SE・SIerの運用保守費用は、月額5万〜15万円から100万円以上まで幅があります。金額を左右するのは、人員工数、多重下請け構造、SLAやシステムの複雑さです。
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SE・SIerの運用保守費用が決まる仕組み

SE・SIerの運用保守費用は、システム規模そのものより、割り当てる人員工数で決まります。SIer業界では人月単価を基準に、エンジニア1人が1か月稼働した費用を積み上げます。費用が妥当かを見極めるには、人月の仕組みと多重下請け構造を理解することが出発点です。
人月単価という費用の基本単位
月額の保守費用が適正かを判断するには、人月単価と契約工数を確かめます。
- 人月の定義:1人が1か月(約20営業日・160時間前後)稼働する単位です。
- 初級・中堅SE:スキルレベルで単価が異なり、月60万〜100万円程度です。
- 上級SE・アーキテクト:月120万〜160万円程度の幅で設定されます。
契約では、「保守担当0.5人月を月額40万円で提供」のように示すのが一般的です。運用保守は常時フル稼働ではないため、0.2人月や0.5人月の契約も多くなります。
月額の保守費用を評価するには、まず金額が何人月分にあたるかを逆算します。一例として、月額50万円で上級SEを名目上アサインしていても、実稼働が月10時間程度なら割高の可能性があります。
多重下請け構造が単価に与える影響
発注先の層を確認すると、人月単価に含まれる中間コストを見極められます。
- 元請け:一次請けとして案件を受注し、下位の会社へ再委託する立場です。
- 二次請け・三次請け:上位の会社から案件を受け、実働を担うことがあります。
- 直接発注:実働部隊に近い会社へ頼むと、中間マージンを削減できます。
元請けが提示する単価には、各層の中間マージンが積み上がります。その結果、発注側の金額が実働エンジニアの単価の1.5倍から2倍以上になることもあります。たとえば、実働エンジニアの原価が月50万円でも、二次請けで65万円、元請けで90万円になる例があります。
大手SIerは品質管理体制やバックアップ要員が手厚い一方、マージンも上乗せされます。直接発注は安くなる反面、要員が薄くなって属人化のリスクが高まります。そこで、支払額のうち、実作業に充てられた部分と中間コストの割合を確かめます。
運用保守の費用相場と内訳

運用保守費用は、システム規模、業務の重要度、要求されるサービスレベルによって変わります。一般的には、年間の保守費用が初期開発費用の5%〜15%程度に設定されます。
たとえば開発費用が2,000万円なら、年間100万〜300万円、月額8万〜25万円前後が一つの相場です。ただし、24時間365日の有人監視や厳格なSLAを求める場合は、この相場を大きく上回ります。
規模別・契約形態別の月額目安
規模と契約形態に分けて見ると、月額に幅が出る理由と、費用が変動する理由をつかめます。
- 小規模:軽微な保守や障害時のスポット対応が中心です。
- 中規模:定期監視やバックアップ確認、問い合わせ対応を含みます。
- 大規模:専任SEを常駐または近い形で配置します。
- 月額固定型:費用を読みやすい一方、稼働が少ない月も定額です。
- 従量型:作業量に応じますが、障害集中時は費用が増えます。
小規模な業務システムやWebシステムの月額は、5万〜15万円程度です。中規模の基幹システムの月額は、30万〜80万円程度が目安です。さらに、大規模な基幹システムの月額は100万円以上で、年間1,000万円を超えることもあります。
従量型は、月額固定型より安く済む場合があります。また、基本料金に一定時間を含め、超過分だけ精算するハイブリッド型も現実的です。
ライフサイクル全体に占める保守費用の割合
長期のTCOで見ると、保守費用は開発後の大きな支出になります。
- 保守フェーズ:ソフトウェアのライフサイクル費用で大きな割合を占めます。
- IT予算:既存システムの運用に多くの予算が充てられています。
- 調査・分析:保守作業で最も時間を要し、費用に影響します。
ライフサイクル費用の40%〜80%が保守に充てられ、平均では約60%に達します。開発費を上回る支出が続くこともあります。さらに、経済産業省の調査では、IT予算のうち従来システムの運用と新規構築の比率は、全産業平均で約2対1です。
調査・分析は全作業時間の約30%を占めます。原因特定やコードの読み解きに工数がかかるため、文書が不足しているシステムほど割高になります。そこで、ドキュメント整備や設計の標準化に投資しておくと、長期的な保守費用の圧縮につながります。
保守費用を左右する変動要因

同じ規模のシステムでも、保守費用に2倍3倍の差が生じることがあります。差を生むのは、サービスレベル、システムの複雑さ、文書の整備状況です。見積もりの前に自社システムの位置づけを把握しておくと、金額の妥当性を判断しやすくなります。
SLA水準と対応時間帯
対応時間と保証水準を整理すると、SLAに応じて必要な人員体制と費用を見積もれます。
- 平日日中対応:9時〜18時を基本とする体制です。
- 24時間365日対応:夜間や休日も即応できる交代制が必要です。
- 自治体水準:稼働率や通知、応答時間など複数の基準を設けます。
平日日中対応と24時間365日の有人対応では、必要な人員体制と費用が大きく異なります。
稼働率99.9%以上、重大障害の30分以内の通知、数時間以内の復旧を求めるSLAは厳格です。一方、自治体の調達ガイドラインでは、サーバ・アプリの稼働率を99.8%以上と示しています。また、基準応答時間3秒以内の達成率93%や、重大障害は年2回までという水準もあります。
さらに、障害通知の遵守率は100%で発生後30分以内、電話応答率は97%以上で平均20秒以内です。過剰なSLAは不要な費用を生み、緩すぎるSLAは復旧遅延で事業に影響します。費用と必要な水準のバランスを取ることが、適正なコスト設計の核心です。
システムの複雑さと習熟度・ドキュメント
システムの理解度と文書の有無は、調査工数と改修難易度を左右します。
- 古く複雑なシステム:習熟と障害調査に多くの工数が必要です。
- 整備された文書:担当者が変わっても短期間で引き継げます。
- 改修難易度:改造密度、改造分散度、改造母体錬度で評価します。
古いシステムで開発当初の仕様を知る人がいないと、保守費用は跳ね上がります。特に引き継ぎ直後は、担当SEの学習と障害調査に工数がかかり、負担がさらに増えます。逆に、設計書、運用手順書、障害対応履歴があれば、担当者交代後も費用を抑えられます。
改造密度は10Kステップあたりの改造量、改造分散度は改造箇所の数を指します。また、改造母体錬度は担当者の経験年数を指し、この3つの観点から改修工数を定量的に算出します。特に、改造箇所が広範囲に分散したり、古いコードに手を入れたりすると工数が膨らみます。
保守費用の妥当性を見抜く監査の視点
既存ベンダーと新規ベンダーの費用を正しく比べるには、相見積もりに加えて実作業の中身を確かめる必要があります。理由は、既存ベンダーがシステムを熟知している一方、新規ベンダーは学習コストを上乗せするためです。そこで、ITデューデリジェンスで実際の作業内容を洗い出しておくと、価格交渉の前に話を進めやすくなります。
作業報告書とログによる実稼働の割り出し
報告書とシステムログを突き合わせると、契約上の工数と実稼働を比較できます。
- 作業報告書:作業項目と所要時間を集計した資料です。
- システムログ:作業の実施痕跡と時刻が確認できる記録です。
- 実稼働との乖離:契約人月と実績の差で、交渉材料になります。
たとえば、月額50万円で0.5人月の契約でも、実稼働が月20時間程度なら割高の材料になります。ログイン履歴、バッチ実行記録、設定変更のタイムスタンプを報告書と照合すると、請求は0.5人月でも作業痕跡が月数時間しかないという食い違いが明らかになります。そのため、客観的な事実は相見積もりの比較より強い材料になり、データに基づく費用交渉につながります。
移行コストを含めた5年TCOでの比較
ベンダーを替えるときは、月額の差だけでなく移行後の総費用を比べます。
- 引き継ぎ:新ベンダーがシステムを理解するための工数です。
- 環境・データ移行:切り替え時の初期費用が発生します。
- 5年TCO:移行費を含む中長期の総額で判断します。
たとえば、新ベンダーの月額が5万円安くても、移行に300万〜500万円かかる場合があります。その差額の回収に数年を要し、5年間のTCOでは現行より高くなることもあります。
新担当者がキャッチアップするには、おおむね1.0人月程度の引き継ぎ工数が必要です。引き継ぎ期間には、現行担当者が週2日程度サポートに入る体制も効果的です。
その期間は一時的に二重コストがかかるため、長期的なメリットと移行費を試算しておきます。場合によっては、既存ベンダーに監査結果を示して条件を見直すほうが合理的です。
保守費用を適正化する実践ポイント
保守費用は、契約の組み方と交渉方法を工夫し、サービスレベルとの対応を明確にすることで適正化できます。交渉の鍵は、値下げを求めるよりも、客観的な根拠を示すことです。
SLAとペナルティ条項による費用対効果の担保
SLAと未達時の取り決めを契約に入れると、支払額に見合う品質を確保できます。
- SLA:稼働率や復旧時間など、達成すべき品質の基準です。
- ペナルティ:未達時の扱いを定める条項です。
- 競争環境:複数候補を競わせ、条件改善を促す仕組みです。
稼働率や復旧時間が未達なら、当月の保守費用の一定割合を減額する方法があります。一方、目標を超えた場合のインセンティブ報酬を組み合わせると、品質向上の動機になります。
他社の契約事例や複数候補を示すことが、厳しめの条項を受け入れてもらう材料です。また、既存ベンダーを次回RFP(提案依頼)に参加させると、競争原理が働きます。
既存ベンダーが30%〜40%の確率で条件を改善して継続するというデータもあります。このため、乗り換えを前提にしなくても、複数の候補を比べられる状態をつくること自体が適正化の手段になります。
自動化とドキュメント整備による工数削減
人件費が中心の保守では、定型作業の自動化と文書整備が工数削減につながります。
- 定型作業の自動化:監視、ログ収集、バックアップを機械で処理する作業です。
- AIOps:生成AIでアラートの一次切り分けを担う仕組みです。
- 文書整備:調査時間と担当者交代時の負担を抑えます。
人が張り付く時間を減らすには、監視やバックアップなどの定型作業から手を付けるのが近道です。AIOpsは、いきなり全工程を刷新すると現場が混乱しやすいため、アラートの自動仕分けのような小さな業務から試すのが現実的です。
設計書や運用手順書があれば、保守作業の約30%を占める調査時間を圧縮できます。さらに、担当者交代時の引き継ぎコストも下がり、キーマンの退職によるブラックボックス化を防げます。
AIに既存コードを解析させる方法もありますが、平時の文書整備が最も確実です。
運用保守全体の費用構造や進め方は、SE/SIerの運用保守の進め方やSE/SIerの運用保守の外注・委託方法もご確認ください。
まとめ
SE・SIerの運用保守費用は、人月単価と多重下請け構造の中間マージンに影響されます。目安は、軽微な保守が5万〜15万円、中規模が30万〜80万円、大規模が100万円以上です。ただし、最終的な費用は、SLA、システムの複雑さ、ドキュメント整備状況で大きく変わります。
ライフサイクル費用の平均約60%を保守が占めるため、費用の適正化は経営に直結します。妥当性は、相見積もりだけでなく、報告書やログから実稼働を割り出して判断します。
そのうえで、移行コストを含む5年TCOで比較し、SLAとペナルティ条項で費用対効果を担保します。さらに、自動化と文書整備で工数を減らすことが、費用適正化の王道です。
ベンダー選定や発注の進め方は、SE/SIerの運用保守でおすすめの開発会社6選や、全体像をまとめたSE/SIerの運用保守の完全ガイドもご活用ください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
