水産業向け水産物在庫管理システム開発の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

水産業向け水産物在庫管理システムの開発は、魚種や数量を登録するだけでは完了しません。不定貫、ロット、産地、温度帯、賞味期限、委託在庫、加工歩留まりまでを一つの流れで管理し、現場の計量・ラベル・受発注とつなげることが成功の条件です。

本記事では、漁協・産地市場・水産物卸・冷蔵冷凍倉庫・水産加工会社を想定し、要件整理、システム選定、設計開発、テスト、稼働、定着の6フェーズで進め方を解説します。費用相場、見積書で確認すべき項目、法令・HACCP対応、現場で使えるチェックポイントまで、発注前に判断できる形で整理します。

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水産業向け水産物在庫管理システムの全体像

水産物在庫管理システムの全体像

水産業向けの在庫管理は、入荷した商品を倉庫に置いて数量を数える仕組みではありません。水産物がどこから来て、どのロットで、どの温度帯にあり、どの顧客へ、どの単位で出荷されたかを追跡できる業務基盤です。まず一般的な在庫管理との違いを定義し、導入範囲を決めることが重要です。

一般的な在庫管理と何が違いますか?

一般的な商品在庫は、商品コードと数量、保管場所を管理すれば運用できる場合があります。一方、水産物は同じ魚種でもサイズ、等級、産地、漁獲日・入荷日、荷主、鮮度、賞味期限が異なり、ケース・kg・尾・パックが混在します。箱単位では同じ商品に見えても、中身の重量が一箱ごとに異なる不定貫があるため、数量だけでなく実重量と単位換算の履歴を持たせる必要があります。

さらに、加工会社では原料から半製品・製品への変換、歩留まり、加工ロス、製造ロットを追跡します。卸や冷蔵倉庫では自社所有品だけでなく荷主別・委託別に在庫を分け、営業冷蔵庫や船上在庫、外部倉庫も含めて引当可能数を把握します。したがって、画面の機能数よりも、実際の在庫の持ち方をデータモデルに表現できるかが重要です。

最初に必要な機能をどう整理しますか?

必要機能は、入荷、保管、加工、受注、出荷、精算、分析の業務順に洗い出します。入荷では、漁獲・仕入情報、計量器からの重量取込、検品、不良・返品、荷札発行を確認します。保管では、倉庫・ロケーション・温度帯・荷主・ロット・賞味期限・出荷止めを管理し、先入れ先出しまたは先期限出しのルールを設定します。

出荷側では、受注に対する在庫引当、得意先別単価、出荷指示、納品書・送り状・請求をつなげます。加工がある場合は、原料ロットから製品ロットへの変換、レシピやBOM、歩留まり、原価を追加します。計量器、バーコード・QR、ラベルプリンター、ハンディターミナル、温度センサー、販売管理・会計・ERPとの連携は、後付けではなく初期要件として整理します。

効果測定の指標もこの段階で決めます。たとえば、棚卸差異率、計量から在庫反映までの時間、入力回数、出荷ミス件数、廃棄・滞留量、在庫回転、歩留まり、棚卸時間、冷蔵庫利用率を導入前に計測します。「DXを進める」ではなく、「重量の二重入力を1工程にする」「回収対象のロット検索を担当者の記憶から数分の検索に変える」のように、現場で確認できる目標へ落とし込むことが大切です。

水産業向け水産物在庫管理システムの進め方

水産業向け在庫管理システムの開発工程

開発は、要件整理、選定、設計開発、テスト、稼働、定着の6フェーズで進めます。各段階で成果物と意思決定者を決め、次の工程へ進む条件を明確にすると、現場の追加要望による手戻りを抑えられます。特に入荷・計量・在庫・出荷の一連の流れは、早い段階で実データを使って検証します。

フェーズ1:要件整理では現場の在庫の流れを可視化します

最初に、入荷予定、荷受、計量、検品、ラベル発行、保管、加工、受注、引当、出荷、返品、廃棄、精算までを業務フローにします。担当者への聞き取りだけでなく、早朝の水揚げ、入荷が集中する時間、冷凍庫への入庫、出荷直前の変更を現場で観察します。紙、電話、FAX、Excel、既存販売管理のどこで同じ情報を再入力しているかを記録します。

成果物は、業務フロー、課題一覧、データ項目一覧、権限表、連携先一覧、優先順位表です。最低限、魚種・商品・規格・サイズ・等級・産地・ロット・漁獲日・入荷日・重量・単位・温度帯・賞味期限・荷主・所有区分を定義します。法令対応では、対象魚種や取引区分を確認し、どの情報を誰へ伝達し、どの記録をいつまで保存するかを業務項目として記載します。

このフェーズのチェックポイントは、現場責任者だけでなく、荷受、倉庫、加工、営業、経理、情報システムの代表が参加していることです。要望を機能名で集めるのではなく、「どのタイミングで、誰が、何を見て、何を判断するか」で書くと、不要なカスタマイズを減らせます。

フェーズ2:選定では機能数より業態と機器の適合性を見ます

選択肢は、既存クラウド・SaaS、水産・食品・冷蔵倉庫向けパッケージ、パッケージを基盤にした追加開発、フルスクラッチに分けて比較します。クラウドは初期投資を抑えやすく複数拠点へ展開しやすい一方、港や倉庫の通信断、月額の増加、外部機器との接続方法を確認します。パッケージは標準機能を使えば短納期になりやすい一方、過剰な個別改修はアップデートや保守を難しくします。

デモでは、用意されたサンプル商品ではなく、自社の実データを使います。たとえば「同じ魚種でサイズと等級が違う」「一箱ごとに重量が違う」「荷主が異なる」「一部を加工して歩留まりが変わる」「賞味期限の短いロットを優先出荷する」という5つのケースを、入荷から出荷まで操作してもらいます。計量器、ラベルプリンター、ハンディ、既存販売管理、会計・EDIとの接続が実演できるかも確認します。

比較のチェック項目は、要件の適合率、追加開発の範囲、標準アップデートへの影響、データ移行支援、現地教育、障害時の連絡体制、復旧目標、納品ドキュメント、保守会社を変更できる条件です。冷凍水産物を扱うニュー浜屋冷蔵の事例では、2025年2月時点で冷凍食品や冷凍水産物を扱う2拠点の運用に対し、拠点ごとの業務差をヒアリングして標準機能と個別対応を組み合わせています(出典:NSW「冷蔵・冷凍倉庫向け入出庫在庫管理システム 導入事例」、2025年)。

フェーズ3:設計・開発では不定貫とロットを中心に作り込みます

基本設計では、業務機能、データ構造、画面、帳票、連携方式、権限、運用ルールを確定します。特に不定貫は、ケース数と実重量を別々に持ち、計量値の修正履歴や水引の扱いを残す設計が必要です。単位換算をマスタに固定するのか、商品・規格・取引ごとに許容するのかも決めます。

ロットは、入荷ロット、加工前原料ロット、加工後製品ロット、出荷ロットの関係を追えるようにします。出荷先から原料へ遡る逆追跡と、原料から出荷先へたどる順追跡を、担当者が検索できる画面と帳票で確認します。委託在庫や名義変更がある場合は、物理的な保管場所が同じでも所有者・請求先・引当可能者が変わるため、在庫区分を数量の備考欄で済ませないことが大切です。

現場画面は、低温環境、手袋、濡れた端末、短時間の入力を前提にします。魚種や取引先は検索候補から選べるようにし、計量値は機器から自動取得し、ラベルの再印刷や通信断時の再送を用意します。開発中は、画面の見た目よりも「計量してから在庫に反映されるまで」「ラベルを貼り直したときに元データがどう残るか」を確認します。

フェーズ4:テストでは例外処理と現場のピークを再現します

テストは、開発会社が画面を確認する単体テストだけでは不十分です。機能同士をつなぐ結合テスト、業務の開始から終了まで確認する総合テスト、現場担当者が受け入れる受入テストを分けて実施します。計量、在庫引当、出荷、請求、ロット追跡の一連のデータが各工程で一致するかを確認します。

水産業では、通常処理よりも例外処理が品質を左右します。魚種違い、規格変更、重量の再計量、返品、不良、賞味期限切れ、出荷止め、在庫不足、委託から自社への名義変更、加工ロス、通信断、プリンター停止、二重送信を試験項目に入れます。実際のピーク時間帯を想定し、複数人が同じ在庫を同時に引き当てても二重出荷にならないかを検証します。

受入テストでは、現場が「使える」と判断する基準を数値化します。例えば、入荷1件あたりの入力時間、計量からラベル発行までの時間、棚卸差異の許容範囲、通信復旧後の再送時間、トレーサビリティ帳票の出力時間を合意します。テスト結果、未解決課題、回避策、リリース可否の承認者を記録し、口頭の合意だけで本番へ進めないことが安全です。

フェーズ5:稼働では小さく始めて切り替えリスクを抑えます

本番稼働は、全拠点・全機能を一度に切り替える方法と、1拠点・1工程から段階的に切り替える方法があります。初回は「入荷計量から在庫反映」「出荷ラベル」「ロット検索」など、効果が見えやすく他工程との境界が明確な範囲をパイロットにする方法が現実的です。漁協や市場では特定の魚種・時間帯から始め、加工会社では一つの製品ラインから始める方法が考えられます。

切替前には、商品・取引先・倉庫・ロケーション・単位・ロット・在庫残高の移行データを整えます。Excelの表記揺れ、重複商品、古い取引先、単位の混在をそのまま取り込むと、新システムでも在庫差異が再現されます。移行リハーサルを少なくとも一度行い、旧帳簿と新システムの数量・金額・ロットが一致することを責任者が確認します。

稼働初日は、問い合わせ窓口、障害時の紙運用、端末・プリンターの予備、通信断時の記録方法、旧システムを参照できる期間を決めます。公開情報では、ZIFISHのスマート計量システムがヒアリング、カスタマイズ、開発・テスト、本運用の流れを示し、最短2か月、初期費用300万円から、月額利用料3万円からと案内しています(出典:株式会社ZIFISH公式サイト、2026年確認)。この料金は計量器・タブレット・プリンター・アプリ・既存システムへの転記などを含むパッケージの目安であり、販売・加工・倉庫を統合する費用とは分けて考えます。

フェーズ6:定着ではKPIと改善会議を運用に組み込みます

稼働後の定着では、操作研修を一度実施して終わりにしません。役割別の短い手順書、現場端末に表示する入力ルール、問い合わせ窓口、マスタ変更の承認者を用意します。魚種・規格・単位・取引先を誰でも追加できる状態にすると表記揺れが再発するため、マスタ管理の責任者と変更履歴を決めます。

月次または週次の改善会議では、棚卸差異率、出荷ミス、計量の二重入力、欠品、滞留・廃棄、歩留まり、在庫回転、棚卸時間、問い合わせ件数を確認します。数値が改善しない場合は、システムの不具合だけでなく、運用ルール、マスタ、教育、機器、通信のどこに原因があるかを切り分けます。AIによる需要予測や魚種判定は、まず入力とロットの品質が整ってから検討する順番が安全です。

法令や取引条件が変わった場合に、項目追加や帳票変更を誰が担うかも保守契約に含めます。水産庁は2026年4月1日施行の改正により、特に厳格な漁獲量管理が必要な水産資源について、取引時の情報伝達や取引記録の作成・保存などが義務付けられると案内しています(出典:水産庁「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」、2026年)。対象魚種や制度の詳細は更新される可能性があるため、対象範囲を定期的に確認し、システムの保存項目と帳票を見直します。

水産業向け水産物在庫管理システムの費用相場

水産物在庫管理システムの費用相場

水産業専用の公的な平均価格統計は確認できないため、以下は研究ノートの類似システム相場と、2025年から2026年に公開された水産向け製品情報を組み合わせた目安です。水産物の不定貫、計量機器、冷蔵冷凍倉庫、加工、トレーサビリティ、EDIや既存ERP連携を追加すると、同じ導入形態でも費用は上振れします。金額は要件・拠点・機器台数・データ移行量で変動するため、レンジとして比較します。

導入形態ごとの初期費用と期間はどのくらいですか?

既存クラウドやSaaSへ在庫・発注を寄せる場合は、初期費用0〜50万円程度、月額5,000円〜10万円程度、導入期間1〜3か月が一つの目安です。水産向けの計量・漁獲管理パッケージは、初期費用300〜800万円程度、月額3万円から、期間2〜4か月程度が目安です。ただし、機器保守、通信、現場設定、既存システムとの連携費用は別になる場合があります。

水産加工・卸向けパッケージに設定、データ移行、機器・販売管理連携を加える場合は、初期費用500〜2,000万円程度、期間3〜9か月程度が目安です。複数拠点でWMS、販売、購買、加工、EDIを統合する場合は1,500〜5,000万円程度、期間6〜18か月程度を見込みます。市場・漁協・複数企業をまたぐスクラッチやIoT基盤は5,000万円〜1.5億円超、大規模刷新では3億円以上となる可能性もあり、1〜3年規模の計画になります。

これらは水産業専用の平均値ではなく、研究ノートに整理された在庫・購買・受発注システムの推定レンジです。例えば初期300万円からというZIFISHの公開価格は、計量・荷物管理・ラベル・クラウド保管・既存システムへの転記を含む小規模パッケージの実例です。フル機能の基幹システムと同一視せず、自社の導入範囲にどこまで近いかを確認します。

費用はどの工程と項目に分かれますか?

見積の内訳は、要件定義10〜15%、基本設計15〜20%、詳細設計10〜15%、開発30〜40%、結合・総合テスト15〜20%、データ移行・教育・本番導入5〜10%程度という配分を一つの目安にします。これは案件ごとの標準ではなく、研究ノートに記載された類似業務システムの推定です。工程ごとの金額だけでなく、成果物、担当者、回数、修正範囲を併記してもらいます。

初期費用以外には、クラウド利用料、年間保守、サーバーやバックアップ、計量器、ハンディ、タブレット、ラベルプリンター、温度センサー、通信、現地訪問、データクレンジング、教育、追加帳票、API・EDI利用料が発生します。年間保守は初期開発費の10〜20%程度を目安にすることがありますが、SaaSの月額、機器保守、24時間対応、法令改定対応が含まれるかは契約ごとに異なります。

比較は初期費用だけでなく、5年程度の総保有コストで行います。初期費用が低くても、拠点追加、ユーザー追加、帳票変更、API本数、ストレージ、機器交換、休日対応に料金が積み上がる場合があります。反対に、初期費用が高くても標準機能と保守が含まれ、追加開発を抑えられる場合があります。見積の前提条件が同じかをそろえることが重要です。

ランニングコストを抑えるには何を分けて考えますか?

ランニングコストは、ソフトウェア利用料、保守、機器、通信、運用人件費に分けます。例えばクラウド利用料に含まれるのがサーバーだけで、端末管理やラベルプリンターは別請求になることがあります。計量器の台数、倉庫の拠点数、ユーザー数、取引先向けのEDI本数、保存データ量が増えたときの料金表を事前に確認します。

また、月額を削るためにバックアップや障害対応を省くと、冷蔵・冷凍設備や出荷に影響するリスクが高まります。復旧時間、バックアップ頻度、復旧テストの回数、保守時間帯、現地対応の交通費、端末紛失時の無効化、セキュリティ更新の責任者を費用とセットで評価します。安さではなく、止められない業務をどこまで守る費用かという視点が必要です。

水産業向け水産物在庫管理システムの見積ポイント

水産物在庫管理システムの見積ポイント

良い見積を取るには、依頼先へ機能一覧だけを渡すのではなく、業務・データ・機器・非機能・保守の前提をそろえます。見積書の金額が比較できない原因は、会社ごとに「導入」「連携」「移行」「教育」の範囲が違うことです。以下の観点をRFPやヒアリングシートへ盛り込みます。

要件と仕様書には何を記載しますか?

要件書には、対象拠点、利用者、取扱魚種・商品数、年間入荷件数、ピーク時の処理件数、倉庫数、温度帯、委託在庫の有無、加工工程、受注経路、帳票、法令対応、連携先を記載します。商品マスタの例として、魚種、規格、サイズ、等級、産地、漁獲日、入荷日、重量、単位、賞味期限、ロット、荷主、所有区分を渡します。

機器仕様では、計量器のメーカー・型式・接続方式、ラベルプリンター、ハンディ、タブレット、温度センサー、無線LAN、電波が弱い場所、停電時の運用を確認します。連携仕様では、既存販売管理、会計、ERP、EDI、FAX、RPAの入出力形式、連携頻度、エラー時の再処理、重複登録防止を明記します。非機能では、同時利用者数、反映時間、稼働時間、バックアップ、保存期間、監査ログ、権限、暗号化、MFA、復旧時間、SLAを確認します。

HACCPや衛生記録も在庫の外側に置かないことが大切です。厚生労働省は原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理を求め、衛生管理計画・手順書の作成と実施状況の記録保存を案内しています。一方、農業・水産業における食品の採取業は制度化の対象外とされています(出典:厚生労働省「HACCP(ハサップ)」、2026年確認)。自社が採取、加工、製造、販売、冷蔵倉庫のどこに該当するかを整理し、必要な温度・検品・清掃・製造記録とロットを連携させます。

複数社の見積はどのように比較しますか?

複数社には同じ資料と同じ実データを渡し、標準機能、設定、追加開発、機器、連携、移行、教育、保守を分けて見積してもらいます。「対応可能」という回答だけではなく、標準、設定、個別開発、外部製品のどれで対応するかを確認します。特に不定貫、歩留まり、名義変更、委託在庫、ロット追跡、出荷止め、賞味期限逆転チェックは、画面デモで確認します。

候補会社は知名度だけで順位を付けません。漁協・産地市場に強い会社、計量・ラベル連携に強い会社、冷蔵冷凍倉庫やWMSに強い会社、水産加工の製造原価に強い会社、食品ERPに強い会社、水産DXの小規模導入に強い会社というように、自社のボトルネックで分類します。事例の会社規模、拠点数、機器、連携、稼働後の保守体制が自社と近いかを確認します。

比較表には、初期費用、月額、保守、機器費、連携費、移行費、教育費、追加開発単価、納期、支払条件、契約期間、解約時のデータ返却、ソースコードや設計書の納品範囲を記載します。金額が低い会社ほど、見積対象外の項目と将来の拡張単価を確認することで、導入後の予算超過を防ぎやすくなります。

失敗しやすいリスクをどう防ぎますか?

最も多いリスクは、現場の例外を把握しないままパッケージを選び、稼働直前に個別開発が増えることです。要件整理でピーク時と例外処理を観察し、実データによるデモと受入基準を設定します。次に、最初から全社最適を目指して期間と予算が膨らむリスクがあります。優先工程をパイロットにし、成功条件を満たしたら拠点・機能を広げます。

データ移行では、古いマスタをそのまま移すことによる重複と表記揺れが起きます。移行対象、除外対象、クレンジング責任者、照合方法、移行後の旧データ参照方法を契約へ入れます。運用面では、現場で使われない高機能な画面を作るリスクがあります。入力項目を減らし、計量器やラベルから自動取得し、短時間の教育で使えるかを受入テストで確認します。

法令・セキュリティ・通信の後回しも危険です。対象魚種の記録保存、HACCPの衛生記録、端末紛失、無線LAN停止、クラウド障害、APIキー管理、バックアップ復旧を要件定義に含めます。水産業の現場は出荷を止めにくいため、障害時に紙やオフラインで記録し、復旧後に二重登録なく再送できる手順まで設計します。

水産業向け水産物在庫管理システムのよくある質問

水産物在庫管理システムのよくある質問

最後に、導入前によく寄せられる疑問へ回答します。自社の業態、在庫の持ち方、通信環境、機器、法令対象を当てはめると、必要な機能と見積条件を絞りやすくなります。

Excelで管理している在庫データは移行できますか?

移行できますが、Excelをそのまま取り込むのではなく、商品、取引先、単位、ロット、倉庫、在庫残高の重複や表記揺れを整理します。過去データをすべて移すのか、現行在庫と参照用の履歴だけを移すのかを決め、移行リハーサルで旧帳簿と新システムを照合します。クレンジング作業を発注者と開発会社のどちらが担うかも見積に含めます。

港や冷蔵倉庫の通信が不安定でも利用できますか?

利用できますが、通信断を前提にした設計が必要です。端末へ一時保存し、計量値やラベル情報に一意の受付番号を付け、通信復旧後に自動再送する方式を検討します。オフライン中に同じ在庫が別端末で引き当てられないか、再送時に二重登録されないか、プリンター停止時に紙運用へ切り替えられるかを、実際の場所と端末でテストします。

賞味期限やロットの追跡、回収検索に対応できますか?

対応できますが、入荷ロット、加工ロット、出荷ロットの関係を設計し、順追跡と逆追跡をテストする必要があります。賞味期限や製造年月日、出荷止め、先期限出しの条件を在庫引当へ反映し、回収対象をロット・取引先・出荷日から検索できるようにします。帳票の出力だけでなく、誰がいつ修正したかの監査ログも確認します。

計量器やラベルプリンターを既存システムと接続できますか?

接続できる可能性はありますが、メーカー・型式・通信方式・ドライバー・出力項目・接続場所を確認して個別に設計します。重量を手入力へ戻す場面が残ると二重入力が再発するため、計量からラベル発行、在庫反映、既存販売管理への連携を一つのシナリオで確認します。ZIFISHの公開情報でも、Bluetooth計量器、タブレット、Bluetoothプリンター、計量・漁獲管理アプリ、既存システムへのRPA転記をパッケージとして案内しています(出典:株式会社ZIFISH公式サイト、2026年確認)。

水産流通適正化法やHACCPの記録をシステムで管理できますか?

管理できますが、法令の対象業態・魚種・取引区分を先に確定します。水産流通適正化法では、対象となる水産動植物について情報伝達や取引記録の作成・保存が関係するため、対象項目をロットや取引記録と結び付けます。HACCPでは衛生管理計画、手順書、実施記録の保存が重要になるため、加工・製造・販売など自社の業態に必要な記録を整理し、法改正時に見直せる保守体制を契約へ含めます。

まとめ

水産物在庫管理システム導入のまとめ

水産業向け水産物在庫管理システムは、要件整理、選定、設計開発、テスト、稼働、定着の順に進めます。成功の要点は、一般的な在庫数だけでなく、不定貫、魚種・規格、産地、ロット、温度帯、賞味期限、委託在庫、加工歩留まり、計量・ラベル・既存システムの連携を、現場の業務フローとして設計することです。

費用と開発会社は総額と実データで判断します

費用は、SaaS・小規模計量連携・水産加工パッケージ・複数拠点統合・スクラッチで大きく異なります。研究ノートに基づく目安では、初期0〜50万円程度のSaaSから、300〜800万円程度の小規模パッケージ、500〜2,000万円程度の加工・卸向け、1,500〜5,000万円程度の複数拠点統合、5,000万円以上の大規模刷新まで幅があります。公開価格と推定レンジを分け、機器・移行・連携・保守を含む5年総額で比較します。

発注先は、機能一覧や会社規模だけでなく、自社の魚種・在庫区分・計量器・倉庫・加工工程を実データで再現できるかで選びます。見積書には要件定義から定着支援までの成果物、対象外、追加単価、障害対応、法令改定、データ返却条件を明記し、現場責任者が受入テストに参加する体制を整えます。

まず現場観察と導入範囲の決定から始めます

最初の一歩は、入荷計量から在庫反映、出荷までの一連の流れを現場で観察し、帳簿在庫と実在庫が合わない箇所、二重入力、出荷ミス、滞留・廃棄、棚卸負担を数値で把握することです。そのうえで、パイロット工程、必要なマスタ、機器、連携、KPI、法令・衛生記録の範囲を1枚の要件メモにまとめます。

水産業向け水産物在庫管理システムは、導入して終わる製品ではなく、現場データを蓄積して在庫精度や出荷品質を高める業務基盤です。小さく始めて現場に定着させ、KPIと制度変更を見ながら拠点・機能を広げる進め方が、費用とリスクのバランスを取りやすい方法です。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。