によって大きく異なります。一般的な目安として、小規模なシステム(機能数が少なく、ユーザー数も限定的なもの)は200万円〜500万円程度が相場です。たとえば、社内向けの簡単な申請フォームシステムや、特定業務の効率化を目的とした管理ツールがこの規模に該当します。開発期間は1〜3ヶ月程度となることが多く、エンジニア1〜2名体制で進められるケースがほとんどです。
中規模のシステム開発では、500万円〜2,000万円程度の費用が目安となります。例えば、複数の部門をまたぐ業務管理システムや、ECサイトのバックエンド構築、予約管理システムなどがこの規模に含まれます。開発期間は3〜6ヶ月が一般的で、プロジェクトマネージャー・フロントエンドエンジニア・バックエンドエンジニア・デザイナーなど、4〜8名規模のチーム体制が標準的です。
大規模な開発、たとえば基幹システムの刷新や金融・物流系の複雑なビジネスロジックを実装するシステムでは、2,000万円〜5,000万円、あるいはそれ以上の費用がかかることも珍しくありません。開発期間は6ヶ月〜1年超に及ぶことが多く、10名以上のチームが必要になる場合もあります。実際、大手製造業が導入する生産管理システムや、流通業界向けの在庫・受発注一元管理システムなどは、数千万円規模の開発費を要するプロジェクトとなることが一般的です。
費用に影響する要因
スクラッチ開発の費用に最も大きな影響を与えるのは、「機能数と複雑性」です。実装する機能が多ければ多いほど、設計・実装・テストにかかる工数が増え、費用は比例して上昇します。また、外部APIとの連携(決済サービス・物流システム・会計ソフトとのデータ連携など)が必要な場合は、追加の設計・実装・テスト工数が発生するため、費用増加の大きな要因となります。
開発会社の拠点もコストに影響します。東京・大阪など都市部の開発会社はエンジニアの人件費が高く、エンジニア1名あたりの月単価は80万円〜120万円が平均的とされています。一方で、地方の開発会社やオフショア開発(ベトナム・インド・フィリピンなど)を活用すれば、同じ工数でも費用を30〜50%程度削減できるケースがあります。ただし、コミュニケーションコストや品質管理のリスクも考慮する必要があります。
さらに、開発手法によっても費用は変わります。ウォーターフォール型開発は初期に仕様を固めて進めるため見積もり精度が高い反面、仕様変更が発生すると追加費用がかさむ傾向があります。アジャイル開発は変化に柔軟に対応できる一方、総費用が読みにくいという特徴があります。自社のプロジェクトの性質に合わせて開発手法を選択することが、コスト最適化につながります。
スクラッチ開発のコスト内訳

人件費と工数の考え方
スクラッチ開発において、人件費は全体費用の70〜80%を占めるとされています。開発費用の計算の基本は「エンジニアの月単価 × 人数 × 開発期間(月数)」であり、これを「人月(にんげつ)」という単位で見積もります。たとえば、月単価100万円のエンジニアが3名で4ヶ月間開発を行う場合、人件費は100万円 × 3名 × 4ヶ月 = 1,200万円となります。
エンジニアの月単価はスキルレベルや役割によって大きく異なります。プロジェクトマネージャーやアーキテクト(技術設計者)は120万円〜200万円程度と高単価になりやすく、バックエンド・フロントエンドの一般エンジニアは70万円〜120万円程度が目安です。テスト担当者やドキュメント整備担当者は50万円〜80万円程度と比較的低単価となります。開発チームの構成と各人材の単価を確認することが、費用の妥当性を判断する第一歩です。
また、開発工程ごとの工数配分も理解しておくと便利です。一般的に、要件定義・基本設計フェーズで全体工数の15〜20%、詳細設計・実装フェーズで50〜60%、テスト・検収フェーズで20〜25%、そして移行・リリース作業に5〜10%が充てられます。実装フェーズだけでなく、要件定義や設計、テストにも相応のコストがかかることを忘れずに予算計画を立てることが重要です。
インフラ・ツール費用
スクラッチ開発では、人件費以外にもインフラや開発ツールの費用が発生します。インフラ費用は全体の10〜15%程度を占め、サーバー費用・ネットワーク費用・クラウドサービス利用料などが含まれます。近年はAWSやGoogle Cloud、Azureといったクラウドサービスの活用が主流となっており、初期の物理サーバー購入コストを削減できる反面、月額の利用料が継続的に発生する点を考慮する必要があります。
クラウドインフラの月額費用は、システムの規模や処理量によって大きく変わりますが、中規模のWebシステムであれば月額3万円〜30万円程度が目安となります。また、データベースのライセンスや、特定の機能を実現するための外部SaaS連携(メール配信サービス・SMS認証・地図API・決済処理など)の利用料も積み上がると無視できない金額になります。開発ツールとしては、プロジェクト管理ツール(JiraやBacklogなど)、コード管理(GitHub・GitLab)、コミュニケーションツール(Slackなど)の費用も見積もりに含めることが望ましいです。
セキュリティ対策費用も忘れてはなりません。個人情報を扱うシステムの場合、脆弱性診断(セキュリティ診断)の費用として50万円〜200万円程度が別途必要になることがあります。また、SSL証明書の取得・更新費用、WAF(Webアプリケーションファイアウォール)の導入費用なども計上しておく必要があります。
保守・運用コスト
スクラッチ開発の費用を考えるうえで見落としがちなのが、リリース後の保守・運用コストです。一般的に、年間の保守費用は開発費用の15〜25%程度が目安とされています。たとえば、1,000万円かけて構築したシステムの場合、年間150万円〜250万円の保守費用が継続的に発生する計算です。月額換算では10万円〜20万円強となります。
保守・運用の内容としては、バグ修正・障害対応・セキュリティパッチの適用・OSやミドルウェアのバージョンアップ対応・定期的なデータバックアップなどが含まれます。これらは「予防保守」と呼ばれるもので、システムを安定稼働させるために欠かせない作業です。対応内容や範囲によって月額費用は変動しますが、24時間365日対応のサポート体制を求める場合は、月額30万円〜100万円以上の費用がかかることもあります。
また、ビジネスの成長に合わせて機能追加・改修が必要になることも多く、その費用も保守予算の一部として見込んでおくべきです。機能追加の規模にもよりますが、小規模な改修で50万円〜200万円、中規模の機能追加で200万円〜500万円程度が一般的な相場です。スクラッチ開発を採用する場合は、初期の開発費用だけでなく、5年・10年という長期的な総保有コスト(TCO)を視野に入れて判断することが重要です。
費用を抑えるためのポイント

要件定義での無駄削減
スクラッチ開発のコストを効果的に抑えるには、要件定義の段階での精査が最も重要です。「あれもこれも実装したい」という発注者側の欲求をそのまま仕様に反映させてしまうと、開発工数は際限なく膨れ上がります。まずは「必須機能」と「あったら便利な機能(将来対応でよいもの)」を明確に分類することが、コスト削減の第一歩です。
実際に、要件定義の段階で機能を絞り込むだけで、開発費用を20〜30%削減できたケースは珍しくありません。初期リリースでは最低限の機能(MVP:Minimum Viable Product)に集中し、ユーザーからのフィードバックをもとに段階的に機能を追加していくアプローチは、費用最適化と品質向上の両面で有効です。また、既存のOSSライブラリやクラウドサービスを積極的に活用することで、ゼロから実装する必要がある機能を減らし、開発工数を圧縮することも可能です。
要件定義を社内だけで完結させようとせず、開発会社に早い段階から参画してもらうことも効果的です。技術的な観点から「この機能はOSSで代替できる」「この要件は設計の工夫で実装コストを下げられる」といったアドバイスをもらうことで、無駄な工数を削減できます。要件定義段階のコンサルティング費用として数十万円を投資しても、開発費全体を数百万円削減できることがあるため、費用対効果は非常に高いといえます。
開発会社の選び方と相見積もり
費用を適正に抑えるためには、複数の開発会社から見積もりを取る「相見積もり」が非常に効果的です。同じ要件でも、開発会社によって見積もり金額が2倍以上異なることは珍しくありません。3〜5社程度から見積もりを取ることで、市場相場を把握し、費用の妥当性を判断しやすくなります。ただし、価格だけで判断するのは危険です。最安値の業者を選んだ結果、品質が低くバグだらけのシステムが納品され、修正対応に多大なコストと時間を要した、という失敗事例も多数報告されています。
開発会社を選ぶ際は、自社の業界・業種での開発実績を重視することをお勧めします。同様のシステム開発の経験がある会社は、よくある落とし穴を知っており、効率的な開発が期待できます。また、開発後の保守・運用にも対応しているかどうかも重要なポイントです。開発フェーズを別の会社に依頼し、保守・運用フェーズで引き継ぎトラブルが発生するケースを避けるためにも、長期的なパートナーシップが築ける会社を選ぶことが望ましいです。
オフショア開発の活用も、コスト削減の選択肢のひとつです。ベトナムやインドなどのオフショア開発では、国内開発と比較して費用を40〜60%程度削減できる場合があります。一方で、言語の壁・時差・文化的な違いによるコミュニケーションコストの増加や、品質管理の難しさという課題もあります。オフショア開発を検討する場合は、国内ブリッジSE(架け橋役)を置いた体制で進めることがリスク低減に有効です。
見積もりの取り方と注意点

仕様書の準備方法
精度の高い見積もりを取るためには、発注前に仕様書(RFP:Request for Proposal)を作成することが重要です。仕様書に含めるべき主な内容として、システムの目的・背景・課題、必要な機能の一覧と優先度、想定ユーザー数・同時接続数などの非機能要件、既存システムとの連携要件、セキュリティ・法令対応の要件、希望する開発スケジュールと予算感、そして納品物の範囲(ソースコード・ドキュメント・テスト仕様書など)が挙げられます。
仕様書の完成度が高いほど、見積もりの精度は上がります。逆に、要件が曖昧なまま見積もりを依頼すると、開発会社は想定外のリスクに対してバッファを多く設けるため、費用が高めに算出される傾向があります。また、複数社に同じ仕様書を渡して見積もりを依頼することで、各社の回答を公平に比較できます。仕様書の作成が難しい場合は、開発会社に要件定義支援を有償で依頼するのもひとつの方法です。費用は10万円〜50万円程度が目安です。
機能の詳細が固まっていない段階では、「必須機能」と「将来的に検討する機能」を分けて記載することで、見積もりの分水嶺を可視化できます。開発会社との認識齟齬を防ぐために、画面遷移図・ワイヤーフレーム・業務フロー図なども添付できると、さらに精度の高い見積もりが期待できます。これらの資料がない段階でも、まずは概算見積もりを依頼し、複数の開発会社と対話しながら要件を深めていくアプローチも有効です。
見積書のチェックポイント
開発会社から見積書が届いたら、いくつかの重要なポイントを確認することが必要です。まず最初に確認すべきは、見積書の内訳が十分に細分化されているかどうかです。「システム開発一式:1,000万円」といった一括表示ではなく、要件定義・設計・実装・テスト・リリース対応といった工程ごと、さらには機能ごとに費用が内訳されているものが望ましいです。内訳が明確であれば、高額な項目について根拠を問いやすく、コスト削減の交渉もしやすくなります。
次に確認すべきは、前提条件と見積もり外の事項です。多くの見積書には「仕様変更が発生した場合は別途費用が発生する」「インフラ費用は含まない」「テストデータの準備は発注者が行う」といった前提条件が記載されています。これらの前提が自社の想定と異なる場合、追加費用が発生するリスクがあります。特に「仕様変更時の対応費用の算出基準(例:追加1人日あたり5万円)」や「バグ修正の保証期間」については、契約前に明確にしておくことをお勧めします。
また、支払い条件についても確認が必要です。スクラッチ開発では、着手金・中間払い・完了時払いという形で分割払いが一般的ですが、その割合は会社によって異なります。「着手金50%・完了時50%」という条件が多いですが、「着手金30%・中間払い40%・完了時30%」のように3段階で支払う場合もあります。万が一プロジェクトが途中で破綻した場合のリスクを軽減するためにも、支払い条件はできるだけ成果物の完成度と連動した形にすることが重要です。見積書の有効期限(通常30〜90日)も確認しておきましょう。
まとめ

スクラッチ開発の費用相場は、小規模システムで200万円〜500万円、中規模システムで500万円〜2,000万円、大規模システムでは2,000万円〜5,000万円以上と、開発規模によって大きく異なります。費用の70〜80%は人件費が占めており、エンジニアの月単価80万円〜120万円を基準に、工数(人月)を掛け合わせた金額が開発費の骨格を形成します。
コストを適正に管理するためには、要件定義の段階で機能の優先順位を明確にし、初期リリース範囲を絞り込むことが最も効果的なアプローチです。また、3〜5社から相見積もりを取得し、価格だけでなく開発実績・体制・保守対応力を総合的に評価して開発会社を選ぶことが成功の鍵となります。見積書を受け取った際には、内訳の明確さ・前提条件・支払い条件を丁寧に確認し、認識の齟齬がないよう契約前にすり合わせを行うことが重要です。
スクラッチ開発は、初期費用こそ高額になりがちですが、自社業務に完全にフィットしたシステムを構築できるというメリットがあります。リリース後の保守・運用コスト(年間で開発費の15〜25%程度)も含めた長期的なTCO(総保有コスト)を試算したうえで、パッケージ開発やノーコード開発などの選択肢とも比較検討することをお勧めします。適切なパートナー企業を選び、透明性のある見積もりをもとに進めることで、スクラッチ開発は自社の競争力強化に大きく貢献する投資となるでしょう。
▼全体ガイドの記事
・スクラッチ開発の完全ガイド
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
